小噺集   作:畑の蝸牛

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お題が全然関係ないけど許して。想像力の弱さと限界を感じた。これ書くのめっちゃ悩んだからね俺。マジで。ではどーぞ。


ソーラン節

 

ある日、本当に驚愕の事件が村を襲った。どれくらいの驚愕だったかって?それこそ何月何日何曜日、この星が何回廻ったのか、分からなくなるぐらいにさ。様式美に則ったつもりであるけど、こういった出だしは蛇足というか野暮であると感じるのだが、どうだろうか。……最近理屈っぽくていけない。中二病とか、高二病とかが舞い戻って来たのだから、多少は目をつぶって欲しい。ここからは事実だ。起こった事だけを話そうか。

 

村に突如として、神殿が現れた。

 

ああ、そりゃあ村中が大騒ぎだ。祭の時を遥かに超えた騒ぎようになった。昨日の夜に、何も無かったところに突如として現れた神殿。いや、村のみんなはそう呼ぶが、今の俺にはそれの正しい呼び方を知っていた。

 

それは教会だった。

 

西洋式の、それこそ結婚式をあげるような。その時の俺は、それが何か分からずに「すっご綺麗な建物だなぁ〜」と感心してたはずだ。そうだよ。どうせなら怖れて近付かない方が、彼にとっては良かったのかも知れない。

 

今、こうして事件を振り返っているのは彼、すなわち善良な村人であった彼の、前世であるだろう俺だった。

 

彼は村の人達が騒ぐ神殿の下に、自分も行ってしまうぐらいには好奇心があったらしい。どうにか神殿の扉を開けようとする村人。細身の男が開けようとする、がビクともしない様子で「変われ」といかにも力の強そうな大男が出てきて、また扉を開けようとする。開かない。どうやらその男は村一番の力持ちだったらしく、村人はみんな揃って首を傾げた。

 

それを彼は人だかりの最後尾で見ていた。

 

「ん?……おい、なんか書いてあるぞ!」

 

先ほど退かされた、細身の男が扉に文字が書かれていたのを目ざとく見つけたらしい。顔をこれでもか、と近づけ見ている。息を呑んで村人たちはその様子を見守っていた。

 

「………コレ、古代文字だわ」

 

村人の三割がコケた。

 

「どれ、道を開けてみぃ」

 

コツ、と杖の音がした。長老だ。神殿の前までの道がパッと開ける。鶴の一声、とはこのことだろうか。ゆっくりながらも神殿の扉へと近づく村長。その様子を、再び息を呑みつつ見守る村人たち。

 

「…………『ヤーレン、ソーラン、ソーラン』後は掠れて読めんのぅ」

 

村長の、低く小さい声があたりに響いた。そして、読み上げられた古代文字、その一節に震えた。彼の、もしくは俺の、何か大切な臓器のような物が。その言葉が耳に届いてから、震えている。だんだん強くなる。鼓膜までもが震える。全身が震える。

 

「おい!どうした◻︎◻︎!しっかりしろ!」

 

視界が、彼のものか、俺のものか分からない視界が、膝が崩れて。そのまま倒れた。

 

で、今はベッドで目が覚めて、経緯を脳裏に浮かべたわけだ。うん、わけわからんな。よし!覚悟かんりょー!

 

二度寝をキメた。

 


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