恋に部活に青春に。真っ当な高校生がどこにでもいるありふれた生活を送る中、部屋の掃除の際にとあるノートを見つけた。
 古ぼけていて、十年は前のものと見て間違いないだろう。
 中身は何だろうかと気軽な気持ちでページをめくると、そこには主題であろうタイトルが記されていた。
 ただ、何度も文字が消された跡があり、書き手に迷いがあるように感じた。
 白紙の上に乗った炭が消しゴムによって引き伸ばされ、質厚の濃い文字はとても十年も前にかけたとは思いづらい。
 試しに母親に電話で聞いてみたが、そんなものは知らないと一蹴された。
 義母が違うとなると、残るは義父のみなのだが、いくら急ぎで書いたとしても、達筆な義父ではこうはならないだろう。
 では、残る可能性として浮かんでくるのは――。

 昔の自分ということになるのだろうか。
 ふと自分の年齢を思い返し、このノートに書きなぐられた文字を照らし合わせると書いたのが自分とはとてもじゃないが無理があると思う。
 今から十年も前のことだ。
 その時の年齢は七歳程度。小学生に上がったばかりの子供が書けるものではない。
 ――そう、ありえない。

 自分は当時ひたすら彼女に振り回されていたのだから。
 勉強に打ち込むわけでもなく、語彙も豊富ではない。
 今の俺でさえかけない文字をどうして十年も前の俺が書けるのか。
 
 それに、一番おかしいのはタイトルだ。
 なぜかって、言うまでもなく当たり前だろう。
 どうして十年も前の俺が、英語で「運命の夜」という言葉を書けるのか。

 頭をよぎる何かを感じて外に飛び出した。
 

 
1章
  魔法使いの夜① ()
  出会い2013年04月01日(月) 03:00()
  思えば過去だった。2013年04月01日(月) 04:00()
  届かないことを願って書いた手紙2013年04月13日(土) 21:00()
  赤信号2013年05月06日(月) 22:31()
  魔眼2014年03月26日(水) 01:00()
  姉と親友と魔女2014年09月01日(月) 19:08()
  希望の光2014年12月28日(日) 18:32()
  2015年04月19日(日) 02:30()
  吐露2015年08月22日(土) 08:48()
2章 聖杯戦争編
  魔術協会2015年08月29日(土) 23:42()
  未来を見据えて2015年10月28日(水) 18:15()
  泥をかぶった男()
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