自分が緑の閃光、名前を呼んではいけないあの人が使うような。恐ろしい光に呑まれる。そんな、夢を見たんだ。そう思って、何故か寝ていたようだったので半ば無意識に体を起こそうとする。動かない。動かない?・・・もう一度、起きてみようとする。起きれない。いやいやいや何かがおかしいぞ、と彼女は瞼を開けた。
「知らない天井、かなぁ」
四角く、将棋盤みたいな模様の天井が見えた。全く見たことがないような、そうでもないような。・・・それと、誰かの気配がする。え、怖いんだけど。
「あぁ、目が覚めたかい。なんかノリで実験体にしてしまって済まないような気がするんだが。どうかな気分とかその他もろもろは。元気になったかね」
起き上がれない彼女の耳に、低い男性の声が届く。
「なぁんだ。誰かと思えば所長ですかーってあれ!?」
「ん?どこか痛いとこあった?」
「じゃなくて!なんで私の部屋に!?」
「いや、ここは高貴なる所長室なんだけど。それと、起きないんじゃなくて、起きれないんだ。じゃあ大人しく寝ておけよ?俺は整備に戻っから」
「へ!?ではコレは所長のベッド!?」
「なんでそんな赤くなるかは知らんが、そうだな。俺のベッドだな」
・・・・・・これから私、どうされちゃうんだろう。ももも、もしかして。
「眠れ〜眠れ〜さっきのことなど忘れて眠れ〜」
そういってひも付きの五円玉を揺らす所長。それで眠くなるのって、子供くらいじゃないかなぁ。なかなかお茶目な面もあるらしい。意外!・・・ここは免じて眠ってしまうのがいいのかな。実際、ちょこっと眠くなって、来たし・・・・・・って何!?さっきって何!?
「所長!さっきって何のkふごぅ!!ごふっごふっ」
起きあがって聞こうとしたら、シートベルトのような物で押さえつけられ、また無理矢理に寝かしつけられた。どうなってんのコレ。どうやら私が不思議に思うあまり、テレパシーとして伝わったらしい。所長が語りだした。
「くくくく、あんなにキレーにキマるとは。予想外だったなぁ。まぁ実を言えばソレが完成してたのも予想外だったけど。あぁ、ごめんごめん。そのベッドは、体の疲れが完全に取れるまで起こすのを許さないってやつなんだけど、くくくく」
話してる途中で耐えられなくなったらしく、所長は思いっきり笑っていた。くくくと笑っていた。他でもない私を笑っていると思うと、上司といえど流石にいらっとくる。ベッドに許される範囲、首の可動域を利用して、笑ってる輩を睨みつける。
「さて、代償行為として質問に答えてあげようか。確か、シーズニングがどうとか言ってなかったっけ?」
私はおそらく、人生において一番目を見開いていただろう。超びっくりした。
「ここでは所長としか呼ばせてないんだけど、以前はペッパー。Dr.pepperとも呼ばれていたな。で、新人。なんで分かったわけ?相当に気を使ってたんだが」
睨み返される。・・・・・・言い訳は、眠りの中で考えよう。
「おやすみなさーい」
「え、ちょっ」