アンジュ・ヴィエルジュ *Skyblue Elements*   作:トライブ

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第7話「楽しい事イチバン!って信条で生きてますんで」

 2年生に上がった元1年生達は、普通の学校よりも生徒の数が少ないため、クラス替えの発表に一喜一憂することもなく、決められた新教室へと集まった。

「なんだよ冬吾、そのシケたツラは。昨日なんかあったのか?」

「……まあ、少しね。そっちはどうだったの?」

「一応、人数は集まった感じかな。今日エクシードを試してみるつもり」

「そう、よかったじゃない」

 自分の不幸をとりあえず置いておいて笑顔になれる冬吾はやっぱすげえな、と春樹は思う。

 クラスの様子は以前のまま……ではなく、少し違っている。去年度はどことなく寂しげだったプログレスの表情が、目に見えて明るくなっていたり。

「アウロラ、やけに嬉しそうだな」

「あら、春樹くんに冬吾くん。お久しぶりね」

 声を掛けられた少女の名前はアウロラ。赤の世界出身のお嬢様で、穏やかで包容力のある性格は、同性からも、アウロラは女神か天使! と評されていた。制服を着ていても分かるスタイルの良さは直視するのを躊躇うレベルで、そういう理由もあってか、この学年の『二大頼れるお姉さまプログレス』の内の1人として知られていた。

「やっぱり、分かっちゃうかしら? そうなの。春休み中にいい事があってね」

「どうしたの?」

 自己犠牲の精神が強いアウロラは、どうしても自分より友人の方を優先してしまうため、滅多に自分のことを喋らない。そのアウロラが喜んでいる理由は、質問をした冬吾やとなりで聞いている春樹でなくとも気になるところだ。

「あのね、私にぴったりのαドライバーが見つかったの」

 蕩けるような甘い声でそう言ったアウロラは、見ているこっちまで嬉しくなりそうなほど幸せいっぱいな表情を浮かべた。

「え、誰? もしかして俊太?」

「あら、シュンくんを知ってるの? ええ、そう。彼と出会って……ひと目で理解したわ」

 アウロラは胸に手を当てて目を閉じ、噛み締めるように言った。

 アウロラは、その万人に好かれる性格と裏腹に、極端にαドライバーとのリンク率が低かった。Ωフレームとの話だったが、去年測ってみたところ、同じΩフレーマーの春樹とすらリンク率が30%に達しなかったのだ。当時の3年生のαドライバーとも試してみたが、そちらも同じような結果だったという。

 周りで今の話を聞いていたプログレス達は「えー、アウロラαドライバー見つかったんだ!」「おめでとー!」「いいなぁ。ねえアウロラ、私もその子と試してみていい?」と好意的な印象。

 そして、とびきりの反応を示したのが、

「アウロラーっ! よかったじゃないですか!」

「ユフィ! おかげさまで、本当にありがとう」

 アウロラの背後から彼女に抱きついたのは、白の世界出身のアンドロイド・ユーフィリア。通称『ユフィ』だ。普段は真面目でミステリアス、なんとなく掴めない性格だが、なんだかんだ言って楽しいことが大好きだったりユーモアがあったり時々ドジッたりと、親しみやすい少女である。彼女もまた抜群のプロポーションの持ち主で、『二大頼れるお姉さまプログレス』のもう片翼が彼女だった。また、冬吾のチームに所属している1名でもある。……元々は『お姉さまプログレス』は、もうひとりいたのだが。

「結局、自分で見つけちゃったわ。ごめんなさい、ユフィの努力を無駄にしちゃって……」

「そんなことありません! アウロラにαドライバーが見つかって、私も本当に嬉しいです!」

 申し訳なさそうに謝るアウロラに対し、ユーフィリアはちょっと本気で怒っているようだ。今更そんなことに気を遣うな、ということなのだろう。

 ユーフィリアもまた多くのプログレスの困り事を助けており、アウロラと共によく頼られているが、去年から殊更アウロラを目にかけており、彼女のαドライバーを探すために脳波サンプルを持って島中どころか諸島中のαドライバーの元を巡っていたりした。そのこともあって、アウロラは誰よりもユーフィリアを信頼し、ユーフィリアが困っていたとき、何よりも優先して事に当たっていた。それでも、2人とも他のプログレスの悩み相談なども(ないがし)ろにしていなかったのだから、彼女らの器量の良さが顕れているといってもいいだろう。

 親友、なのだ。2人は。

 しかし……目の前で巨乳美少女同士が抱き合っている光景というのは、色々と来るものがあった。胸の奥とか、その他の場所に。

「しかし、俊太ねえ……どうなの、関係は」

 若干奥手なところがあるその少年のことを思い浮かべながら春樹が尋ねると、案の定アウロラは表情を曇らせた。

「それが……イマイチ乗ってくれなくて、困ってるの。一緒に帰ろうって言っても、恥ずかしがっちゃって」

「はー……うちも他人(ひと)のこと言えた節じゃねえけど、どこも結構苦労してんだな……」

「今日もめげずにトライしてみるつもりよ。ねえ、ユフィ。なにかいい案はないかしら? 男の子を誘うのって初めてだから……」

「そう、ですね……寧ろ、向こうに合わせてみるのはどうでしょうか?」

「そうね! 彼、剣道部に入るって言っていたから、私も付き添いで行ってみることにするわ」

 無邪気なアウロラとユーフィリアの様子に顔を見合わせて苦笑した春樹と冬吾。その笑みには、どちらにも隠しきれない疲れが見えた。

 昨日カフェテリアで別れてからの時間がやけに長く感じていたのは、お互い様だったようだ。

 

…………

 

「何、お前ら、ブルーミングバトルに出るの?」

 セニアの測定が終わった後、冬吾はデルタに事情を話すと、彼は目を丸くして言った。

「はい。それで、セニアの装備が間に合わないのかと……」

「ははぁ……なるほどね。そうか……」

 セニア達も上階に上がり、デルタの研究室に全員が揃っていた。

 完全に初耳だったらしく、デルタは腕組みして考え込む。そこにミハイルが続けた。

「デルタ。設計図はできてるんだろう? だったら私も協力する。どうにかして間に合わせてやりたい」

「いや、それはごもっともだ。だけど、今回ばっかりは無理(・・)だ」

 顔を上げたデルタは、きっぱりとそう言い切った。しかし、ミハイルは諦めない。

「おいおい、白の革新者(ホワイト・イノベーター)が言ってくれるじゃないか。その装備はお前に『禁句』を言わせるほど難解な相手なのか?」

 信頼しているが故に、嫌味のように言ったミハイルだが、対するデルタは至って真剣だ。

「知識と作業ならそうだな。無理ってことはないだろ。だけど、今回の相手は材料(・・)時間(・・)だ。流石の俺でも、誤魔化せない」

「何……?」

 眉をひそめるミハイル。デルタはニーアに指示して、背後のモニターにセニアの装備の設計図を映し出させた。

 途端に、その場にいるデルタとセニア以外の全員が怪訝そうな表情になった。冬吾とユーフィリア、テルル、ナナは、なんだかんだとデルタの手助けを多くしており、彼が描いた装備の設計図を見ることも多かった。腕部装甲と表示されているからには、いかにも腕っぽい形の装備なのだろうと全員が思っていた。特に冬吾など、現在それを作成している最中である。

 しかし、目の前に表示されたそれは、手の部分を除くと、数枚の金属板だけだった。記憶のどこを探っても、対応する知識が出てこない。

 セニアの武装は、今までの装備とは全く異なるものだったのだ。

「セニアの装備は、俺が今まで作ってきたものとは全く異なる概念のもとに設計図を描いた。ニーア、サンプルを持って来い」

了解しました(イエス・サー)

 デルタがニーアに呼びかけると、背後で箒を持って部屋の掃除をしていたキャタピラー付きのロボットアームがキュルキュルと音を立てながら室外に出て行った。

 カタン、と、放り出された箒が音を立てた。

「この装備はな、非常に特殊な金属を使って作られている。これは格納状態で、展開すると、こうなる」

 デルタがモニターを操作すると、表示されていた金属板はそれぞれがなめらかに曲がり(・・・)、手の部分と繋がり――腕の形を成した。

 流石にミハイルが声を上げた。

「なんだこれは。常温で自在に曲がる金属だと? こんなものが実際に出来るとでも?」

「ああ、出来る。ほれ」

 キャタピラーのキュルキュル音が近づいてきたかと思うと、入口からキャタピラー付きロボットアームが帰ってきた。そのアームは、薄い金属板を握っている。

「これが、その金属だ。見てろ」

 デルタはポケットから何かの装置を取り出し、同時に金属板を机の上に置いた。全員が息を飲んで見守る中、デルタは装置を金属板に近づけ、ボタンを押した。ピリッ、という小さな音がして――金属板はくるりと曲がり(・・・)、輪っかの形になった。

「これは……」

 ミハイルが絶句する中、デルタは口を開いた。

「黒の世界と赤の世界で採れた特殊な、魔力を含む(・・・・・)鉱石の合金だ。電気信号を与えると、プログラムされた通りの形に変形するようになっている。これを使えば、大きさを減らせる。で、四六式乙型亜空間連結機構(ブルム・エクス・マキナ)は、四六式甲型亜空間連結機構(クロス・エクス・マキナ)と同じで、格納できる装備の大きさに制限があるんだろ? 本来ならこの腕1本でレベル2領域に入れなきゃいけないけど、この形なら2本を纏めてレベル2に入れられる」

「なるほどな……じゃあ、お前が「相手」と言ったのは……」

「そうだ。この金属を作るために必要な素材となる金属(・・・・・・・)の納品が4週間後(・・・・)なんだよ。産出は既に終わっているようなんだが……最近発見された金属ってことで、錬成にまだまだ時間がかかるんだってよ。それこそ、この質量を錬成するのに3週間とかかかってるんだぜ。まあ、はっきり言って絶対に間に合わないわな」

 デルタが手元の装置を操作して、ピリッという音がするたびに、金属板はねじれたり、また丸まったり、と繰り返し形を変え、最後には元の板状に戻った。

 それを見ていた、今まで沈黙していたセニアが口を開く。

「つまり、セニアの装備が間に合わないために、セニアはマスターのお役に立てない、ということでいいのでしょうか」

 その声は、鈴が鳴る、というよりかは、微かに鈴が震える、と表現したほうがいいような声音だった。

 ――セニア、恐がってる(・・・・・)のか?

 しかし、デルタはそれに気づいてかそうでないのか、セニアの言葉を即断する。

「いや、旧型装備を使えば十分に戦えるだろう。ただし、さっき言ったように旧型装備は四六式乙型亜空間連結機構(ブルム・エクス・マキナ)の仕様上、格納効率は悪くなるが……」

「構いません」

 セニアの口調は、強い。それを本人は、果たして自覚しているのだろうか。

「ならそうしよう。セニアのデータは既に取ったから、それに合わせて一式用意する。明日以降にもう1回おいで」

「了解しました、マスター・デルタ」

「あと、その時にもう1回測定させてな。お前さっき、プロテクト完全に解いてなかったでしょ。エクシードのレベル5領域が見えず終いだったから、そこをな」

 デルタがいちゃもんをつけるように言うと、セニアは平然と答えた。

「解ける部分は完全に解きました。あの部分のプロテクト及びそれ以降の領域へのアクセス権限は、セニアにはありません(・・・・・・・・・・)

「なんだと? じゃあミハイルか?」

「いや、初耳だぞ私は。どういうことだ」

「つまりだな……」

 ミハイルと談義モードに入るデルタ。冬吾は驚きっぱなしで、終始言葉を発せなかった。

 ――この人は、まだまだ途上(・・)なんだ……。

 あまりの巨大な才に圧倒されている冬吾の横で、ユーフィリアは、心配そうな目でデルタを見ていた。

 彼女の手が無意識に掴んでいた冬吾の制服の裾を、ぎゅっと握り締めた。

 

 ふと、耳にデルタとミハイルのやり取りが飛び込んできた。

「お前なら、材料と時間もどうにか出来そうだけどな……」

「自分の手の届かない場所の事まで変えようとするのは、傲慢極まるってもんだろ」

「つまり、どういうことだ」

「僕は拳銃じゃないってことさ」

 

 

…………

 

 放課後。昼休みのうちにコロシアムの使用許可を得た春樹たちは、そこに集結していた。

「いい? 今日はちょっとリンクとエクシードを試すだけだからね」

「分かってま~す」

 一応釘を刺しておいたが、美海は上機嫌だ。他の3人――琉花・忍・兎莉子も、心なしか気合が入っているように見える。

「広いなぁ。この白い枠線の中がバトルフィールド?」

「そうだよ。めいっぱい使っていいからね」

「でも、サッカーコート並みの大きさでゴザルな。この中で4対4は、少し余るのでは?」

「この世界の感覚だとそうだけど、アンドロイドとかの機動力はすごいからね。去年なんか、勢い余ってフィールドから飛びてちゃってた子なんかいたし」

 コロシアムは、普段も別の用途に使えるよう、陸上競技場のような形をしていた。サッカーコートの周りにトラックを敷いたような形だ。客席も、そこらのスタジアムに負けないくらいの収容人数を誇る。ブルーミングバトルが行われるときは、ここが満席になるほどだ。

 そもそもブルーミングバトルとは――バトルフィールド内のプログレス最大4人が、同じく相手のプログレス最大4人と闘って勝ち負けを競うという、多人数対多人数のプロレスのようなものだ。しかし、通常のそれと決定的に異なる点、それが、プログレスの受ける痛覚をフィールド外で指揮するαドライバーがすべて引き受け、そのαドライバーが倒れれば負け、というところだ。ややもすると、αドライバーは非常に損な役回りになる。実際に戦闘に参加しないにも関わらず、痛みだけ引き受けて、倒れればそこでゲームが終わってしまうのだから。

 春樹の手元には、実際のブルーミングバトルで使用するデータパッドが握られている。先程、教師から借りてきたものだ。これを使うのは初めてだが、基本的な操作は一応教わっておいた。その際、絶対に壊すなと念押しされた。

 バトルに参加しているプログレスの情報は、全てここに表示される。相手側のプログレスの情報も、見れる部分が限定されるとは言え重要な情報だ。

「まずは……ファーストリンクからだな。よし、みんな、手を出して」

「わ、私も?」

「バトルには出ないけど、一応ね?」

 戸惑う兎莉子に優しく声を掛ける。

 去年、何回かやったように。差し出されたみんなの手に、自分の手を重ねる。一瞬の躊躇の末、目を閉じて集中。

「みんな……俺に合わせて(・・・・)

 春樹がそう言うと、みんなは無言で頷き、春樹と同じように目を閉じた。

 まだ、よくわからない。でも脳波を――心を重ね合わせることが、リンクすることだ。

 リンク率は高いのに、あの4人(・・・・)よりうっすらとしか繋がらない。それでも、少しずつわかってくる。

 琉花を感じる。興奮しているのか、高ぶる胸の鼓動が、伝わってくる。

 忍を感じる。肝が据わっているのか、朝凪のような心の揺れが、伝わってくる。

 兎莉子を感じる。自分と同じように躊躇っているのか、感情の震えが、伝わってくる。

 美海を感じる。自信の裏に小さな恐れを隠しているのか、焼け付くような魂の声が、伝わってくる。

 みんなは、一体自分をどういうふうに感じているんだろう。

 そうして、春樹と4人のプログレスは繋がった(リンクした)

 目を開けると、全員が全員、何やら顔を赤らめている。そういえばあの4人と最初にリンクした時もそうだったな、と思い出した。曰く、内側から昇ってくるエクシードの疼き(・・)が、否応にも興奮させるのだという。

「――ッはぁーー! え? もうオッケー?」

 琉花が、どうやらずっと止めていたらしい息を一気に吐き出した。

「うん、大丈夫。ほら」

 春樹は左手に持っていたデータパッドを見せる。そこには、今リンクした4人の情報が載っていた。

「わぁ、すごい! テレビで見たことあるよ、これ!」

「これでリンクに応える、でゴザったか?」

「そう。じゃ、これつけてバトルフィールドの中に入って」

 春樹は4人に、耳に取り付けるインカムを渡す。そして自身は、バトルフィールドの外にある半径1メートル程度の円でできた『αドライバーゾーン』、いかなるエクシードの干渉も防ぐ、αドライバー専用のゾーンに入った。このゾーンの中で2本足で立っていないと判定されれば、ゲームに敗北する。

 全員がサッカーコート大のバトルフィールドに入ったのを確認してから、インカムでフィールド外で状況を見ている教師にお願いをし、実際のブルーミングバトルと同じようにフィールドを形成してもらった。同時に、春樹の足元から細長い棒が、腰の高さまでせり上がってきた。そこにデータパッドをセットすることが、準備完了を意味する。

 プログレスがαドライバーとリンクすると、自然とエクシードのレベルが――一部の例外プログレスを除き――最大4まで上がっていく。このレベルは特殊な装置で測ることができる。実際のレベルは時間と共に上がっていき、それに対応するようにエクシードも緩やかに開放されていくものだが、ブルーミングバトルはあくまでゲームなので、レベルの上昇とエクシードの開放がきっちりと管理されている。現在、データパッド上には4人を表すアイコンが表示されており、それぞれに『レベル0』という表記、そしてその周りにゲージがある。このゲージは時間経過で伸びていき、満タンになるとレベルが1上昇するというものだった。いわゆる、アナログとデジタルということだ。

「じゃあ、みんな。セカンドリンクを要求して。『レベル上げたい!』とか思えばいいから」

 了解を表す言葉が4人分帰ってくる。それに遅れて、4人のアイコンの下に《2nd Link》というボタンアイコンが出てきた。データパッドに触るのは初めてなので、この表示を生で見るのも当然初めてである。成り行き任せとはいえ、こちらも気が高ぶってきた。

 たった今形成された、バトルフィールドを囲う結界には、エクシードが外部に漏れないようにする効果があるが、それ以外にも音声を遮断する効果がある。なので、αドライバーとプログレスはインカムを使ってやり取りをする。

「じゃあ、美海と琉花から行こうか。セカンドリンクするよ」

『わかったよー!』

『よっしゃ、頼むぜー!』

 春樹は4人分のセカンドリンク応答用のボタンのうち、美海と琉花のアイコンの下にあるものを押した。

 ブルーミングバトルにおけるリンクには数種類あり、1つ目が『ファーストリンク』。バトルに参加する自分のプログレス全員と結ぶリンクだ。このリンクは機械によって固定され、バトルが終わるか意識を失わないと切れない。『バトルの参加』を意味するリンクだ。

 そして2つ目が『セカンドリンク』。基本的にレベルの上昇速度はリンク率に依存する。このリンクはバトルフィールド内にいるプログレス最大2人までと結ぶことができ、レベルの上昇速度を2倍にする効果を持つ。これによってレベルをすぐに上昇させ、高いレベルのエクシードを扱えるようにする、というのが、ブルーミングバトルの基本戦術だ。また、2本のセカンドリンクを1人のプログレスと繋いだ場合、そのプログレスのレベル上昇速度は通常の3倍になる。

 リンク率が低めのプログレスと積極的につないで、平均的にレベルを上げていくという戦術も取れるが、リンク率が高いプログレスと二重に繋いで、一気にレベルを上昇させて早い段階から攻め始める、という戦法もある。昨晩、ブルーミングバトルの記録映像を動画サイトで漁って見てみたりもしてみたが、多彩な戦術同士がぶつかり合う様は、やっぱり見ていて面白かった。しかし今回は面白いだけでは済まない。自分が戦略を練らなければいけないのだから。

 相手側のプログレスに関しては、現在のレベルと、誰とどのリンクを結んでいるか、という情報のみがデータパッドに表示される。次のレベルまでどのくらいか、という情報は、一部の例外を除き見ることができない。

 美海と琉花のリンク率の差は10%以上ある。そして、美海のレベル上昇速度は目を見張るほど早い。リンク率がほぼ100%に近い美海は、通常ならレベルが1上昇するのに16秒弱かかる。セカンドリンクを結んでいれば、それの倍、8秒程でレベルが上がってしまうのだ。

 実際のゲームでは、レベルは4で上昇が止まる。反対に言えば、レベル4が主戦力ということになる。この主戦力に、セカンドリンクを1本繋いでやった美海は、約30秒でなれてしまう。記録映像では、お互いにレベル4のプログレスが2人ほど登場してからが本番で、そこまで行くのに大体1分といったところだったが、30秒で美海1人を出せ、尚且つその間もう1人とセカンドリンクを結ぶことが出来るのだ。現に、レベルをガンガン伸ばしていっている美海の横で、琉花のレベルも上昇していっているのだ。美海より遅いとは言え、それでも10秒くらいで1レベル上昇という速度で上がっている。

『わぁ……すごい! なんか、体のそこから力が沸き上がってくるみたいだよ! ね、琉花ちゃん!』

『ホントすごい……! なにこれ。今だったら凍らせられるかも……ねね、シノ。水遁の術やってよ! 昨日できるよーつってたじゃん』

『仕方ないでゴザルなぁ。では……いざっ!』

 バトルフィールド内では、忍が手印を結んで水を大量に発生させ、それを琉花がまるごと浮かしている。そして、

『えいっ! 凍れ!』

 水の塊に手のひらを向けて力を込める。……が、

『あれ? わわ、うわっぷ!』

『きゃあっ!』

 水は凍らず、更に凍らせようとした際にエクシードによる支えを一時的に失ってしまったのか、じゃばーん、とそのまま琉花に落ちてきた。その勢いで、近くにいた残りの3人も水流の被害に。その衝撃が、若干春樹にも逆流する。軽いが4人分なので、ちょっと顔をしかめる程度には痛かった。特に、頭からモロに食らった琉花の分が。

『うぅ~……びしょ濡れです』

『ゴメンゴメン! イケると思ったんだよ! ほら、こっちはうまくいくから!』

 地面に飛び散った水分をエクシードでかき集めて、再び大きな塊にしてみせる琉花。しかし、4人ともびしょびしょに濡れてしまった。

「琉花、αリンクしてみようか。先生、αリンクってどうやって結べばいいんですか?」

 インカムを伝って、『『エクシード使いたい!』ってかんじでいいんじゃない?』という曖昧な答えが返ってきた。それを聞いた琉花は、むむむと春樹に向かって念を飛ばした。すると、先ほどのセカンドリンクのボタンアイコンの下に《α Link》というボタンアイコンが現れた。他の3人も真似して送ってきたので、それも4つに増える。春樹は琉花のアイコンの下のボタンを押した。

 ブルーミングバトルにおいて複数あるリンクの種類。その3つ目が『αリンク』だ。これを結ぶと、そのレベルに応じた本来のエクシードを開放できるようになるものである。多用できれば当然強いが、デメリットもある。これを結んでいる間は、ファーストリンク以外のリンクが使えず、また結ぶためには絶対に5秒かかる。記録映像を見た限りでは、大体のチームが、メンバーのレベルの上昇が十分に済んでからαリンクを結んで攻撃に転じていたが、一部の試合では、早々にレベルを上げ切った1人のプログレスと繋いで速攻戦術を立てていた試合もあった。

 5秒間の静寂の末、レベルが4まで上がりきった琉花とαリンクが繋がる。すると琉花は、美海が春樹とのリンクテストを行った時のように目を開き、呆然と宙を見上げた。春樹もまた、胸が熱くなるのを感じる。まるで心が熱い液体で満たされるかのような、誰かと繋がる(リンクする)時の、独特の感覚。

『これが……本当のリンクなんだ……!』

 呟きのような琉花の声がインカムから流れてくる。琉花は今度はみんなから少し離れた位置に水の塊を浮かべ、えいやと力を込めた。

 瞬間、ばきばきという音と共に、水の塊が氷の塊になった。紛れもない成功だ。

「やったな、琉花!」

『おお、成功したよっ! すごいっしょ、ハル先輩!』

 琉花の高揚が春樹にも伝わってくる。そしてその高揚は他の3人にも伝わる。1人でもムードメーカーのいるチームは強い、と相場が決まっているらしいことは記録映像から、そしてこの目で見てきた試合の流れから知っている。声を掛け合ってテンションを維持することは、ブルーミングバトルにおいて想像以上に重要なことだ。特にαドライバーのテンションが落ちてくると、その感情がプログレスに伝播してしまうため、良い結果にはならないということも春樹は知っている。

 このチームにはムードメーカーになりうる人材が美海と琉花の2人いる。忍だって、物怖じしない豪胆な性格を良い方向に使えれば、きっと良い働きができるはずだ。

 ところで――

「あれ? 琉花のエクシードって『液体の流動操作』だったよね?」

『うん。それが?』

「なんで氷になってるのに、まだ浮いてんの?」

『え?』

 確かに、とその場にいた全員が思ったところで、いよいよ琉花の集中力が限界に来たのか――「ふう」というため息と同時に、氷の塊が地面に落下して砕けた。

 すると、その中から大量の水が溢れ出た。要するに、氷にできていた部分はほんの表面だけだったらしい。その内部の水を操って浮かせていただけだったということだ。そして、また水流の被害に遭う4人。距離をとっていたため、先程よりずっと少なかったものの、今度は混じっていた氷のつぶてがコツコツと当たった。少し痛い。

 しかし、これは痛いでは済まない。怪我をするかも知れないからだ。プログレスの痛覚は確かにαドライバーが引き受けるが、怪我は普通に負ってしまう。

「みんな、大丈夫!? 怪我してない?」

『だ、大丈夫……』

 集中力が切れ、遂にαリンクも切れた琉花が弱々しく答えた。他のみんなも「あらら」という感じで意気消沈している。先生のため息も聞こえてきた。

 しかし、そこはチーム最大のテンションアッパー・美海。率先して立ち上がると、

『次は私がやっていい?』

「そうだな……いいよ、じゃあ、もう1回αリンクを要求して」

『オッケーだよ! ほらみんな見ててね!』

 表示されたボタンを押し、5秒間待って、今度は美海と繋がる(リンクする)。琉花に失礼かもしれないが、琉花の時よりもずっと深く(・・)繋がるのが分かった。

 美海の心臓の鼓動、高まる感情、抑えきれない興奮、そして理由は分からないが――僅かな恐怖(・・)。それが纏めて伝わってくる。

「よし……できたぞ。さ、美海。やってみな」

『よーし! それじゃあまずは……みんなを乾かしてあげよう!』

「え?」

『え?』

 美海以外の全員が疑問の声をあげるが早いか、美海を中心に風が舞った。

 そもそも、美海はエクシードが非常に強い。春樹が初めて美海を見たときに知ったが、彼女はリンク無しでも、体重45キログラム程度の自分の体を浮かせて、10メートルもある壁を登ることが出来るのだ。

 つまり。

『きゃあぁぁっ!?』

 その風は、台風かと思うレベルの暴風だった。琉花・忍・兎莉子そして美海自身も含め、なすすべなく吹き飛んだ。美海自身も意表を突かれ、暴風は一瞬で止んだ。しかし――

 ――マズイ!?

 忍は大丈夫だった。忍者というだけあって、素早い身のこなしで体勢を立て直し、上手いこと着地した。

 琉花も大丈夫だった。なんとか水の塊を呼び寄せ、それをクッションのように使って軟着陸した。

 そして、美海も大丈夫だった。自分まで吹っ飛んでいることに気づけた美海は、風を操ってどうにか着地の速度を和らげ、地面に転がった。

 問題は、戦闘能力が無く運動も得意ではない――

「兎莉子!」

 飛ばされる勢いは、全員の想像以上に強い。これで地面に叩きつけられたら、酷い怪我を負うだろう。もし、当たり所が悪かったりでもしたら、その時は――

 ――させるかよ!

 一瞬で頭を支配した恐怖心が、春樹を冷静にしていた。冷静でいられたのは、たまたま兎莉子が飛ばされてきたのが、自分のいる方向だったからかもしれない。一心不乱に兎莉子の元へと足を進め、彼女を受け止める体勢になる。

 兎莉子は、ほとんど春樹にぶつかるような形で受け止められた。鈍痛が春樹の体を貫き、ぐっ、と声が漏れる。勢いを殺しきれなかった春樹は、兎莉子ごと人工芝の地面に倒れ込んだ。

「兎莉子、大丈夫か!?」

「春樹、さん……? へ、は、はい、大丈夫です……!」

 春樹の腕の中で涙目になって答えた兎莉子を見て一安心したが、兎莉子も春樹と同じように痛みに体を捩っている。彼女を抱きとめる際、余りに夢中になっていたせいで、αドライバーゾーンから出ていた――即ちゲームに敗北した扱いになり、そのせいで全てのリンクが解けていたのだ。それを目にした途端、心の内側からどっと庇護欲が沸いてきた。背中や肩やお腹をさすってあげながら、

「大丈夫か? 痛かった? ごめんな、ちゃんと受け止めてやれなくて」

「い、いえ。平気です。ちょっと痛いけど……飛んだのは初めてじゃないですから」

 そういえば、グリフォンと友達になったとか言っていたな、と思い出す春樹。

「そっか。強い子だな」

「あ、ありがとうございます……」

 すぐ近くにある兎莉子の頭を撫でると、動物と話ができる兎莉子は、自分も動物のように目を細めた。そして、安心からか、2人して笑い合う。――が、突然、兎莉子の顔が真っ赤に染まった。

「は、はは、春樹さん……!」

「ん? どうした?」

 兎莉子の濡れた頭を撫でながら、反対の手では腹筋など全く付いていない柔らかなお腹をさすってあげている。水に濡れた兎莉子の髪はしっとりしていて、顔と首筋に艶美に張り付いている。地面を転がったせいで人工芝もあちこちにくっついており、それもまたなんだかいやらしい。そして、その体勢が。

 彼女を、まるで恋人を抱くかのような――

「――って、あ! ごめん!」

 慌てて手を離して兎莉子からも離れる春樹。対する兎莉子は、ちょっとだけ残念そうだったが、あまりの恥ずかしさと申し訳なさで顔を逸らしていた春樹は気づかない。

「いてて……死ぬかと思った」

「美海殿のエクシードは強力でゴザルが……」

「使いどころ、難しそうですね……」

 全員の視線が美海へと向かう。軟着陸して人工芝を体中にひっつけた美海は、

「……あ、あははー……ごめんなさい」

 白けた笑いの後にしゅんとなった。しかし、バッと顔を上げると、

「じゃあ、次は忍ちゃんの番――」

 美海の言葉は、コロシアムの入口から入ってきた数人の教師を見て途切れた。その言葉を、春樹が引き継いだ。

「――は、後でになりそうだな」

 

…………

 

「あうううう……疲れたぁ」

 テーブルに突っ伏す美海の顔のそばに、猫がトコトコと1匹寄ってくる。美海はだらけた姿勢のまま、にへらーと表情を緩ませて「心配してくれてるの~?」などとぼやきながら猫の頭を撫で始めた。

 約束通り、春樹たちは商業地区の猫カフェに来ていた。狭めの店内はテーブル席が3つとカウンター席がいくつか。深い絨毯とソファのくつろぎゾーン的な場所もあり、店の半分を占めていた。最初、美海がそちらへダイブしそうになったが、「猫ちゃんたちが驚いちゃいますよ!」という店員さんと兎莉子の制止によって、最初はテーブル席に着くことになった。

 もう夕方だ。辺りはオレンジ色の光に照らされて暖かい雰囲気になっている。春樹達以外に来客はおらず、暖かい色に染まった店内は擬似貸切状態だ。

 意思が通じるからなのか、兎莉子の周りには多くの猫が集まってきていた。にゃあにゃあ鳴きながら兎莉子に飛びついたり椅子をよじ登ってきたり、なんとか我先に意思を伝えんと押し合いへし合いをしていた。兎莉子はとても楽しそうに「あう、くすぐったいですよ」とか「ここが気持ちいいんですか?」とか言いながら相手をしていた。

 ――そういえば、花畑の妖精の時の美海もこんな感じだったな。

 春樹にだけやたらとちょっかいをかけてくるところも。膝の上に乗った小さい黒猫が後ろ足で上体を持ち上げて、彼の腹にうりゃうりゃとパンチを決めてきている。全然痛くないが、これはどうなのだろう。

「兎莉子……この子、なんて言ってるの?」

 連続猫パンチを喰らいながら隣の席に座っている兎莉子に春樹が尋ねると、彼女は楽しそうに、

「遊んで! って言ってますよ。ふふ、春樹さんが気に入ったの?」

 兎莉子が聞くと、膝の上の黒猫は、みぃ、と鳴いた。そして、また春樹にパンチを入れにかかった。

「よーし……いいだろう! ほら!」

 勢いある言葉とは裏腹にそっと黒猫の脇に手を差し込み、ゆっくりと抱き上げた。赤ちゃんを抱き抱えるように抱っこすると、今度は近くなった顔にパンチされた。

「……これホントに懐かれてんのか」

「懐いてますよー。猫ちゃんって警戒心強いですし」

 ならそういうことにしておこう、と春樹は黒猫を膝の上に戻し、指2本で黒猫のパンチに応戦し始めた。

「ほほぉ……気持ちいいでゴザルかぁ?」

「ここがええんか? ん? ここがいいんだねぇ」

 向かいの席では、忍と琉花がこれまた猫と戯れている。今抱いている猫の「撫でられると嬉しい場所」を兎莉子に教えてもらった2人は、それぞれお腹をさすりさすりしたり、耳をカリカリするのに夢中だった。

「あれ? 猫が普通に好きだって言ってたの、どっちだっけ」

「拙者でゴザル」

「いやぁ、いいもんだねぇ。ウリちゃんがいるのが、もっといいって感じ」

 琉花が褒めると、兎莉子は顔を赤くして「そんなことないよ」と答えた。

「楽しそうだな、琉花」

 春樹が言うと、琉花はにんまりと笑みを強めて、

「そりゃ私、楽しい事イチバン! って信条で生きてますんで。リンクしたときのエクシードも使い方がなんとなくわかったし、明日からの練習も頑張りたいねー」

 と非常に前向きな意見。美海もうんうんと頷いている。

「でも……これじゃあ、作戦会議になるわけがないな」

 春樹がぼやく。自分だって膝の上の猫と戯れるので忙しいから、他人のことなんて言えないが。

 あの後、「使ったこともないエクシードをいきなり人に向けるとは何事」という趣旨の説教をこってり受けた美海のテンションは、空気が抜けた風船のように(しぼ)み、でも持ち前の明るさで立ち直り、みんなのエクシードがどんなものかを、今度は1人ずつ試して、気付いたら完全に夕方だった。

 とにかく、リンクしまくった疲労で全員クタクタだったが、ここに来て少し取り戻した感じだ。もっとも、

「春樹く~ん、そろそろ向こうに行きたーい」

 美海が相変わらずぐーたれながらぼやく。それを聞いていた店員さんから「寝てる子は起こさないように」との注意と共に許可をもらい、

「やったぁ。すみません、猫ちゃんのおやつください!」

 200円で買ったサラミか何かを受け取って、くつろぎゾーンに向かった。そっとソファに腰掛けると、猫が数匹寄ってきて、エサをくれとタカり始めた。

「はいはーい、今あげるよ~。みんなもおいでよ」

 美海に呼ばれて兎莉子と琉花は席を立ったが、春樹と忍は座ったままだった。

「行かなくていいの?」

「春樹殿こそ、行かなくてよろしいのでゴザルか?」

「ほら、大所帯だとみんな驚いちゃうでしょ」

「拙者と同じ考えでゴザルな。春樹殿は優しい殿方でゴザル」

 猫と戯れる美海・琉花・兎莉子の3人を眺めながら、少し感慨深い気分に浸る。膝の上の黒猫は、流石に疲れたのか丸まって大人しくなっていた。その背中を優しく撫でながら、呟く。

「忍には、頑張ってもらうことになるかも知れない。みんな以上に」

 戦闘経験があるのは忍だけ。美海と琉花は完全に一般人だ。この3人で、ユーフィリアとテルルという戦闘用アンドロイド2体以上を相手にするのは、エクシードのゴリ押しを使っても難しそうだった。

 だからこそ、戦闘経験がある――もっと言えば、エクシード抜きでも戦力になる忍は、チームの要になるだろう。

 様々な示唆を含んだ呟きを聞いた忍は、さも楽しそうに、

「ふふ、望むところでゴザル」

 ニヤリと笑って豪胆に答えた。

 ふと、目が合う。その太々(ふてぶて)しい視線が、去年ここに来た時に猫たちをビシッと整列させていた彼女(・・)に似ていた気がして、慌てて目を逸らした。

 くつろぎゾーンでは猫と戯れる3人がわいわいと、しかし猫たちを驚かさないように静かな声で騒いでいる。

「……すぅ……すぅ……」

「――ってみうみん!? 寝ちゃったの!?」

「今日1番頑張ってましたもん。ソファもフカフカで気持ちよかったんじゃないですか?」

「むにゃ……こらこら~……もうおやつないよ~……」

「夢の中でも猫カフェなんだ……すごいね、みうみん」

「とっても幸せそうです」

 どうやら、猫と遊んでいるうちに気持ちよくなった美海が寝てしまったらしい。店員さんも苦笑いだ。

 春樹は膝の上の黒猫を抱き上げて席を立ち、くつろぎゾーンへと向かう。深い絨毯の上にそっと黒猫を下ろしてやり、それから、美海の寝顔を見る。

 眠っている人の顔は、普段より少し幼く見える。猫と友達、彼女の大好きなものに囲まれてこの上なく幸せそうな寝顔を、暖かい夕日が彩っていた。

 

…………

 

 

 ここなら私は嫌われない。

 

 


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