小噺集   作:畑の蝸牛

14 / 23
お題のもの。お題から逸脱するのが趣味になってきている。どうかお許しください。頭は爆発しないけど。あと文量がいつもの1.5倍くらいあります。


ぬっぺふほふ

ぬっぺふほふ

 

『……子供連れの方はお足元に気をつけるようお願いします。本日は…』

 

エスカレーターに乗っていた。俺は上の階を目指してエスカレーターに乗っていた。…乗っていたでいいのか?エスカレーターって乗るって言い方であってるっけか。まぁそれは今度聞くとして、何階だったっけ。そもそも何を買いに来たんだろ俺。なんか頭がふわふわするんだけど。低気圧かな?…ぼーっとしてるわけにも行かない。ここは色々入ってるから、下手したら迷ってしまう。…実際、小さい時に迷った気がする。迷子センターで大泣きしてた、そんな気がする。

 

「このエスカレーター長くないか?」

 

見たところ、普通のエスカレーターの3倍とかありそうだ。…普通と言われても何メートルとかはわからんけど。高所恐怖症の人にはキツそう。そう思える程はある。加えてスピードが遅いので普通に怖い。視界に人が居ない、というのもある。

 

「久しぶり」

 

肩を叩かれ、振り返って見れば、知り合いだった。

 

「お、おう」

 

エスカレーターで前の人を知り合いと間違えたことのある俺としては、おいそれと真似できない行動だ。勇気あるなこいつ。

 

「あの時ぶりだね」

「そうだな」

「…せっかくだし、遊ぼうよ」

「…そう、だな」

 

今、何かが頭をよぎったけど、そんなことはどうでも良かった。女子と二人で遊ぶ。これはもうデートだろ?落ち着いてる場合じゃない。行くべき所は山ほどある。なんせここはデパートだ。

 

ゲームセンターでホッケーのゲームをした。力み過ぎてすかぶって、可笑しくて二人で笑った。

 

本屋でおすすめの本を教え合った。好みが被っててあんまり意味がなかった。嬉しかったけど。

 

アイスクリーム店に言った。アベック割をどうですか、と言われた。俺の顔も多分赤かった。

 

他にも色々行って、遊んで、笑って、楽しんで、時間が過ぎて、気付いたら夕方だった。「屋上に行こう」というのでついて行った。今日は休みなのにやけに人が少ないな、と思った。まぁ、そんな日もあるか。屋上に行く階段を登る。彼女は数段上を行っていた。

 

ドアを開けたら、大きな夕焼けが見えた。落下防止のフェンスの外はオレンジの世界だった。…なんとなく、世界が終わる光景はこんなものじゃないかと思えた。

 

「その通りだよ」

「え?」

「もう、お別れだ」

 

そう言った彼女はフェンスを握りしめ、夕焼けを睨んでいるように思う。

 

「なんでそんなこと言うんだよ」

「あなたがそう思ったから」

 

振り返った彼女に表情は、顔は…………

 

 

 

「なんか、変な夢を見た気がするんだよな」

「それだけだと話題にならねーよ?」

 

と天郷。平常通りのドライ営業である。

 

「ん〜なんか幸せな夢だった気がするんだけど」

「…ついに告白成功、とか?」

 

無闘くん、トンチンカンな予想はやめようね?

 

「いや、そもそも居ないから」

「とか言って、お前。バレバレだからな?」

「なっ、えっ、マジ?」

「…え、居たの?」

「いや、居ないけど」

 

やっぱりこのメンバーで話してるとズレるな。いや、ズラしてる犯人は一人で一人はおとなしく聞いてくれるんだけど。

 

「…お前の恋愛事情より、大事なことがある」

「おまえ、唐突に酷くなるよな」

「シャラップ。よく聞け。また、出たってさ」

「幽霊?」

「かもな」

 

かも、って情報が荒い…もう少し情報だせと目で訴える。通じたらしく得意げに話しだす。

 

「それがさ、ちっちゃなおじさんって流行っただろ」

「流行った、かな?」

「芸能人にもちょくちょく目撃者いるし、流行ってたんじゃねぇの?」

「そっか」

「話を戻すぞ。警備員によると昨日の夜、居たらしいんだよ」

「ちっちゃなおじさん?」

「そう。駆けていくのがチラッと見えたんだと」

「別に良くないか?妖精とかそんなんだろ?」

「良くない。タネの割れていないオカルトは許せないんだ」

「で、どうすんの?」

「捕獲してしかるべき機関に売り払う」

「そうか、一人で頑張れ」

「目指せ一攫千金」

「お、おう…」

 

そんな馬鹿みたいな話より、俺には夢のことが引っかかる。どうしてか分からないけど、忘れてはいけない、そんな気がする。

 

数日して後、夢の意味を知るのだが、その時の俺は首を傾げているだけだった。

 

 

 




ぬっぺふほふが気になる方はWikipediaを見るといい。なかなか面白いぞ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。