「どうですか?」
「え?」
向かい側に腰掛けた男性からいきなり問いかけられて、照月はビクッとした。
「艦娘という仕事は楽しいですか?」
「艦娘」という言葉が男性から出た瞬間、またもや照月は、ビクッとした。
「あなた・・・、何者・・・!?」
「申し遅れました。私は第1護衛隊群、群司令の
男性は深々とお辞儀をしながら照月に自己紹介をした。
「え!?横須賀の・・・、横須賀の第1護衛隊群の司令官ですか!?」
「そ。」
「し、失礼致しました!!!私は大甕ち・・・、海上自衛隊大甕基地第7艦隊所属、橘 佐知1等海曹、艦娘名は照月と言います!!!」
第1護衛隊群の群司令だと知った瞬間、照月は椅子から急いで立ち、敬礼した。
「ほう・・・。橘 佐知か・・・。いい名前だな。座っていいぞ。」
「失礼します。何故艦娘だと分かったんですか?」
椅子に座った照月は片岡群司令に問いかける。
「私の末っ子の息子と長女の娘の娘、私から見ると孫が艦娘になったからな。息子は駆逐艦天津風に、孫は駆逐艦照月になったんだ。私の家系は駆逐艦娘の適性がある人が多いんだ。私も適性があるからな。で、話は変わるが、息子の事、君、知ってるんじゃないか?」
片岡群司令は答えながら椅子に座ると、照月に聞いた。
「え?大甕基地に本名の名字〝片岡〟から始まる男性だった艦娘の人なんていませんよ?」
「実はな、息子は婿として迎えられたから、名字は変わっている。今の名字は・・・、〝六田〟だ。」
「六田司令が息子さんなんですか・・・。ところで、片岡司令、何故大甕基地に?」
照月は少し驚きながら片岡群司令に尋ねた。
「舞風海将補の現状を見たくてね。知ってるか?前第5護衛隊群の群司令だった舞風 一郎海将補。」
「知ってますよ。現在は大甕基地第8艦隊に所属しています。」
「彼。まあ、今は彼女と言った方がいいか。君は彼女についてどう思うか?」
「60歳に見えません。」
「だよね。舞風海将補は防大の頃は、私と同期でね、私は上から10番くらいで卒業したんだが、彼女は主席で卒業したんだ。」
「が、ああなってるんですか。」
片岡群司令の話を聞いた照月は半分呆れながら言った。
「艦娘の身体を手に入れる事は恐ろしいな。自分自身の性格自体変えてしまうんだから。彼がいい例だ。艦娘の姿になる前は真面目で、何事にも本気で取り組んでいた。彼だった頃、自衛官の手本だと彼が所属していた艦内ではそう言われていたのだが、今はあのザマだ。」
「そうですね。はは・・・。」
「んで、時間、大丈夫か?」
照月が乾いた笑いをしながら答えると、片岡群司令は時計を指差しながら照月に聞いた。
「え?」
「昼休みあと10分だぞ?」
「え!?」
照月は直ぐにスプーンを持ち、カレーを口の中に急いで入れていく。
「私も艦娘になろうかな・・・。」
そんな照月には、片岡群司令の独り言は聞こえていなかった。