やはり俺の青春ラブコメにこんなにヒロインがいるのは間違っている。   作:とまとと

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陽乃さん!幸せになってください・・・


仮面の下は・・・下

当日になっても彼から連絡がくることは無かった。

あぁ、やっぱり私は呆れられたのかな。でも、それでも私は一縷の望みをと彼に電話をかける。だが、比企谷君は出ない。メールも送ってみたのだが相変わらず返信は来ていない。私は涙が止まらなかった。これも全て私がしてきたことのせいだというのはわかっている。わかっているけれどもとても悲しかった。

 

そして、お見合いの始まる2時間前、私はお母さんに電話をかけたのだ。だが、お母さんも電話に出る事は無かった。このお見合いの話を無かったことにして欲しく、他になんの条件を出されてもいいから断ってもらうつもりだった。だが、現実はそんなに甘くはなかったのだ。

 

そこでふと私はこう思うのだった。

そうだ、これから死ぬまで一生この仮面をかぶり続ければいいじゃないか。

私は今までそれで大丈夫だったし。これからも大丈夫だ。

そんなに難しい話じゃ無いじゃないか。

あんな男の子1人の言葉に惑わされてなにを勘違いしていたのだろう。私は雪ノ下家の長女である雪ノ下陽乃だ。生まれた時から自由など無かったんだ。と・・・

 

そう考えることで私の気持ちはとても軽くなった。

自分の気持ちを殺すとはまた違うものだ。

私は他の女の子達とは違うんだ。もちろん雪乃ちゃんとも。私に自由なんて言葉は似合わない。

私は今の私を強要されているんだ。だからそれを壊すわけにはいかない。自分の中からスッとなにかが抜け落ちたような気がした。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「本日はよろしくおねがい致します。」

 

いつもと変わらない挨拶。いつもと違うのは私から挨拶をしているくらいだ。

 

隣の母はなぜだか機嫌がいいようだ。それが私をイラつかせる。

 

なぜだか怖いくらい笑顔の母は終始なにも口出しをしてこない。母が組んだお見合いなのだからなにかあるのではと踏んでいたのだがとんだ興ざめである。このお見合いが嘘のようにトントン拍子で進んでいき。私はようやくことの重要性に気づいた。

 

ここでこんなに上手くいってしまったらまるで母の手の上で転がされているようではないか。それはいけないと思い少しお花を摘みに言ってくると伝え、その場を後にする。

 

休憩室で1人、冷静になり考えてみる。

思うことはただ一つ。〖こわい〗だ。

こんなたかが1時間食事した相手と私は結婚をし、パーティーなどで幸せな生活を送っているように見せ、そう伝え無ければならないのか。

・・・私はまだまだ子供だ。仮面をつけているせいでここにくるまでにとても多くのモノを落としてきてしまっている。そんなことに今更気がつくのも全て比企谷君に再会したからだろう。

気がつくと私は比企谷君に電話をかけていた。

 

ピロリーン

 

 

すると音は同じ休憩室から聞こえるではないか。

どうして?なぜ?と考えていると、そこの音が近づいてくる。

 

 

「雪ノ下さん、いえ、・・・陽乃さん。

お待たせしました。」

 

 

えっ、比企谷君は今なんて言ったのだろう。

比企谷君は何をしてくれるのだろう。

でもダメ、もうお見合いは始まってしまっているのだ。

 

 

「・・・ごめん、比企谷君。もう手遅れなんだよ・・・。」

 

 

ホントは嬉しかった。でも、どうしようもないのだ。

 

 

「陽乃さん。逃げるんですか?」

 

 

この言葉がとても胸に刺さる。

そうだ、私は今までずっと逃げてきたのだ。そうすることでしか私は私を守れない。私は弱い。だから他人を傷つけ、信用出来ない。

 

 

「私は雪ノ下家の長女なの!そんな自由があるわけないでしょ!」

 

 

私は比企谷君に向かって初めて怒鳴ってしまった。

でもこれが紛れもない真実である。

私は他の子のように普通じゃないの。だから、初めから自由なんてなかった。

 

 

「陽乃さん。何言ってるんですか。

陽乃さんも、普通の女の子ですよ。」

 

 

っ!どうして比企谷君はこんなに言って欲しいことがわかるのだろうか。

 

 

「陽乃さんは普通の女の子です。・・・いえ、普通の女の子よりも全然弱いです。怖がりです。だから誰にも嫌われないように仮面をかぶってる。

俺は最初その仮面を見た時とても怖いと思ってました。雪ノ下をもってまでして敵わないと、あいつがあんなに劣等感を持つぐらいの凄い人だと。ただ、何回も会ううちに陽乃さんの考えていることが少し、わかるようになったんです。俺は人から嫌われるのに慣れていて、傷つけられるのにも慣れていて。それが嫌で。そうありたくないって思ってました。このことが陽乃さんからも伝わったんです。昔はなんとなくだったんですけど再会してからは確信になりました。」

 

 

比企谷君の言ってる事は凄いなぁ。全部当たってるや。

でもどうする。この状況は変わらないのだ。

もうお見合いも終盤だろう。

そろそろ時間的に戻らないといけない。

私は比企谷君と一緒になりたい。でも母は許さないだろう。

 

 

「でもね。比企谷君。もう手遅れなんだよ・・・」

 

 

「・・・言ったじゃないですか。お待たせしましたって。」

 

 

「どーいうこと?」

 

 

「それは戻ればわかることです。ただ一つ。陽乃さんには頑張って貰いますが大丈夫ですか?」

 

 

「・・・うん。わかった。私はもう逃げないよ。」

 

 

「・・・それでは、行きましょう。」

 

 

そう言って彼から初めて手が差し出された。

私はとても嬉しく仮面の無い心からの笑顔で彼の手をつなぐ。こんなことで比企谷君は顔が赤くなっていて、とても可愛いと思ってしまった。さっきまではあんなに頼もしいと思ったていたのに。ホントに比企谷君は最高だなぁ♪

 

 

「比企谷君。顔が真っ赤だよ?可愛い。」

 

私は思ったことを正直に伝えた。

 

 

「・・・何言ってるんですか。陽乃さんも真っ赤じゃないですか。」

 

 

えっ?と思い私は鏡で顔を確認する。すると今まで見たことが無いくらい顔がゆるみきって真っ赤になっていた。こんな乙女な顔をした私を見たことがなかった。

あぁ、私はこんなに彼のことが好きなんだ。と、産まれて初めての恋に驚くことばかりだ。

 

こうして私は比企谷君と手を繋いで、お母さんの元へ、お見合い場へ向かったのだった。

扉の前までつくまでは良かった。ただ今は怖い。私はなにを伝えればいいのだろう。私は・・・手が震えている。手を繋いでいるので比企谷君にもバレているだろう。すると比企谷君はキュッと握っている手にすこしだけ力を込めて

 

 

「陽乃さん大丈夫です。俺がいますから。」

 

彼は普段絶対こんな事は言わないはずなのに。比企谷君は比企谷君なりに頑張ってくれてるのだ。私はそれに答えたい。

 

扉を開くとそこには冷たい目をした母がこちらをみている。怖い怖い。今にも逃げ出してしまいたいくらいだ。

だが、もう逃げたくな無いのだ。

 

「あの、おかあ・・・」

 

「陽乃。どういうつもりかしら」

 

やはりこうなるのだ。私はやっぱり仮面をとる事はできないのだろうか・・・するとまた比企谷君がギュッと手を握ってくれる。そうだ。私は変わるためにここに来たのだ。

 

 

「ごめんなさい。お母さん。

でも私はもう逃げたくないの!このお見合いは悪いけどなかったことに出来ないかな。私は彼が好き。比企谷君が誰よりも好きなの!比企谷君は私の私ですら気付いてなかったことに気づいてくれて。私がどう進むべきかの道を示してくれたの。だから・・・私は比企谷君以外の人と結婚なんてしたくない!」

 

言った。産まれて初めてお母さんに反抗した。今までずっと言う事を聞いてきた。こんな私をみてお母さんはどんな顔をしているのだろう。悲しんでいるのかな。怒っているのかな。怖いけど向き合うしか無いのだ。そうして母の方を見るとなんと母はとても笑顔だった。

 

 

「陽乃。やっと本心を言ってくれましたね。」

 

えっ?今なんて・・・

 

「昨日の夜に隣の比企谷さんと雪乃ちゃんが私のとこにきてね。

明日の陽乃のお見合いを無しにしてくれって直談判しに来たの。最初はそのままお帰り願ったんだけどどうしてもこれだけは譲れないって比企谷さんが。

陽乃のためにどうしてそんなことをするのか聞いたらね。守りたいんですって。

でも私もはいそうですかでなしに出来る訳じゃないの。だから彼には陽乃の責任をとってもらうこと、そして雪ノ下家に入ってもらう試験をしたの。」

 

 

「比企谷君!雪ノ下家に入るってどーいうこと!?」

 

 

「陽乃さんを守れるならそれくらいどうってこと無いですよ。」

 

 

「・・・どうして勝手にそこまでしてくれるの・・・」

 

涙を止めることなどできなかった。

 

 

「それでね、このお見合いが始まる直前まで雪ノ下家の仕事をしてもらって無事に、いえ、予想以上の成果を残して合格だったわ。今すぐにでも雪ノ下家に入って欲しいくらいにね。」

 

 

だからどちらとも連絡が取れなかったのか。

 

 

「・・・ちょっと、それは言わない約束じゃ無かったですかね・・・。」

 

 

「あら?そうだったかしら?」

 

 

ふふっ、こんな時なのに、涙が止まらないのに笑ってしまった。

 

 

「それじゃ、このお見合いは?」

 

私が一番気になっていることを聞いてみる。

 

 

「そんなのただのお食事会よ?」

 

平然な顔で答えるお母さん。だから挨拶とかしなかったのか・・・

 

「ねぇ、比企谷君。ほんとにありがとう。

それでね。言いたいことがあるんだけどいいかな?」

 

 

「いえ、俺は聞きたくないです。」

 

えっ、どういうことだろう。私の話を聞きたくないって、つまりそういうこと・・・

私ばっかり舞い上がってたのかな。比企谷君も同じ気持ちでいてくれたのだと思ってたのはどうやら私の思い違いだったようだ。比企谷君にとって今回の事は奉仕部の延長線上だったのかもしれない。先程までとは違う涙が溢れてくる。急いでその場を立ち去ろうと走り出すが比企谷君が私の手を掴む。

 

 

「比企谷君はなして!」

 

 

「陽乃さん!俺の話を聞いてください!」

 

 

「嫌だ!絶対に、絶対に聞きたくない!」

 

するとグッと引っ張られギュッと比企谷君に抱きしめられた。そして

 

 

「陽乃さん。好きです。俺と結婚して下さい。」

 

 

この一言。

 

 

「えっ、どういうこと・・・」

 

彼は私の気持ちを聞きたくないと言った。なのになぜ私は比企谷君にプロポーズされているのだろう。

これはどういうことなのだろう。頭が真っ白で何も考えられない。

 

 

「あー、あれですよ。陽乃さんに言われる前に俺からいいたかったんです。」

 

 

と、頭をがガシガシと掻きながら比企谷君はそういう。

そうか私達は両想いなんだ。嬉しいなぁ。今までこんなに嬉しかったことなんてない。これが幸せってことなんだね。比企谷君、私のいろんな初めてを奪ってくれた人。そして私の一番愛しい人。

 

 

「・・・あのー、なにか言ってもらえませんですかね・・・」

 

 

おっといけない、返事もなにもして無かったか。

 

 

「比企谷君。いえ、あなた!

不束者ですが末永くよろしくお願いしますっ!」

 

私は飛びっきりの笑顔でそう言った。

それを聞いてお母さんも

 

 

「はぁ、陽乃のこんな顔初めて見たわ。

比企谷さん。これから陽乃のことも、雪ノ下家のことも、どちらともよろしくお願いしますよ?」

 

よかった。私達のことを認めてくれるんだ。

ほんとに良かった。

 

 

「・・・わかりました。」

 

あなた、目が腐ってきてるよ。と思いながらも彼にギュッと抱きつきこう伝えるのだった。

 

 

「比企谷君大好き!こんな私を選んでほんとにほんとにありがとう!」

 

 

「いえ、俺の方こそありがとうございます。」

 

んもう、なんだか他人行儀だなぁ。これから結婚するのに。そうだ、こうしてやろう!

彼の腕を引っ張り低くなった唇に自分の唇を重ねる。

ほんの数秒が何時間にも感じられるくらい幸せだった。

顔を真っ赤にさせている彼に同じく真っ赤になっている私がこう伝えるのだった。

 

 

「私を素敵なお嫁さんにしてね!

2人で幸せになろうね!」

 

 

 

 

 




これを昨日に投稿したかったです!!(血涙)

これでこの回の陽乃さん会は終わりです!
この回のってことは違うシチュエーションの陽乃さんも!?笑

まぁ、次のヒロインも続けるかもきまってないんですけどねっ!
感想お待ちしております!

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