オーバーロード 月下の神狼   作:霜月 龍幻

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第39話

模擬戦の準備を終えた二人は、十メートルほど距離をあけて平原にたっている。

 

シャルティアはその身に真紅の鎧を身に纏い、背には蝙蝠の翼、手にはスポイトランス、相手のHPを削り、その量に応じて装備者を回復させる事に特化したランスが握られている。

 

対するアルフィリアは黒曜石で創られたサークレット、ブレストプレート、籠手、グリーブを身に付けており、手足には赤黒い焔が灯され揺らめいている。

その姿は魔法詠唱者(マジック・キャスター)ではなく、戦士系の職業のようである。

 

 

「アインズ様。アルフィリア様のあの装備はいったい・・・・・・」

 

「あれはアルフさんが本気の時に使う装備。本来魔法詠唱者にはそこまで物理攻撃力はない、あの装備はそれを補うものだ。

だが知っての通り、魔法詠唱者が戦士の真似事をしても攻撃スキルが無い、ゆえに同レベルの本職には敵わない、それを魔法による加速と見切りによる防御で倒すものなのだが欠点もあってな。

あれを装備すると魔法攻撃力の70%を物理攻撃力に、魔法防御と物理防御の30%を素早さに変換するため、魔法が威力を失い、防御力が薄くなる」

 

アインズの説明を聞き、この場にいる者達は改めてアルフを見る。

アルフのその手には防具と同色の無骨なナックルが装備されており、手を握ったり開いたりして具合を確かめているようだ。

 

 

「うわぁ、アルフさん本気だ。ここ攻撃範囲に入ってないよな」

 

「ギリギリ入ってないと思うけど、念のため防御用意しておく」

 

ペロロンチーノの言葉にぶくぶく茶釜が答える。転移前、アルフの魔法の攻撃範囲を読み違え、敵ごと吹っ飛ばされたギルドメンバーの事を思い出す。

 

 

 

「二人とも、模擬戦の準備は終わったようだな」

 

拡声の魔法により大きくなったアインズの声が平原に響く。

 

「問題ないでありんす」

 

「こっちも準備OK」

 

「〈生命の精髄(ライフ・エッセンス)〉。では、模擬戦始め‼」

 

アインズはHP看破の魔法を発動させ、その後の開始の声と共にシャルティアが突っ込んできた。

 

「アルフィリア様の対策はわかっているでありんす、加速前に仕掛ければ普通の魔法詠唱者(マジック・キャスター)と変わらないでありんす!」

 

その言葉と共にスポイトランスの切先が迫る。

 

「その対策をしていないとでも?」

 

紅炎の壁(ウォール・オブ・プロミネンス)

 

魔法が発動し、アルフとシャルティアの間に巨大な焔の壁が出現し、スポイトランスによる攻撃を防ぎ、上限無視の魔法を発動する。

 

無限増幅(アンリミテッド・ブースター)

 

「くっ!〈上位転移(グレーター・テレポーテーション)〉」

 

このままでは不味いとシャルティアはアルフの背後へと転移するが。

 

「お見通しだよ」

 

「な!」

 

転移した先では、魔法の発動を準備しているアルフがシャルティアに手を向けている。

 

「装備能力カット・籠手」

 

左手のナックルのしたにある指輪〈武装制限の指輪(ウェポン・リミッター)〉を使用し籠手の魔法攻撃力を物理攻撃力に変換する能力を無効化し、魔法を発動させる。

 

魔法最強化(マキシマイズマジック)銀属性付与(シルバー・エンチャント)千の刃(サウザンド・エッジ)

 

シャルティアの足元から銀属性を付与された千の刃が迫る。

 

シャルティアは不浄衝撃盾を足元に展開し、魔法による攻撃を防ぐが、半分ほどは防ぎ切れずHPが削られていく、だがシャルティアが次に発動した魔法で意味の無いモノへと変わる。

 

生命力持続回復(リジェネレート)

 

アンデッドですら徐々に体力を回復させる魔法を発動させる。

 

「ちっ、〈流星の雨(ミーティア・レイン)〉」

 

アルフは舌打ちし、新たな魔法を発動させる。

空から幾千もの隕石が降り注ぎクレーターを作っていく。

シャルティアが回避しようと飛び回るが幾つかの隕石が当たり、回復量を上回る速度でダメージが入る。

 

上位転移(グレーター・テレポーテーション)

 

シャルティアは転移魔法を使い攻撃範囲から離脱する。

 

「流石は至高の御方、加速せずとも強いでありんす」

 

その言葉をいい終えると同時、シャルティアの前に、立ちはだかるように白き光が集約し、人の形をとっていく。

 

それはシャルティアの切り札、エインヘリヤル。

魔法やスキルはほとんど使えないが、能力値はシャルティアそのものだ。

 

エインヘリヤルが形を成し、アルフへと突撃する。

 

「〈加速(アクセル)〉装備制限解除」

 

アルフは加速し籠手の制限を解除する。ランスによる刺突を左手の甲で弾き、右手の爪でエインヘリヤルを斬りつけるが、入りが浅く、ダメージがあまり入らなかった。

 

「今のは完全にかわせたと思ったけどどうなっているでありんすか?」

 

「答えは簡単だよ、このナックルの下、加速杖アスケイオンと同じ能力を持った指輪を五つ着けているだけだ」

 

そう言いながら右手を前につき出す。

 

「そうでありんすか、なら。〈清浄投擲槍〉」

 

シャルティアはスキルを発動させ、三メートルを超える戦神槍を召喚する、それはMPを消費することにより、必中効果を持たせられる槍。

 

魔法三重化(トリプレットマジック)・フレア〉

 

シャルティアが槍を投げると同時、アルフは魔法を発動させ30の光球をばらまく。この魔法は攻撃力は皆無だが、必中の効果をもつ遠隔単体攻撃でも無効化することもある。

 

槍が複数の光球を貫くと同時、複数の爆発と爆煙が起り清浄投擲槍を無効化する。

 

魔法最強化(マキシマイズマジック)朱の新星(ヴァーミリオンノヴァ)

 

「くっ!槍は囮か!」

 

シャルティアの魔法がアルフを襲い、HPを大きく削る。

 

「やっと直撃したでありんす、このまま畳み掛けるでありんす」




設定

黒曜一式
武器はナックル

サークレット、籠手、ブレストプレート、グリーブからなる装備、その全てが黒曜石でできている。
付与されている能力は
サークレット・相手に与えた物理ダメージの60%をMPとして回復。

籠手・魔法攻撃力の70%を物理攻撃力に変換する。

ナックル・拳は打撃、爪は斬撃になる。MPを上乗せするとその分攻撃力が上がる。

ブレストプレート・空中を走ったり、跳んだり出来るようになる。

グリーブ・物理防御力と魔法防御力の30%を素早さに変換。

グリーブと籠手、ナックルにはエフェクトで赤黒い焔が揺らめいている

加速の指輪(リング・オブ・アスケイオン)
加速の杖、アスケイオンと同じ能力をもつ指輪。
右手ナックルの下に五つ装備している。

装備制限の指輪(ウェポン・リミッター)
装備しているアイテムに付与されている能力をOFFに出来る指輪。

フレア
攻撃力は皆無。
10の光球をばらまき、それにあたった投擲、射撃、打ち出す系の単体攻撃魔法を必中でも防ぐことがある。
ただし貫通系は防げる確率が下がり、範囲攻撃にはまったく意味がない。

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