そして、二人は神機を持って第一訓練場に行く。
『では準備が完了しましたので、フィールドを展開します』
ヒバリのアナウンスの後に訓練場の風景が霞んで消えて荒野が出現する。
『ダミーヴァジュラ投入します。』
霧のようにヴァジュラが出現して動き出す。
『ダミーヴァジュラ、ウォームアップ終了、訓練を開始してください』
ヴァジュラが動き出す。
「じゃあ、ツバメはなんか気になる事があったら言って」
「了解です」
明史は神機を持ってヴァジュラを中心に回るように移動して尻尾を切り落とす。
「柔らかい柔らかい、スッパスッパ切れる」
明史は尻尾に続いて後ろ足を半ばで切断する。
「よく、切れる剣だこと」
そしてヴァジュラが跳べないのを良いことに明史は前足と頭を切り落としてコアを切断する。
「こんなヤワヤワなのじゃ訓練にならないからもっと固いの用意して」
『では耐久性能を5%上昇させた個体を投入します』
「じゃあツバメ、どんどん狩るよ」
「あっはい」
ヴァジュラの死体が消えて新しいヴァジュラが出現する。
「さて、今度からはスパスパ行こうか」
明史はヴァジュラの前をジグザグに走って頭に向かって行き、コアを一突きして顔を真っ二つにする。
「次々行くよー、ツバメ?ちゃんと射ってくれる?」
「いえ、射つ暇がないなって」
「適当でいいから。ヒバリさん?シユウ追加でよろしく」
『追加ですか?』
「追加でよろしく」
『わかりました』
ヴァジュラとシユウが出現する。
「ツバメ、ちゃんとついてきてね」
「はい、なるべく頑張ります」
明史は神機に感覚を集中する。
視界がクリアになりスローになる。
更に感覚を集中させる、体が飛躍的に軽くなり視界が360゚に拡張され三人称視点になる。
「おいおい、TPSになるのかよ」
明史は走りだし、ヴァジュラの雷撃が届く前にヴァジュラの間合いの内側に入りコアに真上から剣を突き刺し、そのまま棒高跳びの要領で剣を支えに跳んで剣を引き抜く。
明史自身はそんなに跳んだつもりはなかったのだが、かなりの跳躍を見せて訓練場の壁に激突した。
「あー、いったー。壁無くしてくんないかな」
明史はシユウに向かって跳んで頭を潰す。
シユウは頭から胸まで剣が下りて沈黙した。
「うん、偏食因子による身体強化が行われたみたいだ」
赤い光弾がシユウの頭のあった場所を通って壁に衝突して消滅する。
「あれ?速すぎた?」
「速すぎます」
「次行くよ、サリエル追加よろしくー」
『わかりました』
死体が煙るように消えて新たにヴァジュラとシユウとサリエルが出現する。
「さーて、どんどん慣らして行こうか、次はエアステップ踏んじゃうよ」
明史も調子に乗ってきた。
調子に乗った明史はエアステップの準備運動にライジングエッジでヴァジュラの顔を切り裂きコアに切れ目を入れる
そのあとエアステップを踏んでシユウの胸部に移動後胸部を喰らい、エアステップを踏んで空中ジャンプしてサリエルを切りつけようとする、ここまでは良かった。
そして剣を二回振って滑空攻撃に入る所でサリエルの範囲攻撃
作者:「ありがちですよね。俺も空中でやるとよくやる」
弾かれた明史は地面に転がる
「隊長!」
ツバメの神機から放たれた光弾は見事にサリエルを撃ち抜いた。
「この、金蝿が!」
明史は神機を変形させてRPGで上半身を粉砕した。
「あー、痛い痛い」
「隊長、調子に乗りすぎですよ」
「まあまあ、こういう失敗をするための訓練でもあるってことで」
「まだ続けますか?それとも今日は止めますか?」
「もう一戦だけやって終わるか。ヒバリさん、三体とも片付けちゃってボルグカムラン出して」
『はい、最後ですよ。訓練用ダミーアラガミですがくれぐれも怪我の無いようにお願いしますね』
「了解です」
三つの死体が消えてメタリックな巨体が出現する。
「さあ、仕上げだ」
「私、要りましたか?」
「居てくれて助かってるよ?自分の欠点が良く解る」
「それならいいですけど」
明史は銃をカムランの盾に向ける。
「俺、銃のことも教えてもらおうとおもってたけどさー、かなり適合率が高いからか知らないけど視界にレティクルがあるんだよね、合わせて射てば大概当たるからさ、必要ないかなって」
「そうですか?」
ツバメは少し冷えた口調で言う。
業務モードが怒りモードかわからない。
作者:「怒りで活性化かな?」
ツバメの神機がカチャンと音を立てる。
バレットが切り替わったようだ。
明史の神機から赤い弾丸が吐き出されカムランの盾に当たって爆発、盾を爆砕した。
俺はバレットをRPGから専用シリーズに切り替える
そして一発、二発
カムランの頭に当てる
そして変形させて走りだし尾を切り上げて喰らう。
そして変形させつつ着地してカムランの口の少し下を撃ち抜こうと銃を向けると
赤い弾丸と一緒に青い球体が飛び出してきた。
そしてカムランとコアが消滅する。
『訓練終了です』
「銃を使えばこのぐらいの事は出来るんですよ」
「流石は現役神機使いだね」
どうやらどっかでツバメの琴線に触れたらしい。
ここはおとなしく教えて貰うことにしよう。
「次回は銃の訓練も頼むよ」
「私の訓練は厳しいですよ?」
「この程度なら楽勝だよ。次はもっと厳しいの期待するからね」
こうして一回目の明史の訓練は終了した。
「やあ、ヒバリ君」
「榊博士、どうされましたか?」
「いや、彼の様子を観に着ただけだよ。どうかね?彼の戦闘は」
「正直、普段からは全く想像が付かない戦闘内容です」
「ふむ、彼の適合率を見せてくれるかな?」
「はい、只今」
「こっこれはっ…明史君とあの神機の適合率がこれほどの物とはね」
「適合率100%…」
「だがこれなら次の作戦での勝利も確実の物となる」
「ですが、所々に経験不足から来ると思われる致命的なミスがあります。次回の作戦での投入は見合わせるべきかと」
「次の作戦での彼の生存率を上げるためにもなるべく早い彼の教導が必要だね」
「そうですね。現状で次の作戦での彼の生存率は50.8%とほぼ半分の確率しかありません」
「そうだね。私が支部長から聞いた話によると次の作戦で第零部隊は大群のど真ん中に投入されるらしい。彼らの火力を持って敵陣を内側から喰い破るつもりらしい。」
「それって、特攻させるってことですか?」
「表向きには新型オラクル機動兵器アルテミスとアポロを使用して広範囲殲滅を行うとなっているものの、実際はただ敵地に突っ込むだけの特攻となんら変わらないね。彼を生かすためにも彼を少なくとも第一部隊の面々と並ぶぐらいまで育てないとね」
ヒバリは絶句する。
今までも幾つかあった。
激戦区に人を送り大打撃を与えるという作戦は、しかしここまで勝算がなく犬死にに近いことはなかった。いつも何かしらの勝算があって行われてきた戦法だったが、今回はアポロとアルテミスがあると言うだけだった。
いくらアポロとアルテミスが高火力だからと言っても限界がある。
アポロとアルテミスの二機を操縦する操縦席は一つしかない。
これが今までアポロとアルテミスの操縦が不可能と言われてきた由縁だ。
そんな機体を戦場に出すことは、動かない車をスクラップ工場に放り込む事と同義だった。
「いくらアポロとアルテミスと言っても限界があるんじゃ」
「いや、アポロとアルテミスは古き神話の太陽神ヘリオスと月の女神セレーネーを元に作られた機体だ。アポロの内にはオラクル細胞を利用した半永久オラクル増殖炉が内蔵されおり、オラクル細胞を無限に増殖させエネルギーを無尽蔵に作り出している。そしてアルテミスはそのエネルギーを吸収変換することで半永久的に活動することが可能になっている。二機が揃っている内はあの二機に限界は存在しない。限界があるとすれば搭乗者のリンク君だね」
「二機の内の一機が欠けた場合はどうなるんですか?」
「アルテミスはアポロが欠けるとエネルギー源が無くなることで約五分で活動を停止する。逆にアポロはアルテミスが欠けるとエネルギーを放出する場を失い無限のエネルギーを有限のタンクに溜め込み、大爆発を引き起こすだろう。その時に溜め込まれたエネルギー量にもよるがまあ、軽く極東支部をまるごと消し去ることは出来るだろうね。爆発までは大体五分ってとこだろうね」
「そんな…」
「支部長はアポロの自爆も視野に入れているようだよ」
「支部長は彼らを使い潰すつもりなんですね」
「そこまでは私にもわからないだが用心するに越したことは無いと思うよ。では私も戻るよ」
サカキ博士は管制室から出ていった。