ぶくぶく茶釜の説教から一夜明け、アルフは自室のベッドで目を覚ました。
時計に目を向けると、朝の七時を示している。
「ん?」
体を起こし掛け布団を見る、そこには二つの膨らみができており、その箇所に重みもある。
片方はフニフニと柔らかく、体温を感じるが、
もう片方はごつごつしており、少しひんやりしていて心地いい。
その膨らみをじっと見つめていると、時々もぞもぞと動いている。
何となく予想はつくが取り敢えず布団を捲ると、そこには腹を枕にしているマリアと、太ももの上で丸くなっている黒龍が寝息をたてて眠っていた。
アルフはマリアの設定を思い出す。
確か『寝ていると布団に潜り込んで来たり、えっちい悪戯をしてくることもある』と書いたような気がする。
考えていてもマリアは起きないので、目覚めを促す意味を込めて、頭をやさしく撫でてみる。
手にさらさらとした感触が伝わる、このままずっと撫でていたくなるような、そんな感じだ。
アインズがアウラやマーレの頭を撫でるのも、こういった感触や嬉しそうに撫でられているさまを楽しんでいるのかもしれない。
「・・・・・・んぅ?」
マリアは目を覚ましたようで、トロンとした目でこちらを見上げている。
「おはよう、マリア」
「おはようございます、お父様。 昨晩のお父様は素敵でした」
そう言いながら、頬を赤く染める。
「・・・・・・僕、なにもしてないよね」
「はい、私が一方的に楽しみました」
頬に両手をあて、身をよじらせていた。
「はぁ・・・・・・取り敢えず食堂に行こうか」
そんなこんなありながら身支度をし、食堂に向かうことにした。
ナザリック地下大墳墓・第九階層 食堂
食堂に着き中を見渡す。
座っている位置は違うものの、大体昨日と同じようにメイド達が座って食事をとっている。
そんな中、昨日と同じ場所に座っているぶくぶく茶釜とペロロンチーノを見つける。
食堂のカウンターで牛丼を注文して受けとる、マリアは昨日ぶくぶく茶釜が食べていた鮭定食と黒龍用の生肉を受け取っている。
ぶくぶく茶釜とペロロンチーノのいる席に着き、アルフは一礼し、言葉を発する。
「ぶくぶく茶釜様、おはようございます」
昨日の台詞を思い出し、体が震えている。
「アルフさん、もう怒ってないからそう畏まらないで」
「うん。 ペロロンチーノさんはどうしたんですか?」
ぶくぶく茶釜の横を見ると、ペロロンチーノが脇腹を押さえて苦しんでいる。
「ああ。またいつもみたいに馬鹿なこと言っただけだから、気にしないで」
「ちなみにどんなことを?」
「この世界にエロ系モンスターがいるか確かめに行きたい、とかほざいてたわね」
呆れたように肩らしき所を竦めてそう言った。
「ああ・・・・・・」
ペロロンチーノを見るといつの間にか復活しており、天丼をかき込んでいた。
アルフとマリアも席に着き、食事を始める。
黒龍はテーブルの上に乗り、皿に乗った生肉をかじっている。
「あ、そう言えばアルフさん。今日の夜、コキュートスと試合するのって本当? シモベ達の間でその話が広がってるよ」
食事を終えたぶくぶく茶釜が、質問し、紅茶をすする。
「はい。一応興味のあるシモベは観戦できるよう言ってあります」
「そっか、それで一般メイド達もざわついてるのね」
「どういうことですか?」
「うん、私たちプレイヤーってギルド拠点内では第6階層でしか試合しないでしょ? しかもゲームだった頃はシモベは持ち場から離れられない。
だけど今は行動できるようになった。ここまで言えば分かる?」
「はい、要は今まで観れなかった至高の存在であるギルドメンバーの戦闘をその目で見ることができる」
「そういうこと」
確かに、自分達が崇めている存在がどう戦うかは守護者以外でも興味は湧くだろう。そう考えながら食事を続けた。
食事が終わり、ぶくぶく茶釜、ペロロンチーノと別れ、コキュートスとの試合がある夜まで暇なので第九階層を散歩している。
マリアには自由にしていいと言ってあるので、他のメイド達と雑談でもしているのだろうか?
で、黒龍は自分の頭の上でぐでっとしながら尻尾を振っている。
「どこ行くかな・・・・・・」
アイテムボックスに手を突っ込みながら廊下を歩く。
目的のものをアイテムボックスから引っ張り出して見つめる。
龍の手綱、龍種限定ではあるが
「第六階層でも行くか」
そう言いながら黒龍の頭を撫で、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを起動した。
誤字脱字の指摘ありがとうございます。