踏み台だった野郎共の後日談。   作:蒼井魚

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19:監禁

 今日という日はとても素晴らしい一日になると期待している。なぜなら古代遺跡にピクニックに行きましょうというお誘いを受けたのだ。だって! 俺がこの世界で一番愛している修一郎様からのお誘いなんて蹴れるわけないでしょ!!

 というわけで大型のリュックサックに最低でも五日は遭難しても大丈夫なだけの携帯食料と飲料水を用意して最悪の事態に備えてもいる。ただ、一番危惧しなければならないのは相棒である武蔵が季節外れのインフルエンザに感染してとりあえず入院していることだろうか……。

 

「なんで腐ったみかんがいるん?」

「えっと……護衛かな?」

 

 憧れの方(修一郎様)の友達は友達という謎理論で顔見知り程度のユーノくんが子狸に答えた。まあ、俺も相棒が居なくて暇すぎて修一郎様に浮気してるんですけどね。それ以外の理由なんて脳みその中に存在しません。相棒を弄れないなら優男を弄ればいいじゃない!

 

「で、修一郎様ぁこの遺跡にはどんなのがあるの? ピクニックしに来たわけだけど」

「ユーノ説明よろしく」

 

 修一郎様は説明を放棄してユーノくんに一任した。

 

「えっと、ここは人類以外の知的生命体が存在していたって言えるものが発見されて発掘家の間では凄いブームが起こってるんだよね」

「ほへぇ……所謂ところの宇宙人、それも頭のいい生命体がいた場所かぁ……」

 

 高町の方を見るとプイッと顔を逸らした。なんでだろうか、お嬢様二人はメル友なのに高町だけはどうしても仲良くなりたくないみたいだな、まあ、仲良くなりたくないと思ってる奴と仲良くなる必要もないか。

 

「腐ったみかん……変なことしたら殺すからな……」

「なに貞操の心配してんだよ……脳みそワイテンノカ?」

「正直、ここの全員でも腐ったみかんに勝てんと思うからな……」

「ぼっくんはよわよわだお!」

 

 一時間かな、高町と狸強いし。

 子狸の口撃をあしらいながら遺跡を歩いていると発掘品が並ぶ場所に到着した。布の上には剣みたいなものからお玉まで、金属製のものが多く並べられていた。確かに人間並の知性をもった存在がいたみたいだ。

 

「ん? あれはなんだ……」

「ああ、あれは出土したんだけどなんなのかまだわかってないんだ」

 

 妙にメカニカルなキューブ型の何か、結構大きくてプレハブ小屋くらいの大きさがある。

 

「これ何だろな……ユーノくんもわからないって言ってるし……」

「腐ったみかんの頭じゃわかるわけないやん」

「おうやるかおら!」

「今日もけちょんけちょんにしてやるわ!」

 

 ギィィという扉が開くような甲高い音が響いて、

 

「へ?」

「え?」

 

 吸い込まれた。

 

 

 現状を報告しよう。俺と八神は謎のキューブの中に吸い込まれた。

 キューブの中は天井に照明がついており、それ以外にはベッドとトイレ、そして水が出るのだろうか洗面台がある。

 率直に説明させてもらうと窓の無いプレハブ住宅と言ったところだろうか?

 

「な、なんなんや……」

 

 よくわからないが八神が絶望しているので洗面台の蛇口を確認する。水が流れたら最高だったのだが古代の遺物なわけで水が流れることはなかった。トイレの方も水が捌けている。これは長い時間閉じ込められたらリュックの飲料水は2日で飲み干すか……。

 

「なのはちゃん! 修一郎くん! 助けて!!」

 

 八神の声が響くが反響が少ない。壁の素材は防音仕様か……。

 吸気用の穴は空いているから窒息死することはない。

 

「どうなってんや!!」

 

 リュックサックの中の食料と飲料水を確認する。とりあえず登山用のリュックサックに腐りにくい携帯食料と飲料水をできる限り詰め込んだが二人で2日だ。

 

「なんでそんなに冷静なんや!?」

 

 ようやく俺の存在に気がついたのか八神が涙目になりながらも睨みつけた。

 

「だって……冷静にならないと疲れるし……」

「もしかして冷静にわたしを襲う計画を!?」

「おまえは餓死しろよな……」

 

 食料の入ったリュックサックを抱きしめて蔑みの目で八神を見つめる。ぐぬぬという悔しそうな顔でごめんなさいと謝った。これは素晴らしい……これがメスガキ屈服というやつなのだろうか……!

 さーて、食料の主導権は俺が握っているわけだからいつもより優位な立場で立ち回ることが出来る。ああ、八神を嘲笑うのは何ヶ月ぶりだろうか……。

 

「さあ、食料を懇願し――ゴボアッ!?」

「アンタに主導権握られるのは癪に障るんや……」

 

 鋭いキックが顔を抉って三途の川の手前の花畑に誘導しやがった……。

 握りしめていたリュックサックを奪い取られる感覚があるのだが奪い返す力が出ない。

 

「……腐ったみかんはどうしてこうも用意周到なんやろうか」

「俺の水を飲まないでいただけますか?」

「おまえの物は俺の物! 俺の物は俺の物!!」

「唐突なジャイアニズム!?」

 

 とりあえず食料の主導権は完璧に八神に奪われたわけだが俺くらいの人間になると三日間くらい飲まず食わずでも生きられる訓練をされている。なんなら一週間寝なくても正常な判断だってできる。

 よし、部屋の片隅で寝るか。

 

「……懇願せんの?」

「…………」

「……無視すんな!」

「…………」

 

 俺は空気、この世界に存在しない存在。これが夢想転生の境地、体を天に返しこの世界に存在する。あらゆる欲を捨て去れ……。

 肩に軽い何かが乗る感覚がする。なんで俺に寄りかかってるんですかね……。

 

「……無視せんでよ」

「…………」

「……ヴィータとアリサちゃんを呼んでぐちゃぐちゃにするんやからな」

「…………」

「……うぅ……なんで……」

 

 なんか一人寂しくなってるみたいだけど俺は寂しくないからオールOK、あんまり脳みそ使ったりするとお腹空いてしまうからな。

 隣からシュルシュルという服を脱ぐ音がする。

 

「……何してんの?」

「……輝夫はスケベやから服を脱いだら起きると思って」

「服を着なさい。喋ってあげるから……」

 

 八神は俺の右手を引っ張って胸に押し当てる。これはどういう状況なのだろうか? 即落ち2コマ並みの超展開で困惑しまいますわ。

 顔が真っ赤で耳まで真っ赤、流石は生娘ですわぁ……。

 

「……好きにしたらええよ」

「露骨に目を瞑ってキスを求めるな。早く服を着ろ」

 

 なんで飽きないでキス顔を続けるわけ? 俺は君とチスなんて絶対しねぇよ、輝夫たんの輝夫たんは一切反応してませんよ……。

 とりあえず動かないから胸の押し当てられている右手を解いて服を着せる。そして抱き上げてから人形代わりに抱っこして頭に顎を乗せる。

 

「おまえさぁ、俺みたいな奴に体を委ねようとかとんだビッチだな……」

「……臆病者」

「へいへい」

 

 とりあえず瞑想して空腹を飛ばすことは八神がいる限り無理だということを理解した。なんで女の子って面倒くさいんでしょうね? なんでいい匂いするんですかね……。

 

 

 左手の腕時計を確認すると五時間経って夕飯時と言ったところだろうか? 本来だったらユーノきゅんの一族が風土料理作ってくれるみたいな感じだったんだろうが俺と八神は携帯食料くらいしか食うことが出来ないみたいだ。

 

「……おトイレ」

 

 即座にジャケットを脱ぎ捨てて顔に巻きつけて耳を塞いでやる。このくらいしないと絶対に殴られるかエロ漫画みたいな展開に巻き込まれるパターンだし……。

 耳を塞いでいてもわかるくらいの大声で自分の小水の音をかき消している。そして紙がないと叫んだ。

 

「……リュックサックの小さいポケットにティッシュが入ってる」

 

 肩を叩かれるので顔に巻いたジャケットを解いて壁にもたれかかる。これが何日続くのでしょうか?

 

「……死にたい」

「……そう」

「男がいる部屋でおトイレなんて……」

「……そう」

 

 互いに凄まじく気まずい雰囲気が続く。

 なんか俺にも尿意が……。

 

「……すいませんが明後日の方向見ていてもらえませんか?」

「……うん」

 

 八神が後ろを向いてくれたので自分も尿意を解消した。出し切った後に安堵の溜息を吐き出してチャックを締めて八神の方を見てみると顔を隠しているように見えるが確実に指の間からトイレしているところを見ていましたねこれは……。

 

「明後日の方向を見てくださいよ……」

「こっちの方角が明後日やったんや……」

「さっきまで後ろ向いてくれてたじゃないですか!?」

 

 この子狸のことはわからない……。

 八神に多少の不安感を覚えたので反対側の壁に寄り掛かる。するとムッとした顔をした八神が俺の隣に来た。

 

「恥ずかしかったん?」

「……無視しますね」

「また脱いでええん?」

「女の子がはしたないですわよ……」

 

 ああ、もう……なんで武蔵いないのよ!? インフルエンザくらい気合でどうにかせぇい!!

 よし、こんな時は修一郎様を数えよう……修一郎様が一人……。

 

「修一郎様は一人しかいねぇ……」

「何考えてるんや……」

「冷静になるために修一郎様を羊みたいに数えようと思ったら彼は一人しか居ないって……」

「心の病気やね」

 

 とりあえず食料と水をケチケチしていたら気が狂いそうなのでリュックサックから携帯食料とペットボトル二本を取り出して分配する。八神も空腹を感じていたのだろう何も言わないで受け取った。

 俺の用意周到な性格を今日程に喜んだことはない。俺という存在はどうしてこうも要領がいいのだろうか? 俺が女の子になったら世界中の男に同時告白されるだろうなぁ……。

 

「……もう寝る。おまえはそこのベッド使え」

「……一緒は?」

「絶対に駄目、生娘が男に体を委ねるなと言ってるだろうが」

 

 八神は頬を膨らませ、もう知らないと言ってベッドの中に入った。とりあえず俺も寝よう。寝ないと空腹になってしまう。

 

 

 目が覚めると何故が唇まで五センチくらいの距離に八神の顔があった。

 とりあえずまだ夢の中にいるのだろうと思って頬をペシペシと叩いてみると痛みを感じる。これは夢の中でも痛みを感じる心の病気なのだろうか?

 

「八神……黄色い救急車を手配してくれ……」

 

 八神は顔を真赤にしてその場に座り込んで顔を隠した。とりあえず昨日の食事の時に飲んでいた水の残りを飲もうと思ったら飲み干されている。寝ぼけて飲んでしまったのだろうか? いや、そんなことは絶対にないだろう……。

 

「……俺の水を飲まないでよ」

「うるさい!」

「えぇ……」

 

 とりあえず時間を確認すると八時くらいだ。朝食を食べたくなる時刻だが、あと何日でこの部屋から助け出してもらえるかわからない状況だからな……。

 八神は体育座りでブツブツ何かを唱えている。俺を殺すためにザラキでも唱えているのだろうか? それともパルプンテで奇跡を……。

 

「もう駄目や……こうなったら……」

「大丈夫だ。食料はまだある……」

「そうじゃないん……」

「何が?」

 

 八神は俺のことを押し倒した。

 

 

「ようやくわかったよ!」

「で、このキューブは何の装置なんだ?」

「このキューブは……」

 

 

「やめろ! 俺はおまえとそういう関係にはなりたくない!!」

「うるさい! このまま何日も一緒に居たら絶対に小さいのじゃなくて大きいのもしてしまうんや……」

「大丈夫だ! ニオイ消しにマウスウォッシュ使うから!? 便器に振りかけるから!!」

 

 八神が壊れてしまいました。小水はまだ許せるが大きい方は無理だということだ。だが、俺とただれた関係になればどうにか耐えられるという謎理論を繰り広げて逆レイプをしようとしている。

 

「まずいですよ!?」

「あばれんなよ、あばれんなよ……」

「うもぅ!?」

「おまえのことが好きだったんだよ!!」ズキュウウウン

 

 唇を重ねた瞬間に金属の扉が開く鈍い音が響く。

 

「もう我慢しない……心の奥底に隠してた全部ぶちまけるんやから……」

「ちょっと、ちょっとちょっと……」

「女の子やったらわたしが名前つけるけど、男の子やったら輝夫が付けてええよ」

「見られてる! 見られてるから!?」

「なに言って……わたし達二人だけやん……」

 

 八神はようやく気がついた。死んだ目をしたフェイトたんとヴィータが俺達の営みを眺めていることに……。

 俺はどうしたらいいんだ……。

 

「「………………」」

「輝夫……今日は本気で殺す……」

「……ヴィータ、手伝っていい?」

「やめて! お願いだからフェイトたんは俺のことを殴らないでぇ!!」

 

 ヴィータとフェイトたんが鈍い足取りで歩み寄ってくる。

 

「むさしきゅん! むさしきゅん!! 助けぇてぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 死にました。

 

【おまけ】

 

 あのキューブ型の物は古代に生きていた知的生物が生殖活動を隠れてするものだった。その知的生物が口づけ、つまりは接吻によって生殖活動をしていたということが出土した書物から確認された。

 どういう条件であのキューブに入ることが出来るかはわからないが、今回、八神はやてと西風輝夫がキューブに引き込まれて約十二時間程度で出てきた。出てくる条件は古代の知的生物の生殖活動と同じ接吻だったようだ。

 今回、両名が閉じ込められた後に彼らの救出の為に多くの友人の魔導師達が駆けつけたが、扉が開いた時には二名の魔導師が西風輝夫のことを殺す勢いで暴行を加えた。

 被害者の西風輝夫は医師の診察で軽度の女性恐怖症という診断が出た。

 

『ユーノ・スクライア』




 武蔵不在の状況だとどうしてもギャグが味気なくなるんやなって……。
 とりあえず19話だから淫夢要素入れたけど絶対に気づかれないだろうなぁ……。

投稿ペース

  • 一秒でも早く書いて♡
  • ネタの品質を重視してじっくり!
  • 冨樫先生みたいでええよ~
  • 絵上手いから挿絵積極的に

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