できるだけ無欲で生きていきましょう   作:タクロス

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性懲りもなく書き始めました。

一作目に関しては一度こちらをメインにして文がまとまったら書いていきたいと思います。

並行して書ける気がしないです(小並感)


6/23 加筆とルビ振りしました


生前
無欲転生


ああ、今思えばとてもくだらない人生だった。

夢もなくサラリーマンになり、上司の横暴な態度に嫌気がさしながらも自分はこれ以外はできないと決めつけて会社に出社する日々。後輩ができても仕事はろくにできず、それを部下への教育不足だと自分の責任へと押し付けられ、その部下は悪びる様子もなくへらへら笑いながら周りへのご機嫌取りし、自分が仕事ができないのは俺のせいだと誤解を加速させるようなことばかりをほざき、なぜかそれを周りは信じてしまい弁明しようともだれも聞かなかった。それによって会社からの信用はなくなり、仕事はまわらず周りからは蔑むような視線やはやく消えろよみたいな視線や遠回しな言い方をされ荒んでいく心。そして、社長から言い渡されたものは

 

解雇

 

の二文字だった。

 

そこからは荒れに荒れた。退職金や今まで貯めた貯金を使って酒をヤケ飲みし続ける毎日。次の仕事先を見つけようにもどこも雇ってくれるところはなく、そのストレスをなくすようにまた酒を飲むのエンドレス。さらには女に目がくらみ風俗店にも行った。そこでチヤホヤされては女に金を貢ぎ、気づけば金はすっからかん。金が欲しくなった俺は闇金業者から金を借り、博打につぎ込んだ。なかなか成功はしなかったが、うまくいくときは一度に300万もの大金を得た。だがそれも女と酒に消え博打も当たらなくなり、借金は増えていった。そして最後には今のアパートから追い出されホームレスにまでなりさがってしまった。欲に目がくらんだ結果がこのザマだ。何も言えねぇよな、バカらしくて。

そして俺は

 

死んだ

 

人生最後ほどあっけないものはなかった。気晴らしに夜の路地裏をふらついていたら、何かをぶつくさとつぶやいてる男が目の前から近づいてきた。男がだんだんと近づいてきて、つぶやきが聞こえるようになったのと突然取り出した包丁が、俺に刺さったのは同時だった。金をよこせ、金をよこせ、という声に返したのは

 

「金なんかもうねぇよ、くそったれが...」

 

という、相手への怒りの言葉と、自分への懺悔の言葉であった。

 

 

 

 

 

「ねえ」

 

どこからか声が聞こえてきた。幻聴だろうか。死人に口無しとはよく言うが耳はあるもんなのかねぇ、なんてバカなことを考えているとまた、

 

「ねえ」

 

と、声が聞こえた。まあ、一度あることは二度あるということわざもあるくらいだし、また幻聴が聞こえてきたんだろうと決めつけて無視をすることにした。

 

「ねえ、聞こえてるんでしょ」

 

二度あることは三度あるというやつだと思いたい。

 

「ねえ」

 

四面楚歌

 

「ねえ」

 

五十天命

 

「ねえ」

 

六根清浄

 

「ねえ」

 

七言絶句

 

 

 

 

 

八王z..

 

「いい加減にしなさい」

「ぐはっ」

 

唐突に腹部に強い痛みが走る。だがしかし、その部分を抑えようとするが腕は動かない。それどころか、まず体の感覚自体がない。

瞼は開かないし、鼻で息を吸おうとするが鼻がないためできない。声が出たことから口があるのはわかったがそれ以外は何もないこともわかった。死んだのにまだ痛いなんてここは地獄かなんかか?なんて考えていると、突然痛みがなくなった。

 

「ようやく目を覚ましましたか。あまり手を煩わせないでください。めんどうです。」

「それが人を殴って目を覚まさせたやつの態度かよ......」

「やつではなく神です。間違えないでください」

「はっ、冗談きついぜ。神なんているわけねえよ」

「別に信じて欲しいわけでもないので構いません。それよりめんどうなので単刀直入に言わせていただきます。あなたにはとある世界に転生していただきます」

「何言うかと思えばそんなくだらない冗談かよ。死んだと思ったらその先にはくだらないことしか言えない自称神か。死んでもこれとは本当に俺はついてないな」

「もう何も言いません。あなたにはその世界に特別な力や物などを持って転生させることができます。ですがそれには対価が必要です。例えば最強の力が手に入る代わりにその力は永遠に制御することができなかったり、万物を切る剣が手に入る代わりに自分の片腕がないなどです。所謂等価交換です」

 

さっきから話を聞いてればやれ神だの、やれ転生だの。なんだよ最強の力って、そんなもんあったって使い方が間違えばそんなものはただの暴力にしかならない。制御できないなら尚更だ。万物を切る剣?そんなもの持ってたってそれを持つ資格がなければ銃刀法違反で捕まるだけだ。それこそファンタジーでもない限りな。というか何故俺はこんな話を本当のことのように聞いてるのやら。バカバカしいったらありゃしない。だが、

 

「それがもし本当だって言うなら俺の願いは一つだけだ」

「なんでしょうか、できれば早く言ってください」

「わかったからそう急かすな。俺の欲しいのは

 

俺の中にある108の煩悩。つまり欲を全て消し去って欲しい。」

 

俺の人生はあの会社に入るまでは普通だった。彼女とかはいなかったが、厳しかった父親と優しかった母親がいた。それも俺が働くようになってから一年もたたないで薬中が運転する車の交通事故に巻き込まれ死んだ。そして、理不尽な上司に関してはまだよかった。だが、あのクズな後輩。あいつさえ来なければまだ嫌々ながらもあの会社で働くことができたし、こうして死ぬこともなかっただろう。だが、それも死んでしまうとどうでもよくなった。一番の原因は欲に溺れてしまったことだ。酒に溺れなければ、もしかしたらだが再就職のチャンスもあったかもしれない。女に溺れなければ、金がなくなるまで貢ぐなんてこともなかっただろう。金に溺れなければ、博打で悲惨な目に会うこともなかっただろう。だから、

 

「俺は次の人生では、絶対に欲に溺れたくない。もし欲の1ミリでもあればそれに流されちまうかもしれないからな。もうそんなことはこりごりなんでね。だから、俺は自分の欲を全て消し去って欲しい。財欲、性欲、睡眠欲、独占欲、生存欲、などなどなどなど。ぜんぶ俺の中から消し去ってくれ」

「わかりました。では対価はなんでしょうか?」

「それは俺の記憶だ。俺の中にある記憶は欲に溺れて得た快楽が残っちまってる。そんなものは次の人生には必要ないんでね」

「ふむ、そうですか。ならあなたのほとんどの欲をを消します。ですがさすがに食欲や睡眠欲などの生きるために必要な欲に関しては残させていただきます。そして対価にあなたの記憶を消させていただきます。ですが、あなたの回答は、今までの転生者の中で一番面白い。ですからサービスしてあげます。内容はあなたの知識記憶の一部を残してあげましょう。と言っても残すのは中学生くらいまでの学習知識と生きてきた中でこれは受け継いでも構わないという程度の知識のみです。ちなみに学習知識は、年を取っていくたびにだんだんと思い出せれていきます。」

「へえ、なかなか神様もサービス旺盛だねぇ。いいぜ、それで構わない。

 

なんてな。芝居に付き合ってくれてサンキューな。あんたのおかげで少し気が楽になったよ。さあ、天国だろうが地獄だろうがどこへでも連れて行っておくれ」

「わかりました。では転生の準備を開始します」

 

冗談を言ったつもりだった。だがしかし、自称神が言葉を言い切ると同時に体の感覚がないにもかかわらず浮遊感に包まれた。

 

「おい、マジかよ!ありゃ冗談じゃなかったのかよ!?本当に俺は転生するのか!?」

「言いましたよね私は神であると、ですから私はあなたの言葉を聞き入れ実行してあげているのです。もう戻れませんよ。あなたは希望(ねがい)と対価を決めてしまいましたから」

「くっそ! おい、あと転生するまでどれだけ時間がある!?」

「あと10秒ですが、何か言いたいことでも?」

「ああ、あるね!最後に一つだけ!

 

 

ーーーありがとうな!こんなおれの希望(ねがい)を聞いてくれて、スッゲー嬉かっぜ!」

 

全力で叫ぶと同時に俺は顔とかはないが、生きてきた中でも子供の頃にしか出なかったような、最高の笑顔を浮かべたつもりでいた。

 

 

そして、おれの意識と魂は希望(ねがい)と対価を連れて次の世界へと消えていった。

 

 

 

 

 

「初めてですね。転生させるにあたって感謝をされたのは。今まで99万9999人の人間の魂を転生させてきましたがあんな笑顔を見るのは初めてでした。

 

あなたの新たなる人生に幸あれ」

 

そう独り言を言い始めた女性は微笑みながら最後にそう呟きを残すと、フッ、と姿を消した。

 

そしてその空間には何もない真っ白な空間へと変わっていった。

 




2話目以降からは主人公のしゃべり方が全く変わりますのでご注意を。


毎日更新してる人ってすごいと思った(小並k(ry)

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