オーバーロード 月下の神狼   作:霜月 龍幻

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第63話

城の外壁の検問を通過すると、そこにはドレスを着たラキュースがいた。彼女は腰に装飾剣を帯刀している、たぶん護衛も任されているのだろう。

 

「こんにちは。戦士長、ここからの彼女のエスコートは

私がつとめよう」

 

「そうか、では俺は城の警備に戻る。ラグナライト殿、後程」

 

そう言うとガゼフは王城へと入っていった。

 

「アルフィリア、そのドレスすごく似合ってるわ」

 

「ありがとうございます。ラキュースさんも似合ってますよ、いつもと雰囲気が違って新鮮な感じがします」

 

「そう?」

 

ラキュースはそれを聞き、自分が着ているドレスを確認している。

 

「じゃあ行きましょう」

 

そう言いながらラキュースはアルフの前を歩いて城の中に歩を進めた。

 

 

 

城の中に入りまず目に入ったのは、豪華な衣服を身に纏い、様々な宝飾品で着飾った貴族たちだった。

 

城の一階、おそらくそこは待合室として使われているのだろう。後から来た人が談笑していた集団と合流し、広間の奥の階段を上がっていく。

 

アルフとラキュースはその中をコツコツとヒールの音を響かせてその中を歩いていく。

通りすぎたあと、先程の談笑とは違うざわざわとした話し声が聞こえる。話の内容は主にアルフに関するものだ。

「彼女はいったい誰なんだ?」「どこの貴族の御令嬢だ?」等、他にも聞こえるが思い聞こえるものはこの二つだ。

 

『アルフさんはどこに行っても人気ですね。中には劣情を催している人もいるかも知れないなぁ』

 

メッセージでぶくぶく茶釜の楽しそうな声が伝わってくる。

 

『それ言わないでくださいよ。意識しないようにしてたのに・・・・・・』

 

自身に向けられる視線は好意的なものだけじゃないのはわかっている。劣情、欲望、嫉妬、様々な感情が入り雑じった視線、なれたつもりではあったが、完全に意識の外にやるにはいたらなかったようだ。

 

そんなことを考えながら広間を通過して階段を上る。

階段を登り終えた所で抱いていたぶくぶく茶釜を降ろした。

 

「えっと、確かまずは王様に挨拶してから貴族達と交流、少ししたら王女様の所に行くんでしたっけ?」

 

「ええ。ちょうど良い頃合いで連れ出すから、それまでゆっくり食事してて良いわ」

 

そう言うとラキュースは階段を上がってすぐの所にある大きな扉を開け、軽く一礼して手を差し出した。

 

「さぁ、アルフィリア。お手をどうぞ」

 

その姿は映画で見た紳士が淑女をエスコートするすがたと被った。もしラキュースが男性でも惚れていたかもしれない。

 

アルフはラキュースの手をとり、彼女に引かれ、広間へと入った。

 

 

 

広間に入ると、皆がこちらを見てざわめき始めた。

 

ここにいる貴族達は皆豪華な服や宝飾品で着飾り、天井から降り注ぐ永続光(コンティニュアル・ライト)の光を反射し、光り輝いている。

 

アルフはその中をラキュースに手を引かれ国王の下へと歩いていく。

 

 

 

 

 

国王は一段上がった壇上に立っており、その後ろにはガゼフが控えている。

国王前に着くとラキュースは手を離し、王に一礼しアルフの後ろに下がった。

 

「国王陛下、御初にお目にかかります。私はアルフィリア・ルナ・ラグナライトと申します。この度は昼餐会への招待ありがとうございます」

 

アルフはそう言いながら、昔見た映画に出てきた深窓の令嬢を真似てスカート部分をつまみ、腰を落とすように一礼する。

 

「おお、貴女が。カルネ村の件は心から礼を言う、この国の民と戦士長達を救ってくれてありがとう」

 

そう言うと、国王は頭を下げた。

 

「頭を上げてください。誰かが困っていたら助けるのは当たり前、私を救ってくれた知人の言葉を思い出してそれを行っただけです」

 

「ありがとう。ささやかなお返しですまないが、この場には商業や流通を生業にしている貴族達もいる、そのもの達と交流を深めることは貴女にも益になると思ってな」

 

「王よ。貴族達との交流が粗方終えたらアルフィリアをラナー王女に紹介しようと思うのだがよろしいだろうか?」

 

「構わないとも。娘も同じ年頃の知合い、友が出来るのは良いことだ」

 

「では、失礼します」

 

アルフとラキュースは一礼し、国王の前を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

「あれがアルフィリア・ルナ・ラグナライトか。噂以上の美女だな、冒険者どもが詳細を教えんわけだ」

 

視線の先では、王に挨拶を終えたアルフィリアを貴族達が取り囲み、我先にと取引を持ちかけたり、求婚する者もおり、芸術家連中もあわただしく動いている。

 

「ですな、あれほどの女性であればどこぞの貴族がかっさらって手篭めにしてもおかしくはない。そう考えるものも出てくるだろう」

 

「だが本人は金級でも相手は蒼の薔薇所属の冒険者だ、そう簡単には手出しできまい?それにしてもすばらしいドレスとアクセサリーだな。あの娘の美しさに負けず存在感を放っている」

 

「ああ、私も気になっていた。おそらくどこかの遺跡で見つけたものだろう、あれほどの物であれば神代の物だと言われても信じてしまいそうだ」

 

そう話している後ろ、壁際で彼女を下卑た目で見る人影があった・・・・・・。





【挿絵表示】


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載せるのが遅くなりましたがrenDK様が描いてくださいました。


誤字脱字の指摘ありがとうございます。




今回いろいろ考えすぎて、結局どうしようもできなかったです。

そろそろ日常回を終えて対八本指に移りたいです。

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