俺はエントランスのオペレーター用のデバイスを見ながら考えていた。
「明史さん?聞いてますか?」
隣にいるのはヒバリさん、俺のオペレーターとしての先輩である。
「ここのボタンを押すと医療班に連絡出来ます」
「あっはい。聞いてます」
「やっぱりアラン君のこと気にしてるんですか?」
「気にしてない……訳じゃないけど」
「そうですよね、ダブルヘッダーのお抱え部隊と言っても一応隊長ですもんね」
「でも、どうしていいか」
「前にリンドウさんが言ってました。ソーマさんのことで悩んでいた時のことを話してくれた時に、相手も自分もゴッドイーターなら一緒に戦場に立てばそれで戦友になれるとかって」
「戦友か、俺はここに来てからまだ一日しか経ってないもんな。そりゃ信用しろ何て難しいに決まってる。ヒバリさんありがとうございました。俺、次回の作戦で戦場に立つために準備してきます」
俺はカウンターから出てエレベーターに向かう。
向かう先は支部長室だ。
そして支部長室の前に来た。
俺は意を決してノックする。
「澤山 明史特務少尉入ります」
「何のようだね?明史特務少尉」
「次回のシユウ堕天討伐についてですが」
「ああ、新種のシユウを討伐する作戦だったな。君たちはシユウ堕天の群れの誘導だったはずだね。それがどうかしたかね」
「次回の作戦で自分、前線で指揮をしようと考えています。それにあたってアポロの通信システムいえ、オペレーター用の通信システムと同様の物を積んだ装甲車を作製していただけないでしょうか」
「オペレーターが前線指揮か面白いな。君の場合、蒼次君の運搬というのもあるだろう。わかった、この件は整備班に連絡を入れておこう。作戦の発動までに装甲車を改造しておくようにと」
「ありがとうございます」
「今回の代償は今後の成果で返してくれ以上だ」
「失礼します」
俺は支部長室からでる。
そう、俺は装甲車に乗り前線でオペレーターをしようとしたのだ。
アラガミの前に装甲車なんて意味無いって?
そんなのわかってる。
何も最前線に行こうってんじゃない。
戦場の近くまで行くだけだ。
そんな言い訳を自分にしながら俺は居住区画を歩く。
そこそこ歩いた
自分の部屋は既に後ろだ。
俺は足を止める。
アランの部屋の前だ。
頭では解っている。解っているが……
俺の頭をアランの言葉が横切る。
「くっ……」
俺は呼び鈴を鳴らす
『誰だ?』
「明史だ、一つ言っておきたい事がある。今回の作戦、俺も戦場に出ようと思う。お前がヘルプに回るかどうかはお前が決めればいい。決まったら言ってくれ。例え誘導に参加するとしてもな。それだけだ」
俺は踵を返す
『おい、ちょっと待て』
アランが出てきた
「あんたオペレーターだろ?神機無いだろ?なんで戦場に出るんだ」
「やっぱり、隊長なんだし戦場に立たないとな。それが例え足で纏いだとしても。それに戦場に居た方が良いこともあるって事だ。じゃあよく考えろよ」
俺は歩きだした。
実際俺は泣きたくなるほど怖かった。
まともな武器も持たずに戦場に出ることは死を意味する。
この世界は
ここで死ねば俺は死ぬし、ここで喰われれば俺はリスポーンする訳では無く、消滅するのだ。
どんなに知り尽くしたゴッドイーターの世界でも、神機無しでは俺はただの人間であり。
一個の被捕食者なのだ。
俺は逃げたい自分に、必死になって言い訳をして、叫びたい気持ちを喉元で抑え込み、恐怖を噛み潰した。
リンクもアランもツバメもリンドウさんもいつもこんな気持ちで出撃してるんだ。
初めてわかった。
初めて知った。
俺は部屋に戻りベッドに倒れ込み束の間の眠りについた。
そして自分の前に適合試験の台が置かれている夢を見た。