初期設定をよく確認せずに始めたら、ネカマするはめになった・・・   作:yoshikei

2 / 2
02

 転移が終わると、俺は噴水の前にたっていた。

 どうやらここがスタート地点のようだ。

 

「あ、なんかきた」

 

 俺の目の前に《“Akuta”からチャットが来ています》と表示されていた。たぶん拓海(たくみ)だろうと思い<応答>を選んだ。その予想は当たっていたようで、

 

『お、でたでた。タクだ。リク、今から合流できるか?』

 

「拓海か?合流ならできると思うぞ。どこにいけばいい?」

 

『今から印をつけたマップを送るから、そこに来てくれ。あとここはゲームだ。実名を使うな』

 

 しまった。つい実名を出してしまった。次からは気を付けよう。

 

「わかった。えっと、アクタ?」

 

『おう、じゃあ、もう切るな』

 

 拓海あらためアクタは、そう言ってチャットを終了させた。チャットが切れるとすぐにアクタからマップが送られてきた。俺はそのマップにしたがい、合流場所へと向かった。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 合流場所を見ると、1人だけポツンとたっている人がいた。たぶんあれが拓海のアバターであるアクタだろう。俺は少し急ぎながらその場所へ向かう。名前は本人から教えてもらうまで表示されないらしいので、名前は見えていないが、他のアバターがいないためあれがアクタ本人だろう。

 

「よっ!」

 

 俺はアクタの肩を叩きながら、声をかけた。リアルで会うときと同じように行動したと思ったが、アクタは肩をビクッとさせた。

 

「ど、どうもこんにちは。今日はお日柄もよく、じゃなくて、どうかしましたか?」

 

「アクタ、お前なにやってんだ?NPCの真似(まね)か?」

 

「あ、あの、どこかでお会いしましたでしょうか?」

 

「アバターの名前と容姿でわかるだろ。あ、そういえば、こっちが教えるまで名前は表示されないんだったな。まったく。俺だよ、俺。リクだ。一応確認しておくが、お前がタクでアクタだよな?」

 

 俺がリアルで呼んでいるあだ名を呼んだとき、ようやく誰かということに気づいたようだ。

 

「お前まさか理巧斗か?」

 

「ああ。ちなみにそれはリアルの名前だぞ。わかってると思うが、ここではリクだ。自分で言ったことくらいは自分で守れアクタ」

 

「すまん。で、リク。まさかお前ってリアルが女だったのか?たしかに女顔だが、お前が男だって言うからそれを信じてきたのに、まさかそれが嘘だったなんてな。一本とられたぜ」

 

「いや、なにいってんだよ。俺は正真正銘の男だ。小さい頃に一緒に風呂も入ったことあるだろ?もう忘れたのか」

 

「たしかにそうだが・・・。リク、お前どんな方法を使ったんだ?これはネカマできないはずだろ?」

 

「どんなって、特になにもやってないぞ?アバターも写真を元にした自動作成にして、手は一切加えてないし」

 

 タクのいっていることがわからず、キョトンとしている俺にタクはこういった。

 

「だってお前、今

 

   女だぞ

 

 それもかなりの美少女だ」と・・・。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

リク

Lv.1

HP 110/110

MP 110/110

 

Str 20

Vit 20

Int 22

Mind 20

Dex 22

Speed 21

 

スキル  SP0

【付加魔法 Lv.1】【弓 Lv.1】【調薬 Lv.1】【隠密 Lv.1】【回復魔法 Lv.1】【】【】【】【】【】

控えスキル

なし

 

装備品

【武器】ーーー

【頭部】ーーー

【外着】ーーー

【内着】ーーー

【腕】 ーーー

【胴体】ーーー

【腰】 ーーー

【靴】 ーーー

【アクセサリー】0/7

なし

 

持ち物

初心者の弓

練習用の矢筒

ホルダーベルト 〔〕〔〕〔〕

初心者ポーション×10 

 

 

女だぞと言われたとき、俺は固まった。その後にタクがなにかいっていたようだが、よく聞こえなかった。

 だが、今の俺にはそんなことはどうでもよかった。

 小さい頃から“女の子みたいでかわいい”と言われることが多かった。小学校の高学年になってからは、そう言われることがいやになっていった。

 そして、小さい頃から俺が女子と間違えられることも度々あった。

 その影響か、女子と間違えられることがとても嫌だったのだ。

 そして現在、友人いわく女子になっているというではないか!

 その事を確かめるために下を見ると、胸部にほのかな膨らみと、長い髪があった。

 俺はがっくりとうなだれ、地べたに手をついてこういった。

 

「俺もうこのキャラ消すわ」

 

「戻ったか。残念ながらこのゲームは、一度アバターを作ったら脳波を登録されて、別のアバターは作れないぞ。利用契約に脳波を登録しますって書いてあっただろ?だからってやめたりするなよ?」

 

 ひどいことをいってくる友人に、興味本位でやめた場合のことを聞いてみる。

 

「お前の黒歴史を学校中にバラす」

 

 アクタによって退路をたたれた瞬間だった。

 アクタの俺だけが知っている黒歴史というものはない。残念ながら反撃することはできない。

 よって、要求を飲むしかなかった。

 

 幸い、ゲームの進行には影響がないらしいので、問題ないと言われた。

 

 仕方ない。諦めるか・・・。

 

「リク、ついでだ。フレ登録しないか?」

 

 アクタにそういわれた。

 一応、ソシャゲやMMORPGはやったことがあるから意味はわかる。だが、VRMMOは初で、説明書にはなぜかメニューについてはログアウトの方法しか乗っていなかった。

 ちなみにログアウトがあるのは確認済みだ。

 

「登録はどうやるんだ?」

 

「メニューの中に、“コミュニティ”ってのがあるだろ?それが他のプレイヤーに関係する項目だな」

 

 アクタに言われながら、進めていくと、“フレンド”という項目があった。その中には“フレンド申請”というアイコンがあり、その中に“Akuta”と入力すると、申請することができた。

 すると、すぐに《Akutaがフレンドに登録されました》と表示された。

 

「これでいいか?」

 

「ああ、しっかり登録されたようだな」

 

「じゃあ、俺はこれで・・・」

 

 そう言って立ち去ろうとしたとき、「ちょっと待て」と呼び止められた。

 

「どうせならPT(パーティー)組んで狩りにでも行かないか?」

 

 PTか・・・。たしかにアクタはβテスターでもあり、VRMMOもよくやるらしいので、教わることは多いだろう。だが・・・

 

「いや、俺は1人やるよ。たぶんPT組んでも足を引っ張るだけだろうからな」

 

「そうか。じゃあ、スキル見せてもらってもいいか?何かアドバイスができるかもしれん」

 

 MMORPGでは普通自分の手札は他のやつには教えることがない。だがまあ、アクタなら大丈夫だろう。

 俺は「わかった」と言いながらスキルをタクにい競る。すると、タクは顔をしかめてこう言った。

 

「お前さ、なに目指してこれ選んだ?」

 

「え?なにって、補助兼生産職?」

 

「はぁ。リク、スキルの説明とか読んでないだろ」

 

「もちろん。ネタバレは嫌いだからできる限りデータは自分で集める!特に自分の使いたいやつは見ないな!」

 

「胸を張れることじゃないぞ・・・」

 

 アクタはあきれながらもこう続けた。

 

「付加魔法は上昇率がスキルレベルとInt依存だから、生産職が取ってもほとんど意味がない。そして、他の人に魔法をかけるのが、ものすごく難しい。具体的には10m+スキルレベル×1mだな。

 次に弓だが、コスパがものすごく悪い。初期でとった時にもらえる練習用の矢筒は無限に矢が出てくるが、ほとんど攻撃力がない。まともに攻撃するとしたら新しい矢を買わなきゃならん。

 調薬や隠密は生産職としたらありかもしれんが、回復魔法はPT組んだときに1人いれば十分だ。

 悪いことは言わないから、さっさとスキルを入れ換えろ。強制レベリングの手伝いならやるからさ」

 

 こういわれたが、俺は一切変えるきがなかった。その方が面白そうだからだ!

 

「悪いな。俺はこのままでいくよ。なに、これでも楽しめるようにできてるさ」

 

「わかったよ。じゃあまたな。なんか困ったことでもあったらすぐにチャットいれろよ?」

 

「ああ、そうさせてもらう。ありがとな」

 

 俺はそう言って町の外へと向かった。 俺は町の外に出ると、武器を装備していないことに気づき、メニューを操作した。

 

装備品

【武器】初心者の弓 Str+2

    初心者の矢筒 Vit+1

【頭部】ーーー

【外着】ーーー

【内着】ーーー

【腕】 ーーー

【胴体】ーーー

【腰】 ホルダーベルト Vit+1

    〔ポーション〕〔〕〔〕

【靴】 ーーー

【アクセサリー0/7】

なし

 

 全部初期装備だが、これでいいだろう。

 装備した後のステータスがこれだ。

 

Lv.1

HP 120/120

MP 110/110

 

Str 22(+2)

Vit 22(+2)

Int 22

Mind 20

Dex 22

Speed 21

 

 たいして強くはなっていないが、まあ、ないよりかはましだろう。

 装備の変更を終え、リジハマ草原の奥へと向かおうとしたその時、「ポーン」という音と共に運営からメッセージがきた。

 そのメッセージは《加速システムを起動します》というものだった。加速システムとは、リアルの時間の2倍でゲーム内時間が進むというものだ。

 

「まだ始まってなかったのか」

 

 そんなことを口にしながら、俺はリジハマ草原の奥へと向かっていった。

 

 ちなみにリジハマ草原とは、これから行くフィールドの正式名称だ。始まりの町の正式名称はリジハマの町というらしい。ただ、プレイヤーのなかでは始まりの町で通じてしまうので、その名前を使われることはあまりない。

 

 しばらくあるいていると、100mくらい先に小さな白いものが見えた。

 

 俺はその白い物体に向かって歩いていった。

 白い物体からおよそ30m位のところまで来ると、それはウサギだということが判明した。

 ウサギに少し注目していると、頭上にピンク色の逆三角形が現れた。

 頭上の逆三角形はそのキャラクターの状態を表しているらしい。

ピンク  →未発見のノンアクティブモンスター

オレンジ →未発見のアクティブモンスター

赤    →敵対中のキャラクター

青    →プレイヤー

緑    →NPC(ノンプレイヤーキャラクター)

黄緑   →イベント用NPC

紫    →PK(プレイヤーキラー)等の犯罪者プレイヤー

ということらしい。公式ホームページいわく、“動くものを見つけたら頭上の逆三角形を見ろ”だそうだ。

 このゲームでもPKは可能らしいが、犯罪者プレイヤーにはシステムから賞金がかけられ、他のプレイヤーから狙われることになるようだ。良くできたシステムである。

 

 3分ほど草むらでじっとしながらウサギを観察していたが、ウサギはずっとその場で草を食べていた。

 

  これなら射ってもバレないよな?

 

 そう思った俺は、弓に矢をつがえ、ウサギを狙い射った。

 

 

  ヒュゥッ・・・サクッ

 

 

 結果は全く当たらなかった。

 

?洋弓というわけではないし“中(あた)らなかった”になるのか?でも、和弓にも見えないしな・・・

え?どっちでもいい?そうか・・・

 

 まあとにかく、全く当たらなかった。矢はウサギから50cmほど離れた土に突き刺さり、10秒ほどで消えた。

 ウサギには矢が地面に刺さった音で気づかれてしまい、そのまま逃げられた。

 

 射程も狙いも両方が足りていなかった。

 

  仕方ない。矢はこの矢筒を使っている限りは無限に出てくるらしいし、練習するか・・・

 

 そう思った俺は、近くのさっきのウサギと同じくらい離れた木を的にして、乱射を始めるのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

アイテム説明

 

初心者ポーション

 Lv.10までHP50%回復

 Lv.11以上になるとHP10%回復

 

通貨の単位 R(ロア)

      1R=1円くらいの価値

 

初心者の弓

 Str+2 耐久値100

 非売品

 武器スキルをとった時にもらうことができる「初心者の~」シリーズの1つ

 耐久力が減ることはないが、ものすごく弱い

 

練習用の矢筒

 Vit+1 耐久値100

 非売品 譲渡不可

 残っている矢の数:無限

 初期スキルに【弓】を取得していると受けとることができる。

 「初心者の~」シリーズ同様に耐久値が減ることはないが、ものすごく弱い

 「練習用の矢」が無限に出てくる。

 

練習用の矢

 Str-90%

 非売品 譲渡不可 売却不可

 練習用の矢筒から出てくる同じ練習用の矢

 「初心者の~」シリーズ同様に耐久値が減ることはないが、ものすごく弱い




こんにちはyoshikeiです。
めんどくさかったので、ルビをつけることはしていません。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。