ワンパンマン ~機械仕掛けの弟子~   作:Jack_amano

3 / 10
襲撃

「ケーケケケ 俺の名は」

 天井をぶち破って飛び込んできた、人間サイズの蟷螂(かまきり)に、口上を述べる間も与えず、拳を叩き込む先生。

 蟷螂(かまきり)は勿論、爆砕。先生、その容赦なさが素晴らしいです!

 

「天井 弁償しろ」

 怒るポイントはそこですか、先生?

「まだ外にもいるようです」

 俺の接近アラームは、まだ複数のレッドゲージを点灯させていた。

 外に出る。と、そこには間抜け面をしたマペットのような蛙とナメクジの怪人がいた。

 名誉挽回のチャンス!

 こいつらを平らげて、俺が先生の弟子に値すると分かってもらわなければ!

「先生 ここは俺が…」

 俺が言い終わるより先に、後ろにいた筈の先生が、怪人たちを地面に沈める。

「人んちの天井を… 」

「あ 何でもないです」

 やはり先生は襲撃を受けた事よりも、家を壊された事の方が気に障るらしい。

 案外、玄関から呼び鈴鳴らして入っていたらここまで怒っていなかったのではないだろうか?

 

 ブツブツ文句を言い続けていた先生の足元が、突然、大きな音を立てて崩れた。

「おお」

 先生は体が土に埋まり、辛うじて頭だけが地面から出ている。

「せ、先生!」

「大丈夫 大丈夫。なんつーか つくしになった気分だ… 」

 のんきに自虐ネタ言ってる場合ですか先生!

 先生を助け出そうと、走り掛けた俺の背後に―――

 

「高エネルギー反応アリ オ前モ サイボーグナノカ?」

 メタリックな装甲を付けたサイボーグが現れた!

 人型?いや、脚の造りからしてサルか?!

 サイボーグ… まさか―――

 サイボーグの犯罪者は数が少ない。

 犯罪が出来るほどのパワーを持つ擬体を造れる科学者が少ないからだ。

 こいつが暴走サイボーグとつながっている可能性は十分にある。

 俺は一先(ひとま)ずサイボーグに向き直った。

 

「ターゲット ハ オ前デハナイ

邪魔ダ」

 敵の目が光った途端、俺のいた場所に巨大な腕が打ち込まれる。

 俺は軽々とジャンプし、焼却砲でブーストをかけた回し蹴りを叩き込んだ。

 硬い!!

 反動で後ろに飛ばされる。

 が、敵が攻撃体勢に入る前に懐に飛び込む!

 振り降ろされる丸太のような腕、俺は渾身(こんしん)の力を込めてアームで受け止めた。

「お前にいくつか聞きたい事がある」

 相手のパワーに、軸足の地面が割れたが、クセーノ博士がくれた新しい腕はびくともしない。

「!」

 敵は自分より体が小さい俺に阻まれたのが信じられないというように硬直した。

 いける!

 こいつはパワーこそあるが、蚊娘より遅いし、切れ味がない!!

 あとは防御の隙をつけば―――

 

 戦闘体制に入った俺の後ろで、突然、野太い笑い声が響き渡った。

「がははははは」

 見ると、筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)なライオンと土竜(もぐら)の様な怪人が、埋もれたままの先生を取り囲んでいる。

「手も足も出ないとは正にこの事だな よくやった!グランドドラゴン!」

「暴れられるのも面倒だしな」

 

「先生!!?」

 動けないのか?!

 土に埋もれたときの圧力は、自分の体重の何倍にもなると聞く。

 ターゲットは俺ではないと言っていた、ならば目的は先生?!

 奴等はサイタマ先生をどうしようと言うのだ?!

 

「ヨソ見ヲスルトハ イイ度胸ダ!!」

 !

 目をそらした隙に、拳を打ち込んでくる敵。

 俺は反射的に、その攻撃を右手でイナし、空いた顔に思い切り左手の焼却砲を撃ち込んだ!

 大炎上!!

 博士のくれた新しい腕は、確実に進化している!

 

 だが、炎の壁の向こうから猿のサイボーグは炎に包まれたまま、そんなものは効かぬとばかりに飛び出してきた。

 降り下ろされた両腕に、躊躇(ちゅうちょ)なく宙に飛ぶ。

 猿は俺のいた場所に大きなクレーターを作った。

 

「我ハ『進化の家ノ』英知ノ結晶 アーマードゴリラ ダ!! オ前ノ攻撃ナド効カヌ」

「何? 進化の家だと? それが先生に何の用だ」

 進化の家は新興宗教だったはず。こいつ等の目的は何だ?!

「オ前ニハ関係ナイ事ダ ソシテ刃向カッタ者ハ必ズ消スノガ我ラノ決マリ…

オ前ハ破壊セネバナラン」

 

 横目でチラリとサイタマ先生の方を伺う。

 大丈夫、先生はご無事だ。

 無敵の先生がこんな奴等に負ける筈はない。

 ならば―――こいつを倒し、先生の負担を少しでも減らす!!

 

 俺は身体機能にブーストをかけ、敵の懐に飛び込んだ。

 

 馬鹿の一つ覚えの様に、殴りかかってくるアーマードゴリラ。

 俺はすかさず左手で受け、リミッターを解除していた焼却砲を、装甲の薄そうな肘関節に叩き込んだ!

「GA!!」

 ゴリラの悲鳴と共に奴の腕が抜ける。

 思った通りだ、装甲のないこいつの関節部分はかなり弱い。

 

 目暗滅法(めくらめっぽう)に残った腕を振り、押し寄せて来るゴリラ。

 俺は一瞬の隙を突き、その腕を掴み――― 巴投げ、からの腕関節への膝づき。

 決まった!

 アスファルトにめり込むゴリラの肩関節に、続けざまに、ブーストをかけた拳を打ち込む。

 マシンガンブロー!!

 

 ジャンプして回避。

 奴の腕は両方とも破壊したが、まだどんな機能があるのか分からない。

 だがゴリラは、俺の警戒をよそに、唯雄たけびをあげながら突っ込んで来る事を選んだ。

 腕もないのに。それともまだ隠し玉があるのか?

 取り敢えず、連続キック!

 カウンター!

 あっさり決まって、奴は盛大にぶっ飛んだ。

 もうひと押し!!

 両腕の焼却砲にチャージをかけながら走る。

 ゴリラが起き上がる前に懐に飛び込み、両脚の関節に向かって―――撃つ!!

 これで終わりだ。

「焼却!!」

 撃った途端に回避。

 圧力の逃げ場がない地面に向けて撃ったせいで威力が跳ね返り、辺りは大爆発を起こした。

 

 焼けて炭になった街路樹、ぶち抜かれたアスファルト、砕けた下水道。

 やれやれ、先生のお宅の周辺を少しばかり破してしまったな。

 しかし、フルチャ-ジでなくてもここまでいくのか。

 やはり前より性能が上がっている。今ならビル一つぐらい、簡単に抹消できるかもしれない。

 

 掲げた焼却砲にチャージをかけつつ、手足を失い、芋虫のようになったアーマードゴリラに近づく。

 ゴリラは動こうとしたが、モーターを(きし)ませるだけだった。

 どうやら、飛び道具の(たぐい)はなさそうだ。

 俺は、奴の頭を蹴り上げ、フルフェイスのヘルメットを脱がした。

 現れた顔は、正にゴリラそのものだった。

 

「質問に答えるか このまま消滅するか――― 選べ」

 俺が焼却砲を(かざ)しても、アーマードゴリラの態度は変わらない。

 

「消滅スルノハ オ前ダ 愚カ者メ 我ノ実力ハ 進化ノ家デハナンバー3 ソノ程度デハ 今モ来テイル ナンバー2ノ獣王二ハ勝テヌ! 破壊サレルガイイ」

「!」

 獣王? 先生と戦っていたライオンか?!

 

 と、俺の横に、ゆっくりと、誰かが並ぶ気配。

「それコイツじゃね?」

 先生は、その手に、倒した獣王のものであろう眼球をぶら提げていた。

 先生、やはり獣王(ごと)きでは、貴方の敵ではありませんでしたか。

「…………だそうだ」

 俺は、威嚇の為に焼却砲のチャージ音を上げてみた。

 

 

「あの… すいません。全部話しますんで勘弁して下さい」

「なんだお前 さっきまで片言だったじゃねーか」

 急に饒舌(じょうぜつ)となったゴリラに、先生が突っ込む。

「すいません 格好つけてました」

「 ……… 」

 ゴリラの気持ちは解らなくもない。

 俺も『焼却』とか言うしな。音声入力でもないのに。

 

 

 

 




進化の家まで行けませんでした。
これ以上行くと長くなりそうだったので、今回はここまで。

アーマードゴリラの手足がもげた理由はこんなとこかな~と。
もっとシーン入れたかったけど、この戦闘シーンはある意味芸術だと思うので諦めました。
(特にアニメ版)

もうちょっとしたらジェノスのオリジナルシーン入れるつもりなのでお付き合いください



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。