踏み台だった野郎共の後日談。   作:蒼井魚

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08:外出

 どうしようもないくらいに暇な日というものは、まあ、あるものだよな。そういう日は基本的に俺達はゲームセンターやら、ショッピングモールなんかに出かける事が多い。毎月三十万円も貰えるのだ、それを贅沢に浪費しても罰は一つも当たらないと思う。金を使って経済回せよ、とはよく言ったものだ。

 

「二百円でガンシューティングゲームクリアして店を泣かそうぜ」

「ああ、いいな、今日こそは記録更新したる」

 

 今日は男臭い野郎二人で近所のゲームセンターに来ていた。最初に手を付けるゲームは大抵、高難易度を誇るガンシューティングゲームが多い。まあ、高難易度と言っても、俺達二人は基本的にそれ以上の難易度を誇る事件やらをぼったくり料金で解決しているのだ、生易しいにも程がある。

 二百円をゲーム機に投入して左側に俺、右側に武蔵が立ち、静かに呼吸を整える。

 

「さて、ゲームをはじめるか......」

 

 ワラワラと現われる敵に最低でも四発の弾丸を撃ち込み、弾切れと同時にリロード、無駄のない動きで敵を翻弄する。目に見えてスコアは向上していき、武蔵との連携も高まっていく。十分が経過、後ろにワラワラと人だかりが出来はじめる時間帯だ。だが、後ろを振り返ることなく、敵を機械的に屠っていく。

 

「このゲーム糞長いからな、指が疲れんだよ」

「まあ、リコイルがあるからある程度は疲れが取れるだろ、我慢しな」

 

 後半の敵は動きが速くて対応に困ることも多いが、それ以上に早い敵と対等したことがあるので、まあ、偏差射撃でどうとでもなる。

 黙々と的を屠っていったらエンディングに到達して、まあ、ハッピーエンドだった。

 

「今回も記録更新ならず、ニュータイプの道のりは遠いな」

「まあ、今でも十分にニュータイプだと思うがな」

 

 シューティングゲームを約三十分で終わらせて、自販機で好みのドリンクを購入して休憩する。

 

「ガンシューは精神力を擦り減らすから疲れるなぁ〜」

「まあ、それ以上に人質を盾にしている犯罪者の方がもっと性質が悪いからなんとも言えんが」

「それはおまえが狙撃銃で脳天の風通しをよくすりゃいいだけだろ、簡単な仕事じゃないか」

「ミッドチルダに銃火器持ち込むと管理局にギャーギャー言われるから嫌いなんだがな」

 

 まあ、そんなのお構いなしにブッパしますけど、ぶち殺しますけど。

 

「次はどの島に移る? 格闘ゲームかキャトル・ミューティレーション装置(UFOキャッチャー)、それとも女子小学生とキャッキャウフフするためにオシャレ魔女ラブ&ベリーでもやるか」

「圧倒的に後者ですわ。女子小学生と意味深な仲になりたいですわ」

 

 互いに女子小学生という言葉を聞いた瞬間に目が血走る。何故なら、俺達がこの世界に存在している最初の理由、それは、原作ヒロイン(小学生)と意味深な関係になることなのだから。まあ、わかるだろ? ああ、そう、俺達はロリコンなの、ロリータ・コンプレックスなの!

 リュックサックの中からラブベリカードがビッシリと収納されたカードフォルダーを取り出す。

 

「じゃあ、キャラクターの衣装を考えましてよ、このドレスとかアリじゃありません?」

「正直、もうすこし露出を増やしたいですわ」

「ですが、あまりにも露出を増やすとお下品になりましてよ」

「殿方はお下品な方がお好みでは?」

「オーホホホ! 大好物ですわ!!」

「なら、この短パンとTシャツ、靴はスニーカー、現代的なファッションでよろしくて?」

「ダメですわ! ここは短パンではなく、パッションなカラーのミニスカートを装備! 絶対領域を強調しましてよ!!」

「その考えはありませんでしたわ! わたくしもその案に賛成しましてよ!!」

「「オーホホホ!!」」

「アンタ達......気色悪いわよ......」

「あぁ?」

 

 パツキンセミロングの美少女様と紫髪の美少女様が俺達のことを蔑みの瞳で見つめている。

 

「おまえ達はお嬢様なんだからさぁ、こんなお下劣なゲームセンターに来るなよ、品性を疑われるぜ? 正直、俺はおまえ達が援交少女なら十二万払ってるところだが、この場所に足を踏み入れた時点で三万に減ったわ、ねえ、お姉ちゃん達、三万でどう?」

「女の子に援交という単語を平然と使っているアンタに言われたくない言葉のオンパレードね。それに、わたし達だって普通の女子中学生なんだから、ゲームセンターにプリクラの一つや二つ撮りにくるわよ......」

「つか、俺達、そんなにキショイ? 正直、ミジンコ程度のキショさだと思ってるんだけど」

「なんとも表現しにくい生物に例えないでよ......」

「えぇ〜ミジンコ有名だよねぇ〜メダカの餌だよねぇ〜」

「わたしぃ〜ミジンコの大ファンなのぉ〜似てるって言われるなんて嬉しぃよぉ〜」

「死ね!」

「「ゴホッ!?」」

 

 アリサ・バニングスのバーニングフックが俺達の頬を鋭く抉る、その場にぐったりと倒れ込み、流石はバーニング・アリサは格が違うぜ、と、心の底から思った。

 

「というか、アリシアから聞いたけど不登校してるんですって? アンタ達には将来の夢とか無いの......」

「正直、毎日デリヘル嬢を呼んでパーティーナイトを過ごせるくらいの蓄えあるから将来とかどうでもいいです。まあ、ヴィータが入り浸ってるからそれは出来んが」

「ヴィータちゃん、やっぱり入り浸ってるんだね......」

「変なことしてないでしょうね?」

「あ、いや、全然。偶に過去の記憶がフラッシュバックして俺の寝床に潜り込んでくるんだけどさぁ、アイツに限っては俺のライトセイバーも反応しないのよ、もしかしたらインポかもしれん。それかぁ〜フォースが足らんのかもしれん」

「え!? 俺の布団には潜り込んでこんぞ!!」

「好感度を上げて出直してこい!!」

「しーましぇん!?」

「......本当にアンタ達は馬鹿ね」

「馬鹿って言う方が馬鹿なんですぅ〜! 小学校の先生に教わらなかった?」

「ぷぷぷ! お嬢様のくせに許容が低いですわねぇ〜」

「チェストー!!」

 

 バーニングアッパーが俺達の顎を抉る。脳が揺さぶられて立ち上がることが出来ない。

 

「見える、私には見える、アリサ・バニングスが結婚して旦那を虐めに虐める未来が見える」

「殺されたいの?」

「いや、全然、逆に生きたいです。俺達、いつ死ぬかわからん存在だし」

「この場で死になさいよ」

「嫌だよ、女子小学生と意味深な仲になるまで死ぬことは出来ん。さあ、中学生に成長した貴様達は立ち去れ、我々は女子小学生を求めておる!」

「アンタ達ねぇ〜......自分から犯罪者になってどうするのよ?」

 

 バニングスの言葉、犯罪者という一言を聞いた瞬間に俺と武蔵は顔を逸らした。

 

「......犯罪者には、もうなってる。罪に問われないだけだ」

「......いつ死ぬかわからない存在だってのも確かだ。俺達は体のいい傭兵としかみなされていない」

「......ごめんなさい」

「......輝夫くん、武蔵くん」

「いいさ、俺達は自身のやっていることを誰よりも深く理解している。それを理解しろ、なんて、馬鹿げたこと言わないさ。ただ、俺達は自分勝手に生きて、理不尽に死ぬのを望んでいる」

 

 月村が一歩前に出て、俺と武蔵の頬を叩く。

 

「二人がやっていることで助かっている人がいるんだよ」

「月村、確かにそうだ。俺達が行う行為によって、救われる人間は多い。そして、それは肯定され、受け入れられる。なあ、高町か、フェイト、それか八神から話くらいは聞いてるだろ? ――二人の活躍は凄い、ってね」

「......そう、だよ」

「それが間違いなんだ。俺達は多かれ少なかれ、悪人という存在を消している。禁忌に触れているんだ」

「......輝夫、それ以上、それ以上話すな。俺達は二人に説教と冷たい現実を突き付けるためにこの場所に来たんじゃない。ゲームを楽しみに来たんだ。わかるだろ?」

「......ああ、すまない! ギャグキャラがシリアスしたらあかんわぁ〜よし! 最近は八神嶺上開花製造機のせいで麻雀が打てない状態だったから、麻雀を打ちますか!」

 

 産まれたての子鹿のように足を震わせながら、ゆっくりと立ち上がり、麻雀ゲームの方向に足を運ばせる。だが、月村に手を掴まれる。

 

「お詫び、させて......二人の頬、叩いちゃったから......」

「......なら、プリクラでも撮ろうか? あれ、どうやって撮るのか、男子だからわからんのさね」

「男子禁制の領域だしなぁ〜」

「女子小学生と意味深な関係になるためにオシャレ魔女ラブ&ベリー をプレイしようとしていた奴らが言わなそうな言葉の上位に入るわよ、それ」

「うるせぇ、女子小学生との出会いはカードゲームって決まってんだよ」

 

 まぁ、こういう休日も悪くない。

 犬猿の仲だった二人とも、まあ、こういう風にすこしギクシャクしているが、話せるようになったんだ。

 

 

「てか、最近修一郎様の姿を見んのだが、アイツどうしてるの? 一応は管理局で働いてるって聞いてるけど」

「ん、シュウは仕事が多くて最近はアンタ達と同じになってるのよね......」

「なるへそ、でも、修一郎さんは俺達より糞弱いから怪我とかしてないか? アイツ、剣型のデバイス使ってる割には、すぐに懐に入られるわけだし」

「シュウくんが出撃する時は大体の場合はなのはちゃんと一緒らしいから、大きな怪我はしてないみたいだよ」

「アンタ達が桁違いに強いってだけでしょ。シュウもたいして弱いわけじゃないらしいし」

「まあ、君達の思い人が深い傷を負わないことを祈ってるよ」

「本心?」

「ああ、俺達は基本的に無害な存在だからな。ただ、女の子のお願いには、滅法弱い」

「それが男の本能ですからね」

「男って、不自由な生き物なのね」

「いいや、女より男の方がずっと、自由さ、ただ、世界が狭く見えるだけ......」

「男として生を受けて、よかったと思ってますよ、お姫様方」

「......馬鹿」

「言われ慣れてるよ......」




【二人の貯金額】
 地球の銀行に三十二億六千万四百六十五円、ミッドチルダに十二億円。

【作者から】
 キャラクターを増やすと二人の性質上、シリアス展開に突入してしまいます。ギャグ展開を期待している方々、申し訳ございません。

投稿ペース

  • 一秒でも早く書いて♡
  • ネタの品質を重視してじっくり!
  • 冨樫先生みたいでええよ~
  • 絵上手いから挿絵積極的に

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