私ともやしとメイド長と   作:てんな

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私にとってのチート

何が起こったか、わけがわからないまま爆発による煙幕が消えた時、師匠がいた。

 

「ちょ、ちょっと師匠!?何でここに!?しかもフラン様ぶっ飛ばしちゃったじゃん!!何してんの!?」

 

パニックになって普段の口調ではなく、限りなく自分の口調になってしまった。フラン様もやばいけど私もやばいな。師匠のとこから抜け出して異変参加とか、死亡フラグじゃねえか!

 

「家帰ったら覚えときなさいよ。」

 

「ひいいぃぃぃいいっ!!」

 

ドスの効いた声で冗談じゃない事を言いやがる。顔は笑っているけど目が笑ってない。怖すぎる。

 

「そ、そんなことよりあの吸血鬼はどうなったんだぜ?」

 

魔理沙がこの場にいる全員の考えを代弁する。そりゃあ他人の魔理沙だろうと気になるだろう。命をかけて救おうとしたのだから。師匠が一呼吸おいて私たちの視線の反対、師匠の視線のほうを指差した。

 

「あそこよ。」

 

指差した方には咳をして不敵に笑っているパチュリーがいた。その手には紅色に妖しく輝く一つの宝石があった。おお、きれい。

 

「私はそんなこと聞いてねえ....おい!あのもやしがもっている宝石が何だって言うんだよ!!」

 

激昂しながら師匠の胸ぐらをつかむ魔理沙。....私だって師匠が下に見られているのを、そのまま放っておくのは気分が良くない。例え師匠が怒っていなくてもだ。ライダーキック!!

 

「今すぐ師匠から手を離せ!!」

 

私は魔理沙へキックを放つ。もともと当てるつもりがなく、その場から離れさせる事が目的なので簡単に避けられる。

 

「ちっ!おい!いきなりなんだよ!」

 

「師匠に手を出すなよ。」

 

ほんの少し殺気を込めて魔理沙に警告する。すると師匠が私と魔理沙の間に手を出した。もうやめろという意味なのだろう。こういう動作がいちいち綺麗で優美、かつ自然だから見惚れてしまう。非常にやめてほしい(切実)。

 

「.....宝石のことは面倒臭いからあっちのもやしに聞いて。」

 

パチュリーはもやしと言われたからか、とても不愉快そうに眉を寄せた。ご愁傷様です。もう少し外、出ましょうねー。パチュリーが説明を始めた。とても落ち着いている。

 

「この宝石のなかに、フランが入っている。」

 

この場にいる、全員——まぁ極少数は覗いてだが、目を見開いた。

 

「つまり、まだ生きてるってことか!?」

 

「ええ、まぁ厳密に言えばさっきのスペルで体と精神(ガイスト)を分離させて、体のほうをこの宝石に封じ込めたって感じかしら。」

 

精神(ガイスト)のほうが封じ込めるなら体も封じ込めるはず、と付け加えるパチュリー。師匠とお嬢様が精神を吹っ飛ばした。....ってことは私が必死こいて習得した精神に直接ダメージ与えるやつも、師匠使えるの!?チートだ!強すぎだ!!

 

「でも、問題が一つある。」

 

パチュリーが真剣な顔つきになって話す。

 

「だけど....これではフランを復活させる器、つまり憑代があるって事だけなの。肝心の復活させる中身——魂がないの。」

 

フランを助けるためには中身の魂が足りない。考えてみれば、そりゃそうだ。誰か知らないおっさんが入ってたんだから。フランの魂があるわけがない。

 

「そ、それじゃあどうすれば....。」

 

全員がうつむく。重い空気が流れる中、パチュリーが口を開く。

 

「要調査ね。これからの課題ができたわ。」

 

とだけ言うと自分の机に戻ろうと歩き出す。その肩を魔理沙が掴んだ。

 

「おい!身内のピンチなのになんでそんなに平気なんだよ!!」

 

魔理沙は目に涙を浮かべている。だがパチュリーは何ともなく魔理沙に言い放った。

 

「まだ終わってないじゃない。フランは救えるわ。救える可能性があるのに、なぜ悲しまなくちゃならないのかしら?」

 

ぐっと魔理沙は言い返せない。パチュリーは事実と自分の思っていることをありのまま言った。言い返せるわけがない。

 

「なら私も手伝うぜ!!これでも魔法使い、役に立つぜ!!」

 

「....それを決めるのは私よ。....いいわ、来なさい。」

 

魔法使い2人は図書館の奥に消えていった。気づけば、全員が自分のすべきことをするため、図書館から立ち去っていた。

 

「....さあ、私たちも帰りましょうか。お説教があるからねぇ。」

 

「ご、ご勘弁をっ!!」

 

私は師匠に引きづられながら、太陽の畑へ帰った。

 

 

 

 

「今日のディナーは何ですか?ハンバーグ?オムライス?師匠のごはんおいしいから楽しみだなー。」

 

「そうねえ....ディナーの前に、忘れてない?」

 

ぐっ!せっかく褒めたのに、無駄だったか!お説教だけは勘弁だ。もうすでに一回経験済みだ。死にかけた。....何をして怒られたかって?フッ、つまみ食いさ。

 

「....まぁいいわ。」

 

「ブッ!....ええっ!!??」

 

あまりにも予想外なことを言い出し私は飲んでいた水を吹き出した。汚いものを見る目で師匠が見てくる。あーその目いいです。

 

「今日はステーキにコーンスープ、あとはサラダとライス。」

 

「あれ?なんか豪華ですね。いつもはステーキっていってもこんなに高い肉じゃなかったのに。」

 

何だかいつもより妙に豪華だ。使っている皿も新調したものっぽい。何だろう?私の誕生日はまだ先だし、師匠の誕生日は....知らない。なんか悲しい。

 

「あら?いつもは豪華ではないと、そういってるのかしら?」

 

「い、いえいえめっそうもない!」

 

私はごまかすと師匠の手伝いをする。まずは....机を吹いて....。

 

「はい、テーブルクロス広げてくれる?」

 

「イエッサー!」

 

「———」

 

?....師匠が何かつぶやいたように見えたが、聞こえなかった。.....まぁいいか!肉が私を呼んでいるー!!

 

「....成長って早いものね。」

 

師匠は笑っているように見えた。

 

 

 

 

 

 




紅魔郷編はこれにて終了です。

フラン好きの方に殺されそうなシナリオですね。だ、だ、大丈夫です。フランちゃんは復活します。何度でも蘇るさ!

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