「さて、エントマ。私が何を言いたいかわかるかね?」
デミウルゴスとエントマは屋根の上で向かい合っている。二人には身長差があるため、デミウルゴスは見下ろし、エントマは見上げるかたちになっている。
「あの戦闘の事ですかぁ?」
「そうです。作戦前に言いましたよね、蒼の薔薇の者達を見たら即時撤退。戦闘は出来るだけ避けるように、と」
「だってぇ」
「だって、ではありませんよ。蒼の薔薇の者が傷つけばアルフィリア様が怒りますし、あの吸血鬼を相手にしてエントマが傷つけばアインズ様が悲しみます。
アインズ様からお預かりした
エントマは一礼して屋根の上を跳ねていった。
「それにしても、この光景は素晴らしいですね」
屋根の上から見下ろす王都はゲヘナの炎に照らされ赤く染まり、あちらこちらから恐怖、悲嘆、怒り等の負の感情のこもった悲鳴や叫び声が聞こえてくる。
悲鳴が聞こえるところでは召喚された悪魔達が人間を襲っているのだろう。
「実に心地好いですね。おや、あれは・・・・・・」
街を見渡していると、視界の端に屋根の上を跳び跳ねる影が入り気になってそちらに視線を移すと、見知った人物が何やら大きなものを担いでこちらに向かっている。
「デミウルゴス、そんな仮面かぶってこんなところで何してるの?」
「私はここで悪魔達の指揮をしています。アウラこそここで何しているのかね?それにその人間は?」
それを聞き、アウラは自慢げにそのささやかな胸をはった。
「ふふん、これはアルフィリア様からの頼まれ事なんだ、あとで使うんだって。たしか八本指、六腕最強とか言ってたけどアルフィリア様に手も足も出なかったんだ」
「六腕最強ですか・・・・・・」
デミウルゴスは顎に手をあて少しの間思考すると、何かに思い当たり、愉しそうに笑い始めた。
「ふふふ、そういうことですか。流石アルフィリア様。至高の御方々の一人ということですか」
「ちょっとデミウルゴス。一人で理解してないでアタシにも教えなさいよ」
アウラは頬を膨らませ、不機嫌そうにデミウルゴスそう言った。
「そうですね。まず、アルフィリア様は故意に伝えなかった我々の作戦内容を全て理解していると思われます。その人間を拐わせたのがその証拠です」
「でもさぁ、こんな弱いのなんに使うのさ」
「おそらくアルフィリア様はこの人間を使って八本指の幹部集会の場所に案内させる予定ですね。
そこで幹部をマーレに頼んだ者のように服従させ、王国の裏社会を支配するつもりなのでしょう。これから面白くなりそうです」
そう言いながら、デミウルゴスは王城に視線を向けた。
王城の一角、真夜中だというのに煌々と明かりが灯された部屋には、多数の男女が集まっていた。
彼らは大至急で集められた、王都内の全冒険者である。
本来であれば身分不確かな者が立ち入ることを許されない王城の奥に呼び集められた、それだけ緊急性が高い事がうかがえる。
「なぁ、アルさんや」
「何です、ペロさんや」
「あれ、どぉいうこと?」
アルフとペロロンチーノの視線の先にはアインズ、もとい冒険者モモンが他の冒険者にあいさつをしており、その隣にはぼーっと彼を見つめるイビルアイ。
さらにそのイビルアイを忌々しげに睨み付けるナーベラル。
見た感じイビルアイがモモンに惚れ、ナーベラルは主人に色目を使う不届き者を排除したいがその主人から止められていて出来ない。ということだろうか?
「多分惚れてるんだと思いますよ」
「ぐぬぬ。いったいどこで間違えた、俺の『シャルティアとイビルアイを義姉妹関係にし、そこに俺も混ざってゆくゆくはアルフさんともあれやこれやする』という壮大な計画が頓挫してしまう!どうしたらいい!」
そう言いながらペロロンチーノはアルフの両肩を掴む。
「それ、本人に言いますか。てかそんなくだらないモノはそこら辺の犬猫にでも食わせてしまえ」
それを聞き、肩から手を離し項垂れるペロロンチーノ。
「しかし何があったんだろう」
「気になる?」
突然声をかけられ、アルフとペロロンチーノはすぐさま声のした方を見ると、そこには忍者装束の少女がいた。
「ティアですか、ビックリしましたよ」
「嘘つき、私の存在に気づいてた。それとそこの鳥仮面の人は誰?」
「この人はペロロンチーノっていって私と同じような感じかな」
「同じって事はぷれいやー? ならあのモモンって人も?」
「あの人は・・・・・こっちで仲間になった人だよ」
「ふぅん。そういえばアルフィリアの服綺麗、お姫様みたい」
「そう?」
そう言いながらアルフは自分の服を見る。
今の服装は戦乙女をイメージした装備で純白の布で体を覆い、その上から白銀のプレートメイル、ガントレット、ヘルム等を装備している。ケモミミはヘルムのしたに、尻尾はスカート部分に隠して太股に巻き付けているのだが、毛がわさわさといろんなところを撫でるため少しくすぐったい。
こんな格好をしているのは襲撃時の黒服では見た目が悪いため、一度店に戻って着替えたからだ。
「そういえば、イビルアイがどうしてああなったか知りたいんだっけ」
ティアはそう言いながら懐からスクロールを取り出した。
「茶釜義姉様から貰った録画スクロール。本当はアルフィリアのあられもない姿を自分で録ろうと思ってたんだけど」
スクロールを広げ再生すると、そこに映し出されたのはイビルアイ達を護りながら雄々しく戦う冒険者モモンの姿。魔法を切り裂き、自身を盾にしてイビルアイを庇うモモン。
「これは惚れるね」
「うぐぐ。俺の計画が・・・・・」
遅れて申し訳ないです。
コミケの地図書き、FGOの種火周回、プラモ作りと忙しくなりまして。