できるだけ無欲で生きていきましょう   作:タクロス

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もう、何も言うまい。

彼女はついに帰って来た。


チャイナリターン 〜帰還と再会〜

昼食を取り終えた新人は更識と別れると教室へ向かい1人廊下を歩く。階段を降りて1年1組のある階層に着くと、聞き覚えのある声が新人の耳に届いた。

 

「あなたが中国からきました代表候補生ですね。はじめまして、(わたくし)セシリア・オルコットと申します。イギリスの代表候補生を務めておりますわ。今後ともよろしくお願いしますね」

 

一方はセシリアの声、

 

「あら、丁寧にどうも。わたしは中国の代表候補生。名前はーーー」

 

 

「「(ふぁん) 鈴音(りんいん)」」

 

「鈴で構わないわ……ってあれ?」

 

「お久しぶりですね鈴さん。

一年振り、でしょうか…またお会いできて嬉しいです。心配しましたよ、一年間何も連絡がありませんでしたので」

 

聞き慣れた2つ目の声、一年前と相変わらずの身長やら体格やら、でも雰囲気は大人へと少しながら成長を果たしている。そんな親友が新人の目の前に帰ってきたのだった。

 

「あら、新人さん。もしかしてお二人はお知り合いなのでして?」

「はい、小学三年からの親友です。会うのは一年振りですが、元気そうで何よりでーー」

 

セシリアと新人の間を通り抜け、新人へと飛びつく茶色のツインテール。新人はその場で受け止めると何も言わずに抱きついてきた少女を抱き締め返すのであった。

 

「久しぶり……ねえ、約束覚えてる?」

「はい、覚えていますよ。また時間がある時にでも、よろしくお願いします」

「そっか…うん、なら問題なし!」

 

短いやり取りを終えてすぐに離れる二人だが目撃者は二人のやり取りを温かい目で見守っているのであった。

 

「あらあら、新人さん。もしかしてお二人はそう言う関係なのでして?」

 

そう、会話相手がいきなり来た第三者に飛びついても全く動揺しない鋼の心(貴族の心得)を持つセシリアが二人に問いかけるのだった。

 

「え、いや、ちが、いっいい今のはそうよあれよ!えーとそのなんていうかこの」

 

顔を朱く染め上げて当事者は言い訳をしようとするが、久しぶりに親友に会えた喜びと、自分でも理解できない行動に、口早に言って何とかごまかそう(無駄なこと)とするも舌が回らず、脳は完全に真っ白になっていた。だが、そんな相方の状況を察することなく当事者2は言葉を告げる。

 

「そう言う関係、と言うものが何かは知りませんが僕と鈴さんは他より少し仲がいい親友なだけですよ。今のは多分アメリカ式のコミュニケーションかと、前にアメリカに行った時にそういったことをしてる人をよく見かけましたので」

「まあ、詮索をするのは野暮ですわね」

 

新人の回答に呟きで返すセシリア。呟きは新人の耳には届かず、新人の回答に冷静になったのか少し頰が朱いものの、何か残念そうな表情を一瞬だけ見せ、すぐに表情を彼女のいつもに戻すと、

 

「今見たのは他言無用でお願い、ね?」

「構いませんよ。乙女の夢を踏みにじるほど私、悪魔のような人間ではありませんので」

「そ、そう。ならいいわ。ありがとね」

「いえいえ、頑張ってくださいまし」

 

ガールズトークと言う名の交渉を終え、改めて新人と向き合う鈴。

 

「言いたいことはいろいろあるけど、とりあえずこれだけは言わせてもらうわ。

 

 

ただいま!新人!」

 

「ええ、お帰りなさい。鈴さん」

 

 

さて、積もる話をしたい青春少年少女だが、あいにく時間というものはどんな時も一瞬で過ぎていくものだ。あの時のように。

 

キンコーン カン!コーン!

 

昼休み終了と授業開始五分前のチャイムが校舎に響き渡る。3人は、また後で話しましょうと、別れるとそれぞれ進行方向は同じながらも違う教室へと入っていく。

教室にはすでに帰って来ていた一夏が自分の席で次の授業の支度をしているところだった。

 

「おう、新人。結構遅かったな。そんなにいい場所見つけれたのか?」

「ええ、いい場所は見つけれましたので今度皆さんで一緒に食べに行きましょう」

「おう、そうだなって、どうしたんだ新人」

 

一夏は、新人にいつもと違う部分があることに気がついた。

 

「何かいいことでもあったのか?」

「ええそうですね。良いことはありましたよ」

 

無表情を貫く新人の顔がほんの少しだけ、あまり付き合いのない人にはわからないほど微妙な差だが、

 

穏やかな表情をしていた




短いですし、あまり進展してないですが多分こんな感じで年内は終わると思います。多分戦闘回は来年になるんやなって…


連続更新?あいつは良いやつだったよ…

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