ことりちゃんとやんやんしたいよなぁ……
本編、あとがき共に、少し長めです。
dangerous : 危険な、危ない
「ことりの家、ここだったよな?」
俺はことりに招待され、ことりの家の前まで来た。マカロンを焼いたから食べに来て欲しいとのこと。この前はことりの手作り料理を食べさせてもらったが、めっちゃ美味かったからきっとマカロンも美味いはず。
そう思いつつ、俺は少し緊張気味にベルを鳴らす。何せ女の子の家なんて行くのは初めてだからな。
ピンポーン、ガチャッ。ベルの音を鳴らした瞬間にドアが開いた。
「えへへ、待ってたよぉ」
「ごめん待たせちゃった?」
「ううん! こっちも今用意できたところだったから、タイミングピッタリ!」
「はは、それはよかった」
「うん! それじゃあ中にどうぞ!」
「お邪魔します」
ことりに通され中に入ると、さっそく甘いいい香りが。女の子らしい甘い匂いと、お菓子の甘い香りが混ざってすごく癒される。まさにことりの家という感じだ。インテリアも女子力の高そうなものが目立っていて、さすがは女の子と言わんばかりの雰囲気に、ちょっとだけ俺は緊張する。
ことりに手を引かれ、向かった先は
「ここがことりのお部屋だよ! 入って入って!」
ことりの部屋だった。中に入ると、ピンクや柔らかい色合いの小物たちばかりが置いてあり、全体的にモフモフしているものが多い。ベッドの上にもフワフワそうな大きめの枕が置いてあり、そこで寝ていれば確かに快眠できそうだと思わせる。全てのものがことりのイメージにマッチしている、といった印象だ。
「えへへ、どうかなぁことりのお部屋」
「ことりのイメージに合ってていいな。とても可愛らしい、女の子らしいお部屋だと思うよ」
「そうかなぁ、えへへっ。あ、一哉くん、そこで座って待っててくれる? ことりはマカロン持ってきますっ♡」
「え? いや、俺も手伝うよ?」
「いいのいいのっ! だって一哉くんがせっかくことりの家まで来てくれたんだもん、今日はことりにお任せ、ですっ!」
「いいのか? じゃあ、そうさせてもらおうかな」
「うんっ! じゃあ行ってくるね!」
言うと、ことりは嬉しそうに笑いながら、マカロンを取りに行った。
一人、部屋に残された俺は何となく部屋を見渡した。ザ・女の子といった部屋は初めてだから緊張してしまうな。それにしてもすごいな、勉強机の上にも何やら女の子らしいフワフワした何かが置かれているし、今目の前にあるこのテーブルの上にも、モフモフのカバーが付けられたテッシュ箱、そして……あれ? テッシュ箱の横に置かれている
一つはベージュ色の長い髪をした女の子、一発でわかるくらいのクオリティ、間違いなくこれはことりの人形。そして二つ目、黒の短めの髪をした男、まさかこれは――――
「ことりと一哉くんだよ!」
「うわぁ!? こ、ことり! 戻ってきてたのかい?」
「うんっ! 人形、気づいてくれて嬉しいっ」
「これもしかして、ことりが作ったのかい?」
「うん! いつでも一緒にいられるように、って思って」
「す、すげえな」
二つの人形はことり手作りだったらしい。正直店に並んでてもおかしくないほどのクオリティだから驚きを隠せない。
と、気づくと部屋中に甘いお菓子の香りが。
「マカロン、持ってきたから食べて!」
「おぉ~!」
マカロンを乗せたお皿と、用意してくれた2人分の飲み物がテーブルの上に置かれる。一個一個丁寧に作られているのが分かるくらい、綺麗な見た目をしている。中にはクリームが入ってるようで、人形同様、店に並んでいてもまったく引けを取らないほどの出来前。
「ことり、お前って相当すごいよな」
「えっ? どうしたの急に?」
「人形もマカロンも、正直プロが作ったものと全く変わらないくらいレベル高くてさ、びっくりしてばかりだよ」
「そ、そうかなぁ、えへへ」
嬉しそうに笑うことり、それに比べて呆気にとられている俺。つくづく思うが、やっぱり俺みたいな男はことりにはもったいない。だけど、ことりはこうやって俺をもてなそうと全力で、苦労も手間も惜しまずにやってくれて、俺を好きでいてくれる。俺は幸せ者だな。
おっと、せっかくマカロンを持ってきてくれたんだ、早く食べよう。
「ことり、さっそくだけどマカロン一つ、もらっていい?」
「あっ、うんっ! じゃあ、はい、あーん♡」
「えっ、あ、あーん……美味い!」
「ほんと!? よかったぁ」
「すごく美味いよこれ! 料理もすごく美味かったしマカロンもすごく美味い……本当にすごいよことりは!」
「そ、そんなぁ、嬉しいよぉ」
素直に感想を伝えると、ことりは恥ずかしそうに、嬉しそうにしながら赤くなった顔を手で隠している。そんな仕草もことりらしくてすごく可愛い。にしてもこのマカロン、本当にすごく美味い。ことりに食べさせてもらったのもあるのかな、すっごく甘くて美味い。
っと、少し喉が渇いてきたかも。飲み物もらおうかな。
「ことり、飲み物ももらっていいか?」
「あ、うん、いいよぉ」
ことりが持ってきてくれた飲み物、ことりはその飲み物が入ったグラスにストローをさし、俺の口元にそのストローを持ってきてくれる。
「はい、飲んで♡」
「わ、わざわざ飲み物もそんな風に飲ませてくれるのか?」
「うんっ! 一哉くんに少しでもことりの事好きになってもらいたいし、それに……
「そ、そうなのか? じゃあ……ん、この飲み物も美味いな!」
「――――飲んじゃったね」
「え? 何か言った?」
「ううん! その飲み物もことりが作ってみたの」
「えぇ!? す、すごいな」
「えへへ」
飲み物もことりの自作らしい、ほどよく甘くて、でも甘すぎないさっぱりとした飲み物、レモネードのような味がする。にしても、ことりの言った"慣れてる"っていうのと、聞き取れなかった言葉、あれは何と言ってたんだろうか。
なんて考えていた時だった。
「あれ?」
突然、意識が薄れていく感覚が。
「おやすみ、一哉くん」
「こと……り……?」
「ん……」
頭にはふんわりとした感触。目を覚ますと、なぜか俺は仰向けに寝ていた。どうやらあのあと、ことりがベッドに移してくれたらしい。でもあの笑みはなんだったんだろう。
ガシャッ。
「え?」
そして今気づいたが、俺の両手首に手錠のようなものがかけられていて、それがベッドの両サイドと繋がれている。足はどうやら固定されてないらしいが、いきなりすぎるこの状態に戸惑いを隠せない。
「ことり!? これはどういうことなんだ!?」
怖くなってことりを呼ぶが、返事がない。部屋を見渡してみてもことりの姿はなく、なんとか見えたテーブルの上には、さっきと変わらずマカロンと飲み物が。それ以外に変わったところは特にない。
ガチャッ、ドアが開かれる。
「ことりか? これはどういう」
「一哉くんっ!」
「うおっ!?」
聞こうとしたが、ことりは走ってこちらへ来ては俺の上に覆いかぶさるように乗っかってきた。飛び込むように、というほどではないが、そこそこ勢いがある状態で乗られたため、思わず情けない声を上げてしまった。
ことりは抱きついたまま、俺の耳元で囁くように言ってきた。
「一哉くんの匂い、一哉くんの肌、一哉くんの温度、一哉くんの息、一哉くんの――――」
「ひぅ!?」
「汗の味……ふわああっ、一哉くん好きっ、大好きっ!!」
匂いを嗅がれたり、首元を触られたり、首元を舐められたり。そんなことが流れるように行われ、俺は焦る。一体ことりは何をしようとこんなことを……
ことりは興奮した息遣いで、興奮を隠さないまま言葉を連続する。
「一哉くんはことりだけのモノ、ことりだけの……えへへっ! 一哉く~んっ、ことりだけを見て?」
今気づいたが、ことりはさっきまでと同じ、
その時だった。
「んっ」
「んんっ!?」
近づけた唇をそのまま、重ねてきた。心の準備もないままだったから、かなり息が苦しい。
「ん……んへへ、二度目のキス、しちゃったね」
「ぷはっ! はぁ、はぁ、ことり、急にされると、息が……」
「えへへ、でも一哉くんが悪いんだよぉ? このまえしたときから全然してくれないんだもん」
「そ、それは……」
そう、この前公園デートをしたとき初めてのキスをしたわけだが、それから一週間、俺があまりにも意気地なしなために、ことりからの誘いを断っていたため、まったくことりとキスしていなかったのだ。とはいえ、だ。
「だからって、こんな風に拘束しなくったっていいじゃないか」
キスするだけなら別に、こんなふうに手首を固定させなくったっていいのに。
ことりは表情を変えないまま、口を開く。
「一哉くん、ことりは毎日でも一哉くんとキスしたいの、抱き合いたいの。でも一哉くんは断ってきたもん。一週間も我慢したのに、だからことりからこうやってしてみたの。手、縛ってないと断られそうだったから……ごめんね」
ことりが言葉を発するたび、少しづつだがことりの表情に色が戻り始め、言い終わる頃には、悲しそうな表情を浮かべていた。ごめんねと言うことりは既に泣きそうだった。
「ことり」
そんなことりを見てしまっては、意気地なしのままではいられない。そう思った。だからこそ、こうお願いしてみる。
「手錠、外してくれないか?」
ことりが少し慌てた様子で返事する。
「だ、ダメですっ! そんなことしたら一哉くんが逃げちゃうもんっ」
「逃げない! ……というより、ごめんって言いたいのはこっちだ」
「……え?」
「ことり、ずっと我慢してきたんだよな、だからこんなふうに拘束してまでして俺にキスしてきたんだよな? だったらそれは俺が悪い。だから、ごめん」
「ち、違う、一哉くんは悪くないの。睡眠薬まで混ぜて無理やり眠らせたのもことり、動けないように、抵抗されないように手を縛ったのもことり、許しももらってないのにキスしちゃったのもことり、全部ことりが悪いんだもんっ!」
やはり、俺は確信した。さっきことりから飲まされたあの飲み物、あれに睡眠薬が含まれていたらしい。普通に考えれば恐ろしいことなのかもしれないが、俺はそうは思わない。それに、可愛いことりの泣いている姿なんて見たくない。
「……睡眠薬を用意させてまでキスさせたのは俺のせいでしょ?」
「でも!」
「ことりは可愛いよ」
「え……?」
「こんなに一途に俺に尽くしてくれる、普通はここまでできないさ。でもことりは俺が好きだから、そんな風にしてくれるんでしょ? それに、たとえことりがこういう風に拘束してきたって、少しくらい怖いことされたって、俺はことりから逃げないよ。だって」
「…………」
「俺もことりのこと、大好きだから」
「っ! 一哉くん……っ、怒ってないの?」
「怒る? むしろ俺は嬉しいよ? ことりにここまでされるくらいには好かれてるんだって実感できるから」
「一哉くん……本当に怒ってない?」
「怒ってないよ」
「本当に、逃げない?」
「むしろもっとことりに近づきたい」
「こんなことしちゃう、ことりでも?」
「うん、大好きだ」
「一哉くんっ……大好きっ」
「俺も好きだよ、ことり」
そのあと、手錠を外してくれたことりが泣き出してしまい、結局ことりの泣き顔を見てしまう羽目になってしまった。だけど、これは悲しい涙じゃないから良し。俺はことりが泣き止むまで、ずっとことりを優しく抱きしめ続けた。
「涙は止まった?」
「うん、ありがとう一哉くん」
涙が止まったらしく、柔らかい笑みを浮かべながら俺を見てくることり。そんなことりの頭を撫でてみると、ことりは照れているのか、顔を俺の胸に埋め、さらに強く抱きついてきた。
「一哉くんに撫でられるとすごく安心するの」
「そう?」
「うん。あ、あのね一哉くん」
「ん?」
ことりは急に顔をあげ、俺を見る。頬は少し赤く染まっている。
「ことり、今日みたいなことをまた次もやっちゃうかもしれないけど、それもことりを好きでいてくれますか?」
少し不安そうな、恥ずかしそうな、そんな声色でことりは俺にそう言う。だがそんなこと、ことりに聞かれなくとも答えは決まっている。
「もちろん、どんなことりでも俺は好きだよ」
「……ありがとう」
俺が答えると、またことりは俺の胸に顔をうずめた。顔を真っ赤に染めながら。
「ことり」
俺はことりを呼びながら、少しだけことりの身体との感覚を離す。
「キス、もう一度しないか?」
「えっ……?」
「俺が意気地なしだったからことりにばかり頑張らせてしまったけど、今度は俺も、俺からもしたいんだ。ダメかな?」
今までことりに相当我慢をさせてしまっていたらしい、それが分かった俺はもう、意気地なしではいられない。これはその覚悟の証のつもりだ。
ことりは顔を赤くしつつ、目をそらしつつ、胸の前で指を絡ませる。
「か、一哉、くん」
「だめ、かな?」
「う、ううん! そうじゃなくて、その……実は今日、お母さん帰ってこないの」
「……え?」
衝撃の事実、確かに家に入ったときことり以外の人は誰もいなかった。
ことりはもじもじしながら、言葉を続ける。
「だ、だからね? 今日はその……お泊り、してくれない、かな?」
「ことり、それって」
「だから今日は二人きりで――――いっぱいしよ?」
その言葉に、意気地なしだった俺の理性はぶっ飛んだ。
「ことりっ!」
「きゃっ! も、もう、これからまだまだ長いのに……♡」
無理やりことりをベッドに押し倒し、ことりの魅惑的なその発言と表情を見ながら、ことりの唇と俺の唇を重ねる。
そして――――――――
チュンチュン、小鳥のさえずりが聞こえる。その声に俺は目を覚ました。カーテンの隙間からは光が差し込んでいる。身体を横に向けると、そこには可愛らしい寝顔を見せてくれている
「本当に、俺たちは昨日――――」
思い出すだけで顔が真っ赤に染まるのが自分でも分かるくらいに顔が熱くなる。意気地なしではいられない、そんな思いもあってか昨日は恥ずかしさなどなかったものの、いざ思い出すと昨日の自分の勢いはすごかったんだと我ながらに思ってしまう。
「すぅ……すぅ……」
可愛い寝息を立てることりを見ながら、俺は再び決心する。
「俺はもう、ことりに我慢なんかさせないからな」
決心とともに、俺は寝ていることりの唇の俺のを重ねた。
「それじゃ、そろそろ帰るよ」
「う、うん。その、また来てね?」
「おう、いろいろありがとうな」
「い、いろいろ……うぅ」
夕暮れどき、そろそろお母さんが帰ってくるということで、俺も帰ることにした。ことりは俺のいろいろの言葉に顔を夕日に負けないくらいに染め上げていた。とか思っている俺もまた、そんなことりを見て恥ずかしくなったというのは内緒だ。
あ、そうだ、忘れていたことがあったんだ。
「ことり、ちょっとこっちきてよ」
「え? どうしたのかず……んん」
「ん……さよならのキス、これならことりも満足してくれるか?」
「か、一哉くん……ダメだよぉ、こんなんじゃことりダメになっちゃう……」
「はは、ごめんごめん。じゃあ、また明日な」
「は、はいっ、また明日です」
さよならのキス、ことりはいつも帰り際にこれを求めてきていた。だけどもう、前までの俺とは違うんだ。ことりに我慢はさせない、そう決めたんだ。
手を振ることりに手を振り返しながら、俺は帰路を歩き始めたのだった。
「あれ? ポケットに入れてたはずのハンカチがない? ことりの家に忘れてきたのかな……まぁ、明日返してもらえばいいかな」
皆月一哉と別れたあと、南ことりの部屋では。
「はぁぁぁっ♡ 一哉くんが好きすぎるよぉっ♡ そして、
南ことりはハンカチを持ちながら、ベッドへ飛び込む。
「一哉くんの匂いがいっぱいだぁ♡ そして、一哉くんとやっと一つに……嬉しいよぉ」
ベッドに染み付いた匂いを興奮気味に嗅いでいる南ことりは、テーブルに置かれた人形を手にする。
「えへへ、一哉くんの人形さんにいっぱい匂いつければ、本物の一哉くんにちょっとだけ近づくよね……これで一哉くんと離れてる時の寂しさが少しだけ紛らわせるよね」
そう言いながら南ことりは、人形をベッドにこすりつける。
いかがでしたか?
やっぱりことりちゃんとやんやんしたいよなぁ(再び)
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