照月は護衛艦に案内人として乗っていた時、潜水艦伊168に魚雷を護衛艦に向かって撃たれたり、第1護衛隊群の群司令に会ったりした。そんな、かなーり忙しい照月に1週間程休暇が与えられ、照月は同じく休暇を与えられた秋月と共に小旅行に出かけた。これは、その帰りに起こった事だった。
「紅葉が綺麗だったねー。」
「うん!!!そうだね秋月姉!!!」
照月は秋月の運転する車に乗っていた。現在走行中の場所は、ある場所の峠道。片側1車線はある道だが、対向車は1台すらなかった。しかも、今は夜。辺りは闇に包まれており、明かりは秋月の運転する車のヘッドライトと車内のカーナビ、速度計しかない。
右カーブを抜けると、短いストレートがあり、今度は左にカーブしていた。秋月はそこを走行してると、後ろから1台の黄色いスポーツカーが抜かしていき、この先の左カーブをドリフトして曲がっていき、視界から消えた。その後、10台くらいのスポーツカーが秋月の車に驚くような動きをした後、抜かしていった。
「舐められたら、本気を出すしかない・・・。」
「でも、秋月姉。この車ハイブリッドだよ。スポーツカーに勝てるわけないよ!!!」
秋月は、10台くらいのスポーツカーに抜かされただけで急に怒り出した。しかし、今、秋月の運転する車はトヨタのハイブリッドカー。スポーツカーに適うはずはない。
「やらなきゃ分からないでしょ!?その勝負、乗った。」
「何勝手に勝負ってことになってるの!?相手とまだ話すらしてないじゃん!!!相手が舐めているかすら分かんないじゃん!!!しかも、スポーツタイプなら分かるけど、これ、ノーマルだよ!?」
照月の話も聞かずに秋月はアクセルをべた踏みし、乗っている車の速度が急に増した。しかも、いつの間にか、
「ちょっと!!!お姉ちゃん!!!聞いてる!?」
照月が秋月に呼びかけても、秋月は黙ったままで、顔がしげ〇秀一の描くような顔になり、さらにハンドルから手を離さなかった。
「まさか一般車が走っていたとはな・・・。まあ、一般車にビビるようでは、アイツらもまだまだだな。」
黄色いスポーツカーを運転している金髪の兄ちゃんが居た。バックミラーをチラチラ見ながら後ろから自分の所属する走り屋のチームの車を走りながら待っていた。
「ん?来たか・・・。」
その兄ちゃんがバックミラーを見ると、1台の車が近づいてきていた。しかし、その兄ちゃんはその車に違和感を感じた。
「コイツ、うちのチームじゃねぇ!!!」
そう、後ろから来ていた車は自分のチームの車ではなかった。しかも、抜かそうとするのか、前の兄ちゃんの黄色いスポーツカーを煽り始めた。
「上等じゃねーか、コーナー1個過ぎればバックミラーから消してやるぜ!!!」
兄ちゃんは、アクセルを思いっきり踏み、後ろから来ていた車を抜かさせないようにし、次のカーブでドリフトをした。しかし、後ろから来る車は、黄色いスポーツカーにベッタリとくっつくくらいに隙間がないような場所まで迫るくらいの場所でドリフトしていた。金髪の兄ちゃんは、自分の車を追ってくる車を見ると・・・
「プリウス!?さっきの一般車じゃねぇか!!!ふざけるな!!!」
秋月の運転するハイブリッドカーだった。その事にたいそう驚いた金髪の兄ちゃんは、直ぐに本気モードになり、スピードもかなり上げた。しかし、カーブを抜けても抜けても、バックミラーから消えない。そう、スポーツカーがハイブリッドカーに追いつかれたのだ。
「ただのハイブリッドカーのプリウスを、このFDがちぎれないだと!?俺は夢でも見てるんじゃねーのか!?クソッタレが!!!俺は地元のチームのナンバー2だぞ!?」
なんか、金髪の兄ちゃんがそうほざいてるが、秋月にそんな事は関係ない。秋月の車は、減速する黄色いスポーツカーの横を高速で抜かした。
「この先を知らないのか!?キツイ右を越えたすぐにキツイ左がある。減速しなければ曲がれねぇ、そのまま谷底に真っ逆さまだ!!!」
そう、この先は急なカーブが2箇所あり、金髪の兄ちゃんが言ってるように、通常、減速しなければ曲がれない。そう、
「スピードが盛りすぎてる!!!立て直すスペースも無え!!!」
秋月がドリフトをすると、前直ぐにカーブがまた現れた。金髪の兄ちゃんがクラッシュするのを見る覚悟でいたが、ありえないことが起きた。ドリフトをし、カーブを曲がったのだ。
「!!!」
そう、秋月は遠心力でドリフトをしたのだ。
「慣性ドリフト・・・!?」
金髪の兄ちゃんがそう呟いた時には、秋月の運転する車は視界から消えていた。
「・・・。」
「照月ー。照月ー。佐知ー?大丈夫ー?」
助手席で唖然としている照月に秋月が声をかけた。
「うん・・・。」
「ねぇ、気づいたら鎮守府に着いてたんだけど。私、何してた?記憶が無いんだけど。」
そう、秋月は、車を運転している時、本気にさせると、目的地に到着するか、車から降りる事のどちらかを達成した時までの時の記憶が無くなるらしい。その時の照月は、「真実は墓場まで持って行こう」と決意したらしい。