オーバーロード 月下の神狼   作:霜月 龍幻

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第13話

「頭を上げてください」

 

アルフの言葉にペロロンチーノはゆっくりと頭を上げる。

 

「怒ってないんですか?」

 

「怒ってないですよ。でも、気になっているのですが。今の僕ってペロロンチーノさんの中でどんな扱いですか?」

 

ペロロンチーノは地面に胡座をかき、腕を組んで試案する。

 

「ん~・・・・・・一応以前と変わっていないつもりですが。外見美少女、中身は男、そうであるがゆえに大変無防備である、眼福です」

 

「なっ‼」

 

ペロロンチーノの視線で何をいっているかを理解し、開いていた足を閉じてスカートを押さえた。

 

「・・・・なんか、何でこんな反応したのか自分でも分からないんだけど・・・・」

 

本当に分からない、目の前にいるのは友であり、同性のペロロンチーノだ、女の姿とはいえパンツを見られるくらいどうとも思わないはずだが・・・。

 

「もしかして、体の性別に心が引かれ始めてるのかな・・・・」

 

自分で解答を出したが、凹んでしまう。

 

「それより、あの件。ぶくぶく茶釜さんの反応はどうだった?」

 

少し気分を変えようと、話の話題を変えるアルフ。

 

「うん・・・・姉ちゃんすごく怖かった。こう、背後に仁王を召喚したような威圧感が声だけて伝わってくるような・・・・・・」

 

「・・・・・・・モモンガさん大丈夫かな」

 

ギルドメンバーにことわり無くアインズ・ウール・ゴウンを名乗ったモモンガに、どんな説教が待っているのかを想像した。

 

「・・・・あと、アルフさんに伝言。第九階層の空き部屋に弟と一緒に来い、部屋の場所は弟に知らせとく。 だそうです」

 

アルフは言葉が出なかった、恐らく自分と、目の前にいるペロロンチーノにも雷が落ちるだろうことを察し、さらに気が重くなる。

 

そんなとき

 

 

 

アオオォォォォォ・・・・

 

 

と、ガルムの遠吠えが聞こえたが・・・・。

 

おかしい、ガルムの存在出来るリミットはとうに過ぎている。他のガルムに意識を向けてみるが、他の個体は消滅している、どのような要因でそうなったのが気になるが、今はそれどころではない。

 

ガルムに意識を飛ばし、状況を確認する。

草原を馬に乗った者達がこの村に近づいており、村を襲撃してた者達とは違う錆止めの臭いがするとのこと。

 

「ペロロンチーノさん、空に上がって下さい」

 

「了解」

 

地面に座っていたペロロンチーノが立ち上がり、背の二対四枚の翼を羽ばたかせ、空高く舞い上がった。

 

ペロロンチーノは職業で射手(アーチャー)を取っており、スキルによって遠くまで見渡せる。

 

伝言(メッセージ)、ペロロンチーノさんどうですか?」

 

『確かにこちらに向かって来る一団がいる、着ている鎧は襲撃者とは違うみたい』

 

誰か居ないかと辺りを見回すと、村人とモモンガが話し合っている。

 

「ペロロンチーノさん、戻ってください」

 

そう告げてメッセージを切り、モモンガのもとに向かう。

 

 

モモンガから聞いた話はこの村に馬に乗った騎士風の者たちが近づいており、村長とモモンガで出迎え、他の者は万が一のために村長の家に避難させるそうだ。

 

話のあと、ペロロンチーノが降りてきたので、ことの詳細を話しアルフとペロロンチーノもモモンガと一緒に出迎えることになった。

 

 

やがて村の中央を走る道の先に数体の騎兵の姿が見えてきた。騎兵たちは隊列を組み、清々と広場へと進んでくる。

 

「・・・・武装に統一性が無く、各自なりのアレンジを施している・・・・。正規軍じゃないのか?」

 

騎兵たちを観察していたモモンガは、彼らの武装に違和感を覚える。

先ほどの帝国の紋章を入れていた騎士たちは完全に統一された重装備であった。それに対して今度来た騎兵たちは、確かに鎧を来てはいるが、各自使いやすいように何らかのアレンジが施されている。

 

よく言えば歴戦の戦士集団。悪く言えば武装のまとまりの無い傭兵集団だ。

 

やがて騎兵の一行は馬に乗ったまま広場に乗り込んできた。数にして20人。死の騎士(デス・ナイト)に警戒しつつ、村長とモモンガ達を前に見事な整列を見せる。その中から馬に乗ったまま、一人の男が進み出た。

 

この一行のリーダーらしく、全員の中でも最も目を引く屈強な男だ。

 

「 私は、リ・エスティーゼ王国、王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。この近隣を荒らしまわっている帝国の騎士達を討伐するために王の御命令を受け、村々を回っているものである」

 

静かで深い声が広場に響き渡り、モモンガが後ろにした村長の家からもざわめきが聞こえてきた。

 

「王国戦士長・・・・・・ どのような人物で?」

 

「商人達の話では、かつて王国の御前試合で優勝を果たした人物で、王直属の精鋭兵士達を指揮する方だとか」

 

「目の前にいる人物が本当にその・・・・・・?」

 

「・・・・分かりません。私もうわさ話でしか聞いたことが無いもので」

 

モモンガが目を凝らして見ると確かに騎士は皆、胸に同じ紋章を刻み込んでいる。

村長の話に出た王国の紋章にも見える。とはいえ、信じるには少々情報が足りない。

 

「この村の村長だな。 横にいるのは一体誰なのか教えてもらいたい」

 

「それには及びません。はじめまして、王国戦士長殿。私はアインズ・ウール・ゴウン。この村が騎士に襲われておりましたので助けに来た魔法詠唱者(マジック・キャスター)です。」

 

口を開きかけた村長を押し止め、モモンガは軽く一礼して自己紹介を始めた。




ガゼフさん登場

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