踏み台だった野郎共の後日談。   作:蒼井魚

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13:海

 ああ、今年も夏が来た。それをひどく実感させるのは、髪を染めた爆乳ギャル達がキャッキャウフフに楽しんでいる姿だ。多分、大学生達が男を漁りに来たのだろう。そうだな、漁らせてやるよ、見た目は幼いが、最高級の美少年だからな!

 

「さて、夏に向けて鍛えに鍛えた腹筋を見せつけてやる」

「ああ、女子大生に筆おろし、前世でもそうだった」

「マジ? 俺は高三の夏に幼馴染とヤったわ。まあ、イケメンに寝取られたけど」

「それはSAN値がガッツリと減りそうなイベントですな、俺の場合はビッチだったからダメージゼロに近かったが」

 

 互いに鍛えぬかれた筋肉を見せつけて、静かに獲物が現れるのを待つ。そして、俺の上腕二頭筋に人の手の感覚が、よし、釣れた! よし! 一夏の思い出を手に入れました。アザース!

 

「流石は輝夫と武蔵、結構鍛えてるね......」

「筋肉量は武蔵の方が多いみたいだけど、そうだねぇ、武蔵は力重視、輝夫は持久力重視に鍛えてるんだね」

「「オイ、俺達は自慢の筋肉で女子大生を釣ってるんだ。女子中学生のお前達は海でクラゲと遊べよ......」」

 

 視線を筋肉を触っている女の子の方に向けると、見知った姉妹が俺と武蔵の筋肉を触っていた。あ、水着はどちらも青のビキニ、アリシアが水色に近い青で、フェイトが普通の青だ。

 女子大生をハントしているのに、この姉妹はなぜだか俺達の邪魔をしてくる。クソアマが、俺達は大人な女子大生をヒーヒー言わせるんだ。君達は獲物じゃない。自慢の筋肉に触れないでくれるか?

 

「さて、女子大生フィッシングを再開しよう」

「アンタ達は煩悩の塊なの?」

 

 お嬢様二人が蔑みの表情で俺達のことを見ている。

 水着はこいつらもビキニ、バニングスが赤、月村が紫、自分のイメージカラーを理解しています。

 

「塊なんですよ、お嬢様の二方。俺達は女子大生のタワワに実った果実を貪りたいタイプの人間なんです」

「アンタ達なら中学生でも口説けるんじゃないの?」

「法律で未成年の人達と性的な関係になるとそこはかとなくヤバイんですよね、それに、中学生って物凄く中途半端で食いたくない学年なんですよ。俺達、本物のつるぺたかグラマーにしか興味ありませんので」

 

 女性陣達の蔑みの目を背にして、どうにか女子大生を食うだけのフェロモンを漂わせる。さあ、俺達の魅力に引き寄せられる女子大生達よ! 我々に股を開け!!

 そして、ようやく俺達に注目が集まる。そらそうだ、俺達の顔面偏差値は好みによっては百点満点、つまり、物凄くイケメンなのだ。そんなイケメンに魅了されない女は存在しない。さあ、俺に股を開きたいメス共よ! 我に飛びつけ!!

 

「君達、お暇?」

「キャッ! 声掛けちゃった!?」

 

 そこそこの顔面偏差値と肉体をお持ちの完全に女子大生が俺達の筋肉と笑顔に釣られた。

 

「お二方、逆に貴方達はお暇ですか? お暇なら、遊びませんか? 勿論、こいつも用意してますよ」

 

 コンドームを口に加えて、一発どうですか? と、尋ねてみる。すると小恥ずかしそうにオッケーサインを頂きました!

 

「「さあ、近くのホテルに行き――グヘッ!?」」 

「輝夫、浮気よくない」

「武蔵、そういうのは好きな人とした方がいいよ?」

「「金髪姉妹! 貴様達は俺達の一夏の思い出をタバコの火のように揉み消すつもりか!? 消えろ!! 俺は女子大生と一発やるんだ! 彼女達が許せば二発、三発ま――ゴホッ!?」」

「はーい、さかった犬は去勢しような」

「本当に、見た目だけだな......」

 

 二十年前のアニメよろしく、頭に大きなタンコブを作って熱せられた砂の中にのめり込む。

 砂を力強く握りしめて、ゆっくりと立ち上がる。そして、口に含んでいたコンドームを吐き捨てて、静かに海の方向に歩みをすすめる。正直、このクソアマ共に邪魔をされるなら、海を満喫する他ない。

 

「さて、海で泳ごうか、出来れば沖の方でサメに食われて死のうぜ......」

「ああ、あのクソアマ共に童貞卒業を邪魔されて生きるくらいなら、死んだ方がましだしな......」

 

 俺がクロール、武蔵がバタフライで沖の方向に体一つで移動する。死ぬなら、魚の餌になりたいと思って......。

 

「ネット張られてるのかよ......沖に出られないな......」

「あーあ、バタフライで泳いできたのに......」

「「......戻る」」

「た、助けて!?」

「「――アリシア!?」」

 

 溺れているアリシアの姿が見える。即座にクロールとバタフライで駆けつけて、二人でアリシアに肩を貸して岸に運ぶ。

 

「どうしたんだ?」

「あ、足が攣って......」

「ああ、お決まりの展開ですね、わかります。腫れてはいないから少し伸ばして安静にしてたら治るよ」

 

 アリシアをお姫様抱っこして荷物置き場まで移動する。なぜだか、アリシアの顔は赤くなっている。

 荷物置き場に到着したら静かに降ろして、足の状態を見てみる。

 

「あー、目立った外傷は見られない。多分、急激に冷たい海に入ったからだ。女の子は体温が低いんだから、あんまり無理なことはするなよ? 足だけでも軽い準備運動をしなさい。お兄さんとのお約束ですよ?」

「実際はわたしの方が年上......」

「いや、多分、おまえよりふた回りくらい年上だぞ......」

 

 二十六歳で死に、今現在、十三歳、こいつの実年齢がナンボかわからんが、まあ、ふた回りは確実に年上です。はい。今現在の年齢をプラスすると三十九歳、アラフォーですわ、子孫繁栄をしたくなる年齢ですね。ああ、女子大生をヒーヒー言わせたい......。

 

「つか、修一郎様はどこぞに? 岩場で高町と一発してんのか......コンドーム持ってるのか......避妊は大切だぞ、一応は十三歳なわけだし」

「一応は女の子の前なんですけどー」

「ああ、すまん。俺はおまえのことを例えるなら、ハムスターとか、ハリネズミとかにしか見えないんだ」

「小動物!?」

 

 さて、今更だが、今回の成り立ちを説明しよう。

 

 

 今日もダラダラ、夏休みに入っても俺達は基本的にダラダラとエロ本を読んだり、修一郎様の合成写真を精製したり、肉体を維持する程度の筋肉トレーニングをしたり、まあ、当たり前の日常を謳歌していました。はい。

 

「なんか、はやてが海に行くらしいんだ」

「へー、いってら」

「俺達は基本的にインドアな人だから勝手にどうぞ」

「いや、女の子だけで行くのはダメだろ?」

「修一郎様とザッフィーは?」

「優男は優男、ザフィーラは犬だろ?」

「おまえ、ヒデェ―な? 修一郎様は優男じゃなくて、主人公系優男だろ、これ、テストに出ますよ」

 

 テレビのリモコンを駆使してチャンネルを右往左往する。この時間帯のテレビはくだらないものばかりだ。

 

「行くなら武蔵を連れて行けよ、俺は家でゴロゴロするから」

「オイオイ、輝夫&武蔵は基本的に二人で一つだろうが、二人で来いよ」

「いや、俺達は親友というだけで、それ以外は普通の関係だから、一心同体じゃないから」

「そこまで嫌がる理由は?」

「......特別には無いが、なんか嫌な予感がする」

「普通に海に行くだけだ。後は好き勝手すりゃいいだろ」

「好き勝手、ねぇ......」

 

 

 こんな感じで連れてこられて、好き勝手に女子大生と意味深な仲になろうとしていたら、好き勝手に出来ないという嫌な予感が的中しているのである。

 

「......物凄く渋い顔してるけど、大丈夫?」

「ああ、基本的に俺達は嫌なことがあると渋い顔しかしないからな」

 

 今回の参加メンバーはこのような面子になっています。

 八神一家、テスタロッサ姉妹、お嬢様二人、優男、高町さん、はい、この面子。うん、ある意味、男は俺と武蔵だけだね、ザッフィーは犬だし、修一郎様はキングオブ優男だし、ヴィータの言葉をよく理解できましたわ、これ。

 

「すこしはマシになったか?」

「うん、もう大丈夫!」

「海に入るなら準備運動を怠るなよ」

「そうだね、海に入るのは、すこし休んでからにする」

「なら、タオルですこし足を温めておいた方が良いな」

 

 タオルをアリシアの足に巻いて、隣りに座る。

 

「俺も疲れたからすこし休むかな」

「武蔵は何してるのかな?」

「アレは日焼けしてるな、日頃はインドアでメラニン色素不足だから一年分の色素を入手してるんだろ」

「痛くない?」

「それが快感なんだよ、一夏の思い出みたいな?」

「M?」

「さぁ、でも、男が日焼け止めを塗るのは格好悪いから」

 

 ダラダラと荷物置き場でゴロゴロしていたら、アリシアの胸に視線が向いてしまった。

 

「えらく育ちましたね、正直、君には期待していませんでしたが」

「わたしだってお母さんの血を引いてるんだよ?」

「いや、でも、基本的に姉は妹より育たないという暗黙の了解があると思うのですよね、愛宕姉妹とか」

「大は小を兼ねます。はい、論破」

「そうですね、はい」

「普通、女の子の胸を見る時はもう少し煩悩にまみれているものじゃない?」

「いや、だって、アリシアは俺にとったらやっぱり小動物の位置に存在しているわけで、ねぇ、なんというか、そういう嫌らしい瞳で見れないんだ。多分、ヴィータと同じ位置づけだよ、君」

 

 アリシア酷くどんよりとした表情になった。あれ、好きでもない男にでも、ヴィータと同じ位置づけと言われたら傷つくものなのだろうか? でも、ヴィータの位置づけは美味しいと思うぞ、何故なら、最強の輝夫&武蔵に酷く甘やかしてもらえるわけだし。

 

「ねえ、触ってみる?」

「いや、アリシアちゃんのお胸より女子大生のお胸を触りたいです。いいえ、貪りたいです」

「馬鹿!」

 

 左頬に椛が咲きました。はい。秋が訪れるのは早いですね。

 

「それにしても、修一郎様の姿を最近見ないな、こうも姿を見ないと合成写真を作る意欲も湧かんわ」

「......あそこに思いっきりいるけど?」

「ああ、あの......え? なんか高町が物凄く他人行儀だな、あれ、どうしたの?」

「合成写真事件で三人からの評価がダダ下がりで、なのはちゃんも一緒に行動する相棒としか見られないようになったらしいよ。通称、ホモ一郎事件?」

「なるへそ、まあ、修一郎様はホモっぽいからお似合いだね!」

「直接の原因がよく言いますね」

「てへぺろ♪」

 

 流石に合成写真とは言えど、なんというか、生理的に受け付けなくなったのだろう。すこし悪いことしたかな? いや、あの仕事を引き受けた対価にしたら安すぎるか!

 

「すこし泳ごうかな」

「おう、すこしは体操して泳げよ」

「了解! じゃあ、頑張ってくるね」

 

 さて、静かになったところでグデグデしますかね、俺は基本的にインドアなんです。はい。

 ......胸騒ぎがする。そうだな、この面子だったら、うん、お嬢様二人だな、顔立ちが整っていますから。それに、バニングス譲は欧米系で成長が早いし、月村は悩殺ボディーを幼いながら持ち合わせていますからね。

 立ち上がってお嬢様二人が向かったであろう場所に歩いて行くと見事に胸騒ぎは的中していた。

 

「ねえ、お嬢さん達、俺達と一緒に遊ばない?」

「いいです、結構です」

「そう言わないで、俺達、男二人で来て寂しいの!」

「......アリサちゃん、行こう」

「ちょ、待てよ!」

「あーん、わたしは安い男じゃないのよ! 厚い胸板なんて触って! 変態さんねぇ〜嫌いじゃないわ!」

 

 月村の方に向かっていた腕を掴み自分の胸板に誘う。

 

「な、なんだよ! 放せよ!?」

「それにしても、中学生に欲情するとは、最近のナンパ師はロリコンになってきてるな......おい、男なら女子大生を捕まえろよ! 女子大生が一番食いやすいんだぞ!? 俺は女子大生を食いたい! こんな小便臭い小娘より女子大生の『ピー』を『ピー』して、また『ピー』してやりたい! ああ、男二人で来たらよかった......そしたら二箱買ってきたコンドームの使い道があったのに......ほら、コンドーム一箱あげるから、帰りなさい、そして、女子大生を見つけなさい」

「「......はい」」

「ナンパ師にしては、なんというか、素直でしたね」

「誰が小便臭いですって?」

「え、なんで俺にブチギレているわけ? ねえ?」

「流石に女の子に小便臭いは禁句だと思うんだけど......」

「だって、俺からしたら小便臭いわけだし......ゴホッ!?」

 

 あれれ、真夏なのに椛の数が増えていってるねぇ〜なんでだろ〜

 

「やっぱり来ない方が良かったわ......」

「どうしたの、輝夫?」

「ああ、フェイトか、真夏なのに秋の気分を味わってただけだ」

「ほっぺたに手形が......」

「椛みたいだろ? 真夏の紅葉狩りでもどうですか」

「すこし少ないかな?」

「真の風情は三枚でも感じられるんだよ、侘び寂びだよ、フェイトさん」

「そ、そうなんだ......」

 

 ああ、なんというか、困ってるフェイトさんはいいわぁ〜お姉さんよりずっといいわぁ〜

 

「何か食うか? ラーメンとか、チャーハンとか、まあ、海の家のだから糞不味いと思うけど」

「いいの?」

「ああ、俺は法外な料金を管理局に請求することで有名な輝夫&武蔵の輝夫の方ですよ? 多分、君の一生分のお給料を既に稼いでいます」

「あはは......じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 荷物置き場で財布を入手して海の家に入ってみるとザッフィーとシグナムの姉御が必死にラーメンに食らいついていた。

 因みに、水着はザッフィーが迷彩柄のズボンタイプ、シグナムの姉御は何故だかウェットスーツで、体のラインがよく見えてエロさを感じられた。

 

「......何やってんの貴方達」

「今は神聖な勝負の最中だ。だから喋りかけてくるな」

「ああ、今は真剣勝負の最中なのだ......」

 

 神聖な勝負がラーメンの早食いなのか? まあ、騎士達の思い立つことは俺の脳内回路では想像することが出来ない。そうさ、こいつらは古代ベルカの騎士なのだ。そう、そう、騎士の脳内はバッタとか、カブトムシとかで出来てんだろ、多分。

 

「麻婆丼をください」

「じゃあ、ラーメンを一つ」

「麻婆とラーメンね、千二百円になります」

「二千円から、あ、お釣りいりません」

 

 席でザッフィーとシグナムの姉御の姿を見てみると、三杯目のラーメンに手を付けていた。なんといいますか、俺も中身はアラフォーなのだが、大人の競争って醜い限りですね、と、思いました。

 

「そう言えば、プレシアファーストママは来てないの?」

「ファースト......ああ、リンディさんがセカンド......母さんは、この年齢になって水着が着れるわけないでしょ! って言ってたよ」

「まあ、歳を弁えている辺り、好感が持てますわ」

「ひ、酷いね......」

「基本的に毒舌で有名ですからね、西風輝夫ちゃんは」

「久しぶりに苗字を聞いたような気がする」

「まあ、基本的に西風と呼ぶ奴は少ないからな、あのお嬢様二人も俺達のことは名前呼びだし、俺と武蔵のことを苗字で呼ぶのは......高町と修一郎しゃまくらいじゃないの?」

 

 よく考えると俺と武蔵は基本的に名前で呼ばれているよな、逆に西風と呼ばれるのは慣れてないし、西風って言いにくいよな、セイフウなら言いやすいが、ニシカゼは若干言いにくい。

 ボーっと二人の接戦を眺めていたら、五杯目に突入、そして、若干だが、ザッフィーの方が速く完食した。

 

「ふっ、この程度か......」

「くっ......不覚......」

「大人の競争って醜い限りですね」

「そ、そうかな?」

 

 シグナムの姉貴がフルフルと震えながら、俺の方に歩いてくる。そして、彼女から一生聞くことの出来ないであろう言葉を浴びせられる。

 

「すまない、輝夫......金を恵んでくれないか?」

「いくら?」

「六千円程......」

「......もしかして、負けた方が全額払う約束だったわけ? というか、お前達さぁ、そこそこの給料を貰ってるだろ?」

「主に管理されている......」

「そう......小狸に付けとくからな」

 

 一万円札を無言で取り出してシグナムに渡す。すると、かたじけないと情けない声が聞けた。なんというか、それだけで満足です。はい。

 

「お兄ちゃんとお嬢ちゃん、出来たよ」

「はいはい、おお、美味そうだ」

「綺麗な彼女さんだね、どこで引っ掛けたの?」

「お友達の妹さんだよ、彼女じゃない。俺は女子大生が好みなんだ」

「中学生くらいなのに良い趣味してるなぁ~」

 

 麻婆丼とラーメンを持って席に戻る。

 

「海の家の親父が綺麗な彼女さんって言ってたぞ、いっそのこと付き合うか?」

「そ、そんなことしたらお姉ちゃんに怒られちゃうよ......」

 

 顔を真っ赤にして恥じらう乙女らしさ、これ、お姫様にも少しは見習ってほしいです。はい。

 

「おー、結構美味いな。まあ、麻婆が食いたかったのもあるが」

「で、でも、お姉ちゃんもちゃんと話したら......あーうぅー......」

「おい、ラーメン伸びるぞ?」

「ひゃ!? ......そ、そうだね!」

 

 外の風景を眺めていたら武蔵が女子大生を引っ掛けようとしている姿が見えた、俺も食事が終わったら引っ掛けに行こうかな? そして、ラブホテルで一発、いや、三発。最近は溜まってるんだ。

 

「食事中に考えることじゃないな......」

 

 

 空が赤く染まり、哀愁を漂わせている時間帯。俺は輝夫と一緒に女子大生を食べようと尽力したのだが、大抵がテスタロッサ姉妹と八神とお姫様による妨害工作によって終わってしまった。なんというか、物凄く悔しい。

 

「計、四人の女子大生を食えなかった......」

「俺達は何のために男に生まれたのだろうか......」

「男として生まれたから、生まれたんやろ」

「小狸、シグナムが俺に一万円程借りたんだが、いつ返してもらったらいい?」

「私服を肥やしてるくせに一万円くらいで女々しいな、やから腐ったミカンって言われるんよ」

「まあ、一万円は目を瞑ったとしても、後者の腐ったミカン認定は君の独断と偏見だと思うんですけど......」

 

 輝夫の方もそこはかとなく苛立ちを隠せないようだ。

 

「よく考えると、スイカが余ってたな......割るのは面倒だから、修一郎さん、お願い」

「え? なに?」

「適当に切り裂いて、ご自慢のデバイスで」

「俺のデバイスは包丁じゃないんだから......」

「まあ、普通に包丁はあると思うけど......やっぱり刃物のスペシャリストは修一郎様でしょ。俺、修一郎様の刃物の腕に感銘を受けました。正直、貴方ならこれだけの大物でも大丈夫だと思っています。貴方は刃物を統べる王、そして、刃物が身を捧げる王。例えるなら、貴方の体は剣で出来ている! そう、貴方は無限の剣を従え、統べることの出来る伝説の王! その人なのです!? さあ、その腕をスイカで試してください」

「なんか、物凄く皮肉っぽく聞こえるんだけど......」

「ああ、これだから優男はダメなんだ。輝夫、普通に切れよ」

「優男!? 俺のこと??」

「ヘイヘイ......あ、包丁持ってきてねぇわ......カッターで切るか」

 

 輝夫は基本的に筆箱を持参している。何故なら、何時でも、何処でも、悪質な悪戯と女の子のメアドか電話番号を入手するためである。その中には、もちろん、大振りのカッターナイフも収納されている。

 スイカを滑らせるように切り裂いていく。

 

「このスイカ、何カップくらいだ?」

「Hくらいじゃね?」

「それは夢が膨らむ大きさですね、はい」

 

 デコピンした瞬間に花を咲かせるように俺と輝夫、ザッフィーと修一郎さんのを引いた数のスイカが切り分けられる。

 

「流石は我が家の料理人、常人の域を軽く通り越していますね」

「正直、包丁を握らせたら優男の異名を持つ修一郎様にも絶対に負けません。今日はカッターナイフでしたけど」

「あれ、これ、数が足らへんよ?」

「男組は女の子達からわけてもらう設定にしたんだわ。さあ、修一郎様! 優男の力を存分に見せてください!!」

 

 俺と輝夫はニマニマと修一郎さんの姿を見る。最近のホモ一郎事件で殆どの女性陣がまあ、生理的に無理になっている。この状況でどれだけの女友達、もしくは、ハーレムの一員がスイカをわけてくれるだろうか? これは見ものだ。

 

「武蔵、このスイカ少し大きいから少し上げる」

「おう、じゃあ、甘くない端っこを貰うわ」

「輝夫、少し食べる?」

「ああ、じゃあ、俺も端っこを貰うよ」

 

 カッターナイフを借りてスイカの端の部分を少しだけ刈り取って口に運ぶ。輝夫の方も同じように端を切って口に運ぶ。まあ、テスタロッサ姉妹のとちらかがスイカをくれるのはわかっていた。

 ハムスターのように少しずつムシャムシャとスイカを食べ進めていると高町に動きが見える。

 

「可哀想だから......少しだけあげる......」

「な、なのは!」

「流石はメインヒロイン、修一郎さんにスイカをわけてあげた!」

「まあ、これは想定している。重要なのは、お嬢様二人なわけで......あ、普通にムシャムシャ無表情でスイカ食ってますよ、やっぱり生理的に受け付けないのですね」

「なんか、やっぱり悪いことしたかな?」

「した、かも、な」

 

 こうして、一夏の思い出はなんというか、うん、普通に終わった。そして、筆おろしは少し先のことになりそうだ。

 家に帰ったら風呂を沸かしたんだが、こういう日に限ってお姫様が上がらないのだ。俺と輝夫は激おこぷんぷん丸でお姫様を八神亭に連れて帰った。風呂の恨みは重い。そして、海の後の風呂は気持ちがいい。




【女子大生】
 女性が一番羽を伸ばす時期、多分、学生という職業の中で一番食べやすい学生。輝夫と武蔵の大好物。

【作者から】
 あー今年もー夏が来たー

投稿ペース

  • 一秒でも早く書いて♡
  • ネタの品質を重視してじっくり!
  • 冨樫先生みたいでええよ~
  • 絵上手いから挿絵積極的に

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