ワンパンマン ~日常ショートショート~   作:Jack_amano

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出動要請のない一日。
こんな日もあると思うのです。




平和な一日

「くそっ!またか!!」

 取り出したカプセルを開け、悔しさに歯軋りをする。

 また残念忍者。

 最初のうちはいちいち焼却していたが、あまりのエンカウント率の高さに面倒臭くなって袋に突っ込む。

 後でまとめて焼却してやる。そう思いながら、革の小銭入れに手を入れ、次の百円玉を取り出す。

 300円。マシンは金を飲み込み、俺は今度こそはと祈るような気持ちでバンドルを回した。

 ガチャ。

 転がり出すカプセル。

 どうだ?

 (はや)る気持ちを抑えつつ、カプセルを掴み取る。

 武骨な機械の手は細かい作業には向かず、つるりと滑り落ちそうになった球体を慌て握った。

 危ない。危うく握り潰すところだった。

 ほっとしながら封を解くと――― くっそぉ~!また残念忍者!!

 現実だけでなく、ゲームでまで邪魔をするとは! 今度会ったら確実に排除してやる!

 そう決意しながら、俺はまた小銭を取り出した。

 念のため多目に崩してあった100円玉は、もう数えるほどしかない。

 

 何故だ。何故こんなにも欲しい物をが出ないのだ??

 これがキングの言う『物欲センサー発動中』と言うやつなのか?

 欲しい欲しいと思うアイテムは出現確率が高い筈なのに中々でないというジレンマ。

 これだけやって出ないのはもう無いのかも?と言う思いと、これだけやったのだから次こそは!と言う思いが交差し、なかなか場所を変える気になれない。

 くそっ!次こそは!

 

「おい、なにやってるんだよジェノス」

「せ、先生?!」

 思いもよらずかけられた声の振り向く―――と、パーカーとデニムパンツと言うラフな格好の先生がぬるい目で俺を見ていた。

「キングが秋葉のガチャポン専門店でお前を見たって。鬼気迫る形相で一心不乱にガチャポンやってるってツイートされてるって言うから… 」

 …キングめ覚えていろよ。

「協会の作ったヒーロー根付けのガチャポンです。先生も入っている筈なのに何故か出なくて… 」

 もう袋一つ分は金をつぎ込んだ。今持っているコンビニの袋は、見るに見かねて店員が持ってきたものだ。

 

「…また随分やったな~ でも、無免やフブキは解るとして、俺やパニックって―――」

「ソニック(笑)はプリズナーの押しで、先生は俺が師を差し置いてグッズ化などとんでもないと断ったためラインナップされたようです」

「アァ、ソウデスカ… で、こんなにやってもコンプリート出来ないの?」

「えぇ、出るのはソニック(笑)やフブキばかり。未だ先生には出会えていません」

 使うよう、保存用、予備と3つは欲しいのに、ここまでやって一つも出ないとは、全くもって腹が立つ。

 この中に先生の人形は、本当に入っているのか?

 

「へ―、んじゃ俺もやってみるかな」

 軽くそう言うと、先生は俺が回していた機械のとなりに金をいれ、ガチャリと回した。

 えっ? 先生、これ一回300円もするんですよ?

 何時もなら小出しの金にも煩い(うるさ)サイタマ先生の行動に、止める間もなく機械が回る音が響く。

 

「おーどれどれ? あ、なんか赤い服着てるな」

 えぇっ?!

 先生のての中に落とされた人形を凝視する。

 日頃よく着ている白と赤いOPPAIパーカー、眩いばかりの肌色の装甲――――――

 これって…

 

「す、凄いです先生!一発で当てるなんて!流石、全ての敵を一撃で撃破する姿は伊達じゃありませんね!!」

「いや、関係ないだろうそれ」

 困った顔をしながら、先生は掴んでいたストラップを俺の(てのひら)に落とした。

「やるから、もうやめとけ。な? ほら、特売行くぞ」

「え?! でもタダで頂く訳には――― 俺はこれだけやっても当たらなかった訳ですから、同程度の金額を――― 」

「だ~っ! 自分の人形なんていらねーんだよ! お前ぐらいだわそんなハゲのストラップ欲しがる奴は!」

 だったら、なんでやったんですか! 300円もするんですよ? もう少し出せば白菜丸ごと割引なしで買えるんですよ??

 財布から札を取り出し、渡そうとすると、先生は諦めたようにため息をついた。

「分かった。じゃぁジェノスのフィギアと交換な? これならいいだろ」

 えぇ?! 先生が俺のストラップを持って下さるんですか?

 でも――――――

「嫌です! こんな軟弱な出来のモノなど、俺は自分と認めません!」

 俺のストラップは、ピンクのエプロンを着付けて先生の為に食事を用意している姿だ。

 実際に行っている事とはいえ、可愛らしく3頭身にデフォルメされたデザインは、俺が実力がなく、弱いからだと言われているようで屈辱以外の何物でもない。

「え~何で? 上手く出来てると思うけどなぁ」

 俺のストラップをひょいと摘まみ上げ、しげしげと眺めたかと思うと、先生は無造作にポケットに()じり込み、(きびす)を返した。

 

「くっ! これも強くなれと言う精神的鍛錬ですか?」

「…お前って時々訳わかんないよな。ほら行くぞ」

 人波を掻き分けて行こうとする先生を前に、俺は慌てて後を追おうとして、腕に下げていた大きい荷物思い出した。

 袋の中身は、残念忍者に弱小女組長、C級一位に、エプロン姿の俺。

 

 邪魔だ。

 

「焼却!」

 掌から飛び出す炎と共に、プラスチックが焦げる臭いが辺りに広がる。口々に何か言いながら俺に近付いて来ようとしていた一般市民達は慌てて退いた。

「お前!何やっちゃってんの?! 有害物質出ちゃうじゃねーか!」

 往来で燃やしてんじゃねぇ! なんて言いながら、慌てて先生も戻ってくる。

「いらないものですから」

「いらないならいらないでグッズ屋に売るとかさ~」

 ぶつぶつと言い続ける先生を横に、俺はたった一つの残った先生のストラップを大切にポーチにしまった。

 先生直々に頂いた物だ。これは永久保存版にして、使用用と予備はまた明日手に入れに来よう。

 

「さぁ、行きますか先生!」

「は~っお前の金の使い方、マジ訳分かんねぇ」 

 (かぶり)を振る先生と共に、俺達は今日一番の戦場に向かった。

 

 

 

 

 

 




このジェノス、パチンコとかやったらヤバそうです。


ところで、ガチャポン。
けっこうやったのですが、その内の2/3はソニックでした。
もう究極奥義『十影葬』が出来る位ソニックがいます。
 殺!!
次がフブキで、以外にもレアが複数出ました。
でもサイタマ先生は出会えず、見かねた仲間が一発で引き当ててショックでした。
毎度毎度、『物欲センサー』をフル発動させています。

結局、先生とジェノスを交換してもらったのですが、猫に拉致られて甘噛みされてしまい、保存用の先生を手に入れようと店に行ってみればもう品はなく、泣く泣くパテ埋めしました。

あぁ、愛が空回り。

レアもサイタマ先生だったんですがね~ 私は普通のタイプの方が好きです。
バンダイさん、次は髪のあるサイタマ先生を希望します。






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