翌日
アルフは店の準備をしながら、隣で品出しを手伝ってくれているぶくぶく茶釜に蒼の薔薇に正体がバレた事を話した。
「で、何もかも喋っちゃったの?」
「そんなことしませんよ。ちゃんと言えないところは誤魔化したし、でもプレイヤーの情報が入ったのと蒼の薔薇だけの時なら耳と尻尾出していいっていうのは大収穫です。茶釜姉も蒼の薔薇と行動するとき喋って良いんですよ?」
「確かにそれは嬉しいわね、自由度が高くなるのはいいんだけど本当に私達の情報を漏らさないかが心配」
「大丈夫ですよ。蒼の薔薇は亜人種や異形種に理解がありますから、皆が来たら紹介しますよ」
そう会話しながら開店準備を終えカウンターの下の物の整理をしている時、店の扉が開き蒼の薔薇の四人が入ってきた。
「お早う、アルフィリア」
「おはようございます」
ラキュースに挨拶を返しながら立ち上がる。
「昨日の報酬を持ってきたわ」
そう言うと、手に持っていた布袋をカウンターの上に置いた、布袋から小さな金属音が複数聞こえる。アルフは布袋の口を開け中を確認するが、中身の多さに困惑する。
「あの、これ多いんじゃないでしょうか?」
袋に入っていた金額は依頼書に書いてあった報酬の半分を軽く超えているようにみえる。
「それであってるわよ。移動はゲオルギウスだし、敵の殲滅もその子がしちゃったし、だから使役している貴女に報酬のほとんどを渡すのは道理と言うものよ?」
そう言いながらカウンターの上で寝息をたてているゲオルギウスを見る。
「そう言うことなら遠慮なくいただきます。そう言えば、貴女達に紹介したい人がいるんですよ」
袋を受け取り、カウンターの下に置いてある無限の背負い袋に入れ、ぶくぶく茶釜を持上げてカウンターの上に置いた。
「私と同じプレイヤーのぶくぶく茶釜さんです」
「こいつがぷれいやー、ねぇ。意思疎通は出来るのか?」
そう言いながら、ガガーランはぶくぶく茶釜をつついている。
「失礼ですね、ちゃんと意思疎通できますよ」
ぶくぶく茶釜は腕を組み、ガガーランを見上げる。その姿はまるで男性のアレのようである。
その姿を見たガガーランは既視感があるのか何やら考え込んでいたが、思い当たる物があったらしい顔をしている。
その後ろにいるティアとイビルアイの反応を見ると、何に似ているかわかっているようだが、ラキュースは何の反応もなく普通に挨拶し、片手を差し出す。
「ぶくぶく茶釜、さん?はじめまして」
「はじめまして、私はアルフさんの姉のようなものです、貴女達の名前はアルフさんから聞いています。私の事は茶釜と呼んで」
ぶくぶく茶釜は差し出された手をとり握手する。
「鬼リーダーがピュア過ぎて直視できない」
確かにティアの言う通り、ラキュースがなんだか眩しく見える。これも心が汚れているからだろうか?
「えーっと、ティアさん」
「はい!茶釜義姉様‼」
ぶくぶく茶釜の呼び掛けに、気合いを入れて答えるティア。
「貴女はアルフさんの事をどう思っていますか?」
「美しい容姿、素晴らしい毛並、たわわに実った至高の果実、控えめな性格、その全てが愛おしく、もし叶うなら私のお嫁さんにしたいと思っております」
「よろしい。私もアルフさんを狙っているのであげられませんが、そんな貴女にはこれを差し上げましょう」
そう言うと懐(?)から数枚の紙を取り出し、ティアに差し出す。アルフは何を渡したか気になりカウンターを出てティアの後ろに回る。
ティアは受け取った紙を一枚一枚めくり確認していく、受け取った紙はアルフが写った写真なのだが・・・・寝ているアルフの寝巻の胸元がはだけて胸が露になっていたり、シャワーを浴びていたり、ようはアルフのエロい写真である。
「なっ!!」
アルフは慌てて取り上げようとするが、ティアはひらりとかわす。
「茶釜義姉様、これは家宝にさせていただきます」
二人は熱い握手をかわし、ティアは店の外に走り去っていった・・・・・・。
「茶釜さん何てもの渡してるんですかぁ‼」
アルフはぶくぶく茶釜の両肩を掴み前後に揺する。
「いやぁ、同好の士にコレクションの一部を分けただけですよ?」
「まだあるんですか⁉」
「ふふん、私のコレクションは日々増え続けているのだよ」
ぶくぶく茶釜は胸を張り、誇らしげに告げる。
「・・・・・・何で僕がこんなめに」
「それはアルフさんが可愛いからです」
その時アルフは、茶釜さんには何を言っても意味がない、もう諦めて受け入れよう。と悟りを開きかけていた。
同刻
トブの大森林の一画に開けた場所がある。そこは自然に出来た物ではなく、人工的に作られた場所、アウラが現在作っている要塞だ。
そこにはアインズの他、ペロロンチーノ、シャルティア、アウラ、マーレ、デミウルゴスがいる。
「・・・・・・なあ、デミウルゴスよ」
「はい、何でございましょうか?」
「・・・・・・これは、罰になっているのか?」
アインズはそう問いながら、自らが腰かけている者に視線をおとす。
そこにはよつん這いになり、顔を紅潮させ、瞳は情欲に濡れ、息を荒くして口の端から涎を垂らすシャルティアの姿があった。
こうなった理由は、シャルティアが以前行った武技を使えるものを捕まえろ、と言う命令を完璧にこなせなかったから罰が欲しいと懇願されたのと、デミウルゴスが用意した骨の玉座が原因だ。アレに座るくらいならシャルティアに座り、罰とした方がましか?と思ったのが間違いだった気がする。
「ええ、守護者に座する事は至高の御方々にしか出来ぬ事、十分罰になると思われます」
顔からキラキラした輝きを発し、敬意の念を向けてくるデミウルゴス。
他の守護者を見るが、同じような状態だ・・・・・・。
この状況を見ているペロロンチーノはと言うと。
「ペロロンチーノ様、ちゃんと写真と映像録れているでありんすか?」
「心配するなシャルティア。お前の勇姿はしかと記録している」
嬉々として録画のスクロールを開きながら写真を撮っている。
ふと以前見たネットの書き込みを思い出す、『我々の業界ではご褒美です‼』主に蔑まれたり、罵られたりしたあとに書き込まれていた物だが、今のシャルティアは書き込んだ連中と同じ感じがする。
「あいんずさまぁ」
「・・・・・・」
ペロロンチーノに『どんどけ変態設定つけたんだ』と問い詰めたいが、今はリザードマン制圧の終盤なのでその思いを抑え込んだ。