私にとっての賢者
「どういうつもり?」
人間が寝静まり、多くの妖怪が活動する。そんな真夜中に、太陽の畑の家の中に、目がついた黒い空間から妖怪が現れた。
「どういうつもりって聞かれてもね。何の話かさっぱり。」
「本当はわかってるでしょ。....あの娘の事よ。でたらめな、わけのわからない力をもったあの娘よ。」
幽香は目を細め、うんざりそうな顔をした。何でお前が知っているんだ、という顔だ。
「私の勝手でしょ?あなたが出張ってくる意味は無いんじゃないの?」
「あなたらしくないじゃない。いつものあなたなら吸血鬼なんて無視してあの娘、消してたでしょ?」
妖怪は楽しそうに笑う。からかっているようだ。幽香は心底うざそうな顔をして近くの花瓶に入ったひまわりの花びらをいじる。するといきなり重い雰囲気が漂う。妖怪が出しているようだ。
「あの娘を生かすのは、構わないわ。」
ただし、と付け加える。
「絶対に異変には参加させないで。」
「....わかったわ。あの娘は今寝てるから大丈夫よ。聞かれていないわ。」
「そう....お邪魔したわね。」
妖怪は黒い空間へ消えていった。
◆
師匠、私寝てないです。やばい、一から十まで全部聞いちゃった。死亡フラグなう。
....と朝になったよ!うん、案の定、空が赤い。いや紅い。どうしよう、昨日は異変参加禁止!ひきこもってろ!と言われた。
うん、やっぱり行こう。興味本位とかじゃなくて、私は自分の力の正体、自分がどれだけ成長したか、私は知りたい。いいタイミングで師匠はまだ寝ている。こっそり、静かにドアを開ける。
「ごきげんよう。」
「!?...ゆか...誰?」
やばい。いいかけちゃった!めっちゃ怪しんでる。
「....あなたをこの先に行かせるわけにはいかない。....ここで気絶してもらうわ。」
説得は....無理そうだな。相手は大妖怪。ぶっちゃけ勝てそうにない。....でも、やるしかない。相手が誰だろうと逃げるわけにはいかない。
「きなさい。私にも先手を譲るくらいの余裕はあるわよ。」
なめられている。ならこれを逆手に取るまでだ。
「先手必勝!!」
私は叫び、スペルを発動する。
翠符 『絡みつく翠の茨 』
茨状の弾幕が広範囲に展開される。弾幕が相手にあたり機動力を奪う。
「へぇ。なかなかやるじゃない。」
余裕ぶっているが、かなり飛行速度が鈍っている。これなら私でも捉えられる!
「はぁっ!!」
キックを相手の肩めがけて放つ。
「くっ!」
予想どうりの動きだ。私は霊力破を放つ。もう少し左におびき寄せないと.....。
「ふん。遅い弾ね。」
そういうと黒い空間へ霊力破を放り込んだ。そのままスペルを発動する。
結界『光と闇の網目』
赤と青のレーザーと弾幕が視界を覆う。けど大丈夫。師匠との修行で....逃げ道は見える!
「今ので終わると思ったのだけれど....。」
扇子で口元を隠し、笑っている様子で、挑発気味に言った。
「なかなか面白いじゃない?」
「そりゃどうも!」
負けずに私も言い返す。弾幕ごっこでは心理的優位に立つのも、攻略法の一つだ。
符の壱『フォレストヴェール」
緑と青の混じった弾幕を放つ。しかし、広範囲にではなく、あえて左に密度を偏らせて。
(左に高密度ってことは右に何かある?....ビンゴ、霊力反応あり。あらかた罠ね、なら.....)
「あえて高密度のほうに行ってやろうじゃない。」
そういうと高密度の左の弾幕を避けきる。まぁこれで沈められるとは思っていない。だが...
「私の、計算どおりだ。賢者よ。」
そういうと私は霊力を込め、渾身のスペルを発動させる。
縛符 『翠色の鮮やかな檻』
名前の通り、緑色の檻が展開される。その瞬間、賢者は捉えられた。....作戦大成功!!
「....やられたわ。」
この程度のスペル。大妖怪なら数十秒ほどで解けるだろう。だが問題ない。その数十秒の間に紅魔館へ行く。弾幕ごっこだが、正式な弾幕ごっこではない。もう結論を言ってしまうと逃げれば勝ちなのさ。スモーキィー!!
「さようなら。———さん。」
「ええ、いってらっしゃい。」
挨拶を交わし太陽の畑を後にする。そのすぐ後に、家から幽香が出てくる。
「何よ。避け道がわかりやすいスペル使うとか。あなたも甘いじゃない。自分の——に。」
幽香の皮肉に賢者も言い返す。
「....うるっさいわね。寝たふりして外に行かせたあなたに言われたくないわよ。」
「べ、別にあれはただ寝過ごしただけで!」
顔を赤らめる幽香。そのまま2人は走っていく翡翠を見送るのだった。
「まぁ無断で外へ行ったからあいつは帰ったら説教ね。」
「....自分で行かせる状況作ったくせにあなた鬼ね。」
ちょっと長くしました。長くなりました。異論は認めない。あとスペカだっさ!
短かったけど修行編終了!今から紅魔郷編!異論は認めない。
テストもオワッタんで更新頻度が増える。多分。