喰い荒らされた世界で・・・   作:水無月 蒼次

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リンクと二機と楠リッカ

明史がタツミに殴り飛ばされた頃

 

リンクはアポロとアルテミスのある保管庫に向かっていた。

理由は特にない。

 

リンクが保管庫に着くと先にアポロとアルテミスを眺める人影があった。

 

俺はその人物を知っていた

 

「はじめまして、楠リッカさん」

 

リンクは後ろから声をかける

 

「君は確かこの二機の搭乗者の」

 

「リンク・ロード 特殊起動兵曹長です。リンクでいい」

 

「私は楠 リッカ、神機整備部所属のメカニックだよ」

 

「こいつらに何か用か?」

 

「別に用って程じゃないよ。ちょっと見たかっただけだよ。凄いよねこの二機。神機と同じ制御機構を機械で行っているんだ。これが神機に応用出来れば」

 

「誰でも神機を扱えるようになる」

 

「そう、わざわざ辛い思いしてゴッドイーターにならなくていい」

 

「ああ、これが神機に応用出来ればな」

 

「ねえ、君はこれに乗ってアラガミと戦うんでしょ?どうなの?やっぱり怖い?」

 

「俺は怖くない。望んでやっていることだから」

 

「望んで?そっか好きな仕事をできているなら君は幸福者だ」

 

「リッカさんは幸福者じゃないのか?」

 

「私は幸せだよ。人の役に立つ物を作れる。人を守るための道具を作れる。私にとってこれほど嬉しいことはないよ」        

 

リッカは続ける

 

「でも同時に私のミスで人が命を落とすかもしれない、私が神機をもっといい状態に仕上げられなかったから、誰かがアラガミに喰われるかもと思うと、私は怖くてしょうがない」

 

「なあ、怖くないって言ったの嘘だ。俺は確かに怖くない。でも誰かが死ぬのは嫌なんだ。だから俺は誰も死なせずに済むように、誰も失わないように一匹でも多くアラガミを倒す」

 

「ふーん、君みたいな思考の人は嫌いだな。自分のことを大切にしない人って言うの?そういう人って直ぐに死んじゃうんだ」

 

「俺は自分が可愛いばっかりの人間のが嫌いだな。グズでノロマで何も出来ない。なのに何かをしようとする。出来ないなら隠れていればいいのに」

 

「どうも君とは気が合わなそうだね」

 

「同感だ」

 

「そういう所は気が合いそうだね」

 

「そうだな」

 

リンクとリッカの会話は途絶えたままそのままの状態でそこそこの時間が経った

 

リンクはゲーム機をいじっている

 

「さてとテスト飛行と行こうか」

 

アルテミスが浮き上がる

 

リンクはアルテミスを操作して肩に乗る

 

「さてと夜の遊覧飛行と行きますか」

 

「ちょっと君ー、出撃許可は出てないはずだよ!」

 

「俺が許可したからいいんだよ」

 

「君、何様のつもり?」

 

「支部長のお抱え部隊長様のつもりだけど?なんなら君も来る?」

 

リンクは肩から手に移動しアルテミスの手をリッカの近くまで下げる

 

「私は遠慮しとくよ」

 

リンクはリッカを引っ張りあげる

 

「さてとアルテミス出発」

 

アルテミスは立ち上がり滑るようにハッチに向かう

 

「君はもうちょっと人の話を聞いた方がいいよ」

 

「リッカさんはもうちょっと遊ぶべきだな」

 

アルテミスは外に向かう通路を進む

 

三枚目のハッチまで着たところで

 

『リンク・ロード特殊機動兵曹長、何をしている』

 

ツバキさんからアルテミスの通信機を通したお叱りだ

 

「これよりテスト飛行に行ってまいりまーす」

 

「ちょっと君、相手はあのツバキさんだよ?」

 

『楠 リッカ整備員をどこへ連れていくつもりか?』

 

「整備士としての視点から改良点を指摘していただこうと思いまして、では私共は行くので」

 

リンクはハッチを手動(※アルテミスの手で動かして)で開いて外に出る

 

「ねぇ君、こんなことしてホントに大丈夫」

 

「大丈夫、大丈夫どうせ後でツバキさんからお叱りを受けるだけだから」

 

「昇進とかに影響があるんじゃないの」

 

「俺はフェンリルにいつまでもいるつもりはないから」 

 

「そっか、このご時世にフェンリルから抜けようとする変人は君ぐらいだよ」 

 

「そうかな?俺は向こうでやり残した事があるから、さっさとクラウンを見つけ出して大口径ビーム叩き込んで向こうに帰る」

 

「向こうって?」

 

「ディスプレイの向こう側」

 

「ディスプレイの向こう側って言うとカメラの前?」

 

「いや、ディスプレイの前」

 

「ディスプレイの前か、まるで私たちがカメラの前に居るみたいだね」

 

「まあそんなことで俺はここに長居するつもりはない、もちろん死ぬつもりも無い」

 

「その自信は何処から来たのか教えてくれるかな?」

 

「自信なんて持ってない、持ってるのは便利なゲーム機と確信だ」

 

「ゲーム機と確信か、それじゃあ自信なんて持ってるわけないか」

 

「語弊があったな、俺は死なない」

 

「君のそういう所は好きだなー」

 

「まだ会って数十分だ、その程度で俺を理解したつもりになるには早いと思うけど?」

 

「きっとこの先長い付き合いになると思うからゆっくり君を理解していくよ」

 

「確かに長い付き合いになるな最低四年の長い付き合いに」

 

アルテミスは夜空の下を悠々と飛行していた。


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