ことりのモノ   作:kielly

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ということで記念すべき1話目です。
別作品の読者様から指摘していただいたポイントを、この作品より生かしていこうと思っています。
少しでも読みやすく、それを意識して見ました。

disquieting : 不穏、不安にさせる


Sweet
*1 告白 disquieting


「えへへ~、いいよぉ」

 

 

 クラスの友達のお願いを快く受け入れる優しい女の子。

 

 

 

「ふふふっ、それ面白いね!」

 

 

 無邪気な笑顔を周りに振りまく可愛い女の子。

 

 

 俺、皆月一哉(みなづきかずや)は今日、クラスのアイドル南ことり(みなみことり)に告白するんだ。

 

 

 

 

 

 告白 disquieting

 

 

 

 

 

 さっそく俺はことりちゃんを呼び出し、待ち合わせ場所の屋上でことりちゃんを待つ。

 

 

「涼しい風だな」

 

 

 吹き抜ける風は爽やかで、とても気持ちのいい風だ。季節は春、温かくて優しいお日様の光に照らされながら浴びる風はとても心地よい。告白するにはもってこいってとこだろう。今日こそこの高校に入学してことりちゃんに惚れてからの二年分の想いを伝えられるはずだ。

 

 

「皆月……くん?」

 

 

 後ろから、お日様の光にも負けないくらい優しい声が聞こえた。

 振り返るとそこには、お日様よりも眩しくて直視できないほど可愛い女の子の姿が。

 

 

「こ、ことりちゃん! 来てくれたんだね」

 

「えへへ、お呼ばれしちゃったから。ん~、風が気持ちいいね~!」

 

「あ、あぁ、そうだね」

 

 

 緊張で少し言葉が詰まってしまう俺をよそに、ことりちゃんは吹き抜ける心地よい風を身体全身で浴びていた。身体をうーんと伸ばし、制服が少し乱れてしまっているのも気にしないその姿はまさに天使。男がいるというにも関わらず、手を思いっきり上に広げ後ろに反り返るようなしぐさで、その胸元を強調させて来る。本人はまったくその気はないのだろうが、俺は思わずその仕草にくぎ付けになってしまう。

 

 

「あれ? どうしたの皆月くん?」

 

「えっ!? なっなんでもないよ」

 

「ん~?」

 

 

 ことりちゃんにくぎ付けになっていた俺を、怪しいものを見る目で見てくることりちゃん。ちょっと前かがみになって俺を見てくるその仕草が俺をさらに緊張させる。

 

 

「あ、いや、ことりちゃんが可愛かったから、つい……」

 

「えっ!? て、照れちゃうよぉ」

 

「あっ!? あ、いやそんなつもりじゃ! いや、その、えっと」

 

 

 緊張のせいで頭が働かなくなった俺はつい、本音を伝えてしまった。ことりちゃんは恥ずかしそうに顔を赤らめながら俺を見つめる。そんな可愛らしい姿を見てさらに俺は緊張する。

 だけど、ことりちゃんはあまり嫌そうな反応はしていない。それに、言ってしまったものは仕方がない。

 

 俺はこのままの勢いで告白に持っていく。

 

 

「こっことりちゃん!」

 

「は、はいっ!」

 

「俺、俺! 入学して初めてことりちゃんを見た時から、ずっと好きでした! 俺と付き合って下さい!!」

 

「えっ、えぇ~っ!!」

 

 

 思い切ってはっきりとことりちゃんに伝えた。これでもし駄目でも悔いはない。

 ことりちゃんの反応を伺うが、ことりちゃんは顔を見たことないくらい赤く染め上げながら、困惑したような様子で俺をチラチラと見る。その姿はすごく可愛いのだが、何も言わずにチラチラと見てくるため、駄目なのかどうなのかが全く分からない。どうしよう、すごく緊張する。

 

 数秒、数十秒、いや何秒待ったか緊張のせいでわからない。沈黙が続く。

 

 

「お、お願いします!」

 

 

 その沈黙に耐えられず、追い打ちをかけるように俺はもう一度頭を下げながらことりちゃんに告白する。

 次は何秒の沈黙が襲ってくるかが怖かったが、次はすぐに返答が帰ってきた。

 

 

「あの……ことりが好きって、本当?」

 

 

 顔を上げると、ことりちゃんは頬を赤く染めたまま、優しい瞳で俺を見ていた。後ろで手を組み、少しだけ身体を前に倒すような形で俺を見ていたことりちゃんは、嬉しそうにほほ笑む。

 

 

「ほ、本当だよ! 俺ずっとことりちゃんが好きだった!」

 

「そっかぁ……えへへへっ」

 

 

 いつもクラスの中でこっそりとしか見れなかったあの可愛らしい笑顔が、俺の前に、俺だけの前にある。クラスのみんなからの人気が高いことりちゃんを、独り占めしている気分だ。

 ことりちゃんは、その笑みを浮かべたまま、俺に言う。

 

 

「ことりも、ずっと前から好きでした。ことりでよかったら、ぜひおねがいします」

 

「えっ、こ、ことりちゃんも、俺のことを?」

 

「う、うんっ。入学した時から皆月くんのことずっと見てたの。一目惚れ……っていうのかな」

 

「俺もことりちゃんに一目惚れしたんだ!」

 

「え~! 皆月くんも、ことりに?」

 

「うん! いやぁ、嬉しいなぁ」

 

「ことりも……えへへ、こういうのを運命っていうのかなぁ」

 

 

 ことりちゃんも俺に好意を寄せてくれていたらしい。ということは俺たち二人は両想いだ。ことりちゃんも言う通り、なんだか運命じみたものを感じてしまう。

 今の俺の心は、幸せ一色だ。何せクラスのアイドルことりちゃんが、俺の彼女になってくれたのだから。

 

 

「あの、皆月くん」

 

 

 ことりちゃんが何かを言いたげに俺を見る。その俺を見る一つ一つの仕草が可愛くてたまらない。

 俺は返事をして、ことりちゃんの言葉を待った。

 

 

「きょ、今日から皆月くんは、ことりの、か、彼氏さん、なんだよね?」

 

「う、うん、そうだよ」

 

 

 ことりちゃんが言ってきたことで改めて気づかされたが、告白が成立したということは、俺たちはもう付き合っている。ということはもう、この時点で俺はことりちゃんの彼氏、逆を言えばことりちゃんは俺の彼女なのだ。

 改めてそれに気づかされたせいか、俺もことりちゃんもぎこちない感じで声を放つ。

 

 

「じゃ、じゃあ皆月くん。今日からことりのこと、ことりって呼んでほしいな」

 

「っ!!う、うん。じゃあことりちゃんも俺の事、一哉って呼んでほしい」

 

「う、うん。そ、その、よろしくね――――一哉くん」

 

「こ、こちらこそよろしく――――ことり」

 

 

 お互いを名前で呼び合う。まだまだぎこちないけれど、確かに俺たちは結ばれた。その事実が、今の名前で呼び合うこの行動に表れている。内心、未だに両思いであることなんて信じられないのだけど、それ以上に嬉しさが勝る。

 すごく、幸せだ。

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 昼休みの終わりを告げる鐘の音が、俺たちの幸せな空間を引き裂く。

 

 

「あっ、昼休み終わっちゃったね」

 

「そう、だね。ね、ねえ一哉くん!」

 

 

 ことりが俺を呼ぶ。

 

 

「どうしたの?」

 

「あ、あの! 今日は一緒に、ことりと一緒に帰りませんか?」

 

 

 ことりが俺にそんなことを言ってきた。しまった、俺は心の中で思う。こういうのって普通は俺が言うべきなんじゃねえのか?ことりにわざわざそんなことを言わせてしまったことを悔やみつつ、俺は笑顔で返事する。

 

 

「もちろん! これから毎日一緒に帰ろうぜ!」

 

「わぁ……うんっ!」

 

 

 嬉しそうに笑うことりを見て、俺も嬉しくなって一緒に笑った。この感じならきっと、今日からうまくやっていけそうだ。

 おっと、昼休みが終わるんだったな。

 惜しい気持ちをぐっと押し込め、ことりに言った。

 

 

「さぁことり! 昼休みが終わっちまうから一緒に帰るぞ!」

 

 

 風がさっきより少し強く吹き始める、そんなときだった。

 

 

 

 

 

「一哉くんは――――ことりだけのモノだよ」

 

 

 

 

 

「え? 何か言ったか?」

 

「ううん、なんでもないっ! さ、いこっ、一哉くんっ!」

 

「あ、あぁ」

 

 

風の中で言ったことりの言葉、俺は聞き取ることができないまま、ことりと一緒に教室へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

「ことり! 一緒に帰ろう!」

 

「えへへっ、うんっ!」

 

 

 ホームルームが終わってすぐ、俺はことりを呼ぶ。自然とクラスメートからの注目を浴びてしまっているが、なぜか不思議とそれが気にならない。それよりもことりと一緒に帰ることができるという嬉しさで心が飛び上がってしまいそうだ。

 ことりが俺のそばまで来たとき、後ろから声をかけられた。

 

 

「あれ? ことりちゃん、今日は皆月くんと帰るの?」

 

「ことりにしては珍しいですが……」

 

 

 

 高坂穂乃果(こうさかほのか)園田海未(そのだうみ)、この二人はいつもことりと一緒にいる。

 高坂は明るくて前向きな性格で、誰とでも仲良くできるような女の子で、クラスのみんなから好かれている。

 園田は凛とした姿、上品な振る舞い、そして彼女が所属している弓道部での姿から、主に女の子からの人気が高い女の子、大和撫子を彷彿とさせるほどの美しさのため、女の子からの人気はもちろん、男からの人気も高い。

 三人は幼馴染らしく、いつも一緒にいて、ここ音ノ木坂学院のスクールアイドル"μ's"のメンバーでもある。

 

 ことりはそんな二人に、何も隠すことなく告げる。

 

 

「実はね~? えへへ、皆月くんとお付き合いすることになりましたっ!」

 

 

 俺の腕に抱き着きながら、笑顔で二人にはっきりと告げた。二人は各々違うリアクションで驚きを表す。

 

 

「えぇ~っ!? こっことりちゃんが、皆月くんと~!? いいないいなぁ! 穂乃果もお付き合いとかしてみたい!」

 

「おっおつきあっ……破廉恥ですっ!!……けど、よかったですね、ことり」

 

「えへへ、ありがとう海未ちゃん!」

 

 

 付き合うことに憧れて騒ぐ高坂と、破廉恥だとか言いながら顔を真っ赤にする園田。リアクションが違って面白いな……そんなことを思って思わず笑ってしまった時だった。

 

 

「――――一哉くん?」

 

 

 ことりが顔だけ俺の方に向ける。俺はその表情を見てゾッとする。

 

 その顔には色がなく、感情がないというような目をしていた。

 ことりに一目惚れしてからというもの、何かとことりを意識して見ていた俺でも、今まで見たことのないような顔だった。さっきまでのにこやかな表情とは一変していて、俺は困惑する。

 

 だが、そんな表情も一瞬だった。すぐにことりは表情を戻し、頬をぷーっと膨らませる。

 

 

「もうっ! さっきから穂乃果ちゃんと海未ちゃんのことばっかり見てますっ! 一哉くんの彼女はことりなんですぅっ!」

 

 

 俺に抱き着いたまま、軽く揺さぶってくるその姿はとても愛らしくて、思わずニヤけてしまう。それがバレてしまったらしい。

 

 

「あぁ~! 皆月くん、ことりちゃん見てニヤニヤしてる~!」

 

「やっぱり破廉恥です。ことり、襲われないように気を付けてくださいね」

 

「おそっ!? い、いや! 俺はそんなことしねえから!!」

 

「やーん♪ ことり、一哉くんに襲われちゃいますぅ~♪」

 

「こっことりぃ!!」

 

 

 ニヤけてしまったのが原因で三人に遊ばれてしまった。なんか悔しい。

 そのあとも三人に遊ばれてしまう俺だった。

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?
ことりちゃんと主人公とのイチャイチャ(?)を書いていけたらと思っていますので、これからもどうぞお付き合いください!
感想、お気に入り、評価いただけると嬉しいです!

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