できるだけ無欲で生きていきましょう   作:タクロス

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どうも、冷凍庫の中に入っていた犬用のアイスを間違えて食べてしまったことのある作者です。味があったのですが薄かったです。親に言われて初めて気付きました。これからはしっかりとパッケージを確認して、間違いの無いようにしたいです。

前回の投稿から一ヶ月近く経ちました。
その間、他のことに気を取られすぎて全く手付かずになってしまっていました。うまく文字にできないと執筆の手が進まず、不定期投稿とはタグに着けているとはいえ、ここまで投稿が遅くなったことを謝ります。申し訳ございません。

それでも、もしまだお読みになってくださるのならとても嬉しい限りです。次は早めに投稿できるように頑張ります。


今回はタイトル通り帰国します


日本人と中国人 〜説教と帰国〜

 

「私ね…中国に帰ることになったの…」

「そうですか…」

別れとは非情なまでに唐突である。

 

数十分前

 

「あ〜、今日も疲れた。早く春休みにならねぇかな」

「まあ、春休みまであと少しだし頑張ろうぜ」

「そうだぜ、弾。春休みになるまでの辛抱だ」

「まあ、僕も早く春休みになればいいとは思っていますが」

「「「ん?」」」

「珍しいな新人、お前が休みが早く来て欲しいなんて」

「意外だな、俺はそういったことは口にしないと思っていたんだが、もしかしてコレか?」

中学からの新しい友達の御手洗数馬(みたらいかずま)が右手の小指を立てる。

「いやいや新人にコレはないだろ」

「コレの意味は知りませんが、ただフランスにいる友達に会いに行くだけですよ」

「友達?男か?女か?」

「なぜそこまで気にするんですか?」

「いや…お前って言いにくいこととかズバズバ言うから、俺ら以外の友達をあまり見たことがないっていうか」

「まあ、友達と呼べる人が少ないのは認めましょう。ですが、皆さんだけというわけでもないので」

「ああ、悪かったな。勝手に決めつけて」

「まあ、大丈夫ですよ。気にしていませんし」

 

そんな感じに新人たちが会話をしていると、ガラガラと教室のドアが開かれる音がなる。視線をそこに向けるとそこには(りん)がいた。日直の仕事をしてきたらしく、その手には当番日誌が置いてある。

 

「おはよう」「「「「おはよう(ございます)」」」

「何話してたの?」

「早く春休みがこねぇかな、って話」

「弾はどうせ春休みもナンパしに行くんだろ?」

「いや、俺はもうしねぇよ。なんせ新人に教えられたからな。恋愛は高校生から、ってね」

 

意外だという顔をする数馬と、少し頬を引きつらせた鈴が言葉をつなげる。

 

「へえ〜、そんなこと言ってたんだ」

「ところで何で高校生からなの?」

「くだらないことにかまけているくらいなら、いい高校に行ってその後に続くような生き方のほうが確実に良いと思いまして。といっても所詮は持論ですからお気になさらず」

「ふ、ふ〜ん」

 

鈴以外は納得といった感じだが鈴だけは微妙そうな顔をしていた。

 

「新人らしい答えだな」

「まあ、いい高校に行くことに関しては賛成だな。そのほうがいい女とも出会えるかもしれないし」

「そういうことだぜ」

「そういった意味で言ったわけではないのですが」

「アンタ案外下衆なこと言うわね」

「いや〜、それほどでも」

「褒めてないわよ!」

 

鈴は数馬をツッコミ程度の威力で叩くと周りは笑い出す。殴られた本人は少し痛そうだが。

鈴は周りが笑っているのにつられ自分も笑い出すが、だんだんとその表情は悲しげな表情へと変わっていった。

 

「ん、どうした?具合でも悪いのか?なんか辛そうな表情してるけど」

「もし、悩みがあるのでしたら聞くだけでもできますよ。もしかしたら何か解決するかもしれませんし。無理して話す必要はありませんが」

 

そして、冒頭へ

 

「鈴、どうしたんだよいきなり中国に帰るって。何があったんだ?」

「・・・・・・」

「えっと、親が喧嘩してそれで、離婚するって言って、お父さんが私を引き取って中国まで行くって…」

鈴はかなり動揺している。たどたどしく紡がれた言葉はだんだんと弱々しく、小さなものになっていく。

「何とかできないのか?父親と行くんじゃなくて、母親と一緒に行くとか」

「もう無理よ、既にお父さんと行く事は決まっちゃってる。それにお母さん、もうどこかに行っちゃって、どこにいるのかわからないし…」

「なら、うちに来るとか、どこか他のところに泊めてもらうとか・・・」

「そんなことできるわけないじゃない……」

「だったらこれならーーー」

 

一夏がいろんな意見を出していくも全て否定され、鈴の顔はだんだんと俯いていく、いつもの鈴の明るさはそこにはなかった。当然と言えば当然だが。

 

「それなら、弾君の家で送別会でもしましょう」

 

唐突に一人だけ全然違う事を言う奴はどこにでも居るものだ。もちろんここにも。

 

「おい、新人!それはいくら何でもあんまりじゃないか、鈴が居なくなっても良いって言うのかよ!」

「誰がそんな事を言いましたか?言い切りの形で言ってしまったの悪いとは思っていますが。まあそれは置いておいて、

正直、鈴さんの転校というか帰国はどう足掻いても防ぐ事はできません。ですが終始暗い顔なんかされても鈴さんは困ると思うので、送るときは笑顔でいてあげようという事です。一夏君だって転校するときに見送りがみんな暗い顔してたら嫌でしょう」

 

防ぐのは無理と言ったところで、鈴の肩がビクッと跳ねる。だが、新人の言葉を聞いているうちに表情は少しだけだが和らいでいった。一夏は不満げな表情をしたまま納得できないといった顔をしている。

 

「織斑君」

 

その瞬間一夏の表情が驚愕に変わる。他男子二人も新人が織斑君、と呼んだだけなのになぜか顔が強張っている。事情を知らない鈴は二人に聞くと、

 

「まずい、新人が一夏のことを苗字で呼びやがった」

「このままだとアレが始まるぞ…」

「あ、アレって何なのよ」

 

まだ暗かった鈴の雰囲気がいつもの状態に戻りつつある中、新人と一夏の間に剣呑な雰囲気が現れる。弾と数馬の二人は同時に同じ言葉を放つ。

 

「「新人の説教が始まってしまう!」」

「はぁ…?」

「織斑君、今までそういった機会がなかったので言う事はなかったのですが、この際言わせていただきます。

 

 

 

君は馬鹿ですね

確かに鈴さんの帰国を阻止しようとするのは良い事かもしれません。ですが鈴さんは助けてほしいと一言でも言いましたか?

言ってもないのにそういった事をしようとする、押し通そうとするのはただの一人よがりです。

さらに言えば家庭内の問題に対して僕たちが口出しする権利、もしくは理由なんて持ち合わせていません。なのに勝手にあーだの、こーだの言うのはお門違いですよ」

 

無表情なまま淡々と説教を続ける新人。一夏は最初は反論しようと試みるが、新人の無表情の威圧感と早くもない説教に押され言うタイミングを失ってしまう。

一瞬これで終わりか、と後ろの二人が安心しかけたが、まだ新人の説教は続く。

 

「もう一つ言っておきますが僕たちはまだ子供です。言ってしまえば無力なんです。何かを変える力なんて持ち合わせてはいません。自分が何かすれば何かが変わる、変えられるなんて夢を見るのは勝手ですが来年には僕たちは高校生になり、社会人の一歩手前、もしくは就職して社会人になる人もいます。いつまでも子供のままでもいけないんです。自分で考え、自分のできること、できないことの区別くらい付けれるようにならないと将来、痛い目にあいますよ。

 

所詮これは僕の経験談ですが」

 

教室の空気が凍りつく。新人たち以外の生徒は、なんで朝からこんな話を聞かされなければならないんだ、と視線を送るが当の本人は気付かず、鈴たち三人は途中からもう悟ったような顔をして話を聞きいていた。説教の対象だった一夏はもう涙目になっていた。自己の完全否定をされたようなものなので何も言い返せないでいた。心に大きな傷を作ってしまったのだろう。そしてそれを行った張本人の新人は、経験談のところを言った時は少し俯いていたような気がしたが、特に感慨もなくといった感じにいつも通りの無表情だった。だが、ゆっくりと口を開くと、

 

「ですが、優しいところは一夏君の一番良いところです。さっきは一人よがりだのなんだの言いましたが、それはできないことを頼まれてもないのに勝手にやろうとした姿勢に対してですので、人に気遣いをできる優しさや、人のことを大切に思える気持ちは僕にはないものです。ですから素直に羨ましいと思いますし、憧れもします。ですから僕は一夏君と友達であることを誇りに思っています。

 

それとひどいことを言ってすいませんでした」

 

出てきたのは賞賛の言葉。否定はあくまでも悪い部分であってそれを直すべきと言う、良いところは良いとこなのだと褒める。それが新人の持論(やりかた)である。

それを聞いた一夏のは涙を拭うと震えた声で、

 

「確かに・・・そうだな。ありがとな新人。俺は馬鹿だったって気付けたよ。多分言われてなかったらいつか痛い目にあってたかもしれない。大きな間違いをしてたかもしれない……だから、ありがとう」

「僕としては、怒られる理由はあれど感謝されることはないと思っていたのですが、そうですか…なら僕はそれを受け取ることはできません。ですからもう一度言います。ごめんなさい。僕は一夏君のことを完全に否定してしまいました」

「ああ、別にいいぜ。ならそれで今回のことはチャラだ。俺はここから変われるように頑張るよ」

「なら僕は一夏君を応援します」

「ああ、頼む。これからもよろしくな」

「はい、よろしくお願いします」

 

最後には声は震えておらず、しっかりと一夏の声が放たれる。新人は差し出された一夏の手を掴み、お互い強く握手を交わす。まるでマンガのような光景だが本人たちにとってはとても大事なことなのである。

そんなこんなで、鈴の転校兼帰国の話から壮大に話しがずれ、教室中の視線を浴びながら仲直りをした二人は学校が終わると、五人で送別会の内容について話しながら仲良く帰って行った。

 

 

 

そして、送別会を終えた次の日

 

鈴の帰国の日である

 

 

 

たくさんの人がいるゲートの近くには四人の中学生がいた。帰国する鈴を見送りに来た一夏、弾、数馬の三人、そして見送られる鈴の四人である。そこに本来いるべき新人の姿はない。

 

「新人はまだ来ないのか?出発までもう20分くらいしかないのに」

「新人が大事なことを忘れるなんて絶対にない、何かが原因で遅れてるんだろうけど。・・・おっ、一夏だ。連絡ついたか?」

「ダメだ。家にはいないし、前に教えてもらった携帯の電話にも繋がらない。新人は一体どこにいるんだ。鈴だって来なくて不安なのに」

 

三人は一旦鈴のところへ向かうと、まだ来てないけどすぐに来るさと伝える。うん、と笑って返すがその表情はすぐに曇ってしまう。三人がもう一度電話をかけてみるかと、もう一度公衆電話のあるところに向かおうと振り返った。すると、少し遠くの位置に紙袋を持ってこちらに向かって走ってくる一人の少年の姿が見える。だんだんと近づいてくるその少年に三人は声をかける。

 

「「「遅すぎるぞ、新人!」」」

「すいま…せん、皆さん、遅れてしまって」

「俺たちのことはいいから早く鈴に会ってこい」

「あいつお前が来ないからってすごい不安そうにしてたからな」

「後10分だ。それまでにしっかりとできることやっとけよ」

「はい、ありがとうございます」

 

肩で息をしながら来た新人に鈴のところに早く行けという三人。新人は頷くとすぐさま鈴の元へと走っていく。

 

「新人!来て…くれたのね」

「ごめんなさい鈴さん。遅くなってしまって」

「いいわよ別に、来てくれただけでも嬉しいんだから」

「ありがとうございます。それと、これをどうぞ」

「これって昨日言ってたプレゼント?」

「はい、これを作ってたいたら案外手間取ってしまって、あまり上手に作ることができませんでしたが受け取ってくれると嬉しいです」

 

そう言われて、紙袋を開ける鈴。その中に入っていたのは、

 

「去年の冬は着けていましたが、今年は着けているのを見なかったので。寒くならないようにと思って作ってみました」

「手袋と・・・マフラー・・・」

 

去年の冬、というより12月の時期には鈴はマフラーと手袋を着けていたが、今年の元旦の初詣の時には着けておらず、学校が始まっても着けている姿を見なかった新人が祖母に教えてもらいながら自分で編んだ一品だ。本人はあまり上手に作れなかったと言っているが、初心者にしては十分な出来である。

 

「どうでしょう…か。自信が無いので本当に渡すべきなのか迷ってしまって」

「うん、すっごく嬉しい。ありがとね新人!」

「喜んでいただけて良かったです。正直ホッとしています」

 

受け取ってもらえたことに喜ぶ新人。表情には出ないが嬉しいのである。一方鈴は受け取ったマフラーと手袋を大事そうにしまうと、頬を朱く染めながら新人に話しかける。

 

「ねえ、新人。突然だけど、いい?」

「何でしょうか、お答えできるものなら可能な限り尽くしますが」

「そ、そう。それじゃ、言うわね。

料理が上達したら、毎日あたしの酢豚を食べてくれる?」

「鈴さん…」

「な、何よ…」

「さすがに毎日酢豚は厳しいものがあるので、たまには他の中華料理や味噌汁を頼んでも良いでしょうか?」

盛大にコケる鈴だったが、すぐさま立つと、

「そ、それって、OKってこと?」

「そうですね。たまには自分で料理をしたい時もありますから毎日とはいけませんが」

「本当に?」

「はい」

「ほんとに本当?」

「はい」

「ほんとのほんとに本当?」

「ほんとのほんとに本当です」

「本当に、食べてくれるの?」

「はい、作っていただければ、僕でいいのなら喜んで食べさせていただきます」

「そっか、そうなんだ……フフッ」

『イッチャイナライン972便、香港行きが出発10分前になりました。お乗りになられるお客様はお急ぎくださいませ』

「時間ですね」

「ええ、そうね」

「こういう時はサヨナラではなく、またねというべきなんでしょう」

「うん…」

「じゃあ、俺らも言わなきゃだな

鈴、またな」

「鈴、ちょくちょく電話かけるからそっちに着いたら電話かけてくれよ。絶対出るからさ。あっ、そん時にそっちの電話番号教えてくれよ。こっちからも電話かけるからな」

「鈴、楽しかったよ。お前と一緒に学校生活できて。五人でバカやって騒いで、遊んで、飯食って、すごく楽しかった。すこし遠いところに行っちゃうけど俺たちは親友だからな!」

「では、最後に。鈴さんまたどこかでお会いしましょう。その時にでも料理をふるまってください。楽しみに待っています」

「うん!またどこかで会えるわ、絶対に!

だから、またね!」

「「「「おう(はい)またな(お会いしましょう)!」」」」

 

そう言って笑顔でピースを新人たちに向ける鈴。一夏たちも同じように笑顔でピースを返す(新人は相変わらず無表情だが)。

そして、鈴はゲートを抜けて見えなくなっていった。

 

「行っちまったな」

「だけど、また会えるさ」

「新人がよく言う今生の別れってわけでも無いしな」

「帰りますか」

「そうだな」

 

新人たちも空港から消えていった。

 

 

 

 

そして、時はあっという間に経つ。

時間とは無情なるものなのだ




説教7割、帰国3割。

どうしてこうなった(大汗)

どうも、最初に御手洗(みたらい)を他の方の小説を読んでいた時に初見で御手洗(おてあらい)と読んでしまった作者です。数馬君マジゴメス。久しぶりに書いたとはいえこれはひどい。特に新人君の説教部分がかなり強引な展開になっている気がします。SAOのやつなんか書こうとしてるからこうなったんでしょう。文字は多いけどなんかなぁって思ってます。原作前の最終話なので長くなるのは仕方ないと思いたいたい(目を逸らしながら)

SAOのほうの投稿はもしかしたらするかもしれません。ですがこんな作者の作品なので期待しないでください(前書きと後書きの挨拶を見つつ)

そして、書いてない間にUA13000回、お気に入り153件。本当にありがとうございます。こんな不定期すぎる作者の駄文を読んでいただけるだけでも嬉しいのに、ここまでの人に閲覧、お気に入り登録していただけて光栄です。そして、感想を書いていただいた、ゴオーさん、マス大地さん、私は誰だ。さん、ありがとうございます。感想での指摘や、応援はすごく励みになります。さらに評価を新しくいただきました。勇者(という名の魔王)さんありがとうございます。高い評価をいただいても慢心せず頑張らせていただきます。



次回はいよいよ原作に入れるといいなぁって思ってます。

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