オーバーロード 月下の神狼   作:霜月 龍幻

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第69話

翌日の朝

 

アルフは頭にゲオルギウスを乗せ、王都を歩いていた。

今朝も昨日と同じく貴族達が店の前に集まっていたので、店から逃げてここにいる。

 

先程露店で買った串焼を食べながら街の中を歩いていると、所々家の窓ガラスが割れたり、ヒビが入っているところがあり、修理屋が忙しく走り回っている。

 

串焼屋のおじさんが言うには、遠くの方で大爆発があり、その衝撃でこうなったそうだ。恐らく、と言うより確実にゲオルギウスが放ったドラゴンブレスが原因なので罪悪感が・・・・・・。

 

あのときアルフは失念していた、ゲームの中ならどんなに派手な攻撃でも攻撃範囲の外には何の影響もない。だが、ここは現実の世界だ。火を起こせば煙は出るし、大爆発を起こせば衝撃で空振が起きる。

今後はその事に気をつけて魔法やドラゴンブレスを撃つようにしないと、そんなことを考えながら大通りを歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

その日の夕刻、アルフは高級住宅街を歩いていた。

目的はセバスに活動資金を渡すためだ、本来であればナザリックにいるシモベに頼んでセバスに渡せば良いのだが、今回は暇潰しとセバス達の様子見で自ら出向くことにした。

 

そして目的の家に着き、扉をノックする。

少しすると扉が開かれ中からセバスが現れた。

 

「アルフィリア様、お久しぶりでございます」

 

「久しぶり。ここじゃなんだし、中に入っていいかな?」

 

「はい・・・・・」

 

家に入れてもらうとき、どことなくセバスの顔色が悪いように感じた。それに、昨夜襲撃した村で嗅いだ嫌な臭いがする、女性達が閉じ込められていたあの小屋の中の、血と鉄と生臭い嫌な臭いが混ざったモノだ。

 

そんなことを考えていると、どこからかソリュシャンが現れ一礼した。

 

「お久しぶりです。来て早々申し訳ありませんが、ご相談したいことがありまして、少しよろしいでしょうか?」

 

「いいですよ」

 

「ではこちらに。実際見てもらった方がよろしいかと思われますので」

 

 

 

 

 

ソリュシャンに案内され部屋に入ると、この家に入ったときにしていた嫌な臭いが強くなった。

その臭いの元に視線を向けると、そこには女性がベッドに寝せられていた。

顔を殴られたのかコブがいつくもできており、赤黒く変色している所もある。

 

「・・・・・・この娘は?今どんな状態なの?」

 

「はい。この人間の女はセバス様が拾ってきたものです。

この人間の状態は、梅毒にあと二種類の性病。肋骨の数本及び指にヒビ。右腕および左足の腱は切断され、前歯の上下は抜かれて、内蔵の働きも悪くなっているように思われます。裂肛もあり、何らかの薬物中毒になっている可能性があります。

アルフィリア様、この人間をどうなされますか?」

 

「・・・・・・」

 

アルフは考えていた、この王都にはこんな酷いことをする者がいるのかと、こんなことを平気で出来る所があるのかと。

人間の残酷さは歴史書を読んでそれなりに知っているし、そういった性癖があるのも知っている。

だがそう言ったものを抑え込めずに何が人間か、獣と何が違う?

 

 

 

「アルフィリア様?」

 

「・・・・ごめんね、ちょっと考え事してた。ソリュシャン、この子治せる?」

 

「・・・・はい、容易く。ですが人間ごときに巻物(スクロール)を使うべきではないと愚考します」

 

もっともな反応だ、今現在中位以上のスクロールの材料の入手は出来ていない。補充出来ないものを使っていればいつかは枯渇する。アインズもそれでスクロールに使用制限をかけている。

 

「ではこれを使いましょう」

 

そう言うと、アルフはアイテムボックスからアイテムを一つ取り出した。

それは血のような深紅の色を持つ結晶体、アイテムの名前は万能の霊薬(エリクシル)。効果は第六位階の治癒魔法の〈大治癒(ヒール)〉と同じく、病気などのバッドステータスをあらかた治療する。

回復量は素材に使ったアイテムのレベルに左右されるが、最低ランクのエリクシルでもスクロールのヒールより高額で取り引きされている、理由は誰でも使えると言う点と。一定時間持続回復効果があるからだ。

 

「これを使えばこのような行為が行われる前の状態まで治せるはずです」

 

そう言いながらエリクシルをソリュシャンに渡した。

 

「しかし、どうして人間にここまで・・・・・・」

 

「私は昔、たっち・みーさんに救われた事があるんだ。私がまだ弱かった頃、裏切りにあって殺されそうになった時、颯爽と現れ、助けられ、憧れた。

そんな彼が言ったんだ『誰かが困っていたら助けるのは当たり前』って、だから少しでも近づきたいからこうしてる。そんな理由じゃだめかな?

それと、セバスがこの娘を助けたのはナザリックに所属する者としては相応しくないと思うけど、たっちさんの意思を継いでいると言う点では正しい事だからあまり責めないであげて」

 

「畏まりました」

 

「じゃあこの子を綺麗にしてあげて外だけじゃなく内側もね」

 

その言葉を聞き、ソリュシャンが意外そうな顔をした。

 

「気づいておられたのですか?」

 

「まぁ何となく匂いでね。望まない子を産むよりは最初から居ないものとしておいた方がこの子のためでもあるから」

 

「それではそのようにいたします」

 

 

 

その言葉を聞き、アルフは部屋を出てリビングに行ったのだが、そこには心配そうな顔をして椅子に座ったセバスがいた。

セバスはこちらに気付くと椅子から立ちあがって台所へ向かい、ティーセット一式を持って戻り、カップに紅茶を注いでいく。

 

紅茶をいれてもらって立っているのもなんなので椅子に座り、紅茶をすする。口の中に甘みが広がり、鼻から香りが抜ける。今回の事で荒れている心を静めてくれる、そんな感じの暖かい味だ。

 

「アルフィリア様。あの娘はどうなりましたか?」

 

セバスの顔を見ると心配しているのがよくわかる。

 

「あの娘は大丈夫ですよ。ソリュシャンには治療と体を洗うように言ってあります」

 

「そうですか」

 

アルフの言葉を聞き、セバスの纏う空気が柔らかくなった気がする。

 

「それでセバス、あの娘を拾った時の状況を聞かせてもらえますか?」

 

「畏まりました」

 

そしてセバスはあの娘を拾った時の状況を話始めた。




最近vita版マインクラフトでのナザリック建設にはまりまして、こちらそっちのけで建設してる時があります。

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