ワンパンマン ~日常ショートショート~   作:Jack_amano

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未知との遭遇

「腹減った~」

 玄関を開けると、我慢していた言葉がつい出てくる。

 今日も今日とて遅くなった。

 

「突然、ヒーロー協会に呼び出されて、何かと思ったら『最近怪人が多くなったから気を付けろ』だけだもんな~。そんな事ぐらいならメールで済ませろよ」

 言いながら、冷蔵庫に向かい、材料を取り出す。

 今日の夕食当番は俺だ。

「先生のように、携帯を持ってない方がいるからでしょう」

「何か?俺のせいだって言うのか?!」

「いぇ別に」

 わざと視線をそらすジェノス。

「俺は携帯の(ふた)、開けるだけでぶっ壊すから持ちたくねぇんだよ。大体、一緒にいるお前が持ってるからいいじゃねーか」

 携帯電話の着信は、いつ切れるかと思うと、慌ててしまってつい力加減を間違える。 

 一度なんか、人様の携帯を取り上げようとして握り潰した。

 あれ… ちゃんと復旧出来たかなぁ。仕事に差し障りがないと良いけど。

 お巡りさんゴメン。

 

「……手伝います」

 なんだかよくわからないけど… 少し嬉しそうな声のトーンでジェノスが言った。

 

「いいよ。時間ないから、もう肉野菜炒めとワカメの味噌汁でいいか?」

「はい!先生の料理は何時も最高です!! 特に今日は野菜炒めではなく、()野菜炒めという辺りが!」

 それ、()めてねぇから。この肉魔人が!

 

 キャベツ、モヤシ、豆腐、肉、長ネギ――― 次々とカウンターに材料を出していく。

 それを見ていたジェノスが、おもむろに使い捨てのゴム手袋を装着した。

「やっぱり手伝います。早く調理して食べましょう。9時以降はなるべく食べない方がいいとい言いますし…」

 使い捨てのゴム手、はめちゃったんじゃなぁ~

「じゃぁ、味噌汁やって」

 ジェノスの手は、焼却砲や関節部分が複雑で物が詰まるから、家事には向かない。

 悩んだ末に、奴が買ってきたのが使い捨てのラバーグローブだ。

 全く、そこまでしてやらなくたっていいのに。

「先生、ワカメはどちらに?」

 

「棚上のジャムの瓶に入ってる」

 お湯を沸かしているジェノスの鍋の横にフライパンを置き、ニンニクとショウガを絡めて片栗粉をまぶした鳥ムネ肉を放り込む。

 明日の臭いなんか気にしな~い。旨けりゃ無罪!!

 

「焼けたらひっくり返してくれ」

 肉を焼いてる間に急いで野菜を洗って刻む。あ~、キノコ欲しかったな~。

 

「せ、先生!!」

 不意にジェノスの切迫詰(せっぱつ)まった声。

「なに?」

 みると、ジェノスの目の前の鍋から、蛇花火のようにもくもくと黒い塊が湧き出している。

 わぁ!焦げてる焦げてる焦げてる!!

「ジェノス!火を止めろ!!」

 慌てて火を止めるジェノス。

 火を止めても黒い物体は鍋から溢れてくる。

 こいつは一体…………

 あ。

 

「もしかして――― 乾燥ワカメ使うの初めて?」

「はい」

「もしやと思うけど――― 全部入れちゃった?」

「はい」

 ……………………。

 

 いや、乾燥ワカメ、『ふえ~るワカメちゃん』って商品名つくのもあるぐらい、増えるから。

 どうしよう、これ。

 

 

 あ、肉こげた。

 

 

 

 

 




経験上、沸騰したお湯に40g以上入れるとやばいです。
2分でいきます。

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