千年王国は偏執狂   作:蝿声

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短いし話進んでないけど別にいいやと言う暴挙


第4話

 ニュートラルという勢力がある。手前勝手な秩序を押し付ける天使に寄らず、自由という名の混沌をばら撒く悪魔にも寄らず、人の世は人の手で拓いていくという思想のもと戦う人たちのことだ。良也が所属している組織である。また極端に偏らず良くも悪くも人と近しい悪魔もニュートラルと呼ばれる。

 よく言えば中立中庸、悪く言えばどっちつかずなこの勢力は、千年王国において最下位と言って差し支えない組織力しか持たない。かつて東京で起きたハルマゲドンでは秩序・混沌に喰らい付く第三勢力として、ともすれば本当に両者を駆逐し人の世を拓けるのではという希望を持てる程だったのだが、今は見る影もない。

 その理由は大きく分けて3つある。まず、ニュートラルの指導者として人々を導いた救世主がハルマゲドンにおいて死亡し、彼の後を継げるほどの傑物が現れないこと。次いで、戦う力を持たないながらもニュートラルの世を夢見て戦う者たちを支えてきた弱き人々が、天使たちの洗脳によって自我の薄い操り人形のようになったこと。最後に、そんな洗脳を跳ね除けるほど強い者たちの中からニュートラルに賛同する者が極端に少ないことだ。

 

 天使の統治に心から賛同し積極的に千年王国に殉じるもの、賛同はできないまでも今ある安寧を壊せば人の血が流れるからと消極的なもの、持てる力を人々のためではなく我欲に費やすことを選ぶもの、そもそも関わりあいになりたくないと隠居するものなど。

 洗脳を受けず、我欲に走らず、しかし人々に痛みを与えることを覚悟して動けるものは決して多くはない。当然ながらそんな彼らでは十分な情報網を敷けず、千年王国内の異変を事前に察知し、場に適した密命を帯びるなどできるはずもない。

 ゆえに、良也がいつも己に課す使命は二つ。

 

「もうそんなことは止めにしないか? 人を助けに動くことのどこに咎ある。小さな罪を罰するために死刑など馬鹿々々しいと思わないのか」

 

 それは人の命を一人でも多く助け、そして同志を増やすこと。いずれもこの千年王国においては決して容易いことではないが、良也は任務を受けるたびに少しずつ命を救い仲間を増やしてきた。

 そしてそんな言葉を受けた円治はあまりの衝撃に言葉を失い固まっていた。言い訳を並べるとばかり思っていたところに返って来たのは現体制を真っ向から否定する言葉。主を、天使を否定することは最大の禁忌だ。

 

「お前は幸福がどうこうと言ったな。この千年王国のどこに幸福がある! シェルターでお前も見てきたはずだ、悪魔の脅威を知らされながらも笑みを浮かべ祈ることしか出来ない人たちを! 彼らはきっと目の前に飢えた悪魔が現れても逃げることも笑みを絶やすこともせず、ただ膝を折って祈るだろう、『神よ』と!」

 

 硬直していた円治が、目の前の反逆者を罰するべく動き出す。しかし、動揺と怒りから彼の動きは鈍り、逆に言葉を吐いた時から覚悟を決めていた良也の動きは速かった。

 円治が良也に銃を向けるが、それを撃つよりも早く良也がその腕を捻り上げ銃を落とさせる。円治がさらに動くより前に良也が円治を押し倒す形で押さえつけた。そして言霊をこめて説得を行った。

 

「ぐっ、放せ……!」

「祈ること自体を否定はしない。困難に突き当たったとき、救いを求めるのは人として当然だ。だが彼らの祈りは救いを求めてのものじゃない、ただ神への信仰の形として押し付けられた祈りだ! 脅威に対して自らの意思で抗うか逃げるかも選べない彼らが、人として正しい姿であるはずがない!」

 

 千年王国に生きる人々は天使によって歪められている。そんな状態で幸せなど掴めるはずがない。そもそも幸せとは何かも理解できないだろう。だから、力ある者たちが彼らを解放しなければならない……そんな思いを言の葉に込めて伝える。

 それが伝わったのか、徐々に円治の抵抗は弱まり、やがて良也が離れてからも暴れることなく、ゆっくりと立ち上がって良也と向き直った。

 

「……ええ、まったく貴方の言う通りです、良也。私は今まで何をしていたのか……自分が恥ずかしい」

「分かってくれたならそれでいいさ。さあ行こう円治、デミナンディ牧場に行って人を救って、勝手な行動をした二人に少しばかりのお説教をしてやろう」

 

 虚ろな目をした円治とともに、良也はデミナンディ牧場へと向かった。

 

 

- Citizen, Happiness is mandatory - Are you happy? - Trust no one - Keep your sma-pho -

 

 

 デミナンディ牧場の一室で、全身に傷を負った喰奴が人の姿に戻り倒れていた。瀕死と言うほどではないが、まともに動けるようになるにはしばらくの時間か回復魔法を必要とするだろう。

 そんな喰奴を後目に蔵人と御堂が向かい合っている。蔵人は無手のまま苦い顔をしている一方で、御堂はリターナーとスマホを両手に持ち、余裕をもって対峙している。蔵人が舌打ちを一つ着いたところで、御堂が先に口を開いた。

 

「私たちは運がいい。そう思いませんか? どうやらあなたもそこの喰奴に用があった様子ですが、おかげで当初の予定を変更できそうです。ねえ」

 

 その言葉に蔵人はどうだかと小さく返す。それぞれ異なる組織から喰奴を連れてくるよう密命を受けている蔵人と御堂は競合する立場にある。ある点を見れば確かに運がいいと言えるだろう。

 蔵人達はリーダーである円治に告げることなく牧場へと先んじて訪れている。この時点で処刑を免れない状態だ。抵抗しようにも自分以外の三人が相手となれば敗色は濃厚、不意を狙うのも難しいだろうと考え、最悪の場合ターゲットに殺されたと偽装し姿をくらますことも考えていた。だが自分以外の一人が増えたことで数の上での不利が無くなり、しかも片割れは強力な喰奴だ。うまくやれば良也と円治の方がミッション中に死亡したと報告し、大手を振って歩くことができるようになるだろう。

 しかし蔵人にとって現状は面白くない。理由は御堂の手に握られているリターナーだ。あれがあるかぎり喰奴であり、手持ちの悪魔が使えない蔵人は御堂に対して強く出ることは出来ず、二人を排除した後にどうなるかわかったものではない。それでも現状、御堂と協力することが最善と考えた蔵人は渋々と言った様子で返事をする。

 

「ああ、そうだな。それに、使えそうな駒はもう一つ増やせそうだしな」

「……ああ、なるほど。確かにそうですね」

 

 そう言った二人は、部屋の隅で呻いている喰奴の男を見る。

 

「とりあえず説得から入りますか。命が惜しければ私たちを手伝え、ということで」

「俺とお前、どっちが残ろうともその約束は果たされないだろうけどな」

 

 微笑を浮かべ回復アイテムを手に取りながら近づく御堂を、蔵人は腕を組んだまま見送った。

 




新・女神転生IV デビルサバイバー NOCTURNE FINAL
みたいなクロス作品を妄想する日々

ナオヤ「クククッ……サムライは神に選ばれし戦士。本当にそう思っているのか? だとすればとんだお笑い草だ」
ヨナタン「なっ……!」
イザボー「なんですって……!」
ナオヤ「幾万年経とうと変わらぬ天使共の思考を読むなど、人間のそれより遥かに容易い。断言してやる、お前たちサムライは上の奴らにとって害悪でしかない」
ワルター「そいつはどういうこった!」
フリン「……」

オーディン「どうやらベルゼブブやべリアルは王位争いに主眼を置いて動くようです。ただのバアルではなく、ベルの王となったものを我らの陣営に引き込むのは難しいでしょう。……ルシファーめ、ベルの王ともなれば奴にも手綱を握れるものではないというのに、何を考えている」
クリシュナ「混沌の盟主としては、認めざるを得ないのさ。ベルの王になられたら自分よりも力を持つかもしれないからやめてください、なんて言えるはずもないしね。まあいいさ。バアルがいなくても、ベルの王が生まれても、僕の計画に揺るぎはない。……それでミロク、君が連れてきたそれはなんだい」
ミロク「ユリコ派の元人間ですよ。貴方の誘いに乗った時点で私の経典は必要なくなりましたが、さりとてこの力まで捨てるのは惜しい。まあ、貴方の神殺しのスペア程度に考えていただきたい」
クリシュナ「それなら余計なものを混ぜないで欲しかったね。……中に溶けているのはマロガレか。まあ有効に使わせてもらうとするよ」
人修羅「……」

ダグザ「この世界は今、数多の可能性が集う特異点となっている。間薙、フリン、アベル……この3人程ではないが橘、新田、氷川、ワルター、ヨナタン、カイン……。今挙げた奴らは異なる世界において、世界そのものを己の望む形に変えるだけの力を持つ存在だ。それだけの可能性が一つの世界に収束している。……分かるか? こいつらを纏めて味方に引き込む、あるいは敵として敗北の烙印を押し付けることができれば、それは平行世界においてもはかり知れない利となる。天使も、悪魔も、神も、そして一部の人間もそのことを知っている。故に奴らはこの世界での戦いを、尋常ではないほど重視している。心しておけ、小僧。この世界の戦争は、アマラ宇宙において類を見ないほどの規模になるだろう。……だが案ずるな。いかなる障害が現れようとも、俺がお前を勝たせてやる。それを忘れるな、俺の神殺し……」

みたいなのを考えた。10年後に書くかもしれない

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