アンジュ・ヴィエルジュ *Skyblue Elements*   作:トライブ

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第6話「忘れちゃってもいいよ」

「この島は……溶けるくらい暑いわね……」

「この島だけじゃないみたいだけど……でも、マジで参るよなぁ」

 

 ソフィーナとハイネは炎天下の中を歩いていた。ギラギラと攻撃的に照り付ける日差しは、日差しというものが存在しない黒の世界出身の2人にとってはあまりに強敵だった。しかも、コンクリートの地面はたっぷりと熱を吸収し、下からの熱気は足の裏を炙るようだ。特に数か月前に来たばかりのソフィーナは、箱入りとまではいかないもののかなりのお嬢様。暑くなり始めた頃に、夏の熱気に文句を言っていた勢いはどこへやら。この『真夏』の熱気に完全敗北した彼女は、なるべくエネルギー消費をしないよう、発言さえ少なくなっていた。準備として日焼け止めクリーム塗るために1時間を要し、今でも日傘を差しているが、だからといって特段涼しくなるわけではない。白の世界の技術で何とかできないものなのかな、と益体も無い文句に花を咲かせている。

 そんな2人の今日のお供は、途中のコンビニで買ったアイスキャンディーだ。

 

「でもさ、こんな超暑い中、冷たい氷菓。ちょっと風情あるよね」

「風情ってなによ」

「こういうののこと」

「分からないわ」

「あーあ。『理深き黒魔女』には分かんないかー」

「……普段だったら怒ってるけど、今は、なんかいいわ……」

 

 ソフィーナの覇気の無さたるや、普段の調子からはまるで考えられないほどだ。今はアイスキャンディーを舐めるのに忙しいらしいが、好き嫌いが激しいワガママお嬢様な彼女に気に入ってもらえて何よりだった。

 

「溶けるの早いな……うぉっと」

「へへーん。私はエクシードで引き寄せられるから心配ないわ」

「学園の外で勝手に使っちゃダメでしょ、エクシード」

「アイスの欠片を引っ張るくらい、どうってことないわよ――って、おっと」

 

 ソフィーナのアイスの棒から、最後のひと欠片が脱落した。彼女は宣言通り、エクシードを使った。突然の落下に反応できたのは流石である。

 だが、力加減を誤った。というより、できなかった。普段と同じ、軽くものを引き寄せる。それだけだったのに。

 

 彼女のエクシードは……突如として、()()()()()

 

「う、わっ……!?」

「ちょ、ソフィーナ!」

 

 ソフィーナのエクシード《グリーディ・ハンド》は、右手に望む物体を引き寄せる力だ。リンクレベルの上昇に比例して、引き寄せることができる物体の『総重量』が増えていく。レベル2程度になれば、ハイネという人間1人を引き寄せることも可能だ。

 だが、今の彼女は――

 

「は、ハイネっ! エクシードが、制御できないっ……!」

「お、落ち着いて! 今、リンクを――!?」

 

 《グリーディ・ハンド》は、完全に暴走していた。まず、すぐ隣にいたハイネが、物凄い勢いで彼女の右腕に吸い寄せられるのを感じた。慌てるあまり、彼女を抱きしめるような形で密着してしまうが、事態はそれどころではない。

 プログレスがαドライバーとリンクすると、リンクレベルが上昇するにつれてエクシードの出力も上昇する。一方で、エクシードの制御も容易になっていくという利点もある。なのでハイネはソフィーナにエクシードを制御させるためにリンクを試みたが、彼女は突然の事態を飲み込み切れず、慌てきり、完全に(ろう)(ばい)している。心が、合わせられない――リンクできない。

 幸い、周囲に人はいない。だが《グリーディ・ハンド》は物体を引き寄せる力。周囲に向かってそれが無作為に働いてしまっているため、今の状況は、とても危険だ。

 すぐそばの街路樹が植わっている場所から土くれが飛んできて、2人に当たった。ゴミ箱に入り損ねたコーヒーの缶が飛んできて、2人に当たった。転がっていた石粒が飛んできて、2人に当たった。街路樹の小枝が折れて飛んできて、2人に当たった。プラスチック製のゴミ箱の蓋が外れて飛んできて、2人に当たった。ゴミ箱の中身の缶やペットボトルが次々と飛んできて、2人に当たった。当たった。当たった。当たった――――

 

「ソフィーナ! リンクして!」

「で、でも、全然、制御できないの!」

「リンクすれば、一緒に止められるから! 早く!」

 

 狼狽から立ち直れないソフィーナ。その間にも、周囲からどんどん物が飛んできて次々と2人に当たる。しかも、当たったものは地面に落ちることなく、()()()()だ。2人のシルエットは歪に膨れ上がっていくが、同時に収縮してもいる。その様はまるで、自重で内側へ崩れ込んでいくブラックホールのようだ。

 ハイネは、自分の皮膚に小石と空き缶がめり込むのを感じた。まずい、小石などの小さな物体は、このままだと()()()()()()()、と本能的に察する。同じことはソフィーナにも言えるだろう。とにかく飛んで来るものから彼女を守るために、ハイネを彼女をより強く抱きしめた。だが、身体の痛みは増す一方。

 ぐぐぐ……と()()()()()()生じた音をハイネは聞いた。彼女の右腕に程遠い部分――頭が、その()()が、より下へと吸い寄せられているのだ。ハイネは経験がなかったが、これは彼の身体に高いGが掛かっていることを意味している。その強さはジェットコースターの非ではない。必死に力を入れて踏ん張るが、ソフィーナを抱きしめている状況で力みすぎれば、彼女を傷つけてしまう、と判断したハイネは、上半身の力を意識的に抜いてしまった。

 それが大きな判断ミスだった。脳への血流が一気に鈍ったせいで、見ている世界が暗くなり、色を認識できなくなった。もう少しで、彼は完全に視野を喪失(ブラックアウト)してしまう――

 

「は、ハイネ!? ハイネぇッ!!」

 

 ソフィーナの泣きそうな声も、もうぼんやりとしか聞こえない。その視界の中で、彼女の右腕に引き寄せられた自動販売機が、倒れてくる――――

 

 

「――――そ こ ま で な の だ !!!!――――」

 

 

 突如、甲高い大音声と、キィィィィン、という金属音が2人の耳を貫いた。それと同時に、身体を襲っていた強力な力が、完全に消失した。それを認識した瞬間、ハイネの身体から完全に力が抜け、地面に倒れてしまった。意識はまだぼんやりとしているが、頭が血流を取り戻して熱くなるのを感じる。

 

「ハイネ! ハイネっ!」

「だ、だいじょう、ぶ……」

 

 まだ血流が戻り切っていないからか、呂律が回らない。飛んできたもので散々汚れてしまったのに、それには全く気付かず涙を流しながら介抱してくれるソフィーナの顔に、上手く焦点を合わせることもできない。

 幸いにして、石粒が身体を貫通することはなかったようだ。しかし、大きすぎる力に(さら)され続けたせいか、身体中がひび割れるように痛んだ。

 そんな2人を見下ろす人物がいた。

 

「大丈夫なものか、間抜けども」

 

 先ほどの声の主だ。頭だけそちらの方を向けると、小学生と見紛うほど小柄な少女が腰に手を当てて、プンスカとしかめっ面をしていた。

 

「て、テオドーチェ、さん――」

「全く。ここ最近はただでさえエクシードの暴走事故が多いというのに。余計な仕事を増やしてくれるのだ!」

「ご、ごめんなさい……」

 

 可愛らしい声で怒りを表現する彼女の名は、テオドーチェ・テルマギア。青蘭庁・青蘭学園運営部・エクシード管理課の長を務める、強力なプログレスにして魔女だ。魔族であることを示す2本の角に、金髪を巻き付けるようにツインテールにしている。外見だけなら本当に10代前半の少女だ。青蘭に3年住んでいるハイネは、彼女からエクシードについて教えてもらったことが何度かあるため、ある種の顔馴染みだった。

 そんな彼女は現魔女王に仕える、千年近くの時を生きる魔族でもあった。その名だけ、ソフィーナは知っている。

 

「貴女が……テオドーチェ・テルマギアなの?」

「ソフィーナ・アルハゼンか。主から面倒を見ろと手紙が来たが、こちらはこちらの仕事が忙しいのだ! しかし、エクシードを暴走させるとは……この時期だから仕方ないと言えば仕方ないが、学園の外でエクシードを使用したのは、感心しないのだ!」

「十二杖候補の……」

「人の話を聞くのだ! ……確かにテオは候補なのだ! しかし、ただの候補ではない! テオはエクシード管理課の仕事が忙しすぎるから、エヴァーズに杖を任せているのだ! 本来ならばあの杖の黒い方――『審黒解杖クロスロード』はテオが管理しているはずだったのだ!」

「でも貴女、自分から辞退したって……」

「それはそうなのだ! 仕事が忙しいといったのだ! 原因は、オマエみたいに注意散漫なヤツが、そこら中でエクシードを暴走させるからなのだ! 才能あるのは結構なのだが、暴走すれば危険も倍なのだ! オマエたちは今、まさに死にかけていたのだぞ!」

「わ、分かったわよ……気を付けます。ごめんなさい」

 

 ソフィーナにしては珍しく殊勝に謝った。流石に罪の意識が強いのだろう。それを聞いてもテオドーチェはまだしかめっ面のままだったが、フン! と鼻を鳴らすと、手をパンと叩いた。すると、状況の復元が始まる。倒れかけた自動販売機が元に戻る。そこら中に散らばった空き缶やペットボトルが、同じく転がっていたゴミ箱の中に次々と入っていく。散乱した石粒や土くれも、元あった場所に飛んで行った。

 それと同時に、ハイネとソフィーナの肌や髪、服から汚れが消えていった。(かしわ)()ひとつでここまでやってのけるのは、彼女の実力の高さゆえだろう。

 そんな光景を背に、テオドーチェは(かが)んで、チッチッと舌を鳴らしながらハイネの顔を覗き込んだ。

 

「ハイネ。大丈夫なのだ?」

「え、ええ……まだちょっと、朦朧としてますけど」

「ソフィーナのエクシードによる、疑似的な高Gのせいなのだ。脳に血が足りていない。脚にも力が働いていた故、血流不足による痺れもあるだろう。少しは治しているのだが……どうなのだ?」

「あぁ……ちょっと良くなったような」

「そうだろう。だが、しばらく横になって休むのだ。そこを少し行ったところに……図書館があるだろう? 事情はテオから話しておく。涼しいところで回復に努めるのだ。よいな?」

「はい。ありがとうございます」

「うむ、よろしい!」

 

 テオドーチェは歯を見せて笑うと、振り返って図書館の方に行こうとした。それを、ソフィーナが呼び止める。

 

「ね、ねえ、テオドーチェ……さん」

「何なのだ?」

「どうやってアレを止めたの?」

「ふむ。テオのエクシード《アンセスター・アンセム》は、音と共に事象を操るものなのだ。こんな風に――」

 

 にやりと笑ったテオドーチェは、地面に転がりっぱなしだった空き缶を見つけると、それを見つめながら、タン、と音を立ててつま先で地面を叩いた。すると空き缶は真下から弾かれたように飛ばされ、がらん、と音を立ててゴミ箱の中に納まった。

 

「音さえあれば何でもできるのだ。分かったら、もう軽々にエクシードを使おうとしないことなのだ。テオはこの力と数百年付き合っている故、もう慣れているが、ソフィーナはまだまだ半人前もいいところ。大人しくしておくのだ」

「……はい」

「あと、オマエたちは、後日ブルーミングバトルに出場するのだろう? こんなところで無駄に傷ついていないで、練習に励むのだ。期待しているのだからな。よいな?」

 

 それだけ言うと今度こそテオドーチェは、答えを聞くことなく指を鳴らして、その場から掻き消えた。

 残されたハイネとソフィーナは少しの間呆然としていたが、やがてハイネが呟いた。

 

「……暑いね」

「……そうね。行きましょう。肩を貸すわ」

 

 

…………

 

 

 ハイネとソフィーナがエクシードを暴走させたのと同じ時間帯――。

 

「あっついねぇ~」

「そうだねぇ~」

 

 青蘭島の、海岸線に程近い地点を、美海と兎莉子が並んで歩いていた。2人ともお揃いの麦わら帽子をかぶっており、とても楽しそうだ。それもそのはず、今から行くのは青蘭島東にある岬。そこに今、イルカの群れが集まっているという。2人はそのイルカたちと遊ぶ予定なのだ。

 普通なら、野生のイルカと遊ぶといっても、せいぜい身体を撫でさせてくれるかどうかといったところ。しかし『動物とコミュニケーションを取ることができる』というエクシードを持っている兎莉子は別。その力を使って、今まで多くの生き物と絆を結び、助けてきた。それに彼女は、そうでなくとも動物から好かれやすい。この間1人の時のイルカの群れを見つけ、今日遊ぶ『約束』をしたのだという。

 

「でもすごいよねー。イルカさんたちと、約束しちゃうなんて!」

「ありがとう。でもイルカって、とっても賢い生き物だから。数とか普通に覚えちゃうし。何日後っていうのも『太陽が何回昇ったら』って教えてあげれば、分かってくれるんだ」

「へぇ~、太陽かぁ。そんなこと分かるんだ……」

「太陽って、意外といろんな生き物が認識してるんだよ。本能の場合も、知識の場合もあるんだけどね」

 

 そんな生物雑学を披露しながら、2人は海岸線の歩道を歩いていく。途中、数人の人とすれ違った。飼っている犬を散歩させているお姉さん、釣り具を自転車に括り付けたおじさん、機動隊の1チーム、ランニング中の女の子――

 

「ん?」

「どうしたの、美海ちゃん?」

 

 今すれ違った、ランニング中の女の子が、肩に何か乗せていた気がした。気になった美海が、来た道を振り向いてよく見てみると、遠ざかる女の子の肩には白く小さな猫のようなシルエットが乗っていた。しかし、ただの猫ではない。普通の猫には無い部分があった。羽である。つまりあれは

 

(ルクス――!?)

 

 ルクスとは、この青蘭島に住み着いている、謎の生物だ。しなやかな体に長い耳という、猫とウサギをかけ合わせたような外見に、身体と同じくらいの大きさの、鳥のような羽が一対生えている。この羽は実際に飛行に使えるらしい。全身を覆う体毛は白く、額には青い宝石のようなものが一粒埋まっている。そして何より特徴的なのは、とても臆病で近づくと『消えてしまう』ことと、カメラに映らないということだ。これは彼らが、霊獣、あるいは幻想生物と呼ばれる存在だかららしい。

 美海はルクスの外見に惚れ込んでいて、いつか直接触ってみたいと思っていた。だが、彼らは本当に臆病なので、近づこうとしただけでびっくりして、慌てて飛びながら消えてしまう。おかげで一度も触ったことはないのだが、そんな存在を、肩に乗せているとは、いったいどういうことだろう? もしかして、ぬいぐるみとか? それでも、同じルクス好きとして話が合いそう。

 

「あの、すみませーーーん!!」

 

 美海は自分が認識するよりも前に、その少女を呼び止めた。すると彼女は立ち止まり、ゆっくりと2人の方を向いた。

 

 青い。まずそう思った。

 

 何が青いかというと、その瞳だ。吸い込まれそうなほど青い、深い海のような色の瞳に、一瞬で心の奥底まで見通された気がした。

 その少女は、とても小柄だった。美海たちが暮らす満月寮で一番小さな子、(ふる)()(じゅ)()と同じくらいの体格だ。青いキャップをかぶっており、後ろから1つに纏めた艶やかな黒髪が風に靡いている。着ているものはごく普通のスポーツウェアとスパッツ、背中に背負っているナップサックという動きやすい格好で、まさにスポーツ少女、といった感じ。疲れているような様子はなく、2人を探るような目でこちらを見ていた。

 2人の視線に気付いたルクスが、少女の肩の上から慌てて背後に隠れた。だが、いつもみたいに消えたりはしない。

 

「……なぁに?」

 

 鈴の鳴るような、綺麗な声だった。耳から脳に抜けていくような、聞き心地の良い声だ。その感覚に妙な快感を覚えながらも、美海は問いかけた。

 

「あの、ルクスちゃん、肩に乗せてたから、なんでかなーって思って……」

「……好きなの?」

「うん! とっても!」

「……そう。ね、隠れなくていいよ」

 

 少女が肩越しに背後に隠れたルクスにそう言うと、おずおずと顔だけ肩から覗かせた。その光景すら可愛らしくて、兎莉子はくすっと笑った。

 

「ねぇ、大丈夫だよ。傷つけたりしないよ」

 

 兎莉子がそう声を掛けると、ルクスはきょろきょろと周りを見渡してから、そっと少女の肩に登ってきた。その光景を見て、少女の表情が初めて変わった。

 

「……どうして?」

「あの、私、動物とお話しできるエクシードを持ってて……」

「……なるほど」

 

 少女は得心したように頷くと、美海と兎莉子の方へ歩いてきた。肩を軽く揺さぶると、ルクスがそろそろと彼女の腕を降りてくる。

 

「……ちょっとだけ、撫でてみる?」

「え、いいの!?」

「大声出さないで。臆病なんだから。指先で背中を、ちょっとだけ、ね」

「う、うん。わかったよ」

 

 美海は小声で返事をすると、少女の手の平まで降りてきたルクスの背中に手を伸ばした。これほど至近距離で見るのは初めてだ。見れば見るほど繊細な毛並みに、少女と同じく吸い込まれそうなほど青い目をしている。指先でそっと触れた背中は、絹のように滑らかな肌触り。それと同時に、そのルクスの震えも伝わってきた。生きていることの、震えが。

 

「――生きてるんだ」

「そう思ってなかったのは、消えちゃうから?」

「う、うん」

「それは違う。彼らは生きてる。こんな風に」

 

 少女の囁くような声が、脳に染み渡る。撫でていると、ルクスの震えが徐々に収まってきた。安心してくれたのだろうか……だとしたらとても嬉しかった。

 

「貴女、日向美海さん、ね。そっちは、生嶋兎莉子さん」

「あ、知ってるんだ?」

「ええ。有名以上に、気になってた」

「わ、私のことも?」

「勿論。美海さんの、近くにいたから」

「え、私の?」

「はい、ここまで」

 

 少女がそう呟くと、ルクスはたたたっと彼女の腕を駆け上り、その肩に乗った。もう警戒はしていないようだ。

 

「2人とも、自分の力を、過信しないでね」

「え、それってどういう――」

「じゃあね」

 

 少女は後ろを向くと、ランニングを再開させた。それでもせめて、と美海は後ろ姿に声を掛ける。

 

「ね、ねぇ、君の名前、教えて――!」

 

 少女はまた立ち止まり、顔だけ振り向くと、その名を囁いた。

 

「私の名前は――サファイア。忘れちゃってもいいよ」

 

 少女――サファイアは今度こそランニングを再開し、そのうち見えなくなってしまった。

 

「あの子……サファイアちゃん? 何だったんだろう……」

「エクシードを過信するな、って言ってたよね。どういうことなのかな……」

 

 2人は顔を見合わせて、サファイアの言葉の意味を考えながら、しばらくそこに佇んでいた。

 

 しかし、そこは年頃の少女。その30分後には浅瀬で仲良くイルカと戯れていた。

 

 


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