俺たちは、車を走らせて極東支部まで戻ってきた。
アランは早々に部屋に戻った
俺は格納庫でサカキ博士に呼びつけられていた
「ただいま戻りました」
「やあ、無事に戻ってこれて何よりだよ」
サカキ博士は所々凹み焼け焦げ、窓ガラスの割れた装甲車を眺める
「まあ、かなりボロボロになってはいるけど
一応装甲もちゃんと機能したみたいだね」
何度もエネルギー弾が当たったことで装甲車はボロボロだ。
だがバラバラになっていないのは明らかにこの装甲のおかげである
「おかげで命拾いしました」
「うんうん、新種のアラガミに対してもそれなりの抵抗力をみせたみたいだね」
「より多くの偏食因子を練り込めば更に効きづらくなるんですよね?」
「理論上ではね」
「サカキ博士、一つ聞きますけど、極東地域でこれまでにボルグ・カムランが確認されたことは?」
「無くはない、けど限りなく少ないね」
「作戦の道中見かけたんですよ、ボルグ・カムランを。リンクに言ってとりあえず処分しましたが、今後ボルグ・カムランが極東地域にも頻繁に現れるようになるかもしれないので対策を考えておいてください」
「なぜかはわからないが、極東はアラガミが集まってくるんだよね。私としてはそこが魅力でもあるのだがね」
「では博士、失礼します」
「ああっ、これからもよろしく頼むよ」
俺は格納庫を出る
次に向かうのはヒバリさんの所だ。
理由は、戦場に出ると伝えるのを忘れて出てしまったため心配をかけてしまったかもしれないから
(もしも心配されてなかったら、それはそれで悲しい)
俺はエントランスまで戻ってきた。
受け付けにはヒバリさんがいる
「ヒバリさん、ただいま戻りました」
「どこ行ってたんですか?オペレーターが仕事を放棄したら現場が回らなくなるんですよ!何度も言ったじゃないですか!」
「まず、どこに行ってたかですね。誘導の指揮をするために前線に行っていました。仕事は放棄していません。完璧にこなして対象は第一部隊に引き継ぎました」
「オペレーターが前線指揮?何ふざけたこと言ってるんですか!あなたが前線で倒れたら前線で命を賭けてる皆さんが危なくなるんです!自分が如何に重要な役割を果たしているのか自覚してください!」
「自分が如何に重要な役割を果たしているのかなんてわかってます。でも、俺は自分の安全を確保するために仲間を危険な目に遭わせるぐらいなら、自分が肩代わりして出来うる限りのことをして戦場に立ちます。俺はそう言う人間です」
ツバキさんが職員を引き連れて歩いてきた
「山澤 明史特務少尉、貴様は遊んでいるつもりか?作戦は遊びではない!今回のような軽率な行為は皆を危険な目に遭わせる。貴様は事の重大性を理解しているのか?」
「理解しております」
「では何故、戦場に出た?」
「それが皆のためになると考えたからです」
「今の貴様と話したところで時間の無駄だ。こいつを拘束しろ!」
俺は無抵抗で職員に拘束される
だがそこに思いがけない声が響く
「それには及ばない、今回の件はこの私が許可を出したのだ」
(よろず屋やその他の来客を含む)全員が声の発生源の方を向く
そこには支部長が立っていた。
「シックザール支部長、何故こちらに?」
「何、格納庫にある新種のシユウの攻撃を何発も受けてなおも原型を保った装甲車を一目見ておこうと思ってね。私の部下を放して貰えるかな」
職員は戸惑ったが最終的に俺を放した。
「雨宮大尉の気持ちは察するが彼は今回の作戦でリスクに見合うだけの戦果を上げている。ならばあながち彼が戦場に出たのは問題ないのでは無いかね?彼が犯したミスは一つ他の者に報告していくことを忘れたことだ。この手のケアレスミスは注意すれば直る、その点は雨宮大尉に任せる。では私は失礼する」
支部長は歩いていった。
「山澤、支部長のおかげで懲罰房は免れたが今後も戦場に出るつもりなら貴様にもそれ相応の訓練を受けて貰う」
「了解しました」
「では、ターミナルから申請しておけ、後程お前用に訓練プログラムを組んでやる」
ツバキは荒らげた声を無理矢理戻す
「ありがとうございます」
「精進しろよ」
ツバキさんは歩いていった。
「と言うことでこれからは戦場に出るので……」
「もう私から貴方に教えることはありません」
これは免許皆伝と言うやつでは?
「貴方に教えても意味がありません」
違った免許皆伝じゃなくて破門だ。
あーあ、まあ通信機の使い方はおぼえたし、任務の発行手続きのし方も報酬の支払いも出来る、あとは指揮だけ極めればOKのはずだ
「…短い間でしたが、お世話になりました」
俺は挨拶だけしてその場を離れた。
アランはヘリで帰ってきたツバメと一緒にいた。
「隊長タフだよな、神機持たずに戦場に来て蒼次さん操りながらオペレーターとしての仕事もしてるんだ。仕事が出来るってああいう人を言うんだろうな」
「リンク隊長も凄かったですよ、同時に二機を操縦してるんです。それに射撃の精度が凄いんです。百発百中でしたよ」
「うちの隊長二人は超人かー」
「超人かどうかはわかんないけど異世界人ではあるよね」
「やっぱり敵うわけ無いもんな」
「肉弾戦闘ならあの二人に勝てるんじゃない?」
「あの二人だよ?山澤隊長には勝てそうな気がするけどリンク隊長には無理でしょ」
「そうかな?アランも充分強いと思うけど…」
「俺は、いつかあの二人に追い付けるかな?」
「そのうち追い付けるよ。だってこれからも私達仲間でしょ?」
「だな、必死に追いかければきっと追い付けるよな」
アランとツバメは廊下を歩いていった。