「加賀さん。加賀さんの土下座、初めて見ました。いい気持ちだぁ!!!」
という瑞鶴のセリフを思いついたのですけど、どこで使えばいいのか分からないんですよね。
秋月が峠で暴走した事などがあった秋(1話しか無かったけれど気にするな。)を終え、季節は冬。更に、年を越して5日程がたった頃だった。照月達の自室の畳スペースには、花柄の布団が被されている炬燵が置いてあり、照月と姉の秋月は寝間着姿でその炬燵に入り、畳の上に寝そべっていた。1日が始まってから炬燵を出たのは食事の時とトイレの時のみだ。秋月と照月は、髪の毛すら結ばずに、ボサボサの髪のままで居た。照月は、眼鏡をかけゴロゴロしながらゲームをしているが、秋月に至っては、ネトゲをしながらボリボリと自分の腹をかいている。上は下着の上にパーカーをを羽織っているが、下半身はパンイチ。女の子なのにはしたない。テレビからは横須賀鎮守府の弓道大会の様子が流されている。加賀チームと赤城チームに分かれているらしい。そんな面白そうな番組が流されているのが、2人はゲームばかりしており、テレビすら見てる様子すらなかった。その様子を傍から見ると某吹雪型3番艦と、某睦月型11番艦がその部屋にいる様だった。秋月型の部屋なのにね。
2人はまさに廃人さながらの様子でずっとゲームをしていたが、ある時「暇・・・。」と、照月が呟いた。
『ピアスもそうですけど、何ですかアレ。サイドテールにデカデカとリボンつけて。』
「違うゲームすれば?」
暫くして、だるーく秋月が返す。この中で元気なのは、テレビから流れてくる声のみだ。
「もうやり尽くした。」
「そう。」
『見とけよ今日、そのサイドテールなぁ、刈り取ってやるぞ今日!!!』
秋月がそう答えると、暫くその空間には、キーボードを叩くカタカタという音と、テレビで一航戦の青い方に喧嘩を売っているまな板に限りなく近い正規空母の声のみ聞こえる。
『大岡提督、見てて下さい。漢瑞鶴、行きます。』
「それだけ!?」
「うん。」
「えーっ!!!冷たいよ秋月姉!!!」
照月は、起き上がりながら言うが、秋月の姿は照月から見えない。寝そべっているからだ。
「じゃあ『何でもしますから!!!』って言えばモンハン通信しよ。」
「分かった。秋月姉!!!何でもしますから!!!モンハン通信して!!!」
照月がそういった瞬間、秋月は、ニヤニヤしながら起き上がり、頼み込んでいる照月にこう言った。
「え?今、何でもするって、言ったよね?」
「うん。」
「じゃあアイス買って来て。ハーゲン、バニラで。あとチューハイ。お金は照月が出して。」
「え!?ハーゲンダッツ!?酒保で取り扱ってないでしょ!?まさか、秋月姉。外で取り扱ってるの知ってて言ったでしょ!!!」
「そうだよ。」
「雪降ってるし、それに私まだ19だよ!?買えないよ!!!」
「大丈夫。「24歳、自衛官です。」って言えば大丈夫。」
秋月はそう言いながら照月に手でサインを送る。照月にとっては何が大丈夫なのか分からない。と言うか、秋月が何を言っているのかすら分からなかった。
「無理。」
キッパリ無理だと答えると、秋月は「わーったよ。」と言いながら炬燵から這い出てハンガーに掛けてあったジャンパーを羽織り、靴を履きながら財布をジャンパーのポケットに入れ、面倒臭そうに廊下に出ていった。
照月は、部屋の暫くドアを見つめていたが、未プレイのゲームがあるのを思い出すと、目線をVitaに戻した。一旦ゲームを終わらせた後、Vita本体に入っているカセットを変え、またプレイし始めた。テレビからは相変わらず横須賀鎮守府弓道大会の様子が流れている。
『一航戦の青い方出てこい!!!』
『私はこの日を1年間待ってたんだよ!!!お前のサイドテールを狩るために!!!』
『黄金大弓!!!五航戦魂!!!金色射法!!!』
『瑞鶴、頼みましたよ。』
『射ったー!!!センター方向!!!』
『ん?』
『ん?対空砲火や。』
『止めて。止めて!止めて!!!』
その瞬間照月は、ゲームのスティックを動かすのをやめた。ある事を思い出したからだ。その事を思い出した瞬間・・・
『まさかの対空砲火ー!!!』
『うわあああああ!!!』
「ああああああ!!!」
照月は叫んだのだった。しかも、テレビから流れてくる瑞鶴の叫び声と照月の叫び声が見事にはもった。そう、照月は思い出してしまったのだ。
下半身がパンイチのまま、秋月が部屋の外に出て行ったことを。
「ああっ!!!早く追わなきゃ!!!」
照月は、Vitaを部屋の何処かに投げ捨て、炬燵から直ぐに這い出た。照月は、動揺しながら秋月のクローゼットを泥棒の様に漁り、何着かの中から1着のズボンを引き出すと、まるで脱兎のごとく廊下に飛び出した。
3階から1階の玄関に向かう途中、2階から「助けて!!!佐知!!!」と叫ぶ声が聞こえた。2階の廊下を覗くと、身包みを剥ぎ取られ、下着姿の秋月が黒い前髪をツインテールにしている某最上型のド変態重巡に捕まっていたのだった。