ネタ集   作:ラビ@その他大勢

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天才海兵の勘違いものにしようかなと思ってました


ONE PEACE 1

その男は、年齢は若干20歳と、若くして海軍本部中将だった。

生まれた頃から知覚が過敏で、それが『見聞色の覇気』だと言うことに周囲が気付いたのが10歳の頃。

その頃から既に武装色の覇気の使用についても片鱗を見せていた。どれだけ強くなろうとも特訓に力は抜かず、ひたすらに自らを邁進する毎日。

剣の腕前は超一流だが、剣だけに頼らず徒手空拳も織り交ぜる自由な戦法を得意としていた。

13歳で海軍に入ってからは、その頭角を現しメキメキと昇格。部下の怪我を良しとせず、常に前線で体を張った戦闘を繰り返していた結果、多く戦果を挙げ、ここまでの地位についた。

その能力を買われ、彼は現在《新世界》にて基本的には制約なく行動している。

 

それが、彼──アス中将の周りからの認識であった。

しかし、彼の一番の部下であり、彼が最も信頼しているリネット准将以外、誰が知りえただろうか。それは、常に彼が責任を取りたくないがゆえの行動だった、ということを。

 

 

 

 

「アスさん! 前方に海賊の船が!」

「⋯⋯承知した。海賊旗の確認を急げ」

 

船で海を適当に渡っていれば、このご時世、少なくとも1ヶ月に1度は海賊船と出会う。それは平穏を求めるアスにとって喜ばしいことではなかった。だが、出会ってしまえば捕まえなければならない。四皇レベルの海賊ならともかく、ただの有象無象の海賊をみすみす逃してしまったとあれば、中将としての信用問題に関わるからだ。

だから、なるべく強くない海賊団であればあるほど良い。⋯⋯と常日頃から思っているのだが、それが叶ったことは過去一度としてない。

 

「懸賞金1億超えが2人いる《弓の海賊団》です!」

「1億超え2人か⋯⋯よし、そっちは任せろ。⋯⋯お前ら、いつも言ってるとは思うが」

「自らの安全を最優先に考慮しろ!」

「⋯⋯分かってるならいい」

 

死者や怪我人が出れば、責任問題が発生する。そう言った七面倒臭い事に関わるのはゴメンだ。だから彼は部下の安全を最優先にし、自ら前線へと立ち続ける。そんな彼だからこそ、海軍本部の中でも昇格し、尚更責任が重い重役へとついているというのだから、皮肉なものである。

 

『⋯⋯えー、海軍本部中将からの降伏勧告。1度きりしか言わないからよく聞け。そこの船の海賊たち、武器を下ろし速やかに投降しなさい』

 

拡声器を使った、自分でも無意味だと分かっている降伏勧告。こんな勧告で降伏してくるような海賊は、そもそも新世界に来るまでに潰れていることを既に知っているからである。だが、一縷の希望を掛け、彼は戦闘前には常にこの儀式を行っていた。

 

──だが実際、弓の海賊団の船はアス達が乗っている船へと挨拶替わりの砲弾を撃ってきた。

 

「まぁ、こうなるわな」

 

青年は達観した表情で小さく呟き、腰に帯びていた日本刀を音も無く抜き放った。

 

 

 

戦闘後、アスは軍艦の自室にリネットを呼び出していた。肩甲骨の辺りまで伸ばした茶髪をポニーテールのように括っている、傍から見ても相当に美しい女性だ。彼女もアス程とは行かないまでも期待の星であり、まだ20代半ばに見えるが実年齢は35。アスから見れば相当に年の離れた姉──という感覚であった。

リネットは纏めて抱えていた大量の書類をアスの机の上に置くと、小さく息をついた。

 

「アスくん、今日も無茶な戦いしてたのね。⋯⋯二人いる片方の相手くらい、私に頼ってくれても良いのに」

「⋯⋯それはそうなんだが、万に一つもリネットさんに怪我されたら困る」

「あら。私はそんなに信用無いかしら」

「万に一つも、だ。聞き間違えないでくれ。リネットさんの実力は俺が一番よく分かってる」

 

アスは少し拗ねたようなリネットの言葉に、苦虫をかみ潰したような表情を浮かべる。実際、今日戦った海賊達は、船長でさえ1対1ではとてもリネットに敵わないような海賊ばかりだった。

 

「分かってるなら良いのよ。⋯⋯怪我はない?」

「大丈夫だ。1億2人にやられるほど俺もやわじゃない」

 

少し冷めてしまった珈琲を啜り、机の上に置かれた書類に目を通していく。

リネットは部屋に置いてある来客用の椅子に座ると、テーブルの上に設置されているポットを手に取り、コップへと紅茶を注いだ。礼儀正しく一口飲んで曰く

 

「温いわ」

「⋯⋯冷やかしなら帰ってくれ」

「あら冷たい」

 

ふふっ、とリネットは穏やかに微笑む。アスはガリガリと頭を掻き、不満そうに眉を寄せるも、それ以上何か言う事は無かった。

リネットも一口目以外は紅茶についてのコメントをせず、ただニコニコと笑みを浮かべたままアスを見つめるだけだった。


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