ひぐらしのなく頃に 骨   作:つぶあん仔

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来週日曜日更新(数ヶ月後)
なんでこうなったんだろう……(社畜の目)
申し訳ないです


運命の袋小路─前編

綿流しの祭りの日、古手神社の境内は喧騒で包まれていた。

それは人の声であり、また和楽器の音でもあった。

雛見沢という村最大のお祭りであり、村の住民の殆どが来ている。

梨花は同じ学校の、沙都子たちと祭りに来ていた。

正確に言えばこの神社は梨花の所有物であり、『来ていた』という表現は端的に言って不適切ではある。しかし梨花にとってお祭りの日はいつもの古手神社とは違った一面があるのだからそのような表現もしたくなるというものだ。

そして梨花にとってこの日は特別な日。

そう、まさしく今日こそがこのあとの梨花の運命が定まる大事な日なのだ───。

しかし楽しんではいけないと誰が決めたのだろうか?

いや、誰も決めてなどいない。

従って、論理的帰結によって、梨花は祭りを楽しむのだ。

 

 

 

 

「今年も行くよー!綿流し六凶爆闘ー!!」

 

 

 

 

「負けませんですわよ」

 

 

 

「俺だって!」

 

 

 

 

魅音が声を張り上げる。それを聞き沙都子と圭一は力をみなぎらせていた。

沙都子の笑顔は、明るく見る人を楽しませてくれた。

彼女を救ってくれたアインズ・ウール・ゴウンには感謝してもしきれなかった。

だからこそ、梨花は彼の手は借りない。

大きな借りを作ったのだ。今度は自分の力で運命を変えなくてはならない。

まあ、それは置いといて、熱々のたこ焼きを食べるみんなを横目に梨花は楽しむことにする。

祭りの屋台を回り、様々なゲームをしたり食べ物を食べたりした。

射的、くじ引き、金魚すくい、様々なゲームが出ていた。

焼きそば、たこ焼き、箸巻き、カステラ、様々な屋台があった。

雛見沢は小さな村だが、屋台は他の街に引けを取らないほど多くあると梨花は思う。

祭りの終わりが近づくと、古手神社の神主である梨花は奉納演舞という舞を披露する。

その美しい舞が祭りの締めとなり、楽しい楽しい祭りの日は終わるだろう。

しかし、梨花にとってはこれからだ。ラストスパートだ。

ここから、梨花の最後の戦いが始まる。

梨花の耳に、横笛の音色が流れていった。

 

 

 

 

※※※※※※※※※※

 

 

 

 

喧騒の音が鳴り止まぬ屋台の列、そこから外れたとこでアインズは梨花たちを見ていた。

正直なところ、アインズも祭りに行きたかった。屋台で並んで楽しみたかった。

しかし現状のオーバーロードの外見ではただただ怪しいだけだ。奇異の目で見られるぐらいなら遠目で見守る。その梨花たちに向ける目は傍目ではストーカーにしか見えないのはここだけの秘密としよう。

アインズのいた世界での祭りはこんなものではなかった。規模は確かにアインズの世界のほうが大きかった。しかし有害スモッグによって汚染された空気は祭りというものを変えた。外ですることは事実上の不可能になり、もっぱら屋内で祭りが開かれた。

形式も略式化され、日本の伝統は見るも無惨なものになっていた。

ただ、綿流しの祭みたいなものは都市部から遠く離れた地方部にはまだあるらしいが………。

 

 

 

 

「念のために、不可知化の魔法を唱えとくか」

 

 

 

 

《パーフェクト・アンノウアブル/完全不可知化》の魔法が発動する。

それとほぼ同時に怪しい人影をアインズは目撃する。

作業服を来たただの作業員だろう。

しかしアインズのいる所は人気のない所であり、ストーカーまがいの行いをしているアインズと同等ぐらいに怪しかった。

後をつけるかどうか迷うが、ここに作業員がいようが自分に害が出なければ特に問題はない。 

アインズは完全不可知化を唱えてて良かったと呑気なことを思いながら作業員から目を離す。

梨花たちを探したがどうやら見失ったらしい。

まあいいかとアインズは思い、小一時間ほど祭りの様子を眺めるのだった………。

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※

 

 

 

梨花は決意した。

運命を変えるために。

まずは二人の、鷹野三四と富竹ジロウの二人の死の定めを変える。

もう二度と、梨花は運命に屈しないと誓う───。

 

 

 

 

「こんばんは」

 

 

 

 

鷹野三四と富竹ジロウが梨花たちに挨拶をしてきた。

これで探す手間が省けた。

あまり他の人に知られたくないため、人気のないところに場所を移した。

梨花は二人が死ぬことを話すが───

 

 

 

「でも、どうして僕たちが殺されなきゃならないんだい?」

 

 

 

 

「……それはわかりません。でも、富竹は喉をかきむしって、高野はどこか遠くの山奥で焼かれて死にますです」

 

 

 

 

「喉を掻き毟るって……、それはL5/レベルファイブのことかい?」

 

 

 

 

「……たぶんそうです」

 

 

 

 

「大丈夫だよ。僕は予防薬を受けてるし、それにこう見えても体を鍛えてるんだ」

 

 

 

 

「そうよぉ。危なくなったらジロウさんが守ってくれるわよ」

 

 

 

 

「……ボクはオヤシロさまの巫女だからわかりますのです。今夜二人きりのときに襲われるはずです……。だから今夜は二人っきりになってはダメなのですよ!!」

 

 

 

 

梨花の嘆願の声は最後には怒鳴り声のようになっていた。

これで二人が二人っきりにならなければ──

 

 

 

 

「梨花ちゃん……」

 

 

 

 

鷹野三四は分かってくれたのか。

しかし、そうではなかったようだ。

 

 

 

 

「もしかして私たちに妬いているの?おませさんねぇ」

 

 

 

 

くすくすと笑う三四の返答は、梨花が欲しい応えではなかった。

 

 

 

 

「まあせいぜい気をつけるわ。じゃあね」

 

 

 

そう言って三四たちは去って行った。

梨花の心の中に残ったのは二人を変えられなかったという事実に対する悔しさだけだった。

 

 

 

 

(……ダメだ。この二人にこれ以上言っても信じてもらえない。なら他の人にも警告しよう、少しでも運命を狂わせるために!)

 

 

 

 

だけど、他に誰に警告するべきか。

入江の顔が浮かぶが、彼は一介の研究者だ。鷹野三四と富竹ジロウの死を防ぐのは難しい。

ならば、誰に伝えれば祟りを止めれるだろう?

そのとき梨花の背後に電撃が走る。

この祟りを止められるであろう人物が一人いた。

梨花はその人物を探しに行く。

 

 

 

 

※※※※※※※※※※

 

 

 

 

「それをどこで聞いたのですか!どの辺りで!!」

 

 

 

 

 

木陰の喫煙所に探していた人物が見つかった。

割と早く見つけれたのは幸運だろう。

梨花は探していた人物──大石蔵人に説明する。

 

 

 

 

 

「人混みで偶然耳にしただけなのでわからないです」

 

 

 

 

流石に自分の現状を言う訳にはいかないからこの場だけの嘘は見逃してもらいたい。

 

 

 

 

「……そうですか……。しかし富竹さんは余所者だし鷹野さんと合わせれば二人……。たしかに5年目の祟りにあってもおかしくない……」

 

 

 

 

思考の中に入り込もうとする大石だがもうあまり時間はない。

二人の死はもうすぐそばまで迫ってきている。

だから自分が運命の袋小路を歩んで、そして知っている限りの情報を渡す。

 

 

 

 

 

「大石、襲うなら雛見沢と興宮の間の道だと言っていたと思います。昨日沙都子の家に警察を待機させてたのと同じことができませんか?」

 

 

 

 

「分かりました。ダメで元々です。お二人をマークしてそこへ車を一台張り付かせましょう」

 

 

 

 

即答だった。昔の梨花では想像もできなかっただろう。大石が協力してくれるなんて。

 

 

 

 

「ありがとうなのです。誰も信じてくれなくて困っていたのです」

 

 

 

 

「それを信じるのが警察です。せっかくの情報を見過ごして事件を防げなかったら、これほど悔しいものはないですからね」

 

 

 

 

ニコッと笑いながら手を上げて大石は立ち去った。

あとは誰に相談出来るだろう……?

梨花がそう考えてると自分を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

 

 

 

「梨花ちゃーん!」

 

 

 

 

圭一と、そして皆が呼んでいた。

どうやら梨花のことを探していたらしい。

皆にも話してみよう。

だって彼らは仲間なのだから。

 

 

 

 

「……富竹さんと鷹野さんが殺される……!?」

 

 

 

 

皆はそのことを聞いて非常に驚いた面持ちだった。

いきなり人が、それも知り合いが殺されると聞いて驚かないほうがおかしいが。

しかしすぐさま冷静になる。巫女である梨花が言ったから、何か霊的なものがあるのかもしれないと思ったのかもしれない。

各々が対抗策を考える。

 

 

 

 

「確かに用心したほうが良いですね。……今夜だけは」

 

 

 

 

「雛見沢連続怪死事件。通称オヤシロさまの祟り」

 

 

 

 

「はっきり言って何年も続かれちゃ困るんだよね。村のイメージダウンにしかならいし」

 

 

 

 

「怪しい人がいたらすぐわかると思うけど……。私たちはどうしたら良いかな」

 

 

 

 

「ならせめて祭りが終わるまで二人の護衛をしようぜ」

 

 

 

 

「人が近くにいれば、手が出しにくいですものね」

 

 

 

 

「みんな……」

 

 

 

 

仲間が応えてくれる。それは梨花にとって感慨深いような、失くした物を見つけたような気がした。

 

 

 

 

「……梨花」

 

 

 

 

羽入の声が梨花を呼ぶ。梨花は横槍が入ったような気分になる。

 

 

 

 

「梨花は富竹たちの死を防げると思っていますのですか?」

 

 

 

 

「……わからない。」

 

 

 

 

 

そんなことは梨花は分かるわけがなかった。何回も繰り返した運命では二人が死ななかったことがないのだ。

前例がないことなんて誰が分かるというのか。

 

 

 

 

「けど、ダメだったとしても山狗の警備もあるし、それにアインズがいる。これ以上借りは作りたくはないけれど。二人が殺されても私は無防備ではないはず」

 

 

 

 

そう、山狗の警備がある。アインズに頼らないとしても、彼らは梨花をきっと守るだろう。

それに──

 

 

 

「──今回は最後の最後まで諦めないと決めたもの。出来得る限り足掻くわ」

 

 

 

 

「……梨花の好きなようにするといいのです」

 

 

 

 

羽入は冷たく言い放った。いや、本当に冷たいのかはわからなかった。羽入がこんなことを言うことは今までになかったはず。

そのことに多少梨花はいらつく。

 

 

「ねえ、どうして期待しないの?沙都子が救われるなんて今までになかった。運命は変えられるって証明されたのに……。どうして!?」

 

 

 

 

「……梨花。あるがままが運命ですから、僕は期待なんてできないのです。何があってもどうか気を落とさないで」

 

 

 

 

これまで以上に悲しい顔をされ、さすがの梨花も羽入に対して怒りが沸き立つ。

それは大声となり羽入に矛先が向かう。

 

 

 

 

「あんた今回もだって言ってるの!?」

 

 

 

「……っ!」

 

 

 

「……。もういいわ」

 

 

 

 

梨花は羽入に背を向け沙都子たちのいるところへ向かう。

梨花は運命が打ち破れると思っている。絶対に出口があるのだと信じている。

──でも実は羽入は知っているんじゃないのだろうか?

梨花たちは、例えば金魚のようにそもそも出口のない金魚鉢の中を泳ぎ回っているだけではないのだろうか。

だから羽入は期待しないのだろう。

でも、例え出口がないとしても、梨花は自分の考えを貫くつもりだ。

 

 

 

 

──信じる強さが運命という盾を貫く一つの槍となるのだから。

 

 

 

 

そして私たちは祭りが終わるまで鷹野と富竹の側にいた。それが綿流しの夜に出来た梨花たちの精一杯の努力だった。




オリジナルで小説書くのって難しいですね
まず設定とか考えないといけないところが特に
モンスターとかならポンポン思いつきますけど女の子は大して思いつかない……

アインズが怪異の王たちとてんやわんやするクロスオーバー考えたけど誰か書かないかな……

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