できるだけ無欲で生きていきましょう   作:タクロス

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最近寝不足の作者です。

今回は代表決めと部屋についてのお話。


ISと少年たち 〜代表と部屋〜

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「さて、授業を始める。

 

と言いたいとこだが、一ヶ月後にクラス対抗の代表者戦が行われる。それに伴ってここのクラス代表を決めなければならない。クラス代表と言っても中学などでの学級いいのようなものだ。ある程度仕事があったり今回のような会議の時や代表者が必要なところで前に出るだけだ。簡単なことだろう?

選出の仕方は立候補と推薦だ。やりたい奴は自分から手を挙げろ。推薦をするならそいつの名前と動機をしっかりと言え」

 

千冬が教室に入ってきて早々クラス代表を決めると言う。それに伴いクラス内は少なからず騒がしくなる。こういったものはすぐに治るものだと思うものだが意外なことに長引くのである。まあ、出会って初日、知らない人間に対してイメージはあまり湧かず、中身がどんな人物なのかもわからないのだから必然的とも言える。新人と一夏は少しだけ考えてお互いに話し合うこともなく騒ぎがおさまるのを待つ。やがて、静かになっていき誰もなにも言わなくなってしまった。だが、それと同時に手を挙げる人がいる。お分かりであろうと思うが新人だ。いつも通りの無表情でピシッと手を挙げている。

 

「どうした天下(あました)。立候補するのか、それとも誰か推薦する奴がいるのか」

「自分はセシリア・オルコットさんを推薦します。理由は先ほどの休み時間に自分と隣の一夏くんに、自分の時間を割いてISのことを教えてくると言ってくださいました。イギリスの代表候補生であるため実力も申し分無く、見ず知らずの他人であった自分たちにも優しく接することができるからです」

 

なんの感慨も無く言い切る新人。後ろの方の席ではセシリアがベタ褒めされて表情はいつもの笑顔のままだが、その頬は恥ずかしさからか少し赤みがさしている。その隣にいるシャルロットは新人に褒められたセシリアを少し悲しそうな表情を混じらせて羨ましそうに見つめていた。

 

「ふむ、そうか。では他に推薦や立候補するものはいないか?」

「はい!先生、私は天下新人さんを推薦します。理由は、えっと…優しそうだからです!」

 

勢いよく新人が知らない女子生徒が新人を推薦する。自分は優しかっただろうかと記憶を辿るが、その間にも他の生徒が新人や一夏を推薦したりする。だいたい半々といったところだろう。一夏は自分が推薦されたことに驚いていたが、少し苦笑いをしているだけだった。大方、セシリアさんが選ばれるだろうと軽く楽観視しているのだろう。だが、もしあの時に新人になにも言われていなかったら、なにも考えずに嫌だと喚き散らしていたであろう。楽観視はしているが少しは成長したと言えるかもしれない。ちなみに最後には、俺もオルコットさんを推薦する、と言っていた。

そんなこんなで、

 

「では、推薦の結果オルコット、天下、織斑の三人から代表を選出する。異論はないな?」

 

千冬の質問に対して言葉を発するものはおらず、そのまま進行していく。

 

「では、選出方法を言うぞ。方法は

 

三人での総当たりによるISの模擬戦、だ」

「ちょっとお待ちくださいませ!」

 

千冬が出した意見に対してすぐに待ったをかけるセシリア。その顔はまさに怒っています、と体言している。

 

「私に、ISに碌に乗ってない初心者と戦えというのですか!」

「何か問題でもあるのか」

「そんなものイジメと似たようなものですわ!国家代表候補生とISの搭乗時間が一日にも満たないISのあの字も知らない二人とやったって結果なんて見えきっているようなものです」

「ほお、そこまで言うか。

で、どうなんだそこの二人は、やるのかやる気がないのか、どう答えてもやらせるがな」

「っ!?」

「俺はもちろんやるぜ。今のうちに上手いやつのやり方を見れるのは今後の経験にもつながるしな、それにあわよくば一発は決めたい。そこまで言われたなら、やらなきゃ男が廃るってもんだ」

「自分はどちらでもかまいせん。ISもまだ動かしたことがないのでできれば乗ってみたいとは思っていますが。まずはそこからなので」

「で、どうするんだ、オルコット?」

「くっ、わかりました。

ですが!やるからには本気で行かせてもらいます。ハンデをつけるつもりもありません、全力で代表候補生の実力を思い知らせてあげますわ!」

「そうこなくっちゃな!楽しみにしてるぜ、オルコットさん」

「よろしくお願いします、オルコットさん」

「よろしくお願い致しますわ、織斑さん、天下さん」

「では試合は来週の月曜日、今から一週間後に第一アリーナにて行う。三者ともにしっかりと準備をしてから試合に臨め、以上だ。授業に戻るぞ」

 

こうして三人の戦いの火蓋が切って下された。三者は一週間後の試合に向けてどんな準備をするのか。そして、オルコットが二人に勉強を教えると約束したことは果たしてどうなるのか。次回をお楽しみに。

 

 

 

(まだ終わってません)

 

 

 

授業が終わって放課後。新人と一夏は先生に言われた通りにみっちり三時間勉強をした。新人はふむ、といった感じでまだまだ余裕が見える。一方、一夏は頭が痛いのかよくわからないのか頭を抱えてうーうー唸っていた。時間が来たので教室から出て先生に報告しに行こうと教室のドアを開けると目の前には副担任である、山田先生が立っていた。

 

「あ、二人ともまだいましたか。ちょうど良かったです」

「どうかしたんですか、山田先生。まだ用事があるんですか?」

「いえ、二人に渡したいものがあるんです。

はいっ、ここの寮の鍵です。二人の部屋は別々になってしまっていますがお隣さんなのですぐに会うこともできますよ」

「えっ、俺は一週間は自宅からの登校って聞いていたんですけど。荷物も家にありますし」

「それなら心配いらん」

山田先生の後ろからぬっと出てくる織斑先生

「あれ、千冬姉ぇ。どういうことなんだ?」

「お前ら二人の荷物は天下の両親に頼んである程度見繕ってもらったものが運んでもらってある。だからお前らは今日からここで過ごすことになる」

「そういうことか、新人の親父さんと母さんなら問題ないか。それで、他に何かありませんか?」

「あっ、それでは私から寮生活に関しての注意事項を幾つか説明させてもらいますね。

まず知っての通りIS学園は女の子しかいません。ですので二人にはしっかりと節度を持って過ごしてください。それと寮は基本一部屋二人の共同生活です」

「では、同居人は」

「はい、御察しの通り女の子になります。これに関しては織斑君しか来ないと思っていた学園側が織斑君の準備だけをすぐに済ませたのですが、天下君が遅れて出てしまったためすでに決められた部屋割りを無理やり変えようとすると既に移動した生徒たちに申し訳ないということでこうなってしまったんです。こちら側不手際によるものなんです。ごめんなさい」

「いえ、山田先生が謝る必要はないと思います」

「それでも、けじめはつけなきゃいけませんから。では、寮生活の説明の続きを。もう少しで終わりますから我慢してください。

ここには大浴場があるのですが使うことができないんです」

「まあ、そうだよなぁ。風呂に入れないのは残念だけど」

「わかってくれて何よりです。先生たちもお二人がお風呂に入れるように頑張りますから。ですのでしばらくは自室のシャワーで我慢してください。だいたいこれくらいでしょうか。織斑先生からは何かありませんか?」

 

千冬は特にない、と告げるとスタスタと去っていった。二人はお互いに鍵の番号を確認する。一夏が1104、新人が1105だった。荷物を手に(新人はバッグなどが無いから文字通り手に持って)、一夏が入学式でもらった地図を頼りに寮へ向かっていた。

 

 

 

 

寮に着き自分の部屋の前に立つ新人と一夏。一夏は緊張しているように見える。そりゃそうだろう。女子と二人っきりなんて人生でそうそう無い経験だ。しかも同居である。緊張するのも無理無い。だが新人の方は全くもって興味が無いのか、じっ、と木製の部屋のドアを見つめ続けている。

 

「そ、それじゃあ、また後でな」

「はい、だいたい七時半に食堂前ですね。同居人との挨拶もありますし、荷ほどきもある程度はしないといけませんからね」

「ああ、そうだな。それじゃあ先に行かせてもらう」

 

一夏は部屋を声をかけながらノックすると中から新人にとってなんとなく聞き覚えのある声が聞こえる。入って良いと言われたのか、こっちを向いて手を上げながら、またなと言って部屋の中に入っていった。新人もノックをして反応を伺う。誰も居ないのか返事が返ってこないのでもう一度、今度は、すみません。同居することになった天下新人と言います。入ってもよろしいでしょうか、と言いながらノックする。すると今度は反応があった。部屋の中から少し人が動くような気配を感じられたのだ。それがドアの前まで来ると、入っていいわよ、と言われる。

新人はドアを開ける。するとそこには、

 

「おかえりなさい!ご飯にします?お風呂にします?それとも、わ・た・し?」

 

そこにはエプロンをつけている薄い青色の髪の毛と紅い瞳の女の子が立っていた。だが、エプロンをつけていると言っても肌の露出度は高く、大きい胸の北半球や太ももなどが丸見えで、まるでエプロン以外をつけていないような格好(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)なのだ。しかもそれをしているのは、百人に問えば百人とも美少女だと答えるほどに整った顔立ちと、出るとこは出てて、出なくてもいいところはしっかりと引き締まった、所謂ボンキュッボンなスタイルの女の子。こんなことを裸エプロンなんかでされたら男は確実に堕ちてしまうだろう。

 

「はじめまして、今日からここで一緒に生活することになりました。天下新人(あましたあらと)と申します。これからよろしくお願いします」

「あ、どうも、こちらこそよろしくお願いします」

 

と、お互い頭を下げた。新人の丁寧さに思わず相手の方もお辞儀をしてしまったのだ。

 

「では、失礼します。友達と待ち合わせをしているので早めに支度を済ませないといけないので、お互いの細かいことは荷ほどきをしながらでも構いませんか?」

「えっ!……あ、うん、いいわよ」

「ありがとうございます。改めましてこれからよろしくお願いします」

 

まあ、ここまでやっても気にしない奴は気にしないのだ。今、ここにいるこいつみたいに。

 

「もしかして、私、スルーされたの?嘘でしょ。そんなはずは無いわ。これはお母様から受け継いだ、絶対に男を落とすことのできる108式の究極奥義なのよ。私みたいな美少女がこんなことしたら絶対に顔を赤くするとかするはずだもん。ありえない。そうよ、きっとそうなのよ、あの子がおかしいんだわ。きっとホモとかそんなんなのよ。でなきゃまるで私に魅力が無いみたいじゃない。だからそう、あの子はきっと織斑君狙いのホモなのよ絶対そうだわ、そうに決まってる」

 

新人に無視されたことによるショックか、頭を抱えながらしゃがみこむ新人の同居人。裸エプロンと思わしき姿のタネはエプロンの下に水着をつけていたのだ。通りでこんなことができるはずである。本気(マジ)でやってたらさすがに痴女と認めなければならなかったからある意味これで良かったのではあるのだが、落ち込ませた本人はまるで聞いていないように荷ほどきを進めている。

 

「すみません」

「な、な、なな、なにかしら?」

「名前を教えてもらってもよろしいでしょうか、今後必要になりますのでできれば早めに教えて欲しいのですが」

更識(さらしき)楯無(たてなし)よ」

「では、更識さん。まずは否定しなければならないのですが、更識さんは魅力が無いわけでは無いですよ。どこから見ても綺麗な美人さんだと思います。それと108式の奥義は忘れたほうがよろしいかと。そして最後に自分は同性愛好者では無いですよ。ただ、興味が無いだけだったでしたから。織斑君にやったら顔を赤くしてくれると思いますよ」

「も、もしかして聞こえてた?」

「はい、聞こえてましたよ」

「う、うぅ、恥ずかしい」

「それと、最後に一つ」

「な、なにかしら?」

「人の好みに対して自分はとやかく言うことはありません。ですが趣味は人それぞれと言いますので、その服を着れるように配慮したほうがよろしいですか?」

「う、うぅ、結構です・・・」

 

こうして、新人の同居人である更識とのファーストコンタクトが終わった。新人が更識の地雷原を容赦なく撃ち抜いて爆破処理し、更識を轟沈させたことによって。




まずはいつものを。
UA20000突破、お気に入り件数220、本当にありがとうございます。ついにUAが20000を超えて嬉しいです。次は30000を目指しながら調子に乗らずに謙虚さを大事にしながら頑張ります。そして、今回も感想をいただきました。マス大地さん、ゴオーさん、感想ありがとうございます。せっかくだしたシャルが空気気味ですが、前話で新人にした質問でみんなに問い詰められていて動けなかったみたいな感じでお願いします。

正直楯無さんドウシテコウナッタ。ギャグみたいにする気はあまり(40%)なかったのに。あまりにひどすぎた。


次回は多分食堂に行ったり次の日の話だったりします。

おやすみなさい

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