地を這う虫は空を望む   作:しろねこパンチ

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どうも、しろねこパンチです。

とりあえず衝動に従って書きました。仕事は忙しくなるとめちゃめちゃ忙しくなるので不定期になりそうです。気長に長い目でのんびりと待っていただけたらと思います。


SAO編
底辺の少年


俺は彼女に憧れた。

 

凛とした佇まいに栗色の長髪を靡かせ、確固たる信念を持つ彼女に。

 

初めてあった時、頭に浮かんだのは流れ星だ。美しい栗色の髪がライトエフェクトにより煌めき、一筋の軌跡を残した。現実で出会った黒髪の少女に似ていたが似て非なるものだった。そんな彼女に憧れた。

 

しかし理性が叫ぶ声が聞こえた。

 

《図に乗るな、俺如きがそんな綺麗な物に縋ってはいけない。自分の立場を自覚しろ、光の当たる場所など、地を這う虫が空を飛ぶ鳥に憧れるなど烏滸がましいにも程がある》

 

 

俺はあいつに憧れた。

 

笑われ、蔑まわれ、認知すらされず、学校中の嫌われ者になっても変わら無いあいつに。

 

自分と比べると全てが劣っているのに俺に出来ない事をあいつはやってのける。

 

修学旅行でグループ内のいざこざがあった時も、文化祭で問題が起こった時も、俺は何も出来ずただ彼に助けられるばかりだった。いくら勉強が出来ても、いくら友達がいても、いくらスポーツが出来ても、大事な時に何も出来ないのが悔しくて堪らなかった。

 

しかし本能で察してしまった。

 

《俺ではあいつにはなれない。現状を失う事を恐れ、動き出す事を躊躇う。空飛ぶ鳥は地を這う虫にはなれないのだ》

 

 

私は彼に憧れた。

 

皮肉屋で捻くれてて口を開けば働きたくないと言う彼に。

 

自暴自棄になっていた私を救ってくれて、普段だらしないのに、肝心な時は1番頼りになる。私より1つ年上でまるでお兄ちゃんみたいな彼は私の心の支えになっている。

 

今まで感じたことの無い感情が湧き上がる。

 

《彼のそばにいたい。彼とお喋りしたい。彼に触れたい。彼の役に立ちたい。彼になら私の全てを捧げられる。》

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

「これにてチュートリアルは終了する。諸君の健闘を祈る」

 

俺はなんとデスゲームに巻き込まれてしまったらしい。学校で色々やらかし過ぎて居心地が悪く、嫌な現実から逃げるために小遣いをはたいて買ったんだがこんなことになるなんてな。

 

空に浮かぶ巨大な赤いローブのアバターが消え、数秒の静寂を怒号と悲鳴が破る。

 

「ふざけんじゃねぇぇぇ!とっととこっから出しやがれ!」

「嘘だッ!!!」

「この後彼女と約束あんだよ!」

「お母さーん!お父さーん!」

 

あれ?どっかで聞いたことあるようなセリフが…それとリア充乙wざまーないぜ!このゲームR13じゃなかったのか?どう考えてもまだ10歳前後の子が何人もいるぞ。

現実逃避はこのぐらいにして今やるべきは情報収集とレベリングだな。デスゲームとなったこの世界を生き抜くためには情報が必要だ。ベータテスターとかっていった経験者がいるはずだからそいつを見つけて情報を……俺コミ症なの忘れてた!八幡うっかりテヘペロ!……キモイな。まあ情報に関してはぼっちの特技の1つ人間観察でどうにかするとしてレベリングはどうするかな。ステルスヒッキーが使えればいいんだが。

 

「クラインこっちに来てくれ」

「どうしたんだよキリト」

 

今後の方針を考えていたら2人のプレイヤーが近づいてきた。2人は俺の横を通り路地へと入っていく。

 

「デスゲームとなったこの世界で生き抜くためにはひたすら自分を強化するしかない。始まりの街周辺の狩場はすぐに他のプレイヤーで埋め尽くされてろくにレベリングなんて出来なくなるだろう。だから早い段階でこの街を出た方がいい。ここまで一緒にやってきたからこそ言うが一緒に出ていかないか?」

「キリトの気持ちはスゲェ嬉しいけどよ、連れがこの街にいんだ。そいつ等を置いては行けねぇよ」

 

すぐ横にいる俺に気付かず話を進める2人。あれ?俺認知されてない?あ、いつも通りだね!

 

「そうか……じゃあ俺は行くよ。じゃあなクライン」

「おう!いろいろありがとよキリト。そういえばお前けっこう可愛い顔してんだな!」

「お前もその野武士面の方が100倍似合ってるぜ!」

 

そう言ってキリトと呼ばれた少年は走っていった。キリト……か、使えそうだな。ステルスヒッキーを全開にして走り去るキリトとやらを追い掛けた。

 

 

黒髪の少年、キリトを追い掛けていると小さな村に着いた。キリトが倒し漏らしたモンスターをステルスヒッキーを使って高確率でクリティカルを出しながら倒していたらレベルが4に上がった。キリトは宿へと入っていった。中の様子を伺うとどうやらクエストを受けたようで直ぐに出てきた。そのまま村を出て森の方へ向かっていくのでそろそろかと声をかけた。

 

「おい、ちょっといいか?」

「誰だ!?」

 

キリトは初期装備のスモールソードを構え臨戦態勢となった。

 

「おいおいおい!いきなり話しかけたのは悪かったがそこまで身構える必要があるかよ!?」

「俺の索敵スキルでも看破出来ない程の隠蔽スキルを使って近づいてきたくせに何言ってんだ!」

 

索敵スキルと隠蔽スキルってのは何のことだ?話がみえないな。

 

「落ち着け。それと聞きたいんだが索敵スキルってやつと隠蔽スキルってのは何のことだ?」

「とぼけるな!俺に気付かれずにここまで近付いて来たんだ、お前PKだな!」

 

PK……プレイヤーキルの事か?つまりこいつは俺がこいつを殺しに来たと勘違いしてるって事か。

 

「待て、冷静に考えろ。仮にここでお前を殺したとして俺に何のメリットがある。PKで経験値が稼げるならまだしもSAOはそんな機能は無いだろ?俺は単にお前がベータテスターだと知って情報収集のために話しかけただけだ」

「…なぜ俺がベータテスターだと知っているんだ?」

「始まりの街で…クラインと言ったか?アイツとお前が話してる時俺はすぐ近くにいたんだ。全く気付かれなかったもんでそのまま話を聞かせてもらった」

「それこそおかしい。あの場で他の存在に気づかないなんて有り得ない」

 

まったく、情報を持ってるやつは自分の知ってる事以外信じようとしないのはなんでなのかね。無知の罪で逮捕されちまうぜ?

 

「それじゃあ…これで信じるか?」

 

そう言って俺はステータスウインドウを可視状態にしてキリトに見せた。

 

「よく見ろ。俺はスキルは片手剣しか取っていない。つまりお前の言ってる隠蔽スキルとやらは使えないんだ」

 

キリトの表情はウインドウを見ると驚愕に染まる。

 

「ホントに隠蔽スキルが無い……じゃあさっきまでどうやって隠れてたんだ?」

「どうって…こうやって」

 

ステルスヒッキーを使い気配を消すとまたしてもキリトの表情は驚愕に染まる。

 

「なんで姿が朧気に見えるんだ。索敵スキルは正常に働いているし、油断したら見失いそうだ。どうやったらそれできるんだ?」

「ボッチになる」

「は?」

「ボッチになって周りから認知されなくなれば出来る」

「ボッチってソロって意味か?」

「そうじゃない。誰からも認められず、見くびられ、馬鹿にされ、孤立する事」

「俺もリアルじゃボッチだったんだけどな」

「……お前いじめられたことあるか?」

 

目がキモイとかそんな理由で教科書を隠されたり、殴られた。

 

「遠足みたいな集団行動で置いていかれたことは?」

 

点呼しても忘れられ、気付いていてもあえて置いていこうとした奴がいた。

 

「教師にすら名前を覚えてもらえなかったことはあったか?」

 

いくら訂正しても教師共は「ヒキタニ」としか呼ばなかった。

 

「お前の言うボッチはボッチじゃない。極わずかにしか友達のいないコミ症だ」

「確かに友達は二、三人くらいしかいなかったけどその程度じゃ」

「俺には友達と呼べるやつなんて1人もいない」

 

そう、みんな他人だ。クラスメイトであっても1人とて名前を覚えてないし、覚えてられてもない。あの場所で可能性のある奴が2人いたが結局は俺の勘違いだった。

 

「だからお前には無理だ」

 

話を終えるとキリトは申し訳ないような気まずいような顔をしていた。しかし俺とした事がやけにべらべらと喋ってしまった。そろそろ当初の予定を進めなければ。

 

「俺の話はどうでもいい。それよりお前に聞きたい事がある」

「……」

「この世界についてお前が知っている事を全て話せ」

 

そう今欲しいのは情報だ。誰かが人間は自分の理解出来ない物に恐怖するとか言っていた。今正しくその通りだ。この世界のどこで何が起こるのかまったく分からない、どこにどんなモンスターが出るのか、どれくらいの強さなのか等知りたいことは山ほどある。

 

「ベータテスターのお前はそれだけの価値がある」

 

ベータテスターはこの世界でニュービーである俺達より大人と赤子程の差がある。右も左も分からない今この世界を生きる術を持っているやつとコンタクトを取るのは必須だ。

 

「…一つだけ聞きたい」

 

しばらく喋らなかったキリトが口を開いた。

 

「あんたの話を聞く限り、あんたにとって現実はクソだったんだと思う。それなのにどうしてそこまで生きようとするんだ」

 

生きようとする…ね。そんなの決まってる。

 

「妹にもう1度会うためだ」

「は?」

「妹だけは俺を見てくれていた。心配してくれた。俺のために努力してくれた。そんなあいつに俺は何一つ返せていない。だから俺は生きて現実に戻る」

 

妹は、小町だけは俺の味方だった。たまにごみぃちゃんなんて言われるがあいつがいなけりゃとっくに自殺してただろう。

 

「これで満足か?」

 

キリトは俺の目を真っ直ぐに見ていた。

 

「ああ、充分だ。あんたに俺の知ってる事教えるよ」

 

やれやれずいぶんと時間がかかったな。しかしこれで俺の第1目標は達成で「そのかわり!」きたとは虫が良すぎたか。

 

「なんだ」

「そのかわり俺とパーティーを組んでくれ」

 

なん…だと?これは予想外の返答だ。

 

「あんたの事もっと知りたいんだ。あんたといれば俺はもっと強くなれる気がする」

 

どうしたものか。出来ることならソロでいたかったんだが。キリトは今までの戦闘を見る限りかなり強い、すべての戦闘で危なげなシーンは一度も無かった。キリトといるメリットはかなり高い、ここは俺が妥協するべきか。

 

「分かったその条件を飲む」

「よし、これから申請を送る、これからよろしく頼む、えっとそういえば名前を聞いてなかったな」

「そういやそうだな」

 

 

「hachimanでハチマンだ。よろしく頼む」




いかがだったでしょうか?

基本は原作沿いでちょこちょこ改変していこうかと思います。(具体的にはオリジナルスキル出したり、死んだり死ななかったり)

次の更新もできるだけ早く更新したいと思います。

出来れば感想なんか言っていただけたら嬉しいです。

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