踏み台だった野郎共の後日談。   作:蒼井魚

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24:遊技

 ワイの名前はバルバロイ、昔は荒廃した世界をACで駆け巡っておったやり手の傭兵やった。やけど、強化人間化手術の影響で三十九歳で死んでもうて、一億人も人間を殺したんやから普通に地獄でルシファー先輩と同列の扱いでペシペシされとったんや……。

 やけど、そんなワイを拾い上げてくれたのは名前も知らない微妙に乳の小さい女神様やったんよ。その女神様が言うには一億人殺した貴方を所望してる転生者? ようわからんけど飼い主になりたいと言っとる馬鹿がおったわけやから地獄から現世に復帰! 首輪付きの頃と同じように大暴れ出来ると思っとたんやけど……蓋を開けたら二百年前くらいのライトノベルに書かれているような平和な世界……。

 ご主人はんは一応はワイの闘争本能を理解してくれていて、何回かモンスター討伐とかに行ってたんやけど、それはCAPCOMでこっちはフロム・ソフトウェアなんよってツッコミ入れたらその日からモンスター退治はやらんごとなった。

 そんな暇を持て余したワイはご主人はんに銀行からデリヘル代を降ろしてこいと言われてフラっとパチンコ屋に足を踏み入れて現在に至ってるんや。

 

「お、バルの兄さん今日はここですか?」

「おう、スロ丸! 平日なのになんで並んでんねん」

「有給休暇義務化のアオリイカで暇なんすわ」

「妻子持ちの癖にゴミやのぉ~」

 

 こいつはスロ丸、綺麗な奥さんと運が良く奥さんに似た娘さんを持っとるゴミや。なんや地元の大土地主で土地転がしの副業でえろう儲けてるらしいからパチ屋に行くのは誰も止めんらしいけど、こういう平日は奥さんに家族サービスした方がええと思うんやけど……二人目作る資金力あるやろうに……。

 スロ丸と他愛もない世間話をしていると見知った顔がもう一人やってくる。

 

「あらあら、プレシアはんも打ちにですか」

「ええ……家に居にくくて……」

「何しはったんですか?」

「それは……」

 

【回想】

 

「偶には娘達に出来るお母さんだということを見せつけないと」

 

 娘達の部屋に入ると綺麗に整理整頓されていて埃一つ俟っていない。それに付け加えてい最近買い替えたという空気清浄機が彼女のことを睨みつける。この部屋のハウスダストは俺がすべて食らい付くしてやるわ! そんな風にドヤっている。

 プレシアはハンディータイプの掃除機を握りしめて震えている。

 

「じゃあ、お洗濯を……」

 

 思春期の子供達なら洗濯物を自分でも忘れた場所に洗濯物を置いてしまっていることがある筈! 娘達のベッドの脇や下を漁ってみると男性用の伸縮性のあるボクサー型のっていうんですかね、ちょっとスパッ…ツに近い感じの下着が隠されるように置かれていた。

 

「……洗った方がいいわよね?」

 

『姉妹帰宅』

 

「「(お)母さん……隠してたパンツは……」」

「え? ああ、洗ってあるわよ」

 

 綺麗にたたんだ男性用のパンツを渡そうとすると二人は大声で泣きはじめた。

 

「これが……最後の一つだったのに……」

「輝夫のパンツが……」

「え、え?」

「「(お)母さんの馬鹿! もう二度とお小遣いあげないから!!」」

 

 二人の娘との会話は一週間ありませんでした。

 

【回想終了】

 

 ワイも昔は母親の腹の中で育ったけどここまで親にしたくない人間ってはじめてみましたわぁ……。

 それにしても、熟女と呼ばれる年齢なのに十三歳の娘に小遣いって……。

 

「私だって働きたいわ……でも、この世界の科学とあっちの世界の科学は……」

「それにしても、娘にいくらお小遣いもらってるんですか?」

「……十二万円」

「ゴミクズ!?」

 

 十三歳の娘に十二万円も遊ぶお金をもらってるとかマ? ご主人はんのペットであるワイでも毎月八万+出来高なのにニートで十二万!? これは親やない……パラサイトや……。

 それに娘から貰った大切な小遣いでパチ屋に行くとかゴミやなぁ……ワイもパチンカスの猿ロボットやとおもっとったけど、上には上ということわざは実在するんやなぁ……。

 

「掃除洗濯はしないんですか?」

「掃除洗濯はフェイトが綺麗好きだから……」

「料理とかは?」

「アリシアが調理が好きだから……」

「プレシアはんの存在理由は?」

「……言わせないで」

 

 せっかくご主人はんの尽力でシャバに出られたというのにやってることがニートとか……。

 ワイも前世から人間の屑やと思っとったけど、女の人のゴミクズって見てるとAV落ちしそうで怖いですわ、この人は娘に捨てられたら確実に熟れた体を映像作品に残しそうやわぁ……。

 

「プレシアはん……言いたくないんやけど、ワイとアンタは同類やで……」

「――ッ!?」

 

 よほどのショックやったのか唇を噛み締めている。やけど、これは事実であって目を逸らしてはいけない事実なんや、プレシアはんは完璧にダメ人間になってしもうとるんや……。

 

「プレシアはん……割り切らないと心が死にまっせ……」

「そうね、そうよ、そうだわ。どうせ、二人は大金持ちの輝夫と結婚するんだからお金のことを心配していちゃいけないわね……」

「そうです! あの二人がご主人はんと結婚したら一生使い切れないくらいの大金が入るんやから割り切ろうじゃありまへんか!!」

 

 プレシアはんの目に光が戻った。ご主人はんはもうフェイトはんの一生分のお給料十数回分の金額を銀行に入れている。やから結婚したら死ぬまで悠々自適な生活が確定するんや、ワイもペットとしてダラダラ生活できる! 将来の不安なんてないんや!!

 ――ゴミやな、ワイ。

 

「お、抽選がはじまりますわ」

「十数人しか並んでないのに抽選する意味あるのかしら……」

「まあ、お決まりやから仕方ないですわ」

 

 パチ屋の店先に数字を出す機械が置かれてそれを押すと番号が表示される。十一番、この列びで番号なんて不問なんやけど……。

 うーん、スロットもええんやけど三ヶ月ずっとスロットやからな……。

 

「バル、貴方は何を打つの?」

「三ヶ月連続でスロット打ってるから今日はCR北斗無双にしますわ」

「北斗無双? ああ、あのケンシロウと兄弟がヒャッハーする台ね」

「そうそう。通常時はゴミなんやけど確変は面白いんよ」

 

 店の中に入るとガラガラの北斗無双コーナーの角台に座って一万円札を突っ込む。

 

「さらば諭吉!」

「隣失礼するわね」

 

 プレシアはんはワイの隣の北斗無双に座って一万円札を突っ込んだ。

 プレシアはんも初っ端から北斗無双を打つなんて度胸ありますなぁ、こいつはボーダ甘々の319規制最後の希望であるのは確かなんやけど、通常時は葬式のお経よりクドくて激アツも平然に外すゴミなのになぁ……。

 

「これ……何待ち……?」

「金保留でスタートラインですわ」

「金ね……あっ!?」

「お、スタートラインおめでとうございます」

 

 プレシアはんの台に金保留が出現。成り上がりじゃない金保留は鉄板レベルのゲロ熱やから当たってくれたらええんやけど。この台はホンマモンのゴミやから外れる時は普通に外れるからのぉ……。

 三回目の玉貸しボタンを押してぼーっと台を眺める。

 

「運命の女?」

「北斗無双の通常時に期待を持っていたら死にますよ」

「わ、わかったわ……」

 

 プレシアはんの台は期待を裏切ることなく金保留で当選してそのまま確変直行。ワイの台もボーダーラインギリギリで打てなくはないんやけどなぁ……。

 

「……このサウザーって輝夫に似てるわね」

「確かに似てますわ……」

 

 ご主人はんはサウザーで武蔵はんがアインと言ったところでしょうか? ワイは確変はリン一択やから使ったことありまへんがね。

 

『ばる……へるぷみー……』

『現在この念話は使われておりまへん』

『三十万あげるから……』

『前の仕事のお小遣いで一年は楽しめそうやからええですわ』

 

 面倒くさいご主人はんからの救援信号を無視して液晶を眺める。北斗無双は八万円突っ込んで八万円もどってくる台やからなぁ……。

 

「輝夫強いわね……ケンシロウに勝ったわよ……」

「ご主人はんが優男はんに勝つのは当たり前じゃありまへんか」

 

 プレシアはんがサウザー(ご主人はん)を駆使して猛者達を大量に屠っている時に最初の福沢諭吉が消え去った。パチンコはゆっくりとダラダラ打たないといけないんや……金はあるんやから……。

 

 

 あれから三時間、ワイは五枚目の諭吉をサンドの中に突っ込んだ。回転数は800を超えており生身の状態やったら眠気で死んでるやろうな……。

 パチンコは貴族の遊びとはよく言ったもので貴族待遇のワイじゃないと死んでますわ……。

 

「本当に輝夫(サウザー)強いわね……」

「今日のサウザーはご主人はんが乗り移ってますわ……」

 

 プレシアはんは座ってからずっと右打ちでサウザー(ご主人はん)の戦いを眺めている。ワイも嫁のリンちゃんでラオウを討伐したいのに緑保留から先が見れない。やっぱりアクロスを技術介入でぶっ壊した方がよかったやろうか……。

 

「煙草いいかしら?」

「ええですよ、ワイには嗅覚ないんで」

 

 プレシアはんが煙草を取り出して高級そうなライターで火を付ける。煙草の銘柄はピアニッシモのゴールド、似合うと言えばすごく似合う。

 

「ねえ、一万円で輝夫のパンツ売ってくれない……」

「嫌ですよ、ご主人はんのパンツとかお金払われても触りたくありまへんわ」

「娘達の好感度がバク上がりするのよ……」

「自分で交渉してくださいな」

 

 本当にテスタロッサ姉妹はんはご主人はんにゾッコンなんやね、ワイは男やからご主人はんの良さが一切わからんわ……多少金払いがいいくらいしか取り柄ないですよ……。

 プレシアはんのサウザーは本当にご主人はんが憑依しているのではないかというくらいの強さで今の今まで確変を継続させている。北斗無双の継続率は約80%の筈なんやけど……。

 

「……当たるまでやりまっせ」

 

 ここからが地獄だった。

 

 

「輝夫が強かったわ……」

「ワイのリンちゃんは高町の嬢ちゃんくらい弱かったですわ……」

 

 近所の公園でプレシアはんとベンチに腰掛けている。ワイも一日で五回は当たりを取れて三回は確変だったのだが、最高連チャン数が三という悲惨を通り越して絶望を感じさせる。北斗無双なんぞに諭吉を捧げるくらいだったらシンフォギアをダラダラ打ってたほうが勝てたかもしれへんわ……。

 

「ねえ、三万円で輝夫の下着を……」

「何枚ですか?」

「二枚……」

 

 プレシアはんから六万円を貰って自宅に走った。

 あ、最後に言わんといけんわ……。

 

【パチンコは適度に楽しむ遊びです by全日本遊技事業協同組合連合会】




 今のパチンカス(パチンコ派)は北斗無双派とシンフォギア派に分かれてる。私は断然シンフォギア派ですね、CR機が消え去るその日まで最終決戦を楽しみます。
 でも、この世界で一番確変が好きなのはCRジョーズ再臨です(クソ台)。

投稿ペース

  • 一秒でも早く書いて♡
  • ネタの品質を重視してじっくり!
  • 冨樫先生みたいでええよ~
  • 絵上手いから挿絵積極的に

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