ワンパンマン ~日常ショートショート~ 作:Jack_amano
「先生、すいません。ヒーロー協会の書類に印鑑を頂きたいのですが… よろしいですか?」
夕飯後、くつろいでいると、ジェノスがヒーロー協会の印の入った封筒を持ち出して来た。
「おう、ハンコならクローゼットの中の、白鳩の絵が描いてある黄色いサブレ缶の中だ」
クローゼットの中を覗き、ガサガサと漁るジェノス。
でっかい長方形の缶だから分かりやすいと思うんだが… あぁ、あったみたいだな。
缶の中には、未使用のハガキに切手、使ってない履歴書なんかが入っている。
つまり書類入れだ。
中身を整理しながら印鑑を探していたジェノスが、ふと手を止めた。
「先生、これ――― 」
持ち出したのは使い残した履歴書用の証明写真だった。
まだとってあったのか。でも髪型が決定的に違うからもう使えないよな。
「うわ~懐かしいな、3年前の俺だ」
3年前――― つまり22才の俺。
俺がヒーロー活動を始める前、暗い眼でやたらめったら会社を受けて、ことごとく玉砕していた頃だ。
「本当に髪… あったんですね」
こいつは本当に、師を師とも思わねぇ奴だな。
俺にだってハゲてない頃ぐらいあったわ!
「どーだジェノス、これで俺が3年前までフッサフサの頭だったって信じたか?」
ジェノスはそれでも納得できないのか、写真と俺とを見比べている。
そして何を思ったのか、写真の俺の頭に指をおいて髪を隠し、うなずきやがった。
「先生… 子供の頃に、鳥居にオシッコしたり、お地蔵様に悪さしたりしませんでしたか?」
「ほんっと失礼な奴だな!んな事する訳ねーだろ」
「でも――― 」
でもじゃねぇ。俺のハゲは強さの代償なの!
あぁ、って事は、やっぱ強者でいる限り髪は生えてこのねぇのかなぁ~ 俺まだ25才なのに。
しよーがねぇとはいえ、やっぱ髪はないよりあった方がかっこいいよな~
「昔の方が… 顔のパーツは変わらないのに、眉毛が濃いせいか幼く見えますね」
えっ。 今なんか聞き捨てならない事言わなかったか?
……眉毛が濃いだと?
いや、まさか、まさかそんな―――
「どうしました先生?」
動きが止まった俺に、ジェノスが顔をのぞき込んでくる。
認めたくない。認めたくないが――――――
「俺… 眉毛いじった事ねぇ」
そういえば、ヒゲも生えねぇ。考えてみたら、スネ毛もねぇ。他もなんか薄い気が――――――
3年前ってどうだったっけ?!
…………………
まずい、まずいぞ!これは猛烈にまずい!!
「うおおおおおぉ!俺はこのままリトルグレイ化すんのか?! そして米軍に両脇抱えられて解剖室に連れて行かれるんだ~! 勘弁してくれ~!!」
「先生! しっかりして下さい!! 昨日見たUFO特集持ち出して混乱しないで下さい!! 先生のハゲは強さの証です!!」
「ハゲっていうなー!毛根はまだ死んじゃいねぇー!(※希望)」
育毛剤買ってこよう。うん決定。でもバカ高いんだよなアレ。
ついに書いてしまいました自虐ネタ。
先生!先生はハゲていても素敵です!!
最近、先生のお陰でストライクゾーンが広くなりました!
ハゲ、全然オッケーです!
ハゲは頭の形が綺麗じゃないと似合わない究極のヘアースタイルなんです!
だからジェノス、先生の頭に強化繊維を埋め込もうとしないで下さい!
(ささらないと思うけど)
毛根は死んでいないと先生はおっしゃっていますが、あの頭皮のテカり具合はもうダメでしょうねぇ~
大丈夫、きっと先生にも彼女出来ますって(※希望的観測)