オーバーロード 月下の神狼   作:霜月 龍幻

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このような公の場で書くのは初めてなので緊張しています、楽しんでもらえたらうれしいです。


第1話

ユグドラシル最終日。

祭の催されている町から立ち去る人影が1つ、その人影は立ち止まってコンソールを開き、届いているメールを1つずつ開く、その中の1通に世話になったギルドの名前があった。

その名はアインズ・ウール・ゴウン、最盛期には数多あるギルドの第9位にその名を刻み、1500人からなる襲撃者の一団を退け、公式チートアイテムである世界級(ワールド)アイテムを二桁所持している最凶ギルド。

そのギルド長から、『最後の時はナザリックで過ごしませんか?』と言うものだった。

 

 

 

 

 

 

ナザリック地下大墳墓・円卓の間

 

そこには4つの影があった。その影は人間の姿ではない、その内1つは骸骨、もう1つは4枚翼の鳥人、後の2つはスライムだった。

 

「ペロロンチーノさん、ぶくぶく茶釜さん、ヘロヘロさん、本当にお久しぶりです、ユグドラシルのサービス終了日とはいえ、正直本当に来てもらえるなんて思ってもいませんでしたよ」

 

「いやー、本当におひさーです、モモンガさん」

 

「モモンガさんおひさー」

 

「お久しぶりですモモンガさん」

 

各々が挨拶をし、雑談が始まった、転職した先がブラックだったとか、最近発売した中ではこのエロゲが至高だとか、声優で売れっ子になり次々仕事が入ってきて大変だとか、そんな楽しい語らいも終わりを告げる。

 

残っていた4人の内、ヘロヘロがログアウトした。

 

「ヘロヘロさん、大丈夫ですかね」

 

円卓の間に残ったスライムのもう一人、ぶくぶく茶釜が心配そうに呟く、本人が言うにはもう体がボロボロで今は1秒でも多く寝たいと言っていた、そこに自分の我儘でヘロヘロに直接『せっかくですから最後まで残っていかれませんか』とは言えなかった。

 

そんなモモンガの姿を見てペロロンチーノは言う。

 

「俺と姉ちゃんで良かったら最後まで残るよ」

 

そう告げた直後、円卓の間の外から走る足音が聞こえ、勢いよく円卓の間の扉が開かれた。

 

「遅くなりました!」

 

部屋に居た3人が開いた扉に目を向けると、そこには魔道士の格好をした小柄な犬耳の少女が立っていた。

 

「いえ大丈夫ですよ、アルフさん」

 

「モモンガさん、ペロロンチーノさん、ぶくぶく茶釜さんお久しぶりです」

 

「お久しぶりです」

 

「アルフさんおひさ」

 

「おひさー」

 

犬耳の少女・アルフが挨拶をすると部屋に居た3人も挨拶を返した、彼キャラネームはアルフィリア・ルナ・ラグナライト、ユグドラシル内で理想の嫁を作るという目的で始めたが、装備の作成や冒険に人一倍のめり込んでいた。

 

「モモンガさん、お誘いのメールありがとうございます」

 

アルフは礼をして円卓の間に入り適当な席に座り、辺りを見回して確認をとるためモモンガにとう。

 

「モモンガさん、最後まで残るのはここにいるだけですか?」

 

「残念ながら、先ほどまでヘロヘロさんが居たのですが体調不良でログアウトしました」

 

「残念です、最後に全員に挨拶したかったのですが」

 

「仕方ないですよ、皆それぞれ事情があるんですから。そろそろ時間なので玉座の間に行きませんか?」

 

そのモモンガの言葉に各々無言で了解し、円卓の間を出ることにした、部屋を出る際モモンガはギルドの象徴たるスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンをその手に取り円卓の間を出た。

 

玉座の間に向かう中、モモンガの案で途中にいたNPCセバス・チャンと戦闘メイドプレアデスの計7人をつれていくことになった。

 

 

 

 

玉座の間に着き、モモンガはNPC達に待機を命じて玉座につく。モモンガは玉座の横に控えるNPCアルベドの設定が気になりコンソールを開き、スクロールしていく。それを見ていた他の3人はコンソール内の文字を読める位置に移動しそれを眺めた。

 

「なっが‼」

 

それがこのアルベドの設定への第1の感想だった。長い文面を飛ばし、ようやくたどり着いた設定の最後に書かれていた文字で皆がフリーズした。

 

『ちなみにビッチである。』

 

「……え、何これ?」

 

 

この長大な設定を書いたのが設定魔であるタブラ・スマラグディナであることを皆が思いだし、「あの人ギャップ萌えだったっけ」とモモンガが呟いた。

 

「それにしても、ビッチはあんまりじゃないか?」

 

モモンガは入力用コンソールを出して『ちなみにビッチである。』という文を消し、新に『モモンガを愛している。』と入力した。

 

「モモンガさん、気持ちは分からなくもないですが……」

 

「最後くらい茶目っ気出してもいいじゃないですか!」

 

ペロロンチーノの視線に耐えられず、モモンガはすぐにコンソールを閉じ、アルフ、ぶくぶく茶釜、ペロロンチーノは玉座の前に移動した。

 

モモンガは玉座の間に掛けられた旗を指差し、プレイヤーネームを呟く、その中にはアルフの名前はなかった、これは当然のことだ、

アルフは一応ギルドに入ってはいるが、旗を作ったりギルドでのクエストには参加していない、過去にあった出来事がトラウマになり、ギルドに深く関われないでいた。

 

「そろそろ時間ですね」

 

モモンガのその言葉で皆は腕の時計に目を向ける、刻一刻と終わりの時が近づいてくる。

 

「モモンガさん、最後にお願いします」

 

ペロロンチーノはそう促し、モモンガはそれに答えた。

 

「アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ‼」

 

「「「アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ‼」」」

 

それと同時に時計が00:00を表示、1・2・3・4と更に時を刻んでいく。

 

 

 

 

アルフ、モモンガ、ペロロンチーノ、ぶくぶく茶釜は互いに顔を見合せ時計を見たり、辺りを見回している、強制ログアウトさせられるはずが、今もこうしてユグドラシルの世界にいる。

 

「……どういうことだ?」

 

「ユグドラシルⅡだったり」

 

「それなら何かしらアナウンスがあるでしょ、電脳誘拐の可能性も……」

 

モモンガ、ペロロンチーノ、ぶくぶく茶釜は各々の考えをのべるがどれも当てはまる気がしない、コンソールを開こうにもどうもできず、ログアウト、GMコール、強制終了と試していたが、どれも機能しない。

 

 

 

「どうかなさいましたか? モモンガ様?」

 

 

そんな混乱の中、初めて聞く女性の綺麗な声で作業が止まった。

 

その声はNPCであるアルベドから発せられていた。


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