待たせたな!(蛇男並感)
西側ピット
全力だった。一夏の全力を持って挑み、そして敗北した。純粋な力の差。搭乗時間、武器の習熟度、機体への信頼、スペックの把握、それ以外にもたくさんの理由があるだろうが負けたことに変わりはない。落ち込むことはない。もともと、この試合に勝てるはずがないのはわかっていた。一夏で例えるなら、今の状態で千冬に挑むようなものだ。糧にできればいいと考えていた。それでも、
悔しい
これだけはどうにもならなかった。いくら理由をつけたとしても、男として負けたことが悔しかったのだ。近くでは箒が心配そうに一夏を見守る。負けたことに対する悔しさを彼女は理解している。故に、次がある、がんばれ、そんな風に声をかけれないのだ。
そんな二人を横目に白式は整備班によって回収され、エネルギーのチャージと修理などが行われる。次の新人との試合に向けて。
南側ピット
セシリアは次の試合への準備を行う。専用機故に自分で整備や換装をしなければならないのだ。ビットを補充し、エネルギーを充填し、愛銃の手入れをする。ほっ、と一息ついている暇などない。戦いが終わるまで気を緩めることなどできないのだ。全力で来いと言われた以上、投げられた手袋を突き返すわけにはいかないのだ。確実に勝つ、負けるわけにはいかない。
貴族はただ一人、勝利への執念を燃やす。
北側ピット
新人は目を閉じ瞑想をする。落ち着き、呼吸を整え、師匠から教わったモノを繰り返し反芻する。イメージでしかないがセシリアに、一夏に勝つためにも怠ることはしない。
扉の開く音がなる。目を開くと彼の前には既視感のある機体が運び込まれる。
ラファール・リヴァイブ
あの日見て、触れた機体と同じものが運び込まれている。そんな気がした。
「天下、これがお前の機体だ。お前の頼み通りの装備を積んである。無様な姿は見せるなよ?」
ニヤリと、ラファールとともに入ってきた千冬は言う。
「ありがとうございます、織斑先生。と言ってもどこまで戦えるかわかりませんが頑張ります」
対して新人は無表情のまま既視感のあるラファールを見つめるだけだ。既に千冬への興味はなく、今回の相棒とも言えるラファールに目を向ける。
カタパルトに乗せられたラファールに触れる。その瞬間、頭に膨大な情報が流れ込んでくる。操作方法、PIC、スラスター出力、武器性能、量子拡張領域、データ化された武器、装甲、機体の細かいスペック、ハイパーセンサー、etc、全てが情報として頭の中に入ってくる。そんなことをされたら頭痛や目眩がするものだが、新人は平然とそれらの情報を吸収、理解する。そして、そのままラファールへと乗り込むと、武器を拡張領域から取り出したりしまったりを繰り返し感覚をつかむ。
「よろしくお願いします。ラファール」
機体に呼びかけるが特に変化はない。逆にあったら怖いと思うが。
「いつでもいけます」
『了解しました。カタパルト発射態勢に移行します。急に加速するので気をつけてくださいね』
管制室から山田先生の通信が飛んでくる。それと同時にカタパルトが動く。
拡張領域からハンドガンを取り出し右手に、実盾を左手に装備する。
カタパルトによって機体が撃ちだされる。
新人の初のISの試合が始まる。
お待たせしました。期末から書く気になれずリハビリと称してオリジナル書いてたら止まらなくなっていた作者です。
オリジナルのやつは明日から投稿されます。こちらと違って週一です。不定期ではありません(重要)
いつもの、といきたいところですが今回から無しにしようと思います。キリがいいところでやったーとかすると思います。この作品を読んでくださっていることに感謝していることは忘れていないです。感想とかも個別で返していきますので何卒よろしくお願いします。そして、評価してくださった方々、ありがとうございます。高い評価も低い評価も嬉しいです。
こんな不定期更新ですがコンゴトモヨロシクお願いします。