できるだけ無欲で生きていきましょう   作:タクロス

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最近まで文化祭やら体育大会やらでごたついていた作者です。

打ち上げで同級生とカラオケとしゃぶしゃぶの食べ放題に行ってきました。楽しかったです(小並感)

今話は朝からスタート


ISと少年たち 〜朝〜

新人は目をさます。時刻は六時。いつも通りの起床である。新人は隣をチラリと見ると更識はまだ寝ていることが確認できる。あまり音を立てないようにベッドから抜け出すと、部屋着からジャージに着替えてタオルを首にかけ外に出る。四月の空はまだほんのりと赤い。この時間に外に出ているひとはおらず、人気はない。新人はいつものメニューをこなすために走り出す。

 

ランニング10km。

 

軽く走る程度で体の調子を確認する。一週間のブランクはそれなりにあったのか、10kmを走り終えるとそれなりに汗をかいていた。一週間とはいえ体力がかなり衰えている事を感じる新人。近くにある時計を確認すると時刻は六時三五分。いつもより五分ほど遅くなったと、新人は明日は今日より一分タイムを縮めると決めると、休ませていた体を起こし、柔軟をこなしていく。体はやはり一週間のブランクのせいか硬くなっていった。だが焦っても仕方ないとゆっくりとほぐしていく。ある程度が終わったところで、今度は100mダッシュ10本。今日のリハビリはこの程度でいいだろうと区切りをつけると、時刻は既に七時。部屋に戻ってシャワーで汗を流して朝食をとって教室に行くまでを二十分でこなし、残りのHR(ホームルーム)までの時間を勉強に当てようと決めると早速実行に移す。流石に七時になると周りの生徒は起きていた。汗を掻いているの新人を見つけて驚く者もいれば、汗も滴るいい男と見惚れる者もいた。新人は周りの視線を気にせず部屋にたどり着くとノックをして、自分の名前を告げ入室の許可を取る。が、返事はなくもう一度ノックをしても反応は無かった。仕方ないのでドアを開けて部屋に入ると、更識はまだ寝ていた。それを確認すると新人は制服と下着の着替えを手に持って、『新人が入っています』と書いてある札を簡易的な立てかけにかけると洗面所に入る。衣服を脱いでカゴに入れると、シャワー室に入りシャワーのコックを回す。出てくるのは水だ。そりゃそうだろう。給湯器だってすぐにお湯を出せるわけではない。お湯を出すために温めるのに時間がかかるのだ。だがそれを気にせず水を浴び続ける新人。ゆっくりとシャワーから出る水の温度が上がっていく。が、ようやく温まってきたのに関わらずシャワーのコックを回してシャワーを止める。そして、シャワー室を出るとバスタオルで体を丁寧に拭き、水気が残らないようにする。そして衣服を着たら、歯を磨く。歯は大事なものだと祖父から教わってから新人は歯を大事にしているのだ。入れ歯を入れる感覚は好きじゃないと祖父が語っていたのを思い出しながら洗面所から出る。ちょうどそこには起きたばかりなのか眠たそうにしている更識がいた。

 

「おはようございます、更識先輩」

「あ、おはよ〜。新人くん。早いわね、私はまだ眠いわ」

 

そう言ってふわぁと欠伸をするのを手で隠す。その姿はまるで良い家のお嬢様のような振る舞いだった。その姿に感心する新人。だが時計を見ると既に十分を回っており急がなければならないことを悟る。

 

「すみませんが急ぎの用事があるので失礼します」

「あら、そうなの。ならまた後でね」

「はい、また後ほど」

 

短く会話を済ませて昨日案内された食堂へと早足に行く新人。スムーズにたどり着くと既にそこには満員席しかなかった。周りを見渡して空席が無いことがわかるととりあえず開くのを待つしかないと、朝食を決める。今日は朝食セットと呼ばれるメニューした新人。注文して数分待つとそこには白米に味噌汁、そして玉子焼きと焼き魚に漬物の五種類である。量は女性が食べることを考えているために少ないが都合がいいと、空席を探す。たまたまカウンター席が空いていたのでそこに座ると、三分後には食器を空にした新人が席を立っていた。もちろんしっかりと噛んでから飲み込み、魚は頭から尻尾まで骨すら残さずに食べ、味噌汁で喉につっかえらないように流すと、締めに熱い緑茶を飲んで食器をおばちゃんたちに返す。食にうるさいとまではいかないが、新人は食べ残さない(食器以外)をモットーにいつもご飯を食べている。それは骨だろうと残さない徹底ぶりだ。

 

周りから座ってから立つまでが早すぎて驚かれているとも知らずに食堂を後にする新人。もう一度部屋に戻って筆記用具などを持つと教室へ向かっていく。新人は歩く途中で周りがひそひそと小声で話している姿を何回も見る。IS学園は大きな声で話すことができないようなことが多いのだろうかと、盛大な勘違いをしつつ教室へ到着。教室の時計を確認すると時刻は七時半ジャスト。ある意味ここまで計画的に動けることに驚きを隠せないが、そこは新人クオリティである。席に着いてISの基礎教科書とノートを取り出すと昨日の続きを始める。約二十分程度経過。順調に進んでいたがここで困ったことにつまずいてしまう。PICに関してよくわからない部分が出てきたのだ。ああでもない、そうでもないと悩んでいると、不意に前から声をかけられる。

 

「おはよう、新人。朝から勉強なんて頑張ってるね」

「おはようございます、シャルさん。

突然ですがよろしいですか?」

 

シャルだった。朝から勉強をしている新人を見て感心している様子。そこに、新人は質問を入れてくる。

 

「どうかしたの?」

「実はわからないところがありまして、そこについて教えてもらいたいのですが」

「意外だなぁ、新人にもわからないことはあるんだね」

「僕は何でも知っているわけではないですよ。実際、ISのことなんて今もほとんど知りません。興味ないことでしたから。ですからこうやって少しずつ知識をつけていっています。いずれのために」

「そうなんだ……それじゃあわからないところ教えてよ」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

 

シャルは教え方がうまく、つまずいていたところはすぐに解決し、残りの時間は先ほどよりも早いペースで進んでいった。シャル様様である。朝のHR前になったのでシャルは席に戻っていく。一夏の席を見るとまだ来ていなかった。箒もおらず、二人して何をしているのかと考えていると、勢いよくドアが開かれる音がしてクラスのほとんど(新人を除く)がドアへと視線を向ける。そこにはゼェゼェと息絶え絶えな一夏と箒の姿があった。一夏は、ま、間に合ったと言いながら自分の席に座る。箒も後に続いて座るがすぐに机の上に伏せてしまう。一夏の所為だぞ、とぼそりと呟いたのが聞こえた新人だった。もちろん一夏に何があったのかを直接聞く新人。一夏は二人とも食後にルールを決めたり、二人でISの勉強をしていたら寝坊してこのザマらしい。熱心なのはいいが、それのせいでミスをしたら本末転倒ですよ、と言っておくと今日から気をつけると言った。それから二、三分で織斑先生がやってきてHRへ、そして一夏に専用機が支給されることになったと告げると教室は騒がしくなる。静かにしろと、千冬が一喝することで教室内はすぐに落ち着きを取り戻す。だが、それなら新人の専用機はどうなっているのか、気にならないはずがなく一人の生徒がおずおずと手を挙げてそのことを聞く。返答はこうだ。

 

 

 

「天下に専用機はない」

「そうですか」

 

 

こっちの方が驚いたよ、一番驚くべき本人が驚いてないけどな!そうですかの一言で済ませられるような問題ではないはずだが新人は気にしていなかった。だが周りは違った。どうして新人の分はないのかを憶測で話し合ったり、新人の心配をする者もいたり、勝負に関しては心配をしている者もいたりと様々だ。

 

「千冬姉ぇ!何で新人のだけがないんだよ、それなら俺は別にいらなーーー」

「黙れ」

 

こちらもまた、千冬の一喝で強制終了がかかる。全員静かになるが一部は不満気な顔を隠せずにいた。

 

「これは既に決定されたことだ。お前らがとやかく言ってどうにかなるものでもない。それに、天下本人が何も言わないんだ。なら、気にしても無駄だ」

 

以上だ、そう言ってHRを終えて千冬が教室を出ようとする。

 

「それと織斑、今専用機が要らないなどとふざけた事を言おうとしたみたいだが、お前は専用機を渡される意味を分かっているのか」

「データを取るためだろ、男のIS操縦者は俺ら二人しかいないんだから。ならーーー」

「そうか、それなら貴様はまだまだだな」

 

千冬の質問に対して答えを返す一夏だが、ダイレクトに未熟だと言われる。それにより言葉を見失いそのまま立ち尽くす。千冬はそのまま教室を出て行った。教室内は沈黙した。ぶっちゃけすごく空気が悪い。そりゃそうだろう。この後また授業のために織斑先生は戻ってくるのだ。一夏の雰囲気がかなり怖い。誰もがこの空気をどうにかしてほしいと願っていると、

 

「一夏くん、気持ちは嬉しいのですが大丈夫ですよ」

 

鶴の一声ならぬ新人の一声だ。

 

「専用機じゃなければ戦えないわけじゃありませんよ」

「それでも新人だけ無しってのは不公平だろ」

「専用機がなければ一夏君とオルコットさんとは戦えないと言いたいのですか?」

「それでも対等に戦えるわけじゃない」

「ひとつ言うなら、対等に戦えるはずがありません。もともとオルコットさんが代表候補生の時点で対等ではありません。それが専用機ごとき(・・・)ひとつでうだうだ言っていたら終わりませんよ」

 

専用機ごときと一言で一夏のアドバンテージになりうるであろう物を切り捨てる。新人の言い分を聞いた一夏は反論の言葉をなくす。いつもこうである新人を言い負かす事が一夏にはできない。さも当然のように言う新人にいつも言葉をなくす。反論の材料が無くなってしまうのだ。だが一夏はでも、と口にしてしまう。それが新人の引き金を引かせると知っているはずなのに。

 

「一夏君は専用機なら自分とは勝負にならない、そう言いたいのですか?」

「な、違う!そういうわけじゃーーー」

「なら、文句は言わないでください。これは勝負です。負けたらそちらの実力がなかった。それだけで済む話です」

 

完全に黙る一夏。余計空気が悪くなってないかと、心配になるクラスメイトたち。一夏はわかったよと、呟く。そして、

 

「新人、絶対にお前に勝つ!」

 

そう指を指して宣言するのだった。




いつもの

UA28000、お気に入り件数290件越え、ありがとうございます。そして今回で20話目です。飽き性な自分が案外長く続けれらていますのは、読者の皆様が読んでいてくれている、感想をくださる、評価をしてくださっているためであり、本当に感謝をしてもしきれません。
次話も早く投稿できるように頑張ります。

2017.1.14新人くんがランニングにて人外になりかけていたので二十分から三五分に変更、ストレッチは二十分に変更。ご指摘ありがとうございました

と言いつつ次回も内容が未定です。新人たちがどんな特訓をしているのを描写するか、そのまま試合当日まで飛ばすか悩んでいます。
どちらかというと特訓描写4、試合当日6なので次回は試合当日まで時間が飛ぶかもしれません

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