「ふぁああ...。」
あくびをし、ベットからでる。伸びをしながらリビングにでる。リビングには幽香がダラダラしていた。
「紫様!!」
いきなり私の式神、藍がスキマから現れる。真剣というか迫真というか....いつも以上に真面目で焦っている雰囲気だ。
「何よ、騒々しい。寝起きなのよ、こっちは。」
「そんなことよりまずいことが....」
こ、こいつ今私の寝起きの神聖なるダラダラtimeをそんなこと扱いしたな。あとでお仕置きとしよう。
「少し耳を....」
と言われたので私は耳を貸す。ゴニョゴニョと周りには聞こえない声で藍は信じられないことを報告した。
「風見!
私が幽香のことを風見と呼ぶときは真面目なとき、と決めている。そのことを幽香も感じ取ったようだ。顔つきが真剣に変わる。
「今すぐ、紅魔館に向かうわよ。詳細は行きながら説明する。あなたの弟子の話よ!」
「!....わかったわ。さっさと行きましょう。」
私たちは全速力で幻想郷の空を切って飛んだ。
◆
やばいやばいやばいやばい。このペースじゃ魔理沙がフランに遭遇するまでにおそらく、間に合わない。今のフランの状態はかなりやばい。....私やばいしか使ってないな。私のボキャブラリー(笑)じゃ形容しきれないくらいまずい事態だ。
「くそう!間に合え!」
実際のところ現状フランの精神は安定していない。かなり不安定だ。パチュリー様やお嬢様も手を尽くしたが、無理だった。何が原因かはわからない。....でも一つ確信できるのは....。
この状態のフランと魔理沙が会ってしまったら、確実にまずいことになる。
....でも私には策がある。さっき、
「てなわけで急がないと....。」
よし!あの角を曲がれば————
◆
——数分前——
「クソッ!なんだよこいつは!」
「うちのお嬢様の妹よ。ごちゃごちゃ言わずに手を動かして!」
今、私たちは突如現れたこの吸血鬼を抑えるのに必死だ。一瞬でも気を抜けばバリアが割られそうなほどの力が押し寄せてくる。
「そんなこと聞いてねえよ!私はなんで身内なのにお前まで襲ってくるのか聞いてんだ!」
「いろいろあるの....よっ!!」
パチュリーは一瞬踏ん張るとあの吸血鬼の隙をつき、スペルを発動させる。
火符 『アグニシャイン上級』
木符 『シルフィホルン上級』
2つのスペルを同時発動とかマジかよ!?....さっきの弾幕ごっこでもそうだが、なかなかこいつもやしのくせに強い。私より魔法使いとして、数段上の実力にいることは確かだ。明らかに私より実践に長けている。数々の修羅場を抜けてきたやつの動きだ。
「なにボーっとしてるの!?あんたもしっかり働きなさい!」
「わ、わかってるよ!」
仕方ねえ!私もとっておきのスペルをやつにお見舞いしてやる!
恋符 『マスタースp
「ちょおっと待ったぁ!!」
おい....いいところだろうが....あと誰だよ.....
◆
「ま、間に合った....」
「ひ、翡翠!?あなたどうして!?」
パチュリーはかなり混乱している。混乱するのはしょうがない。白黒が襲ってきて、フランが襲ってきて、修業中の私が報告もなく戻ってきている。私ならこの情報量は処理しきれない。
「説明はあとで!とにかく今はフラン...様を完全に抑えないと...。」
「無理よ!私たちのバリアで一時的に抑えるのが精一杯よ!」
「ちょ、ちょっと待て!状況がよめない....」
「「ちょっと黙ってて!!」」
私とパチュリーの殺気に負けた魔理沙は床に8の字を書いて、拗ねてしまった。魔理沙は犠牲になったのだ.....円滑な議論の犠牲にな...。
「私に考えがあります。パチュリー様とそっちの白黒は、数分...いや1分稼いで欲しい。」
「....わかったわ。今は時間がない、あなたを信じるわね。」
パチュリーが拗ねている魔理沙を引きずってフランの方へ向かう。その背中はとても頼れる雰囲気を出していた。.....紅魔館のピンチのときに今日のディナーのことを考えているお姉ちゃんとは大違いだ。
「さぁ!私も用意しないと!」
私は魔力と霊力をそれぞれの手に込める。青と赤の光が私を包む。だんだん光が大きく、よりまばゆく光っていく。その光は異様な、なんだか嫌な感じがする光だった。
◆
ズウウゥゥウン
ものすごく大きい、地ひびきのような音が地下から聞こえる。霊夢は即座に嫌な予感を感じ取った。
「ちょっと!あんたこの館どうなってんの!?」
「さぁ?パチェがなんかやってんじゃないの?」
と、心底どうでも良さそうな顔で適当に言葉を吐く。すると、さっきの言葉とは裏腹にとても楽しそうに、舌舐めずりをしながら霊夢に言う。
「そんなことよりさぁ....もっと私と楽しもうよ!こんな血湧き肉躍る戦いは久しぶりだよ!」
「あんたと戦うのは疲れるのよね...まぁいいわ。さっさと終わらせてこの紅い霧を消さないとね。」
レミリアは吸血鬼だ。力も強ければ妖力も多い。要するに一発当たればほぼ終わりということだ。
天罰 『スターオブダビデ』
紅色のレーザーに重なる形で青い弾が霊夢を襲う。妖力がこれでもかと篭った誰が見てもわかる、弾幕ごっこ用の弾ではない。この弾なら霊夢とて人間、当たれば肉団子だろう。
「私にたてつく愚かな巫女よ。ダビデの星をその身に焼き付けよ!!」
とても密度が高く隙がない。....なんて凡人のような感想は霊夢から出てこない。霊夢から出てくる感想は——
ガバガバな弾幕ね。
「んもう!!なんで当たんなんだよう!」
「....あんたのスペル打つ前のポエミーなセリフやめたら?」
それは私のこだわりなんだよーと返すレミリア。だがそれは巫女を油断させる罠。レミリアはこっそりスペルを発動していた。霊夢に気づかれないように。
呪詛 『ブラド・ツェペシュの呪い』
「永遠に消えぬツェペシュの呪いを....気づく間もなく受けて散れ。」
ボソっとレミリアが呟いた瞬間、霊夢の周りに避けられないほどの紅い弾幕が現れた。完全な不意打ちだ。さすがの霊夢も避けられない。
「もらった!!」
大量の紅い弾幕は霊夢に被弾した。
「あら?話が違うわね。私たちはスペルカードルールを広める約束をしたんじゃなくて?」
全ての弾幕を吸い寄せ、一瞬にして消し去った。幻想郷の管理者がレミリアに冷たく言い放つ。
「スペルは宣言してから発動じゃなかった?」
さらに賢者は続ける。
「妖力の込めすぎな弾幕....まさかあなた妖力のコントロールもできないのかしら?」
歯ぎしりして悔しがるレミリア。ぐうの音も出ないようだ。
「わかったわよ....わかったわよ!!霧は消すわよ!バカー!!」
膝を抱えて泣き出したレミリア。泣くとは思っておらずオロオロ焦る紫。霊夢の視点から見るとシュール極まりない。
「はぁ....あの胡散臭いやつに助けられたのが一番の災難ね....。」
霊夢はやれやれと首を振り、異変の解決を確信した瞬間、
ものすごい音とともに紅魔館の半分が地下に沈んだ。
「パチェ!?」
レミリアの焦る様子が霊夢と紫に異常事態だと告げる。紫はここの誰より早く行動を起こす。
「霊夢はここで待ってなさい!私はまだやることがあるの!」
「パチェ....パチェ....」
「レミリア!!あなたも行くのよ!あなたじゃないと助けられないわ!!」
レミリアは困惑した様子だったが、少しの間考え込んだ。すると決心したように今、じぶんがすべきことを理解した。
「....わかったわ。私の責任だろうしね!」
紫とレミリアがスキマに入っていく。紅魔館の上空には霊夢だけが残された。
今回長かったよね?え?これで普通?知らなーい。
地味に今回パチュリーさんの初登場です。タイトルにもなってるのに...なんかかわいそう。まぁ強キャラっぽい感じにしといたよ!
もうそろそろ夏休みなんで更新頻度は上がりそうです。