オーバーロード 月下の神狼   作:霜月 龍幻

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第26話

「ありがとうございました。では、宣伝の方よろしくお願いしますね」

 

アルフィリアは四人に頬笑み手を振る。

 

「わかりました。後は神話や伝承、役立つ噂や情報を持ってくれば減額する、というのも言っておけばいいんですね」

 

「はい」

 

「武器の強化、ありがとうございました。では私たちはこれで」

 

ペテルが扉を開けドアベルが鳴り、四人が店を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・・・・疲れた」

 

アルフィリアは木製の丸椅子に座って深いため息をはき、カウンターの上に顎を乗せて先程の事を思い出す。

 

こちらが無料で武器の強化を申し出て、彼らが依頼したのはペテルの剣の強化。強化の内容は剣に火属性を追加する、というものだった。

 

強化の時に出したデータクリスタルについて聞かれたが、ニグン達の情報によりデータクリスタルはこの世界に存在しないと確認していたので、それっぽい嘘を言ってごまかし、信じてもらえた。

 

そして、強化したお礼として何かしたいと言われたので。店の宣伝と情報での減額をする、というのを広めるようにお願いした。

 

 

「アルフさん、ちゃんと女の子してましたね。演技指導したかいがありました」

 

アルフは声のした方へと視線を移す、ここにはカウンターの上に上ろうとウニョウニョしている小さなぶくぶく茶釜いた。

 

「僕としては複雑ですけどね。最近体の性別に精神が引っ張られて女の子であることになんの違和感もなくなってきてるのに。そんなところに女の子の演技、女性化に加速かけているような気がする・・・・・・」

 

「気にしても仕方ないよ。それにしても弟がいないと楽でいいわ、アイツがいるとわたしがエロい事言えないし、それに今までナザリックでお留守番だったからね」

 

カウンターの上に立ち伸びをする、その姿は雄々しく屹立するピンク色のご立派様であった。

 

 

「そういえば、アルフさんは発情期はあるの?」

 

「・・・・・・いきなりなんですか」

 

「もしあるなら、わたしが性欲解消のお手伝いしてあげようと思って。アルフさんかわいいし、いろいろモフリたいし」

 

ぶくぶく茶釜は身体をうねうねと動かしてそういう。

 

「たぶん来ないんじゃないですか? 異形種は基本不老に近い設定が多いし。子孫を残す理由が薄いので、来るとしても百年に一度とか千年に一度だと思いますよ?」

 

「ですよねー・・・・・・もし来たらいってくださいね?」

 

「・・・・・・わかりました、どうしようもなくなったらお願いします」

 

ぶくぶく茶釜の勢いに押され、了承してしまった・・・・・・。

 

「期待して待ってるよ。 それにしてもこの提案、許可でて良かったね」

 

「ですね」

 

 

昨日の朝、シャルティアが任務でしばらく外に出る。というのを聞き、今回のことを思い付いた。

 

アインズに今回の、商売をして外貨を稼ぎながら情報を集める、と言う提案をするとぶくぶく茶釜に相談したところ、彼女がそれに乗った。

セバスとソリュシャンの任務には多額の金がかかるため、アインズがやる予定の冒険者だけでは足りなくなるかもしれない、と言うことで許可がおりアルフは人に変化し、タレントを持つ魔法詠唱者として。ぶくぶく茶釜は小型化して人になつく設定のスライムとしてここにいる。

 

その時ペロロンチーノも提案をして外に出ようとしたが、内容が「エロ系モンスターがいるかの調査、及びいた場合の生態調査」とバカなものだったので却下され。遠隔視の鏡でシャルティアの仕事の見学、という名のお留守番となった。

 

「弟はいないし、行動範囲は限られるけど外にも出れるし、かわいいし妹分もいるしで申し分なし」

 

「妹って、僕一応男ですよ」

 

「今は女の子なんだから良いじゃない。弟なんていらない、かわいい妹がほしいの。これからしばらくは一緒に暮らすんだしお姉ちゃんって呼んでも良いよ?」

 

「じゃあ茶釜さんで」

 

「ぶー」

 

ぶくぶく茶釜はカウンターに寝そべり、ブーイングをするがそれを無視して品物を店頭に運んでいく。

その後、全てを終えた頃には日が暮れ、店の外は夜の色で染まっていく。

 

 

 

 

「ふぅ・・・・・・茶釜さんも少しは手伝ってくれても良かったんじゃないですか?」

 

アルフは椅子に座り、いまだカウンターに寝そべっているぶくぶく茶釜を見ながらそういう。

 

「えー、わたしアルフさんのペットだもん。わたしのことをお姉ちゃんって呼んでくれたら考えてあげましょう」

 

「わかりました、今度呼んであげます」

 

そう言った直後、変化して消していた獣耳と尻尾が生えた。

 

「あれ、戻っちゃいましたね。ゲームだと勝手に変化が解けることはなかったはずだけど」

 

「どうやらこちらに来たときスキルに発動条件が付いたみたいで。僕の予測では日が出ている内しか変化を維持出来ない、とみてます」

 

外を見ると完全に日が沈み、真っ暗になっている。

 

「じゃあ夜はフード付のローブを着た方が良さそうですね、法国程ではないと思いますが獣人を敵視してる人がいそうですし」

 

「そうですね。二、三着ほどアイテムボックスから出しておきます」

 

 

 

 

そんなこんなで一日が終わる。

 

明日はこの店の開店日だ。この世界には装備を後から強化する術はほとんどないらしい。ペテルたちが宣伝のしてくれたのなら一人くらいは興味を持って来てくれるだろう。そう思いながら寝床につく。

 

 

明日、とんでもないことになると知らずに・・・・・・。




回想というより説明ですね。気にしたら負けですかね。

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