~騎竜王国 表通り~
なかに入り、まず最初に目に入ったのは、大勢の人だった。
「・・・とりあえず宿探しだな、後はアイテムの売却」
「そうだね、でも、行動しやすいように細い通路通っていこうか」
二人はそう言うと、人の少なそうな路地の中へ入っていく。
「移動してる最中に、身分についてだな。今の俺たちは平民」
「そのしたに奴隷、上には貴族、その上に国王の親衛隊、その上に王だね」
「貴族になるには、一定の功績をあげれば上がれるな、奴隷は主人が金をつんで、奴隷ギルドに渡せば平民になれる」
ドールが言い終わると同時に、少し広い場所へ出る。中央に噴水らしきものがあり、なにやら人が集まっている。
「・・・言ってたらこれか、フラグとはよく言うものだ」
その方向を見てみると、そこには左目、右腕、左足を失った、
ここに来る前に助けられた、涼華に似た雰囲気の少女の獣人がいた。
「どうするの?」
「無視する以外ないだろう?金もあまりないんだし」
そう言って、ドールが歩き始めようとしたとき、少女が小さい声で、
「だ、か、わた、を、か、て・・・おね、ちゃん・・・りょ、か、ね、ちゃん・・・」
といったあと、そのまま意識を失ったのか、床に倒れる。
「・・・聞こえたか絆」
「うん・・・どうするの?」
「どうするも何もない、少し先に行っててくれ、ちょっと奴隷ギルドに行ってくる、三人で宿に登録しておいてくれ」
そう言うと、ドールは人ごみのなかに入り、少女を持ち上げる。よく見てみると、小さな傷がいくつもついている。
「・・・大丈夫だからな、少しだけ待っててくれ」
持ち上げた辺りから、周囲の人間から変なやつを見るような視線をあびせられるが、
ドールはそれを無視し、足に力を込め大きくジャンプをして、屋根の上に乗る。
すると、絆が宿を探している様子が見える。
「さてと、まず買えるかどうかわからんし、まずは資金調達だな、奪った金は絆に渡してるし」
そう言うと、ドールは先ほど人だかりのできていた場所とは別の方向へ走り始める。
~騎竜王国 武器屋~
「いらっしゃい、何を探して?」
そんなこんなで、金属を売るならと、ドールは武器屋に入り、カウンターにいる店員に、そう声をかけられる。
「悪いが、買い物に来たわけではなく、売却目的だ。俺には今のところ使い道がないものでな」
ドールはそう言うと、少女をおんぶしている状態で、ポーチから五つインゴットを取り出す。
「・・・一つ銀貨五枚」
ドールはそれを聞き、にやりと笑ったあと、
「嘘だね、この金属は、ここらには滅多に流れてこない代物だ、白金貨一枚」
と、値上げ交渉を始める。
「悪いが、それは無理な相談だ、銀貨九枚」
「そうかそうか、なら、金板五枚、それに金貨も五枚でいいよ」
「・・・金貨九枚、これ以上は譲らん」
「ならいいや、違うところを探す。せめて金板二枚と金貨九枚はもらいたいしな」
そう言って、ドールが店から出ようとすると、男は舌打ちをし、
「わかった。それで交渉は成立だ」
といって、白金貨一枚、金板四枚、金貨五枚を取り出し、袋に入れる。
「案外儲けてんのな」
ドールはそう言うと、袋をとり、インゴットをおいたあと、店を後にした。
「くそが、これが売れなかったら赤字で店がつぶれるってんだ」
そんな声が、店から聞こえた気がした。
~騎竜王国 奴隷ギルド~
「おい、こいつを買う、早く準備しろ」
ドールは受け付けに行くと同時に、背中の少女を男に見せてそう言う。
「はいはい、すこしまちな」
そう言うと、男は首輪の様なものを取りだし、
「あんた名前は?」
と、聞いてくる。
「ドールだ」
と答える。
それを聞くと、男はその首輪の一部に何か書いていく。
「これをその子の首につけろ、それが奴隷の証だ。名前が彫ってあるものの言うことをすべて聞く、
お前が死ねと言えば死ぬ、食えと言えば食う、そう言う風にさせる首輪だ。注意して使え」
といって、ドールに首輪を渡してくる。
「ったく、誰が悲しくてこんなくそみたいな仕事を・・・」
心のそこから嫌そうな顔で、男はそう呟いていたが、その声をドールは無視し、少女に首輪をつける。
「・・・また何かあったら世話になるかもしれない、名前を聞いておいてもいいか?」
「できればそんなことになるのは、解放するときにしてくれ、白金板一枚で解放できる。
そうだな、名前くらいならいいか。俺の名前はペーストだ」
ちゃっかりと解放するときの金額まで教える辺り、かなり良心的な人物なのだろう。
「そうか、そんじゃ、またな、ペースト」
「あぁ、金ためてからこいよ。具体的には白金板一枚」
そこでも言うか、と、思わず心の中で思い、苦笑いを浮かべる。
「そういや、絆どこにいるんだろ」
そのまま外に出たあと、そう呟いた直後、
「ドール!」
という絆の声が聞こえる。
「よかったぁ、移動してなかった」
「おぉ、ナイスタイミング」
ドールはそう言いながら、絆の方へ移動して、絆から、
「宿が全部うまってたから、どうしようか聞こうと思ったんだ!」
と、にこやかに言われ、固まる。
「・・・金ならできた。ついでだ、どっかに活動拠点として、家買うぞ。水とかは魔法で十分だ」
そう言いながら、絆の手をとり、家を探す。
それからすぐ、ドール達は家を金貨一枚で買うのだった。