お久しぶりです、きえりーです。
今回は、一哉が矢澤とのコンタクトを取るための手段を考える回。
久しぶりの執筆で、もしかしたら誤字脱字や表現等おかしいところあるかと思いますが、ご指摘等頂けたら嬉しいです。
message : 通信、伝言
その日の放課後。俺は一人で家路についている。
今日はμ'sの練習があることもあって、軽い挨拶をしただけで別れたからだ。
いや、関わりを持たないようにしていたと言ったほうがいいかな。
アルパカ小屋でのことりを目の当たりにして、とてもイチャつこうなんて思えなかったから。
俺がことりの傍にいるだなんて誓っておきながら、やってることはこの様。
あまりの不甲斐なさに自分を攻め立てようとする心と、さっきのことりから逃げることは妥当だと自分を甘やかす心がせめぎ合う。
いつもはことりと一緒に歩いているこの家路も、俺一人だとただただ静かで、多少の不気味さすら感じる。
その何とも言えない不気味さを感じながらも、どうやって矢澤先輩と話をしたものかと考えつつ足を速める。
直接聞きに行くとは言ったものの、学校内で話をするにはあまりにリスクが高い。
いつもことりと一緒に過ごしているから、ほぼ俺のフリーな時間はない。
強いて言えばことりが保健委員の仕事があって教室を離れている時くらいだ、そんなわずかな時間・可能性なんて無いに等しい。
μ'sの練習が終わったあとの矢澤先輩を捕まえる?
……いやいや、学校を出るまではきっとメンバーと一緒だろうし、学校を離れてから後をつけるだなんて、そんなのストーカーじゃないか。
じゃあ一体どうすれば?
考えれば考えるだけ心が沈んで、ただでさえ不気味なこの道が、なおのこと不気味さを増しているかのようにすら感じる。
あまりに不気味に感じるせいか、誰かにずっと見られているかのような錯覚すら感じて、速めた足がさらに速くなる。
足が速くなればなるだけ、それに合わせるように心も落ち着かなくなる。
あのすれ違った時の矢澤先輩の目のクマの濃さ、小泉さんから聞いた情報、そしてさっきのことりの様子。
もし小泉さんと会うとき、ことりにメッセージアプリで連絡してなかったり、高坂に伝えてもらえていなかったらさらに酷いことに────
「あれ?」
やっとの思いで家のドアの前に立ったその瞬間、俺の頭の中に1つの考えが浮かんだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「この時間なら、もう大丈夫かな」
晩ご飯を済ませ、少しばかり時間を潰した俺はスマホを手に取り、メッセージアプリを開いた。
『ごめん、今時間あるかな? 聞きたいことがあるんだけど』
簡単にメッセージを打ち込み、送信した。最近はことりとばかりやり取りをしていたから完全に頭から抜けていたけれど、俺が持ってる連絡先はことりだけじゃない。
何ならさっきだって、
数分経たないうちに既読マークがつき、返事が来た。
『わぁ! 皆月くんからメッセージが来た! 今日は良い夢見れそうだよ~!』
わざわざメッセージに書かなくてもいいようなことを書いて送ってくるあたりが、実に
早急に話を進めたい、その一心で本題に入ろうとメッセージを打ち込んでいた時だった。
相手側からメッセージが送られてくる。
『そだ! メッセージじゃつまんないから電話しようよ! 今からかけるね!』
「……は?」
こちらの返事も待たずに一方的にメッセージが送られてきたかと思えば、次は着信音が鳴り響く。
その勢いに若干の苛立ちを感じつつ応答する。
「もしもし」
『あ! 繋がった! もしもし皆月くん!?』
「もう少し落ち着いてくれねえかな、
相手は高坂。有無を言わさない流れで通話まで持って行かれた。
正直こうなりそうな予感はしていたけれど、ここまで強引に持っていかれるとは思っていなかった。
何せ俺が高坂に聞こうとしていたのはただ1つだけ。
矢澤先輩の連絡先をもらうことだけだったのに。
高坂は、俺が持っている連絡先の中で唯一の、ことり以外のμ'sのメンバー。もうちょっとまともな連絡先を持ってるなら最初から高坂になんて聞こうとしない。
ただ今回は、もう高坂でもいいと思えるくらいには、矢澤先輩とのコンタクトをとりたい。
多少は時間を食ったとしても、確実に連絡先が欲しい。
できるだけ、手短に。
「高坂、1つ聞きたいことがあるんだけど」
『あ、そうだったね! ごめんごめん! 何かな?』
「実は、矢澤先輩の連絡先が知りたいんだけどさ────」
俺はそれを口に出した後にやっと、肝心なことを忘れていたに気がついた。
ことりに、矢澤先輩の連絡先を求めていたことを高坂にバラされたら?
ことりにバレずに矢澤先輩の連絡先を手に入れられるならと考えた策だったのに、よりにもよって高坂に頼ったのだろうか。
高坂は口が軽い。ましてや同じクラスで、休み時間にはことりと園田と一緒にいるのに。
そんなことすら失念してしまうなんて、とんだ大失態だ。
『────にこちゃんの、連絡先?』
なんで? とでも言いたげな、少し落ち着いたトーンで聞き返す高坂の声で焦燥感に駆られてしまい、言葉が出てこない。
「え、いや」
せめてこれが高坂でなく園田なら、まだ何とかなったのに。
休み時間にポロっと口に出されたりでもしたなら……
ただでさえ他の女子と会わないとことりに約束した上で、なおもことりに秘密で高坂と電話をしているのだから、気づかれればただじゃ済まない。会ってなければいいとかそんな問題じゃない。
「えっと」
頭を回せ俺、やってしまったことはしょうがない。どうにかこの場をやり過ごさなきゃ。
「高坂、今のはその……」
全く言葉が出ない。発言を撤回しようにも強引にもらおうにも、どっちにしてもリスクしかない。
もう、だめか────
『いいよ、あげる!』
「……え?」
答えは一瞬だった。
ものすごくあっさりと、高坂はそう答えた。
あまりにもあっさりしすぎていて、焦っていた心が少し落ち着きを取り戻した。
ただ、問題は連絡先をもらえるかどうかじゃなくて、この話を高坂に持ちかけたこと。
結局連絡先をもらえても、高坂がことりにバラせば一発で終わりだ。
だけど、俺の焦りとは裏腹に、高坂から出た言葉は意外なものだった。
『だけど皆月くんがにこちゃんの連絡先欲しいだなんて言うとはね~、意外だったよ。理由は分からないけど大丈夫! この事はことりちゃんには内緒にしてあげる!』
「ほ、本当か?」
『うんっ! 穂乃果、約束はちゃんと守るから!』
「助かる、本当に助かるよ」
『えっへん!』
電話越しに胸を張っているのだろう高坂の声に、俺は心底安心した。
こういうとき、高坂なら間違いなく俺を茶化してくるだろうと思っていたし、ましてや言わない約束だなんてそんなことを言ってくるとは思ってなかった。
今はその威張った声が、何より頼もしい。
『じゃあ早速だけど、にこちゃんの連絡先送るね! にこちゃんには許可とってないけどね、えへへ』
そう言って電話を切るとすぐ、高坂から連絡先が送られてきた。
余りにも事が上手く運びすぎていて、逆に不安にもなりはしたもの、何にせよ矢澤先輩の連絡先を手に入れることに成功した。こんなに全てが都合よくいっていいのだろうか。
あとは高坂が思わずポロっと口に出したりしないことを願うばかりだ。
「さて、と」
俺は早速、高坂からもらった矢澤先輩あてに、メッセージを送る。
皆月です。ことりの件について、どうしても聞きたいことがあるので、高坂に連絡先をもらいました。勝手で申し訳ないですが、よければ返事をください。
先輩相手だからと言葉を選んだつもりではあったが、連絡先を勝手にもらっていてなおこの厚かましい文章。
矢澤先輩は、俺がことりに何かをしたとばかりに思っているらしい。
失礼な態度と相まって尚の事機嫌を損ねる、なんてことにならなければいいけど。
しかし、その答えはすぐにきた。
prrrrrrrrrr...
俺は電話の相手を確認し、迷うことなく応答をタップした。
『……もしもし』
「突然すみません、先輩」
電話の主は、矢澤先輩。
私は穂乃果ちゃん推しですが、別にこの作品ですら穂乃果ちゃんを推していこうなどとは思っていませんよ? 本当です、あくまでメインはことりちゃんです。
ただ、今回とおそらく次回までは、ことりちゃんの出番は無い・少ないと思います、すみません!
思ったように筆が乗らず、連載中2作品とも長い間放置していましたが、自分の思った通りの話が書き進められたらその都度更新するつもりなので、気長に次回をお待ち頂けると嬉しいです(●・8・●)