∞→0・ストラトス   作:さんばがらす

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今さらですが「能動的慣性相殺兵装」のときのゼロの素振り構成
ダッシュ切り→ヒッフッハ→天昇斬→ジャンプ切り

遅くなりましたが、じわです。


丙龍

 

ゼロが受けた試験は、IS学園教師と三年生のタッグとの二対一、型落ちISの使用とかなりゼロに不利な内容である。

 

だが――

 

「この人……強い!」

 

戦い始めてすぐに、真耶は驚いた。

 

地力が違いすぎるのだ。

今は、慣れない量産型ISのせいなのかどこかあらの残る操縦と数の利で真耶達が押しているように見えるが、それも時間の問題かもしれない。

 

なぜなら、ゼロは、銃口の向きと目線から射線を読み、真耶の弾丸が撃たれる前に避けている。しかも、丙龍の猛攻を裁きながら、だ。

真耶の知る限り、そんな達人じみたことが出来そうなのは織斑千冬ぐらいのものである。

 

 

陣形は丙龍が前衛で、真耶のラファールが後衛。

 

『第2.5世代(なりそこない)』ISの丙龍は、搭載された特殊装備の都合上、遠距離攻撃用の武器は、アサルトピストル一丁しか装備されていなかったが故に、この配置は必然だった。

 

 

ゼロは、玉鋼のハードポイントにつけられていた一般的な近接ブレードと、一般的なIS用大口径拳銃で戦っていた。

 

『山田教諭、最近接距離(クロスレンジ)に持ち込むために吶喊するので、アシストお願いします』

 

距離をとって仕切り直していた丙龍の生徒からの合図があった。

真耶は了解の返事をし、武器を代える。

アサルトライフルとショットガン、本当はスナイパーライフルの方が誤射が少なくて良かったのだが、ゼロ相手に狙い澄ました一撃は相性が悪いため、弾幕を張ることにした。

 

面制圧を意識した射撃でゼロの行動範囲を狭め、その隙に丙龍が突っ込む。

 

ゼロは近接ブレードを構え、徒手空拳で突撃してきた丙龍の進路上を凪ぐように斬り付けた。

吸い込まれるようにして斬撃がヒットするが、丙龍はそれを多大なシールドエネルギーを消費ながら肩で受け、刃の動きが一瞬止まった隙に、反対の手で剣の腹に掌打を当ててブレードを弾き飛ばした。

 

「龍、功、掌ッ!!」

 

そして、彼女はゼロの懐にもぐりこみ、無防備なゼロの腹部に掌底を叩き込んだ。

 

「……ッ!?」

 

ゼロは彼女の手のひらから放たれた衝撃波(・・・)をもろに受けて吹っ飛んだ。

 

この掌底の衝撃波こそが、丙龍の特殊装備にして真骨頂、そして第2.5世代(なりそこない)たるゆえんだった。

 

 

・・・・・・

本来なら、丙龍の特殊装備は、『龍砲』になるはずだった。

だが、悲しいかな当時の中国には空気で砲身を作成し、空間圧で遠距離を攻撃することが出来なかったため、急遽『龍功』という零距離で空気の衝撃波を放つのを前提とした腕部武装に路線変更し、これを『第三世代』と言い張ったのだ。

(その後、散々各国に馬鹿にされた中国政府が、大枚をはたいて技術革新をし、『龍砲』が完成、『甲龍(シェンロン)』に搭載されるのだが、これは、もう少し後の話だ。)

・・・・・・・

 

 

彼女は、追撃の手を止めない。

 

「龍功、双掌!!」

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)で吹っ飛ばされているゼロとの距離を詰め、両手を使った掌底を浴びせる。

 

とっさに腕でガードしたが、衝撃波まで殺しきれるわけはなく、ゼロはさらに吹き飛ばされ、アリーナの壁に激突した。

 

「山田教諭。後は頼みます」

 

「了解です。任されました!!」

 

牽制に徹していた真耶は一転、両手にIS用ショットガンを持ち、壁に激突していて身動きの取れなかったゼロに接近しショットガンの弾雨を浴びせる。

ショットガンの弾が切れると同時に、グレネードランチャーに持ち替え、トドメとばかりに発射した。

 

――――爆発

 

閃光と衝撃波がゼロを巻き込んで拡散し、あたりに爆風と砂煙を撒き散らした。

 

 

 

「これだけ攻撃すれば……」

 

絶対防御が発動して、シールドエネルギーを使い切ってもおかしくない。

だが、試合終了の合図は出ない。

 

「――さん。油断は禁物ですよ」

 

そのことに不信感を覚えた真耶が嗜め、二人は砂煙が晴れるのを待った。

 

 

―――一陣の風が吹き、砂煙を散らす。

 

現れたのは、傷だらけの戦士。

 

試合開始時に600あったシールドエネルギーは、残り62。

玉鋼のアーマーはそのほとんどが破壊され、もはやISの体をなしていなかったが、ゼロの瞳には、依然として静かな闘志が湛えられ、その手には、光る剣が握られていた。

 

「……そんな!?」

 

それを目にした真耶は呆然と立ちすくんでしまった。

当初、彼女は拡張領域(バススロット)に盾でも隠していて、それで防いだのだと思っていたがそうではなかった。

ISを嫌というほど学んだ彼女は、この光景を受け入れられなかった。

 

……おそらく、直撃にもかかわらず絶対防御はただの一度も(・・・・・・)発動していない。

 

そもそも絶対防御というものは、ISのスキンバリアを貫通し、なおかつ命に関わるような攻撃の場合に限り、発動するものだ。

玉鋼のスキンバリアは、打鉄のものと同程度か、ガード型ではない分それよりももっと薄い。

にもかかわらず、シールドエネルギーを半分近く削り、外装をすべて破壊してしまうような爆発や銃弾をノーガードで受けても、絶対防御は発動しない。

つまり、ゼロの命には全く別状がないということなのだ。

 

――この人は、本当に人間なのか?

 

真耶の脳裏に浮かんだ疑問は、至極当然なものだった。

 

 

「玉鋼の拡張領域(バススロット)になにを隠してるのかと思ったら……ただのエネルギーブレードか」

 

「……何か、問題でもあるのか?」

 

「いや、ない。むしろ好都合だ!!」

 

牽制の銃撃が来ないとわかった丙龍が、未だ固まっている真耶を尻目に、アサルトピストルを乱射しながら再突撃し、ゼロとの距離を詰めた。

 

玉鋼の外装が剥がれたことによって一回り小さくなったゼロは、銃撃の隙間を縫うように回避、かわせない銃弾はゼットセイバーで切り伏せていった。

 

そして、拳と剣が交錯する。

 

だが、先ほどよりも得物が軽くなったゼロの方が丙龍より早かった。

 

――神速の三段

 

実体剣のときとは違い、『受け止める』ということが出来ないエネルギー刃が一瞬で丙龍のシールドエネルギーを削った。

そして、チャージされていたゼロナックルで、なおも向かってくる丙龍を半ばクロスカウンター気味に殴り飛ばし、そこで丙龍のシールドエネルギーが尽きた。

 

「む、無念…………きゅ~」

 

絶対防御が発動し、丙龍の搭乗者は目を回して気絶した。

 

 

丙龍が落とされ、真耶は我に返る。

 

そして、油断無く銃器を構え、遠距離攻撃の手段を失ったゼロを追い詰めていく、残りシールドエネルギーの少ないゼロは、回避せざるを得ない。

 

このまま押し切れると思った矢先、何を血迷ったのかゼロは急に真耶に向かって方向転換した。

 

「自棄(やけ)でも起こしたんですか!? そんなことをしても無駄ですよ!」

 

鉛弾のカーテンに自ら突っ込む形になったゼロだったが、彼はいたって冷静だった。

 

「……シャドウダッシュ」

 

ゼロの姿がぶれ、弾幕をすり抜け、真耶に接近した。

 

踏み込みながら一閃、真耶のライフルが真っ二つになる。

 

足を止めて横薙ぎの一閃、それを一度見ていた真耶は姿勢を低くして避け、次の袈裟懸けも体を反らしてかわし、三段目は飛び退って避けた。

 

一度見ていたとは言え、三段ともかわしきった真耶は一瞬気が緩んだ。

そこを、ゼロは見逃さない。

 

――武雷突

 

剣を水平に構えた、ダッシュしながらの強烈な突きが真耶に直撃した。

 

かくして、ゼロはIS学園の採用試験に合格する。

 




丙龍のパイロットは、拙作『フィジカルな魔法少女』の登場人物「茂部このは」のかーちゃんの若葉さん(未登場)です。あしからず

もう登場しませんが、彼女はIS学園卒業後、「装備しなければ意味がない『最強』などいらぬ」と中国代表候補生を辞退し丙龍を返上、世界中を回って修行する。そして久しぶりに帰ってきた日本で「茂部」となのる青年と恋に落ち、結婚。二児の母となるが、その後の消息は不明である。
という感じで、

返上された丙龍は、その後外装を取り払ってコアを初期化、甲龍として組みなおされ、鈴のISとなる。

という後日譚ががが

ま、拙作を読んだことない方は、ただのモブだと思っていてくだされば結構です。

次回:IS学園関係者「試験に受かっても、ちょっと今教師いっぱいだから、約一年ぐらいニートしててね(ニッコリ)」

では、じわまで気長にお待ちください。

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